ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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幕間: ジョニー・ライデンの帰還10

フォウたちが部屋を出てしばらくの静寂のあと、ユーマがぽつりと口を開いた。

 

「なあ、あいつの言葉……どう思った?」

 

答えたのはイングリッドだった。視線はまだ扉のほうに向いたまま、声には迷いがなかった。

 

「本心だったね。嘘なんて一つも感じなかった」

 

「そっか。……そうだよな~」

 

ユーマは気の抜けた声で言いながらも、口元にはどこか晴れたような笑みが浮かんでいた。

 

そんな様子を見ながら、ジョニーが腕を組み、ゆっくりと口を開く。

 

「とりあえず――あいつらと、その上の連邦は信用できるってことは分かった」

 

エイシアも頷きながら続ける。

 

「そうね。あの子の目……誤魔化して話す人間の目じゃなかった」

 

ジョニーは短く頷き、視線を3人に向け直す。

 

「なら次は確認だ。お前ら――連邦に入るのに異論はあるか? 次はジオンと、“敵”として戦うことになる」

 

ユーマは即座に手を挙げた。

 

「俺は問題ない! ジョニーのいるところに俺ありだ! そのためならジャコビアスのおっさんだって……追い払ってやる!」

 

威勢のいい口ぶりではあったが、その目に浮かぶ複雑な色に、3人はすぐに気づいた。

 

(同じ艦にいた仲間たちを、本気で撃ち抜く覚悟は……まだ決まってない)

 

空気を変えるように、イングリッドが挑発気味に言う。

 

「ユーマが追い払えるの? 近づく前にやられちゃうんじゃないの? あのおじさんスナイパーでしょ?」

 

「なんだとぉ!?」

 

「喧嘩はあと」

「いいかお前ら……今、連邦に入るしか道がない。だから――売り込むぞ!」

 

「売り込み!?」

 

一斉に声を揃えて驚く3人。

 

「軍人が言う言葉じゃねえな……」ユーマがボソッと呟く。

 

ジョニーはにやりと笑って言った。

 

「だが現実的だ。今の連邦は、あの子の話じゃ強化人間を作った博士もまともになってるらしい。だったら――まずお前ら2人は、向こうの研究部門に行けるように自分を売り込め!」

 

「イングリッドはニュータイプに近い強化人間だ。連邦でもその手は貴重だろうし、扱える人間が増えるのは悪い話じゃない」

 

「エイシア、お前は医官として、強化人間に関わってきたデータと経験を、コムサイに積んであるジオン製の設計サポートCADシステムのコンパクト版と合わせて、レポートにまとめろ。連邦で活用できるって証明すれば大きなアピールになる」

 

「ユーマ、お前は調整が要らない初期型だ。睡眠時間の短さと身体能力、それを前面に出して“即戦力”って言い切れ! 向こうの将校が喜ぶぞ!」

 

3人が口を開けてジョニーを見ている中、彼は拳を握って締めくくった。

 

「俺は――このままで終わる気はねぇ。黒い三連星の改造ドムに負けた借りは、連邦の“真紅の稲妻”として倍にして返す。もしジャコビアスや他の連中が来たら……俺が機体の手足を潰して鹵獲してやる! “裏切る気か”なんて言わせないくらいにな!」

 

その迫力に、一瞬部屋が静まり返る。

 

「……すごく、やる気になってるのね」

 

エイシアが苦笑混じりに言うと、ジョニーは照れ隠しのように鼻を鳴らした。

 

「フォウの話を聞いてからな、警備の連中の目が少し変わったのを感じた。あいつらが“信じよう”と思えるような材料を、俺たちが全力で示せばいいんだ」

 

「俺たちが裏切ったんじゃない。裏切ったのはキシリア・ザビだ。イングリッドに“死”か“廃人”かを選ばせるような道を敷いた時点でな」

 

4人はそれぞれの決意を胸に、新たな選択肢に向き合い始めていた。

 

次なる戦場は、敵味方の区別よりも、自分たちの“本心”が試される場所となるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。エイシア・フェローは一日中、個人端末の前に座っていた。

 

彼女が向き合っているのは、コムサイから持ち出したジオンのモビルスーツ設計支援CADシステム。もともと医官としての職務の傍ら、強化人間用モビルスーツの設計補助やフィードバック分析を行っていた彼女にとって、これは戦場で戦う仲間を支えるための、いわば“医療器具”でもあった。

 

しかし――

 

(ただこのシステムをそのまま提出したって、今の連邦には“技術としての価値”はほとんどないわ)

 

昨日の戦闘で彼女は見た。連邦の最新鋭モビルスーツ《アレックス》。その機動、応答性、火力、そして神業のようなビット運用。あれを見てしまえば、ジオンの技術者である自分が出せるものがどれだけあるかは、ある意味で残酷な現実として突きつけられる。

 

(最高性能で競っても勝てない。……でも、勝てないからって、価値がないわけじゃない)

 

エイシアは視点を切り替えた。

 

(ジオンの強みは水中用モビルスーツの技術と、その現場運用経験にある。こっちは、それを“まとめて”持っている)

 

設計支援システムには、水中用モビルスーツ開発の初期設計から各種改修案、パーツの耐圧データ、整備士のフィードバック、故障・沈没のケーススタディまで、整備と戦闘の両面を支える情報が詰まっている。まさにジオンが“海”で戦ってきた歴史そのものだ。

 

(……連邦は水中戦に関しては、尖った機体だけでしのいでる。しかも“数で押す”でも“広く対応する”でもない。コストパフォーマンス優先の割り切った戦略。賢いとは思うけど……)

 

けれど、それはいつまでも通用するとは限らない。

 

(民間の不満が溜まれば、戦略は批判される。戦後何ヶ月経っても、あちこちの海にまだジオンの“亡霊”が潜んでるって話もある。ならいずれ、対応が必要になる)

 

そして今、連邦が求めているのは“余計なリソースを使わずに勝つ”ことだ。

 

(このシステムを使えば、連邦は最小限のリソースで、新しい水中用MSを造れる。過去の失敗を踏まえた設計ができるし、現場整備士が苦労したところも全部詰まってる。試作と修正に費やす工数も抑えられる)

 

水中に対応できる戦力を低コストで保有することは、将来的な戦略の柔軟性にも繋がる。

 

(“勝つための一手”というより、“持っておくべき選択肢”として提案すればいい)

 

そして今、地上に残っているのは――

 

(連邦を完全に屈服させたくて地上に残った、テロリスト崩れになったジオン残党と、拾ったモビルスーツで武装した現地勢力。彼らはもう正規軍じゃない)

 

そこへ正規軍が正面から乗り込めば、費用も犠牲も無駄でしかない。しかし、海から制圧する選択肢を持っていれば、連邦の対応策にも幅が出る。

 

(だから……このシステムは価値がある。私はそれを“説明できる”)

 

自分が関わってきた強化人間の医療データと共に、戦術支援ツールとしてのこのCADシステムの価値。エイシアは、整理したメモを端末でまとめながら、肩の力を少しだけ抜いた。

 

「――“最高”じゃない。でも、“必要”にはなれる」

 

それが、ジオンにいた自分が連邦に示せる、現実的な“売り込み”だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サラミス級巡洋艦〈ジャンク〉のブリッジ。モニターに流れる航行データと、通信パネルの音が静かに空間を満たしていた。

 

その静寂を破るように、オペレーターの一人が声を上げた。

 

「艦長。ジョニー・ライデン少佐たちから伝言です。“今後のことで話したいことがあるので、時間をいただけないか”とのことです」

 

ヘンケン・ベッケナー艦長は、その言葉に手元の書類から顔を上げた。

 

「……そうか」

 

しばし沈黙する。彼にとっても、ジョニーたちの動向は無視できない要素だった。連邦に加わってくれれば大きな戦力になる。それ以上に、ゼクノヴァの引き金にされかけた少女を守るために、ジオンという大義を捨ててまで動いた彼らの行動には、軍人としても、ひとりの男としても、敬意を覚えていた。

 

だが同時に――

 

(キシリアという上司に裏切られ、かつての仲間と戦う羽目になった者達だ。こちらから「うちに来い」とは言いにくい。)

 

その複雑な思案の最中、アムロ・レイが後ろから声をかけた。

 

「彼らからの伝言ですか?」

 

ヘンケンは小さく頷いた。

 

「ああ。今後のことを話したいそうだ。まあ当然といえば当然か……俺も話したかったくらいだが、どう切り出せばいいか悩んでたところだよ」

 

「では、自分とフォウ、カミーユも同席させてもらえませんか?」

 

アムロの申し出に、ヘンケンは腕を組んで考え込んだ。

 

「……いや、最初は彼らの信用を得るために君たちに同席してもらったが、二度目もとなると、護衛に就いてるエコーズの連中も、さすがにいい顔をしないんじゃないか?」

 

そこへ背後から静かに声が入った。

 

「構いませんよ、艦長」

 

振り返ると、副隊長のコンロイ・ハーゲンセンが立っていた。軍帽の影から鋭い目を光らせ、落ち着いた口調で続ける。

 

「我々も状況は把握しています。隊長――ダグザ中佐も同じ意見でしょう。任務の枠内であれば、彼らの意志を知っておくことは有益です。同席させていただきますが」

 

「……そうか。ならば、同席してやってくれ」

 

ヘンケンは一息吐き、静かに了承した。

 

その直後、小声でアムロに問いかける。

 

「なぁ、アムロ。一体何があった? 先日、ダグザ中佐に“ジオンの人間を拘束もせずに艦に置くとは”って冷たい目で睨まれたんだが?」

 

アムロは苦笑交じりに答えた。

 

「少し、フォウが彼らと話したんです。――それを聞いたダグザ中佐も、思うところがあったんでしょう。あの人なりに」

 

ヘンケンは眉を上げたあと、ふっと鼻で笑った。

 

「……まったく。お前たちは本当に、軍の外でも中でも人の心を揺さぶるんだな。分かった、今度はこっちが向き合う番だ」

 

彼は立ち上がると、オペレーターに通信を指示した。

 

「会議室を用意しろ。ジョニー・ライデン少佐たちと、改めて話をする。俺と、アムロたち、それにエコーズの連中も同席でな」

 

「了解しました!」

 

やがて、ジョニーたちとの“第二の対話”が始まろうとしていた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会議室。ジョニー・ライデンは静かに立ち上がると、視線をヘンケン、アムロ、そして同席していたコンロイたちに向けた。

 

「さて……早速本題に入らせてもらおうか」

 

その声には迷いがなかった。もはや後には引けない、という覚悟が滲んでいる。

 

「まず、俺たち4人――いや、ひとりひとりが持ってる“価値”を、連邦にどう役立てられるかを順に説明させてもらう」

 

 

 

ジョニーは隣の少女へと手を向ける。

 

「イングリッド・ゼロ。ニュータイプに限りなく近い感応能力を持った“調整型強化人間”だ」

 

イングリッドは一瞬戸惑ったような表情を浮かべたが、すぐに前を向いて頷いた。

 

「ゼクノヴァの引き金にされかけたのも、この感応能力が理由だ。連邦にとっても、ニュータイプパイロットはそう多くないはず。イングリッドの存在は、即戦力としても将来的なパイロット育成としても、貴重な戦力になる」

 

 

 

続いて、ジョニーはユーマを見やった。

 

「ユーマ・ライトニング。初期型の強化人間だ。調整をほとんど必要とせず、短時間睡眠でも高い戦闘能力を維持できる。生身の身体能力でも通常兵の数倍はある」

 

「連邦のデータが欲しがる“成功例”だな。現場運用の視点から見ても、極めて実用的な兵士だ」

 

ユーマは少し照れたように腕を組んでいたが、しっかりと頷いた。

 

 

 

ジョニーの視線は今度はエイシアに向かう。

 

「エイシア・フェロー。元はジオンの医官として、強化人間の調整に関わっていた。人体構造への理解は深く、調整過程だけでなく、その後の“治療と安定”の領域においても重要な知見を持ってる」

 

「そして――連邦の医療チームがまだ持っていないであろう“ジオン式の調整記録”も、彼女は把握している」

 

エイシアは一歩前に出て、補足するように口を開いた。

 

「加えて、私が持ち込んだコムサイには“ジオンの設計支援用CADシステム”が搭載されています。これには現場整備士たちの実践的知見が統合されていて――特に水中用モビルスーツの運用データが充実しているわ」

 

「今、連邦が海洋戦力においてリソースを割けずにいるのは理解しています。でも、今後地球圏全域の制圧と安定を狙うなら、そこを放置するわけにはいかないはずです」

 

「このデータは、最小限のコストで実践的な水中用MSを作る助けになるはず。それは、海中の現地勢力や残党狩りへの対処だけでなく、連邦の民間からの信頼にも繋がるでしょう」

 

 

 

ジョニーは最後に、自分自身の胸に手を当てた。

 

「そして俺だ。キシリア・ザビ直属のキマイラ隊隊長。戦場での指揮経験だけじゃない」

 

「連邦が次にジオンと戦う時――確実にその相手は、また“ザビ家”になる。そのときに“何をどこまでやっていたか”を証言できる俺の存在は、政治的なカードにもなるはずだ」

 

「俺たちは、ジオンに戻る気はない。なら、連邦に“居場所”を作ってもらうしかない。お前らの規則がどうあれ、俺たちはその“価値”を提示する覚悟でここにいる」

 

ジョニーの言葉が終わったとき、室内には静寂が満ちていた。

 

一瞬だけ。

 

しかしその沈黙は、押しつけがましいものではなく――「誠意」と「決意」に満ちた熱が、しっかりと伝わる間だった。

 

会議室の空気が、一瞬静まり返る。

 

ジョニーが情熱的に語り終えた「売り込み案」は、まさに全力投球だった。彼らの意志も、技術も、立場もすべて織り込んだ、真っ直ぐな提案だった。

 

その熱に押されるように、アムロが口を開いた。

 

「つまり――君たちは“連邦に大きく貢献できる要素を持っている”。だから、他のジオン兵とは容赦なく戦う。その代わり……」

 

アムロの視線がジョニーに向けられる。まっすぐに、鋭く。

 

「もし戦場で、キマイラ隊の機体と遭遇した場合――彼らを殺すのではなく、鹵獲できるような戦い方を選ばせて欲しい。そういうことだな?」

 

ジョニーたちの表情が一斉に強張った。

 

一言も、そんなことは口にしていない。しかし、まるで見透かされたように、彼らの胸の内を正確に言い当てられた。

 

「……」

 

沈黙が落ちる。イングリッドもユーマも、顔を伏せた。やはりそれは――甘えすぎた願いだったのかもしれない、と。

 

しかし次の瞬間、アムロの口から予想外の言葉が飛び出した。

 

「俺は、構わない」

 

驚きと共に、ジョニーたちの視線が一斉にアムロへと向いた。

 

ヘンケンが即座に口を挟む。

 

「おいおい、アムロ。それはさすがに……難しい話だろう?」

 

だが、アムロはあくまで落ち着いた調子で続けた。

 

「もちろん、“俺だけの話”です」

 

彼は、まっすぐジョニーに向き直る。

 

「ジョニー・ライデン少佐。戦場でキマイラ隊のマークをつけた機体と遭遇し、かつ味方に損害が出ないと判断した場合――」

 

「俺がその機体の手足を壊し、動けなくした上で鹵獲する。可能な限り命は取らずに済ませてみせる」

 

「……別に、それくらいは構わないだろう」

 

ジョニーは言葉を失った。

 

あの“連邦最強のニュータイプ”、アムロ・レイが、自分たちのわがままともいえる願いを、あっさりと飲み込んだ。

 

「……いいのか? かなり無理のある条件だ。だからこそ、俺たちだけで何とかするつもりだったんだが……」

 

「問題ない。俺ならやれる」

 

そう答えるアムロに、一点の迷いもなかった。

 

だが、同時に彼は補足する。

 

「ただし、それはあくまで『俺個人の判断』であって、連邦の正式な命令ではない」

 

アムロは、ヘンケンとコンロイ、そしてエコーズの兵士たちに視線を巡らせた。

 

「例えば、もし他の部隊がキマイラ隊のモビルスーツと交戦した場合、彼らは躊躇なく撃墜するだろう。俺が介入できない状況であれば、君たちの命を保証することはできない」

 

ジョニーは、その言葉を重く受け止めた。アムロは確かに道を開いてくれたが、それは彼個人の技量と裁量の上に成り立つ極めて限定的な救済だ。連邦という巨大な組織全体の意思ではない。

 

「それでも構わないか?」

 

アムロの問いに、ジョニーはエイシアとユーマ、そしてイングリッドに目を向けた。全員が、静かにうなずいていた。

 

ジョニーは、短く息を吸い、真っ直ぐに答えた。

 

「……構いません」

 

その言葉を受け、ヘンケンは腕を組み、ゆっくりと口を開いた。

 

「よし。であれば、こちらも条件を提示させてもらう」

 

表情は厳しいが、どこかに信頼の色も滲む。

 

「まず、君たちの身分は《アマラカマラ商会》の『特殊技術顧問』および『警備員』として扱う。これは、連邦軍内部の混乱や政治的反発を避けるための措置だ。あくまで君たちは“民間”という建前に立って行動してもらう」

 

「次に、君たちのモビルスーツは当面、我々の監視下で整備を行う。機体の情報は全て開示し、必要に応じて改修を加えることを許可してもらう。これは“兵器としての信頼性”のためだ。納得してくれ」

 

ジョニーたちは頷いた。それが最も現実的な選択肢であることは理解している。

 

「そして……最も重要な点だ」

 

ヘンケンはまっすぐジョニーの目を見た。

 

「ゼクノヴァに関する全ての情報、キシリア・ザビの動向、そしてジオン内部のあらゆる軍事・政治的情報を、連邦に提供してもらう。これは、君たちを匿うことへの“対価”でもある」

 

ジョニーは真剣な面持ちで頷いた。それこそが、自分たちが命を賭けて連邦に来た理由でもある。

 

「承知しました」

 

ジョニーの声には、揺るぎない決意が宿っていた。

 

ヘンケンは続けた。

 

「なお、イングリッドとユーマ、それにエイシアには、一度ジャブローに戻ってもらうことになる」

 

「……地上に?」

 

驚くユーマに、ヘンケンが補足する。

 

「強化人間としての体調と安定度を確認するためだ。連邦の専門家――ムラサメ博士の下で、今後の調整や投薬を減らすための治療スケジュールを立ててもらう。無理に調整されるようなことはない、君たちが自分の意思で選べるようにするための措置だ」

 

イングリッドはわずかに目を伏せ、やがて静かに頷いた。

 

エイシアが安心したように笑う。

 

「ありがとうございます。……フォウさんを調整が必要ないぐらい治療したという、ムラサメ博士なら、きっと真っ当な医療の形を見せてくれるはずです」

 

ヘンケンがうなずく。

 

「治療と調整が済み、本人たちの意思と戦闘可能な状態が確認でき次第、アマラカマラ商会の“護衛隊”にモビルスーツパイロットとして配属する。君たちは民間技術者、もしくは操縦士として振る舞ってもらうが、必要なときは連邦軍と連携も可能だ」

 

ジョニーが小さく笑った。

 

「じゃあ、俺は……」

 

「君には即戦力として働いてもらう」

 

そう告げたのはアムロだった。

 

「既に戦場での行動が証明になっている。君のような人材が、連邦の“次の段階”には必要になるだろう」

 

ヘンケンも同意するように頷いた。

 

こうして、かつて敵だった者たちが、ひとつの目的の下に並び立つことになった。

 

その始まりは、戦場ではなく、ひとつの“理解”からだった。

 

そしてそれが――やがて来たる嵐に向けた、小さな灯火となる。




☆9評価ありがとうございます! ななきっちさん
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