ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
模擬戦:アムロ・レイ vs キマイラの三剣 ―
「次は――俺と、君たち3人で模擬戦だ」
静かな声で、アムロ・レイが言い放つ。
シミュレーションルームに入ろうとしていたジョニーたちが一斉に振り返った。
「……は?」と、ユーマが声を漏らす。
「いやいや、俺たちさっき、結局カミーユもフォウも落とせてないぞ?」
「だから1対3だな。俺が1人、君たちが3人。それに――」
アムロは微かに笑みを浮かべながら、ジョニーに視線を向ける。
「少佐との約束だからな。キマイラ隊と戦う際、可能な限り鹵獲する。そのためにも、俺の腕を知っておいてもらう必要がある。君たちが俺に任せて安心できるように」
「……」
ジョニーとイングリッドは、内心で思った。
(いや、黒い三連星を無傷で1人で片付けるようなやつに不安なんてないんだが)
だが横で、ユーマが拳を鳴らす。
「よし、やってやろうぜジョニー! 3人であのアレックスの手足一本くらい壊してやろうじゃねぇか!」
「はぁ……」とジョニーがため息をつくのとほぼ同時、少し離れたところで、カミーユとフォウがヒソヒソと話し始めていた。
「ねえカミーユ、あのアレックスの手足一本って、だいぶ無茶言ってない?」
「まぁね。でも、さっきの“アムロさんを入れた3対3”を本気でやろうとしてた時よりは、多少分かってきたんじゃない?」
フォウが肩をすくめる。
「やれやれだね。で、彼らは今から“現実”を知ると……」
**
模擣戦開始。
仮想空間に展開されたのは、宇宙域。そこに1機、青白のアレックスが浮かび――その対面には、ゲルググ3機。ジョニー、イングリッド、ユーマ。それぞれの機体は過不足なく最適化されており、前の模擬戦の結果を引きずる様子はない。
だが、その静寂を破ったのは、アムロのビット展開だった。
「っ、来るぞ!」
ジョニーの警告と共に、六基のビットが宙を舞い、三方向から襲いかかる。
「左右に散開!中央は俺が塞ぐ!」
ジョニーの号令でユーマとイングリッドが回避に入ったが、ビットは一斉にユーマを集中砲火。
「ぐっ――ちょ、待て!早い、いや速すぎる!」
次の瞬間、ユーマのゲルググの腹部がビームで貫かれ、仮想空間上で機能停止。
「ユーマ、もう死んだ!?」イングリッドが叫ぶ。
「落ち着け!」
ジョニーが即座に前に出て、アムロに切り込む。
「近接戦なら――!」
ビームサーベルを構え、接近戦に持ち込もうとしたその瞬間。アムロのアレックスが一瞬姿勢を崩し――見せたと錯覚させたその隙に、背後からビットが軌道を変え、ジョニーの脚部を斬る。
「なっ――!?」
さらにアムロがすれ違いざまに接近、サーベルを抜きながら一閃。
ジョニーのゲルググが機能停止。
残るはイングリッド一機。
「っ、こんな……ビットの機動、見たことない!」
逃げながらも反撃を試みるが、追い詰められる。ビットの軌道は、まるで自分の思考を先回りしているかのように正確だった。
そして――背後に回り込んだビットが、頭部に照準を定めた。
「イングリッド、アウト」
システム音声と共に、模擬戦が終了した。
**
シミュレーターの扉が開き、汗ばむ面々が出てくる。
ジョニーは仮想戦闘とはいえ、内心で戦慄を覚えていた。アムロ・レイは、まったくの別格だった。
アムロは落ち着いた口調で言った。
「さて。俺の腕は、こんな感じだが――少佐。君の隊員の中で、特に警戒すべき人間がいれば教えてほしい」
ジョニーは、一瞬考え――静かに答えた。
「……キマイラ隊はエースを集めて作られた部隊だが、あんたクラスはいない。ただ、一人だけは別格だ。ジャコビアス。狙撃に特化したスナイパーだ。あいつだけは……気をつけてくれ」
「スナイパーか」
アムロは少しだけ表情を引き締めた。
「なら戦闘中は、バイオセンサーの感度を最大まで引き上げよう。殺気の探知を全開にしておくとするよ」
その言葉に、ジョニーは無言で頷いた。ニュータイプという存在が、戦場の均衡をどう変えるか。彼は今、身をもって思い知らされていた。
だが――それでも負けてばかりはいられない。
その背で、ユーマとイングリッドも同じ決意を燃やし始めていた。
次は必ず、肩を並べてみせる――そう、心に誓いながら。
― サラミス級巡洋艦《ジャンク》艦内 シミュレーションルーム ―
模擬戦が終わって数日後、アムロは再びジョニー、イングリッド、ユーマの3人をシミュレーターに招いていた。
「もう一戦、お願いできるか? 今度はフォーメーションの応用訓練だ」
そう言って指示を飛ばすアムロの横では、フォウとカミーユも準備を整えていた。ジョニーは肩を竦めた。
「よくやるぜ……アムロ・レイ」
訓練が始まって数分――
艦内にけたたましい警報音が鳴り響いた。
『警告! 艦の周囲に未確認艦影接近! 総員配置に就け、繰り返す――』
アムロの表情が一瞬で緊張に染まった。
「訓練中止、ブリッジへ向かう! 君たちも来てくれ!」
ジョニーは一歩後ろに引きながら言った。
「俺たちまでブリッジに行ったらまずいだろ? まだ形式上は……」
「問題ないよ」
アムロは振り返り、にやりと口元を緩めた。
「後ろの彼らが君たちが何かしようとしたら即座に撃つからな。……だが、君たちはそんなことをしないだろ?」
ブリーフィングルームの入り口に立っていたのは、エコーズの中佐――ダグザ・マックールとその部下たちだ。冷静で整然とした態度のまま、彼らは既に射線を通していた。
「……そりゃあ、やらないが」
ジョニーが肩をすくめると、イングリッドがその腕を引いた。
「ジョニー、行こう。……多分、来てるのは」
その声の奥にある、確信とも言えるものに、ジョニーははっとする。
(……ニュータイプの直感か。俺には見えない何かを感じ取ってるのか?)
一行は急ぎ、ブリッジへと向かった。
― 《ジャンク》艦内 ブリッジ ―
ドアが開くと、すでにブリッジには緊迫した空気が満ちていた。
「敵艦……いえ、識別信号あり! ザンジバル級と、識別不能の大型艦が接近中!」
通信士の声にアムロがモニターを覗き込み、ジョニーたちも続く。
「……あれは――!」
大型スクリーンに映し出されたのは、見覚えのある二隻の艦影だった。
一つはザンジバル級機動巡洋艦《サングレ・アスル》。そしてもう一つは、岩盤に巨大プラントを抱き込んだような形状をした船――《ミナレット》。
「なっ……!」
ジョニーは絶句した。
「サングレ・アスルと……ミナレットだと!? 何であれがここに……!?」
ヘンケン・ベッケナー艦長が身を乗り出すように言った。
「君たち、あれはキマイラ隊の艦か?」
「――そうです」
ジョニーは躊躇なく答えた。
「艦長、お願いです。通信を繋がせてくれ。裏切った俺が何を言っても信用されないかもしれない。でも……奴らを助けるために、俺に何かさせてくれ!」
その時、アムロが前に出た。
「俺としても、そのつもりだった。話し合いが通じなければ、可能な限り“鹵獲”するつもりだったが――」
彼の視線が、前方モニターに映った点滅を捉えた。
「……どうやら、その必要はなさそうだ」
スクリーンには、ミナレットから発信された通信信号のフレームが表示されていた。
「……これは、交信を求める信号だ」
ジョニーは緊張した面持ちで通信席へと向かった。
(……頼む、ジャコビアス。ジーメンス。エメ。クリストバル。お前たち、無事であってくれ)
――交信は、間もなく開かれようとしていた。