ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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第5話

格納庫のパイロット休憩室。

金属質な空気の漂うその部屋で、テム・レイはモニターのリモコンを操作し、壁掛けのスクリーンに映像を映し出した。サイド6のテレビ中継――マスコミの取材艦が、戦場の模様を逐一カメラに収めている。

 

マチュとニャアンはソファに腰を下ろし、緊張で強張った表情のまま映像を見つめていた。後ろには、ダグザとコンロイが控えている。銃口こそ下ろしていたが、その距離は近く、二人が何かすればすぐに制圧できる配置だった。

 

スクリーンの中では、シイコのアレックスが映っていた。

性能は傍目にも明らか――ゲルググやプロトタイプ・キュベレイを圧倒している。しかし、ジオン兵たちは狂気じみた戦法を取っていた。一機が突撃してシイコの動きを止め、その味方ごと後方から複数で撃ち抜く。捨て身に近い連携のため、アレックスといえど勝ちきれないでいた。

 

「なっ……味方ごと撃つの!?」ニャアンが顔をしかめる。

 

テムは眉ひとつ動かさず、低く応じた。

「合理的だ。普通に挑めば、彼女ひとりに狩られるだけだからね。おそらく彼らは……失敗すれば処分される恐怖で、死を恐れる感覚を失っているのだろう」

 

マチュは唇を噛みながら呟いた。

「でも……」

 

「どうしたんだい?」テムが視線を向ける。

 

「シイコさん……なんか、観察してる? 余裕があるっていうか……悩んでるのかな?」

 

テムの目が驚きに細められる。

「……驚いたな。君もそうなのか。いや……そうだな。彼女は悩んでいるんだろう」

 

映像の中、シイコのアレックスが動きを変えた。インコムを大きく繰り出し、敵機の懐に踏み込むように射撃を放つ。

 

「えっ、あんなに有線を伸ばしたら……!」ニャアンが思わず叫ぶ。

 

次の瞬間、ゲルググのビームサーベルが振るわれ、インコムのワイヤーが断ち切られた。

 

「ああっ!?」

 

しかしテムは薄く笑みを浮かべた。

「……そうか。ようやく使うのか、シイコ君。長かったな」

 

切り離されたインコムの砲身が、まるで意思を持つように宙を滑り、光を放った。

 

「ワイヤーじゃない……あれって……ビット?」マチュが息を呑む。

 

「そうだ」テムは静かに頷いた。「インコムにもビットにも切り替えられるように作った。彼女が……いつでもニュータイプとして戦えるようにな」

 

ビットとなったインコムが解き放たれた瞬間、戦場の様相は一変した。

放たれる光の矢が敵の死角を次々と撃ち抜き、プロトタイプ・キュベレイが次々と沈んでいく。圧倒的な速度と精度――それは、アレックスとシイコ・レイが本来持つ「格」の顕現だった。

 

気づけば敵は、瞬く間に六機を失い、残るはゲルググ一機とプロトタイプ・キュベレイ一機のみ。

 

「これが……あの人の力……」

ニャアンは声を震わせ、ただスクリーンに映る光景を見つめるしかなかった。

 

――勝敗は、既に決していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指揮官視点

 

うまくいったと思った。

シイコ・レイの操るアレックスは確かに強い。だが一機にすぎない。こちらには七機のプロトタイプ・キュベレイと、自分の駆るカスタム・ゲルググがある。腕で負けても、数と特攻じみた作戦を織り交ぜれば追い詰められる――そう確信していた。

 

プロトタイプ・キュベレイがシイコ機へ迫る。ビームサーベルが届かぬ間合いで両腕のメガ粒子砲を撃ち込む。背後からは、当たっても構わんとばかりに別のキュベレイが光の奔流を浴びせた。

 

光の渦の中で、アレックスは必死に回避している――そう見えた。シールドを傾け、スラスターを噴かし、押し寄せる火線に翻弄される様子に、手応えを覚えた。

 

勝ち筋はある。そう信じた。

 

そして、決定的な瞬間が訪れる。

シイコのアレックスがインコムを伸ばした。ワイヤーを垂れ流すように前方へ放った姿に、指揮官は嘲笑した。

 

「悪あがきだ!」

 

ゲルググのビームサーベルを振るい、ワイヤーを切断する。端末は沈黙したはずだった。

だが次の瞬間――切り離されたはずの端末が、独りでに宙を舞い、光を放った。

 

「なっ――!?」

 

プロトタイプ・キュベレイが撃ち抜かれ、火花と炎に呑まれる。

それはインコムではなかった。ビットだったのだ。

 

そこから戦況は崩壊した。

アレックスは舞う。ビットが光の矢を放ち、敵の死角を撃ち抜く。腕のワイヤーで自らを急加速させ、ビームサーベルで機体を両断する。逆に敵を引き寄せ、盾にし、爆散する前に別の機体へ叩きつける。二機がまとめて炎に包まれた。

 

恐怖が広がる。数の優位は瞬く間に瓦解し、残ったのは自分のゲルググと――NT-001と呼ばれる実験体が乗る最後のプロトタイプ・キュベレイのみ。

 

「こうなったら……NT-001!敵に突っ込め!」

 

「一機では迎撃されるだけだと思いますが?」

 

「接近さえすればやりようはある!行け!」

 

「……了解」

 

最後のキュベレイが突撃する。

指揮官は冷酷にほくそ笑む。

 

(行け……!十分に近づいたら自爆装置を作動させる。悪いな、NT-001。お前は所詮、ボロ雑巾のように捨てられる運命なんだよ!)

 

勝利を確信した刹那。

モニターを貫く閃光が走り、視界が赤に染まった。

 

「――え?」

 

ビームライフルの光条が、ゲルググのコクピットを正確に撃ち抜いていた。

最期の思考は、理解不能のまま途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アムロ&シイコ視点

 

「――間に合ってよかった」

通信にアムロの声が割り込む。狙撃地点から放たれたビームライフルの光が、正確に指揮官のゲルググのコクピットを貫いていた。

 

「シイコ、こっちのゲルググは落とした。あのファンネルを使う機体は――」

 

「はいはい、分かってるわよ。鹵獲するから」

 

シイコのアレックスは二本のビームサーベルを構え、突撃してくる最後のプロトタイプ・キュベレイを迎え撃つ。敵の火線をビットが弾き、刃が閃光のように舞った。

瞬く間に、キュベレイの四肢が切り離され、無力な塊となって宙を漂う。

 

シイコが通信を繋ぐ。

「それで? あなたの指揮官は死んだけど……投降する気はある?」

 

プロトタイプ・キュベレイのコクピットから少女の声が震えながら返る。

「私は……殺されるの?」

 

「投降した兵にそんなことしないわよ。南極条約を連邦はちゃんと守る。少なくとも私はね」

 

「じゃあ……投降します。どうせ長くはないけど」

 

「……? まあ、詳しいことは艦で聞くわ。あなたの機体は牽引するから、じっとしてて」

 

シイコはアレックスのワイヤーを伸ばし、四肢を失ったキュベレイを固定する。

 

「アムロ、切り離した手脚の回収はお願い」

 

「いや……ワイヤーがついてる君の機体の方が運びやすいだろう?」

 

「私が心中アタックに耐えてる間も、ずっと見てるだけだった人が、荷物持ちすらしてくれないわけ?」

 

「……いや、ほら、本気出したら君だけでも余裕で勝てたじゃないか。僕は指揮官を仕留めただろ?」

 

「してくれないんだ?」

 

短く、しかし圧のある繰り返し。アムロはため息をついた。

「……分かったよ。手脚は俺が拾って艦に持ち帰る。これでいいだろ?」

 

「ん、よろしく。……それから」

 

シイコの声が少しだけ柔らぐ。

「勝手してごめん。……助けに来てくれて、ありがと」

 

そこで通信が切れた。

 

アムロは静かな宇宙を見やりながら、小さく笑みを零す。

「全く……最初から言ってくれればいいのに。無事でよかったよ、シイコ」

 

 




ノア・Tさん誤字報告ありがとうございます!

ソドンクルーの運命は?

  • ジオン星人は皆殺し
  • 生存ルート(あくまでこの戦闘のみ)
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