ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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第三話:《ソドン》奪還:奪われた“宇宙(ソラ)”を取り返す者

戦艦《ソドン》——かつて連邦の誇りだったペガサス級強襲揚陸艦。

 

その巨体が、宇宙(ソラ)にゆっくりと浮かぶ。

 

アムロの視界にその姿が映った瞬間、かつての名が脳裏に蘇る。

 

《ペガサス》。

 

それは、父・テム・レイが最初に夢を託した艦。

ガンダムを初めて戦場に送り出すために建造され、テムのすべてを注ぎ込んだ“希望”だった。

 

だがガンダムを載せる前に、連邦の混乱を突いたジオンの奇襲により、艦はガンダムと共に奪われた。

その日を境に、ペガサスは《ソドン》と名を変え、ジオンの旗を掲げたまま、連邦の若者たちを葬る“象徴”となった。

 

「……ここから始まるはずだった。父さんの……夢が」

 

ビームサーベルが点灯する。

NT-1アレックスの白い手に握られた青白い光刃が、ソドンの艦橋を照らす。

 

「奪われたのは、機体じゃない。希望だ。宇宙そのものだ……」

 

その言葉と共に、アレックスが一閃する。

 

ソドンのメインブリッジが火を噴き、ジオン士官たちの叫びと共に崩壊した。

指揮系統を失い、戦艦は制御不能に陥る。

 

影のように接近していたホワイトベースJr.が、艦尾から牽引ケーブルを展開。

旧ペガサス——《ソドン》は再び、連邦の手に引き戻された。

 

その瞬間、アムロの通信が開く。

誰よりも彼の帰還を待っていた男の声が、かすかに届く。

 

「……奪われたものを、取り返すんだな……アムロ」

 

テム・レイ。

モニター越しにアレックスを見つめる彼の眼には、喜びと誇り、そして深い悲しみが入り混じっていた。

 

かつて、あの日——ガンダムとペガサスをジオンに奪われたあの日、連邦政府は彼を戦犯のように扱った。

「計画は失敗だった」「技術者として失格だ」と、吊るし上げられた。

 

だが、戦争がジオンに敗北してからは手のひらを返し、こう懇願してきた。

「どうか、ジオンに勝てるモビルスーツを作ってくれ」と——。

 

テムはその要請を飲み込んだ。

すべてを失った自分に、残されたのは息子しかいなかったからだ。

 

——そして今、アレックスに乗るアムロが、奪われた希望を一つずつ取り返していく。

 

だがその姿に、テムは確かに感じていた。

 

あれはもう、少年ではない。

 

夢も、未来も、笑顔も捨てた目をしている。

シイコを殺された怒りが、彼を突き動かしている。

連邦の希望などではない。“殺す”ための兵器だ。

それが、息子アムロ・レイの今の姿だった。

 

「……すまないな。アムロ……」

 

父としての悔いは、消えることはなかった。

 

その頃、戦艦《ソドン》の甲板に立ったアムロは、宇宙(ソラ)を見上げていた。

 

まだ、彼の戦いは終わらない。

奪われたのは、艦だけじゃない。

妻シイコの命、子供と過ごすはずだった時間、そして——宇宙そのものが奪われた。

 

「次は……ザビ家だ。戦争を始めた奴らを、この宇宙から消す」

 

その呟きは、誰にも届かない。

ただ一人の男が、宇宙の真ん中で、たった一つの戦いを宣言した。

 

——宇宙(ソラ)を、取り返す。

 

白いアレックスの視線の先には、まだ見ぬジオンの拠点が広がっていた。

 

 

 

《逃走》:壊れたジークアクスと、誓い

 

ジオン軍の通信網が混乱する中、ソドンからわずかに離れた宙域を、一機のスペースグライダーが航行していた。

 

その機体には、深く破損したモビルスーツが載せられている。

ジークアクス——マチュの愛機。白い手足はもはや形を成さず、頭部も砕けていた。

 

機体に寄り添うように座る少女——マチュは、目を閉じていた。

 

「マチュ! もう少しで連邦の捜索宙域を抜ける!」

 

パイロット席からニャアンの声が響く。

三人で賞金を出し合って買ったこのグライダーは、あの戦場から彼女たちを救い出す最後の頼りだった。

 

「……シュウジは……」

 

震える声が漏れる。

 

「助けに行くって……言ってたのに……」

 

「マチュ……」

 

ニャアンは声を詰まらせる。

彼女は見ていた。赤いガンダムが、マチュのジークアクスを庇って盾になる瞬間を。

 

「ごめん。助けられなかった……」

 

「……違う。助けられたんだよ」

 

マチュはうっすらと目を開けた。

 

「最後まで、シュウジは私を“マブ”として見てくれた……でも——」

 

彼女の声が、苦しげに震える。

 

「なのに、あの男は……アムロ・レイは、すべてを壊した……!」

 

その目に宿るのは、静かな怒りだった。

 

「連邦は、希望なんかじゃない。宇宙を奪って、私たちの仲間を殺して、正義のふりをしてるだけ……。

そしてアムロは、その象徴だ。白いMSに乗った、“殺すための英雄”。」

 

ニャアンが息を呑む。

 

「私は……許さない。あの男も、連邦も。

この宇宙(ソラ)を、本当に壊したのはどっちか——私が見せてやる」

 

スペースグライダーは、破損したジークアクスを積んだまま、戦火の宙域から静かに離脱していった。

 

その先にあるのは、逃走か、あるいは再起か。

 

だが少女はまだ、胸の奥に“戦う理由”を灯していた。

 

——彼女の視線は遠く、アムロ・レイの背後に広がる“連邦”を見据えていた。




人妻子持ちエースパイロットのシイコさんの最後の回想で出てきた夫がアムロだったらという思いつきで書き切りました。
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