ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
NT-1アレックスのコックピットは、まるで墓所のように静かだった。
全天周囲モニターが虚無を映し、リニアシートの振動すら、アムロ・レイの沈黙を壊せなかった。
灯りが点るたび、彼の顔に濃い影が差し、その眼差しは今の戦場ではなく、もう戻らぬ過去に沈んでいた。
シイコ——あの微笑みが、何度も脳裏に差し込む。
そして、父。
テム・レイという名の男が、夢を賭けて作った機体。RX-78。
連邦の希望、戦局を変える象徴。それが、すべてのはじまりだった。
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「……結局、失敗だったのさ。息子に誇れるものなんて、何も作れなかった……」
そう呟いたのは、戦後のある夜、艦の機関室で独り煙草をくゆらせていたテム・レイだった。
誰に話すでもなく、ただ回路盤を見つめ、声を漏らしていた。
「ガンダムを作った男が、ガンダムを奪われて、連邦も殺された……俺は……何のためにあれを……」
それでも、息子だけは——アムロだけは、何も言わなかった。
恨みも、軽蔑も、向けてはこなかった。
だからこそ、彼に遺したのだ。もう一機のガンダムを。
息子の未来を、そして……その子供の未来をも、繋ぐために。
⸻
(……あれが、父さんが作った……ガンダム……)
それはもう、希望ではなかった。
父の夢を踏みにじり、連邦の兵士を殺し、そして——シイコを奪った機体。
赤に染め上げられた“元・ガンダム”。
それを前に、アムロの中で、何かが静かに崩れた。
「アムロ……あたし、夢を見たの。あの赤い機体が……相棒を殺したのよ」
それは、まだ穏やかだった頃。
小さな居住区のベッドの上で、シイコがぽつりと漏らした言葉だった。
「夢じゃないの。……あたしの中で、あいつの“無念”が、いまだに生きてるの。消えないの」
「でも、君はもう戦わなくていい。俺がいる。坊やもいる。……ここが君の帰る場所だ」
そう返したとき、彼女はそっと微笑んだ。
小さな手をハイハイで伸ばす「坊や」が、二人の間で無垢に笑っていた。
「……そうね。今だけは、ちゃんと幸せだと思えてる」
「シイコ……」
「でもね、アムロ。あたし、“許せる日”が来るのかな。あの赤い機体を。……坊やの未来のためにも、消さなきゃいけない気がするの」
そのときの彼女の目は、ただの母ではなかった。
ニュータイプとしての“使命”に、自らを縛りつける兵士の目をしていた。
(……結局、守れなかった)
アムロは、沈黙の中で拳を握る。
かつて、テム・レイが命を削って作った機体。
それを奪われ、彼は壊れ、そして——その同じ機体に、妻を殺された。
——だったらもう、正しさなんて要らない。
「……奪われたすべてを、俺が、終わらせる」
アムロの声は、冷たい金属のように硬く、静かだった。
ルナ・チタニウム合金製の装甲は、かつてのRX-78以上の強度を誇る。
頭部には60mmバルカン砲、両腕には90mmガトリング砲。
両肩と胴体にはチョバムアーマーを装着し、接近戦用のビーム・サーベルは2基。
さらにビーム・ライフル、ハイパー・バズーカ、シールドを携えたフルスペックの戦闘機体。
ジェネレーター出力は高く、反応速度を極限まで引き上げるマグネットコーティングが施されている。
それは、連邦が“本気で勝つために作った”最後の希望だった。
——ビームライフル、装填完了。
——ガトリング、作動良好。
——マグネットコーティング、反応安定。
ルナ・チタニウムの装甲が、わずかに軋む。
NT-1アレックス。
それは、テム・レイが息子のために託した、最後の“棺”。
だがアムロにとって、それはもはや父の遺産ではなかった。
妻の仇を討つための剣、父の無念を葬るための槍。
沈黙の中、アレックスのバーニアが静かに熱を帯びる。
光が差し込む。
その光の中で立ち上がったアムロの影は、
もはや“英雄”ではなかった。
それは——世界に焦げ跡を残す、“殺意”そのものだった。