ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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次を24日1200に投稿します。その話でジョニー・ライデンの帰還編完結です。


幕間: ジョニー・ライデンの帰還15

― 《ジャンク》艦内 ブリッジ ―

 

ブリッジに緊張が走るなか、通信士が一つの信号を受信し、オペレーターに向けて叫んだ。

 

「ミナレットから通信です! 映像あり、識別コード一致。送信者は……キマイラ隊所属、第二小隊!」

 

「出してくれ」

 

ヘンケンが静かに指示を出すと、前方モニターにジオン軍の制服を着た男の姿が映し出された。精悍な顔つき、落ち着いた瞳。そこにいたのは、キマイラ隊第二小隊隊長――ジーメンス・ウィルヘッドだった。

 

『こちらはキマイラ隊、第二小隊隊長ジーメンスだ。……交戦の意思はない。』

 

その言葉にブリッジの空気がわずかに揺らいだ。

 

『……そちらに、“ジオンの裏切り者”がいるんじゃないかと思ってな』

 

その発言に、ヘンケンはゆっくりとジョニーを振り返った。

 

無言で頷くジョニー。そして、前に一歩進み、通信モニターの前に立つ。

 

「……よう、ジーメンス」

 

その瞬間、通信先のジーメンスの顔が一瞬だけ綻んだ。

 

『やはり、生きてたか。ジョニー』

 

「どうにかな。それで……ミナレットまで持ち出して来て、何の用だ? “交戦の意思はない”って言うが……お前らは、キシリアに“俺の追撃”を命じられたんじゃないのか?」

 

ジョニーの言葉に、ジーメンスは苦笑を浮かべる。

 

『ああ、命じられたさ。キシリア様はお前の“裏切り”にカンカンだったぜ。……まあ、あの女にしては感情的だったな』

 

「……聞いてくれ、ジーメンス。キシリアは、イングリッドのことを――」

 

『――まあ待てよ。』

 

ジーメンスが軽く手を上げて遮る。

 

『通信越しに話すことじゃない。そっちに向かう。ランチで数名だけ乗せていく。警戒はしてくれて構わない。モビルスーツを待機させててもいい。だが、俺たちを直接会わせてくれないか?』

 

ジョニーは、ヘンケンを振り返る。ヘンケンは黙って一拍置いた後、指揮席から立ち上がった。

 

「……いいだろう。ランチの接近を許可する」

 

そして、全ブリッジに号令が響く。

 

「アレックス隊、サラミスとミナレットの中間宙域にて待機。ネモ隊は格納庫にて即応待機とする!」

 

通信が切れ、ジョニーは小さく息を吐いた。

 

「……あいつら、来るな」

 

アムロが隣で頷いた。

 

「来るさ。あれが、キマイラ隊の“義理”ってやつなんだろ?」

 

ブリッジの空気は、依然として緊張感に包まれていたが、ほんのわずかに、その温度が変わり始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 《ジャンク》艦 会議室 ―

 

ミーティングルームの自動扉が静かに開くと、そこにはすでに複数の人影が待っていた。

 

ジオン軍キマイラ隊からランチで降り立ったジャコビアス・ノード、ジーメンス・ウィルヘッド、そしてその妻エメ・ウィルヘッドの三人は、わずかに警戒を滲ませながらも、堂々と足を踏み入れる。

 

会議室の中央には長机が据えられ、その向こうにジョニー・ライデン、イングリッド・ゼロ、エイシア・フェロー、ユーマ・ライトニングが並んで座っていた。その背後には、無言のまま睨みを利かせるエコーズの隊員が7名。壁面のモニターには、《ジャンク》艦長のヘンケン・ベッケナーの姿が映っている。

 

ジャコビアスは一歩前に出て、会議室を見渡した。

 

「……裏切った全員、生きてるとはな。悪運の強さは相変わらずだ」

 

その口調に皮肉はあったが、責める調子は抑えられていた。

 

ジョニーは頭を下げる。

 

「……すまん、ジャコビアス」

 

「いいさ。聞かせろよ。お前らがなぜムサイを攻撃し、連邦に加わることになったのかを」

 

その言葉に、会議室は短い沈黙に包まれる。やがて、場面は語り終えたあとの空気に切り替わる――

 

 

 

 

ジョニーは、話を締めくくるように静かに言った。

 

「……というわけだ。お前たちには申し訳ないと思ってる。だが俺たちは――イングリッドに“兵器か死か”なんて選ばせる連中には、従えなかった」

 

イングリッドの表情は固く、しかしどこか決意に満ちていた。ジョニーの言葉にうなずくように、まっすぐジャコビアスたちを見返す。

 

ジャコビアスは腕を組み、少しだけ目を伏せて言った。

 

「イングリッドが死ぬ可能性で裏切った……その線は考えていたがな。ゼクノヴァを使う兵器の“引き金”にするつもりだったとは、思いもしなかった」

 

エメが唇を噛んで言葉を続ける。

 

「でも……ジョニーの言う通りよ。あれを使えば、キシリアはきっとジオンの内乱に火をつける」

 

「……お前が裏切るのも、納得だな」

 

ジーメンスが深くうなずく。彼らの表情に怒りや非難の色はなかった。ただ、心からの理解と憂慮が滲んでいた。

 

ジョニーが口調を変えて問う。

 

「俺の事情は……話し終えた。なら今度はそっちの番だ。交戦の意思がないって言ってたな? 何しに来た?」

 

ジャコビアスはちらりとモニターを見やった。そこに映るヘンケンに向けて、声を張る。

 

「……それを話すなら、まず“通信越し”の艦長さんに聞きたい」

 

モニターの中で、ヘンケンがやや身を乗り出した。

 

「何だ?」

 

「ジョニーの言う通り――今の連邦は、変わったのか? 元ジオンであろうと……正しく使ってもらえるのか?」

 

ヘンケンは即座に答えた。

 

「もちろんだ。裏切りの可能性が残っていれば話は別だが……ジョニーたちのように、“仲間のためにすべてを捨てて戦った”者を、我々は差別しない。それが、今の連邦軍だ」

 

その言葉に、ジャコビアスの口元がわずかに緩む。

 

「そうか……では、申し上げよう」

 

彼は一歩前に出て、姿勢を正した。

 

「我々キマイラ隊の六割は――《サングレ・アスル》および《ミナレット》の戦力も含め、貴軍に降伏し、身柄を預けたい。我々は、ジョニー・ライデンとその“選択”に、同じ命を賭ける覚悟がある」

 

会議室の空気が、静かに、そして確かに変わった。

 

それは、かつて敵として戦った者たちが「同じ未来」を見つめ始めた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 《ジャンク》艦・会議室 ―

 

ヘンケン艦長は、慎重ながらも率直に口を開いた。

 

「……俺たちとしては、降伏してくれるなら受け入れる。ジョニー・ライデンと共に戦いたいというなら、それなりの便宜も図るつもりだが……君たち、本当に裏切って大丈夫なのか?」

 

その言葉に、ジョニーもまた椅子から身を乗り出す。

 

「そうだ! お前たちはともかく――キマイラ隊には、ジオン本国に家族を残している隊員も多かったはずだ。そんな奴らまで裏切りに加えたら、報復されるに決まってる!」

 

ジャコビアスは首を横に振る。

 

「いや、今ここに来てる6割ってのは……本国に家族を残していない連中だ。たとえ全てを捨てることになっても、お前と一緒に“生きる”道を選んだ奴らさ」

 

「……だとしても、残りの4割はどうするつもりなんだ? 6割がごっそり抜けたら、裏切りと見なされてキシリアは暴走するぞ!」

 

ジョニーの焦りをよそに、ジャコビアスはにやりと笑う。

 

「その件については、もう手は打ってある。……ところで艦長、この艦は今ミノフスキー粒子を撒いてなかったよな?」

 

「撒いていない。現在は通信クリアだ」

 

「ならグラナダからの長距離通信も、普通に届くな?」

 

「もちろんだが、一体何を受信するつもりだ?」

 

ジャコビアスはふっと息を吐いたあと、モニターに目をやった。

 

「多分そろそろ流れてると思うんだ。あとは、それを見ればすべてがわかる」

 

そして、椅子にもたれながら、後ろのジョニーを一瞥してから不敵に笑った。

 

「……隊長。残された部下たちの命を守るためなら――裏切り者の“汚名”がもう一つ増えたところで、構わないよな?」

 

「……は? 何を言って――」

 

 

 

― 同時刻 グラナダ居住区・一般放送モニター ―

 

ジオン市民たちが見守る中、突如、各所のパブリックモニターに緊急ニュースが映し出された。

 

映像に映るのは、キマイラ隊の制服を着たクリストバル・ラザフォード。顔面蒼白だが、どこか吹っ切れたような表情で、マイクに向かって絶叫する。

 

 

 

「……キマイラ隊のエース、ジョニー・ライデンはッ! 普段から連れていた幼女をキシリア様に差し出せと言われ、それに激昂して反旗を翻しました!」

 

「あの男、かつてから少女を部屋に侍らせていたくせに、“夕飯を一緒に食ってるだけ”とか言ってましたが! そうじゃなかったんです! 我々は許せませんッ! ジオンの名誉を守るため、我々こそが裏切り者を糾弾しますッッ!」

 

 

 

その告発に、会場の空気が一変した。

 

 

 

― ジャンク艦・会議室 ―

 

モニターの映像が切れると同時に、ジョニーの額に青筋が浮かんだ。

 

「……おい、今の何だ」

 

ジャコビアスは笑いを堪えるように肩を揺らす。

 

「芝居だよ、芝居。残った4割には“ジョニーをあえて糾弾することで、自分たちの利用価値を演出しろ”ってな。」

 

エイシアが目をぱちくりさせながら呟く。

 

「えっと……ロリコンの烙印を押されれば、彼らの命が助かる、ってこと?」

 

「おう。それに加えて、もう一つ」

 

ジャコビアスは指を一本立てて言った。

 

「裏では匿名掲示板経由で、“ゼクノヴァはパイロットを殺す兵器だ”って噂も流させた。もしキシリアが残った4割を始末したら――その“噂が本当だった”って証明しちまう。だから簡単には手出しできなくなるわけだ」

 

 

 

ジョニーは頭を抱えた。

 

「……お前、絶対許さんぞ、ジャコビアス」

 

「いいだろ? お前が汚名を背負った分だけ、あいつらの命が延びるってんなら、隊長として本望だろ?」

 

「本望じゃねえよ!!」

 

 

 

しかしその横で、イングリッドがくすりと笑っていた。ジョニーがどれだけ怒っても、本当に仲間が助かるならきっと許すとわかっていたから。

 

エメは苦笑しながら言った。

 

「……あの子たちを守るためなら、これくらいの芝居、安いものよ」

 

ジーメンスが腕を組み、椅子に背を預けながらぽつり。

 

「……まったく、俺たちの隊は――バカと天才と正義感でできてる」

 

そして、誰からともなく小さく笑いが漏れた。

 

その笑いは、確かに不器用な一団が“生きる”ことを選んだ証だった。

 

 

 

――こうして、キマイラ隊の分断工作は完了した。

 

本当に裏切った者と、表向き忠誠を装いながらも仲間を守る者。どちらもまた、「ジョニー・ライデン」という男に影響され、自分の信じる道を選んだのであった。

 

 




☆9評価ありがとうございます! おとそ=アルコールさん タイヤロールさん
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