ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
【場所:サイド7・居住区画・ビダン夫妻の仮設技術オフィス】
機材の唸る音が響く中、設計図とスケジュール表が乱雑に並べられたデスクの前で、フランクリン・ビダンは額に汗をにじませていた。工事現場から戻ったばかりの彼は、椅子に倒れ込むように腰を下ろす。
「はぁ……地獄みたいな忙しさだ……」
そんな彼に、手に資料を抱えた妻・ヒルダが声をかけた。
「あなた、テム・レイの作ったアレックスに、あなたがムーバブルフレームで改修したネモで勝ったりしなくてよかったわね」
冗談のようでいて、そこには本音が滲んでいた。
「そうだな……あの頃の俺に、この仕事量は無理だ。今だって、あの天才の設計に食らいついてるだけで精一杯なのに……」
フランクリンはぼやきながらも、目線だけは資料を逃さず追っていた。
ヒルダも隣に腰を下ろし、資料を広げる。
「それでも、最前線でガンダムを運用するための母艦、アーガマ級の建造は順調よ。艦隊全体の指揮の為のアレキサンドリア級の量産も間に合いそう。サラミス改修の方も、何とか予定に追いついたわ」
「ああ。……あれだな、テム・レイがゴップ提督に進言したらしいが……あの《ミナレット》をこっちに送ってくれて、本当に助かった」
フランクリンは目を細めて言った。
「中のデータベースに連邦の新式パーツを入力すれば、ほとんどの設計に対応できるようになった。交換しなきゃならん工作機械も最小限で済む。あの艦は小型艦を建造できる。つまり、大型艦のパーツを造るだけの出力も持っているってことだ」
ヒルダは静かに頷いた。
「しかも、ミナレットには元キマイラ隊の優秀な技術者とパイロットがいる。あの人たちは、ザビ家の命令で機体の実験ばかりさせられてたけど……現場で鍛えられた感覚は本物よ。今のグリーンノアにとって、かけがえのない戦力だわ」
フランクリンは口元を引き締めた。
「……彼らは、ある意味で俺たち以上に“負けられない”ってことなんだろうな。ザビ家が勝てば、彼らは“裏切り者”としてどんな処刑をされるか分からん。だからこそ、あのミナレットを“家”のように扱ってる。あの艦のためなら命も張る」
ヒルダは小さく息を吐き、そしてポケットの端末に届いた通信に目をやった。
「……来たわね。“正式命令”」
「ミナレットを前線の移動工房に改修する、ってやつか?」
ヒルダは静かに頷く。
「ええ。でも、私たちが手を加えるより、まずあの人に話を通すべきよ。あの艦の全てを動かせる2人のうちの1人……」
「――“レッド・ウェイライン”」
フランクリンは少し皮肉っぽく笑った。
「ジョニー・ライデンって言いたくなるが……ま、今はあの名を使ってる以上、礼儀は守るべきだな」
ヒルダもわずかに苦笑しながら立ち上がる。
「……行きましょう。“レッド”に、協力してもらいに」
2人は足並みをそろえて、ミナレットのブリーフィングルームへと向かうのだった。
【場所:プラント船《ミナレット》・ブリーフィングルーム】
格納庫に隣接した技術区画。大型モニターにはミナレット全体の設計図が表示され、その下で、ビダン夫妻と“レッド・ウェイライン”――かつてのジョニー・ライデンが、静かに言葉を交わしていた。
「つまり……連邦からの正式命令で、このプラント艦を“前線での移動工房”として改修する、ってことか?」
レッド・ウェイラインが腕を組みながら尋ねる。言葉の端にわずかな警戒をにじませていた。
「そうだ。君たちにとっては“家”に等しい場所だということは分かっている。だが、こちらとしてもこの艦の生産能力は有用すぎるんだ」
フランクリン・ビダンが真摯な眼差しで答える。
レッドは一拍置き、静かに息を吐いた。
「……問題ないさ。俺たちとしても、連邦に勝ってもらわなきゃ困る。キシリアは土下座しても、俺たちを許すことはないだろうからな」
「……助かるよ。君がそう言ってくれると、作業がだいぶ進めやすい」
フランクリンの顔に安堵の色が浮かぶ。
だが、レッドはすぐに口調を戻した。
「ただし――艦の後方に回して工房に徹するにしても、最初は誤魔化せても、後からはバレる。……このサイズだ、隠しきれるもんじゃない。スラスター周りを守り切るのはキツくなるぞ」
「それも見越して、対空火器の増設と、既存の防衛ビットのアップデートが命じられている」
フランクリンが画面を切り替え、ビットの稼働システムを表示する。
「今のビットの動きは、あくまで旧型システムに準じてる。挙動は正確でも、単純すぎる。エース級が相手なら、スラスターや中枢部へ容易に侵入されてしまう」
「それで、新たにデータを入力する必要があるの」
ヒルダが説明を引き継いだ。
「単一パターンでは見切られるから、複数人の戦闘データを合わせて、ビットの挙動にバリエーションを与えるわ」
その言葉に、同席していたイングリッド・ゼロが、興味深げに首を傾げた。
「それって……誰のデータを使うの?」
フランクリンが、画面を再度切り替えながら答える。
「アムロ・レイ、ゼロ・ムラサメ、リタ・ベルナル――それと、私の息子のカミーユ・ビダン。合わせて4人分の戦闘パターンだ」
「……アムロさんとカミーユのビットは、あたしも見たことあるけど……フォウのは使わないの?」
イングリッドの疑問に、フランクリンは少し苦笑した。
「現在の評価として、“連邦で最もニュータイプ能力が高く、ビット操作に優れた4人”がそのメンツだ。もちろん、フォウ・ムラサメも優秀だが、ビットの運用という点では彼らに一歩譲る」
「……なるほどね」
イングリッドは納得したように頷いた。
「というよりあの4人は本当に規格外でな。他のニュータイプや強化人間にあのレベルの力を求めてはいけない」
そのやり取りを聞いていたレッドが、ふっと口の端を上げて呟いた。
「……贅沢なデータ提供だな。これじゃあ、守りの装備もトップエース仕様だ」
「最前線に置く艦なんだから、それくらいは当然よ」
ヒルダが小さく笑いながら答えると、レッドもまた、静かに頷いた。
「……ああ、こいつを戦場に出すってんなら、相応の装備が必要だ。頼んだぞ、ビダン夫妻」
「ええ、お任せを」
夫妻は同時に答え、その場の空気に、静かな連帯感が漂った。
プラント艦《ミナレット》は、ただの避難船でも、過去の亡霊が集う場所でもない。
ここからまた、新たな“戦場”の要となるために――確かに、動き始めていた。
設計図と部品パーツが散乱したテーブルの前で、フランクリン・ビダンが資料の端末を閉じ、ふとレッド・ウェイラインに視線を向けた。
「……それでだ。もう一つ、本題があってね」
レッドが眉をひそめる。
「本題?」
「――ああ。近々、《アレックス》に代わる新型ガンダムが完成する」
「なっ……!?」
驚きの声を上げたのはユーマ・ライトニングだった。腕を組んだまま身を乗り出す。
「あれが“新型ガンダム”じゃなかったのか!? あの青と白の奴が、“アムロ・レイ用”の決定版だと思ってたんだが……!」
フランクリンは苦笑しながら首を横に振った。
「あれはな、テム・レイが一年戦争の終結後、わずか数ヶ月で組み上げた設計を母体にしてる。もちろん、技術の進化に応じて強化や素材の更新はされてるが、それでも“根本"は旧世代だ」
「……信じられねえ。ゲルググが“おもちゃ”に見えるくらいのネモの上位機だろ。そんな化け物が、もう何年も前の設計だってのか……」
「テム・レイの才能ってやつだな」
フランクリンは、背後のコンソールをタップし、アレックスのシステム構造を表示する。
「バイオセンサーに、サイコ・フレーム。それらを加えて反応速度を極限まで引き上げたのに、暴走もせず、構造疲労も最低限。……整備の手間は跳ね上がったが、設計としては奇跡だよ」
「……その整備が現場の整備士ではキツすぎるそうでな、ジャブローを離れて付きっきりで整備してると聞いたよ」
フランクリンがため息交じりに呟くと、隣でヒルダが軽く肩を竦めた。
「その“現場に向ける優しさ”……こっちにも、ほんの少し回してくれてもいいのにね」
ヒルダの口調には冗談めいた笑みが浮かんでいたが、その目の奥には過労の色が滲んでいた。
「こっちは、アーガマ級の建造、アレキサンドリア級の艦艇管理、サラミス級の改修――まともに寝る暇なんてないのに。ねぇ、あなた?」
「……ほんとにな。昔、テムと技術抗争してた頃の俺が、間違って勝ってたらと思うと、ゾッとするよ。今のこの仕事、あの頃の俺じゃあ絶対に持たなかった」
「……ふふ、まったくね」
2人の間に、わずかに笑いがこぼれた。
だがその笑みの奥では――確かに、戦争と技術の最前線に立つ者たちの覚悟と疲労が、静かに滲んでいた。
ふとフランクリンが、話の流れを戻すように言った。
「それと……実は、アレックスの後にも何機か、完成が見えてきた“新型ガンダムのプロトタイプ”があるんだ」
レッドが目を細める。
「……それって、俺たちが知らされてないってことは、現場に出てないってことか?」
「ああ。出てない。最強の3人――アムロ・レイ、ゼロ・ムラサメ、ヤザン・ゲーブルは、アレックスより強くなってるその新型たちにも、一度は乗ってみたそうなんだがね……」
フランクリンは自嘲気味に肩をすくめた。
「“フル・サイコフレームじゃない機体は、前線では艦の負担になる”……って、アムロやゼロはそう言ってな。あの二人にとっては、非フルサイコ機で出力や反応を上げても、すぐパーツを要求できる基地の近くでないなら上がった戦力に釣り合わないと判断したらしい。だからテストは基地内、現場には慣れたアレックスで出るのが一番だと割り切ってる」
「……ヤザンに関しては少し事情が違っていてね。彼は“オールドタイプ”だからフル・サイコフレームの恩恵は薄いが――それでも、テム・レイが彼に合わせて“マニュアル操作特化型”の新型を設計中らしい」
レッドが小さく目を見開く。「テム・レイが……ヤザンに?」
「ああ。サイコフレームはニュータイプにしか恩恵がないが、バイオセンサーは違う。あれは簡易サイコミュとしてだけじゃなく、操縦支援の補助AIでもある。だからこそ、ヤザンの“獣じみた反応”にも即応できるよう、バイオセンサーのレスポンスを極限まで高めて調整されているそうだ」
フランクリンはそう言って、肩を竦める。
「まだ完成前ではあるが、アムロやゼロの機体以上に高機動になる見込みだ。だが――当然ながら整備と艦側の負担は桁違いになる。だからヤザン本人も“現場で使うにはアレックスで十分”と判断しているらしい」
フランクリンは一息つくと、ちらりと隣のヒルダに目をやった。
「だがまあ、現場で運用しやすいという点じゃ――あの“アレックス”も、負けてはいない」
彼の言葉にヒルダが小さく頷き、皮肉気に笑う。
「……まったく。ネモのくせに、よくアレックスとパーツの共用ができたわね」
「ネモはアレックスと性能差が相当あるのに、な。なのに最初から一部パーツ共用できるように設計されてる。おかげでアレックスは、あれほどの高性能を持ちながらも、現場での部品交換の負担が軽くて済んだ」
「そうね。ネモと共用できない専用パーツだけ搭載しておいて、あとは共用パーツで整備すればいい。整備班からしたら、本当に助かる設計よ」
フランクリンは資料のページを指で送りながら、やや皮肉めいた口調で言った。
「それに比べて……今回完成が近い新型ガンダムのプロトタイプたちは、アレックスよりも性能は高いが、ネモともアレックスともパーツ共用ができない。そのせいで、“3人”には現場運用を嫌がられた。“戦力の上昇に、維持コストが釣り合わない”ってな」
「ちょうどネモも、作られてから時間が経ってたでしょ?」
「それで現場改修で対応可能な《ネモⅡ》への更新が始まったの。そのネモⅡと新型ガンダムはパーツ共用ができるようになってるわ」
フランクリンは腕を組みながら、わずかに肩をすくめた。
「尚更だよ。プロトタイプたちは現場で使うには効率が悪すぎる。ネモⅡが全体に行き渡る頃に新型ガンダムが完成するなら――それまでの間はアレックスで充分だ、ってことになるわけだ」
傍で聞いていたユーマ・ライトニングが、ぽつりと呟いた。
「……アレックスより強くなってるってのに……捨てられてるのか、そいつら」
フランクリンは静かに首を振った。
「捨てられたというか……“合理的に選ばれなかった”だけさ。最強の3人の活躍を心待ちにしてる高官たちも、“本人がそれでいいなら”って割り切ってるよ。……ふふ、これだから“天才の設計”に慣れた連中は……!」
その笑いには、どこか苦味と、技術者としての微かな悔しさが滲んでいた。
「あの人たちが、戦前の連邦にいたような“人任せの腐敗軍人”だったら、俺もゴップ提督に左遷を進言するんだかな」
レッドが眉をひそめた。
「……そうなのか?」
「ああ。だが、彼らは違う。ちゃんと“自分にできること”と、“アムロたちに任せるべきこと”の線引きができてる。だから信頼できるんだ」
ヒルダも小さく頷く。
「ええ。皆、活躍を心待ちにしてると言えば聞こえが悪いけど、手は抜いてないのよ。自分の持ち場で最大限やってる。だからこそ、左遷なんて発想にはならないの。……まあ、これはアムロたちが連邦の中心になってから、“大体の高官”に言えることだけどね」
「ふむ……」
レッドが腕を組み、黙って聞いていると、フランクリンが少しだけ声を和らげて続けた。
「それにな、ゴップ提督もそういう人だよ。自分にできることと、できないことの区別がはっきりしてる。だから、それを見た高官達も提督に倣って働く」
「どういう意味だ?」
「3人は、自分に艦隊指揮なんてできないって自覚してるんだ。だから高官と会ったときは、ちゃんと正直に言う。“パイロットとして全力で戦うが、艦隊の動かし方は分からない。そちらはお願いします”ってな」
「……なるほど。それなら高官側も任せやすいな」
「ああ。下手に背伸びせず、任せるべきところに任せる。……その“素直さ”が、結局のところ、組織の信頼を支えてるんだろうな。一部以前の"檻"関連で過剰にレイ親子を怖がって逆らうな、なんて言ってる連中もいるが無視していいレベルだ」
ヒルダが少し笑いながら締めくくった。
「そうね。レイ親子が自分の権威を盾に横暴するとは思えないし。自分たちの役目を弁えた天才たち……ほんと、頼りがいあるのかないのか、たまに分からなくなるわね」
「そういうところも含めて、うちの現場は今日も大忙しだよ」
そう言って、フランクリンは再び資料端末を開き、次の設計図に目を通し始めた。
いわゆるナラティブみたいなのも一機ずつではあるが作って試してますが、アムロたち用に作ったので他のパイロット達では使えず、アムロ達本人にはネモとパーツ共用出来ないんならいらないと使ってもらえない可哀想な機体達です。
アレックスが優秀すぎたが故に本当の意味で実証試験機となってしまった。
結果としてジャブローの倉庫温め係兼総戦力が壊滅でもしたら引っ張り出される枠です。
アムロ達が新型に乗り換えてもアレックスに休みはありませんけどねー!君たちはまだまだ改修されて使い続けられるのだ。作者のガンダムの好きなデザインはHi-νとアレックスです。青系統のガンダムのカッコよさは異常です。
コズミックイラのストライクは頭部だけになってもまだ修理されて働かされてるんだから5体満足な君たちなら余裕さ!