ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

110 / 178
2話連続投稿1話目です。


幕間: ジョニー・ライデンの帰還3

宇宙。

 

グラナダへ向かう途中宙域、イングリッド0を乗せた輸送艦隊。

 

漆黒の宇宙空間を、一機のコムサイが猛スピードで突き進んでいた。

 

大型ブースターの噴射が彗星の尾のように伸び、その加速力の異常さを物語っている。

 

彼らのターゲットは、イングリッド0をグラナダへと輸送中のムサイ級巡洋艦2隻――その護送艦隊だった。

 

先行する1隻のムサイから、通信が入る。

 

「こちらムサイ。キマイラ隊のコムサイか? 大型ブースターまで付けて、何事だ?」

 

通信の向こうからは、警戒の色を滲ませた男の声。

 

ジョニーは、落ち着き払った口調で答えた。

 

「こちらジョニー・ライデン少佐だ。ヒュー大佐からの命令書を持ってきた。重要機密につき直接渡したい。こちらのゲルググでそちらのムサイへの着艦許可を求める」

 

ムサイからの通信は、一瞬の沈黙の後、返ってきた。

 

「了解した。ハッチを開ける。速やかに着艦せよ」

 

通信が切れると、ジョニーは隣に座るユーマに視線を向けた。

 

「ユーマ、ゲルググで待機しておけ。戦闘を確認したらお前もコムサイから発進して、もう一つのムサイを攻撃しろ」

 

ユーマは、ゴクリと生唾を飲んだ。彼の顔には、緊張と、それに打ち勝とうとする気迫が浮かんでいる。

 

「分かった。任せてくれ、ジョニー」

 

その言葉に、ジョニーは小さく頷いた。

 

ジョニーの乗る高機動型ゲルググは、ムサイの開かれたハッチへと滑り込むように進入した。格納庫は、他のゲルググやザクIIが整然と並べられていた。

ゲルググのコクピットの中で、ジョニーは外のモニターでハッチ内を隈なく見渡したが、イングリッドの姿は見当たらない。

 

(ちっ…あいつ、いつも俺がきたら寄ってくるんだから早く来い!)

 

苛立ちを募らせながら、ジョニーはゲルググのコクピットから飛び出した。

 

整備士らしき男が、ジョニーの姿を見て駆け寄ってきた。

 

「真紅の稲妻を伝書鳩にするとは、相当な緊急命令ですか? 艦長ならブリッジでお待ちですよ」

 

ジョニーは、一応礼を言って答えた。

 

「ああ。ありがとう。すぐに行かないとな」

 

その時だった。

 

ジョニーを感知したかのように、格納庫の奥の通路から、一人の少女が駆け込んできた。イングリッド0だ。彼女の瞳は、ジョニーの姿を捉えると、大きく見開かれた。

 

「気配がすると思ったら本当にいる! 何でこっちにいるの、ジョニー!」

 

イングリッドは、無邪気に喜びの声を上げながら、ゲルググのコクピット前に立つジョニーへと駆け寄ってくる。その顔には、彼との再会を喜ぶ純粋な感情が浮かんでいた。

 

ジョニーは、駆け寄ってきたイングリッドを、間髪入れずに抱え上げた。 

 

「すまんな、整備士君」

 

そう言いながら、彼はイングリッドを抱きかかえたまま、自身のゲルググのコクピットへと飛び込んだ。

 

「ちょっと! ジョニー何を!」

 

突然の行動に、イングリッドは驚きの声を上げた。

 

ジョニーは、コクピットのハッチを閉じながら、イングリッドに叫んだ。

 

「詳しくは後で言うが、このままじゃあお前は死ぬ! 今は大人しくしてろ!」

 

その言葉と同時に、高機動型ゲルググが駆動を開始した。ビームサーベルが起動し、青白い光を放つ。

 

「まさか…裏切り者か!」

 

整備士の叫びが響き渡る中、ジョニーのゲルググは、周囲に並べられていたムサイ所属のゲルググを、一刀両断にぶった斬っていく。金属が軋む音と、爆発音が格納庫に響き渡った。

 

イングリッドを救い出すための、ジョニーの決死の行動が始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙。ムサイ級巡洋艦・艦内――。

 

ジョニーとエイシア、ユーマに見送られたあと、私はこのムサイの一室に入れられた。

 

部屋は個室で、拘束されているわけではない。でも、扉を開けて廊下に出るたびに、ジオン兵たちの視線を感じる。

 

それは単なる好奇心でも、羨望でもない。

 

――まるで、私を品定めするような、不気味な視線。

 

ユーマみたいに「なんであいつが選ばれたんだ」って嫉妬されてるのかとも思った。でも、違う。もっと深くて、得体の知れないものが、そこにはあった。

 

居心地が悪くて、私はほとんど部屋から出なくなった。ひとり、宇宙の景色をぼんやりと眺めながら、時間だけが過ぎていく。

 

そんなときだった。

 

――フッと、宇宙から気配が届いた。

 

懐かしい、安心できる、でも緊張感のある気配。間違いない。ジョニーだ。

 

なんで? ヒュー大佐は「グラナダに届ける」って言ってた。ジョニーが今ここにいる理由がない。でも、これは確かにあの人の気配だ。絶対に。

 

私は、気づけば立ち上がっていた。ふらつく足を無理やり動かして、格納庫へ向かう。

 

――もしかして、ジョニーが私に会いに来てくれた?

 

そんな淡い期待を抱きながら、格納庫のハッチが開くのを待った。

 

扉が開いた瞬間、そこにあったのは――見慣れた赤の高機動型ゲルググ。

 

やっぱり、ジョニーだ!

 

私は思わず駆け寄ろうとした。けれど、その瞬間。

 

「――え?」

 

私は、ジョニーに抱き上げられていた。

 

何が起きたのか理解するより早く、体が宙に浮き、そのまま彼のゲルググのコクピットに放り込まれる。

 

「ちょっと! ジョニー、何をっ――!」

 

声が勝手に漏れた。あまりにも唐突で、そして乱暴。

 

何がどうなってるの? 再会を喜ぶ間もなく、ハッチが閉じられ、外の音が遮断される。

 

その静けさの中、ジョニーが私に叫んだ。

 

「詳しくは後で言うが、このままじゃあお前は死ぬ! 今は大人しくしてろ!」

 

――死ぬ?

 

唐突な言葉に思考が止まる。けれど、次の瞬間にはもう、ゲルググのビームサーベルが展開され、青白い光が格納庫に広がっていた。

 

そして、躊躇なく――ムサイ所属のゲルググに襲いかかる。

 

「まさか……反乱!? ジョニーが、ジオンの機体を……!」

 

金属の悲鳴。炸裂音。警報のサイレンがけたたましく鳴り響く。

 

私は、コクピットの中で、ただ混乱していた。

 

「説明してよ!」

 

怒鳴った。再会して、何も説明されずに、こんなやり方はあんまりだ。

 

でも、ジョニーは前だけを見て叫んだ。

 

「その時間が無い! 外じゃユーマも戦ってる! さっさと格納庫の機体を全滅させて、脱出するぞ!」

 

ユーマも? あのユーマが? 私を送り出したあと、いったい何が――?

 

「この分からずや!」

 

思わず怒鳴っていた。ジョニーの背中に向かって叫んでいた。

 

無理矢理私を連れてきて、仲間を襲って、それでも説明は一切なくて。あまりにも、あの人らしくない。

 

でも、分かってる。ジョニーの声が、焦っていて、必死なのが分かる。

 

この人がここまで取り乱すのは、相当な理由があるはずだ。

 

「……だったら、戦わせて!」

 

私は決意を込めて叫ぶ。

 

「全部全滅させる前に、一機でいい、パイロットが乗ってないゲルググの所で止まって! 私も戦う!」

 

一瞬、ゲルググの動きが止まった。

 

「……たく。無茶言いやがって……」

 

ジョニーの呆れ声。でも、その呆れは――たぶん、少しだけ安心もしてる。

 

彼の機体は滑るように移動し、パイロット未搭乗のゲルググの隣で停止。そして、コクピットハッチを開ける。

 

「外のコムサイにはエイシアが乗ってる。お前はそこを遊撃で守れ。コムサイに敵を近づけさせるなよ!」

 

「了解!」

 

私は即答した。

 

――ジョニーが私を信じてくれるなら、私も応える。

 

混乱していても、怖くても、ここで戦う意味は分かる。信頼できる人たちが、私のために命をかけてくれている。

 

だったら、私も――応えなきゃ。

 

私は、開かれたハッチから飛び出し、隣のゲルググへと一気に跳び移った。

 

この手で、自分の未来を掴むために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、ジョニーの指示通りムサイを飛び出し、宇宙空間を一気に横切って――エイシアの乗るコムサイの側へと移動した。

 

目の前に、小型艦のシルエットが見える。ブースターの軌跡を残しながら、その周囲に散らばる光と破片は、既にこの宙域が“戦場”であることを告げていた。

 

コムサイの外装近くに着いた瞬間、通信が入る。

 

「……イングリッド! 良かった、無事ね!」

 

エイシアの声だ。どこか安堵に満ちていて、けれどまだ緊張が解けていない。私は、少し苛立ち混じりに返した。

 

「こっちのセリフなんだけど!? 何なのよこれ、反乱でも起こしてるの!? ジョニーは『このままじゃあお前は死ぬ』って言ってたけど、どういうことなのよ!」

 

問い詰めるように言うと、少しだけ沈黙が返ってきた。すぐに、エイシアの声が真剣な響きを帯びて戻ってくる。

 

「……イングリッド、あなたはジフレドに乗っちゃダメ。

あれに乗ったら、あなたは――何十、あるいは何百万もの人を殺す“引き金”にされる!」

 

私は思わず息を飲んだ。

 

「何十……何百万って……いくら新型でも、モビルスーツ一機でそんなこと――」

 

信じられない。兵器の性能が上がっているのは分かる。でも、それは戦場で優位に立つためのものだ。都市を吹き飛ばすとか、そんな規模の話になるなんて聞いてない。

 

そう言いかけたとき、視界の端に敵影が映る。

 

ザク。

 

「――ああもう! ともかく、あいつを落とす!」

 

私は、瞬時にスラスターを噴かして回避行動に入る。

 

ザクのマシンガンが弾幕を張るが、こちらの動きについて来られない。私はビームライフルを構え、隙を見て――引き金を引いた。

 

光が走り、ザクの胸部を貫いた。

 

爆発音が虚無に広がり、破片が霧のように宇宙を漂う。

 

「……こいつは大したことないわね。エイシア、話の続きを」

 

私が言うと、通信の向こうでエイシアが頷くように応えた。

 

「……そうね」

 

だが、その声に、急な切迫が混ざる。

 

「イングリッド! ユーマが!」

 

反射的に視線を走らせると、そこには――

 

片腕と片足を失ったゲルググが、ゆっくりと、こちらに向かっていた。

 

「ちょっと!? あんた何やってんのよ!? ムサイ一隻くらいどうにかしなさいよ!」

 

私は、思わず怒鳴っていた。

 

コクピット越しに、ユーマの声が返ってくる。

 

「うるさい! ゲルググ2機は倒したんだよ! だけど、次の相手が――黒い三連星じゃあ、さすがにキツかったんだよ!」

 

その名前を聞いた瞬間、私の中に緊張が走る。

 

黒い三連星。ドムによるジェットストリームアタックで有名な、かつてのエース部隊。

 

「黒い三連星って……あの離隊したって話の……!」

 

エイシアが驚きの声を上げる。

 

「復隊してたんだよ、あの野郎どもは!」

 

ユーマの声が荒い。けれど、確かな情報がそこにある。

 

「イングリッド! ジョニーの援護に行け! あのドム、相当改修されてる! 普通の速さじゃないぞ!」

 

私はすぐに答える。

 

「言われなくても行くわよ! あんたこそ、片腕だからって手抜きすんな! コムサイくらい守りなさいよね!」

 

通信を切り、私は再びスラスターを吹かした。

 

遠くに――赤と黒の光が交差する、激しい戦場が見える。

 

ジョニーが、そこにいる。私の、信じている人たちが、あの中で戦っている。

 

なら――私も、向かわなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 




車椅子ニート(レモン)さん誤字報告と☆9評価ありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。