ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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ソドンクルーの結末を悩みまくってます。助けるとなるとご都合すぎるので読者様方的にどんな感じか聞きたいのでアンケート出します。
連邦入りは流石にさせるつもりはないですが、結果次第でこの話の後ろの内容、変えるかもです。


第6話

【サイド6外宙域/ジオン軍ペガサス級強襲揚陸艦〈ソドン〉】

 

ラシッド中佐は、灰色の艦橋に響く機器音を聞きながら、そっとため息を漏らした。

(――いつから、私の艦長人生はこんなに不穏になったんだか)

 

一年戦争の終結後、ソドンを任されたときはまだ誇りがあった。

ジオン軍に現存する唯一のペガサス級――それを任されたというだけで、軍人としての矜持を感じていた。

だが、それも“あの人”が現れたときまでだった。

 

(シャリア・ブル中佐。あのジオン最強のニュータイプが、“赤い彗星”を探すための足にされた頃からか……)

 

彼女は小さく首を振る。いや、その頃はただの特殊任務でしかなかった。

サイド6、イズマコロニーで“ジークアクス”という未知のガンダムを一女子民間人に奪われ、――自分の艦は、すでに地獄の階段を下っていた。

 

軍警に拘束された部下、エグザベ・オリベ少尉を取り戻すために、ソドンで中立コロニーにまで踏み込むなど――あの時点で、ラシッドは自分のキャリアが終わったと悟っていた。

 

(それでもまだ、あの時はマシだったな。今じゃ……)

 

ディスプレイの一角に表示される任務文書を睨む。

“総帥府直轄命令。強化人間部隊サポート任務”

その横には、見慣れたサイン――ギレン・ザビ。

 

(総帥命令……本当に、ね? どう見てもキシリア様の匂いしかしないじゃないか)

 

胸の奥に黒いものが渦巻く。

 

「艦長、ため息ばっかりついてたら老けますよ?」

柔らかな声に振り向くと、副官のコモリ・ハーコート少尉が、控えめに笑って立っていた。肩まで伸びた黒髪と、泣きぼくろが印象的な女だ。

 

「老ける暇もないさ。次に死ぬのがいつか、賭けてるような艦なんだから」

皮肉を返しつつ、ラシッドは隣で端末を覗く青年士官に目を向けた。

 

「――エグザベ少尉、顔色が悪いぞ」

 

フラナガン・スクール主席卒業の若きエース、エグザベ・オリベはこめかみを押さえながら端末を見つめていた。

「大丈夫です、艦長。ただ……作戦前に渡された“部下のリスト”を見ていて、少し気分が悪くなりまして」

 

コモリが覗き込む。

「セリーヌ・ロムの強化人間部隊……って、噂では“重犯罪者を素体に使ってる”って」

 

「噂じゃない、本当さ」エグザベは短く息を吐いた。「――コモリ少尉、絶対にあいつらの前に1人で近づくな。何されるか分からない」

 

コモリは一瞬たじろぐが、すぐに頬を赤らめて微笑んだ。

「う、うん……ありがとう。心配してくれてるのね」

 

エグザベは視線を逸らした。だがその瞬間――

「おーい、ここがブリッジかよ? なかなか面白いじゃねえの」

 

金属の扉が開き、重い靴音が響く。

五人の強化人間たちがずかずかと艦橋へと入ってきた。彼らの制服はジオンのものだが、その目の奥には、軍人にはない歪な光が宿っている。

 

ラシッドの声が鋭く飛ぶ。

「お前たちにブリッジ入室の許可を出した覚えはない」

 

「そんな冷たいこと言うなよ、艦長さん。俺たち同じジオンの仲間だろ?」

一人が下卑た笑みを浮かべ、ラシッドの全身を舐めるように眺めた。

 

「そうそう、これから連邦のガンダムをぶっ倒すんだ。仲良くやろうぜ?」

 

コモリに目を向けた別の強化人間が、にやにやと笑う。

「へぇ〜、お嬢ちゃん少尉かよ。エリートさんだな〜仲良くしようぜ」

 

「仲良くしたいなら、相手が違う。――お前たちの指揮官は僕だ」

 

「知ってますよ、フラナガンスクール主席様」

「ああ、ぬくぬくと安全地帯で過ごしてきた坊ちゃんだ」

「新型を盗まれても、顔がいいから罰もねえんだろ?」

 

低い笑い声が艦橋に広がる。

 

「……何だと?」エグザベの拳が震えた。

 

強化人間たちはそれを面白がるように口々に続けた。

「最新鋭機を受け取りながらサイコミュも起動できず、五年前の赤いガンダムに負けて」

「女子高生に新型を奪われて、挙句軍警に捕まって」

「で、助けてもらうためにこの艦がサイド6に突っ込んだんだろ? いやあ、エリートってのは手厚いねえ!」

 

ブリッジに冷たい空気が流れる。エグザベは俯き、拳を握りしめた。

「……言いたいことは、それで終わりか?」

 

その体がわずかに震えた瞬間、隣からコモリの手が掴む。

「ダメ、エグザベ君……!」

 

次の瞬間、ラシッドの怒声が響く。

「いい加減にしろ! パイロットならシミュレーターで語れ! ブリッジで暴れるな!!」

 

強化人間の一人がニヤリと笑う。

「これは失礼。作戦後、主席様にご指導願いたくてね」

彼らは皮肉を残し、ゆっくりと去っていった。

 

静まり返る艦橋。

コモリはへたり込み、まだエグザベの手を握っている。

 

「コモリ少尉、助かった」

 

「……ありがとう。でも、艦長がいなかったら私たち危なかったです」

 

ラシッドは苛立ちを隠さず吐き捨てた。

「だからあんな連中、艦に入れたくなかったんだ!」

 

若い通信士のセファ伍長が顔を上げる。

「拒否できなかったんですか?」

 

「できるもんか。命令書には“総帥府直属”ってあったんだ。ギレン総帥に逆らって無事でいられると思うか?」

 

オシロ少尉が渋い顔をする。

「ジークアクスが奪取されたことや、サイド6への侵入もバレてるって事ですよね……?」

 

「その通りだ」

ラシッドは苦笑を浮かべた。

「この任務で結果を出せなきゃ、マ・クベ中将の軍法会議行きだ」

 

モニターの艦外映像には、ソドンの緑色の船体が、ゆっくりとサイド6の外縁を離れ、暗い宇宙へと進んでいく姿が映っていた。

 

(――このままじゃ、ほんとに終わるな)

 

ラシッドの呟きが、誰に聞こえることもなく艦橋に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【宙域:サイド6外縁・航行中 ジオン軍ペガサス級〈ソドン〉】

 

艦体を包むスラスターの光が、夜の宇宙に尾を引いていた。

サイド6の領域を離れた〈ソドン〉は、ギュネイ・ガスの部隊と合流するため、指定された宙域へと静かに進んでいた。

外観は連邦のペガサス級そのまま――だが、塗装は深い軍緑。

かつて地球連邦の象徴だった白い船は、いまやジオン残党の牙城となっていた。

 

ブリッジには張り詰めた空気が漂う。

ラシッド中佐は肘掛けに腕を置き、虚空を睨みつけていた。

 

「……まったく、こんな航海、何度目だか」

小さく吐いた呟きに、誰も返さない。

緊張の糸が艦の隅々まで張り巡らされていた。

 

モニターの前で、コモリ・ハーコート少尉が通信状況を確認している。

「艦長、この先に合流予定の強化人間部隊があります。距離は……あと一時間弱」

 

「ギュネイ・ガス中尉の部隊か。なるほど、厄介な連中と行動を共にするわけだ」

ラシッドの声には皮肉が滲んでいた。

 

すぐ横で、エグザベ・オリベ少尉が端末に目を落としていた。

「そのはずです。ギュネイ中尉率いる16機の部隊。任務は――“連邦のアムロ・レイを討つこと”。」

その声音はどこか沈んでいた。

(……いくらなんでも、やり方が汚すぎる)

 

彼は思う。

休暇中のアムロの妻を人質にし、戦闘に引きずり出す――そんな作戦、戦争の規律を踏みにじる暴挙だ。

(もし連邦が同じ手を使ってきたらどうする? 報復が報復を呼び、泥沼になる……。ギレン総帥は、本当にこれを承知しているのか?)

 

その胸中を打ち消すように、エグザベは小さく頭を振った。

(……いや、キシリア様がいれば何とかしてくれる。彼女ならきっと――)

 

だが、彼は知らない。

その“ギレン総帥命令”こそが、キシリア・ザビが自らの利益のために偽造したものだということを。

彼女がアレックスを求め、兄の名を騙り、罪を他者に押し付ける卑怯な策を弄していることを――。

その傲慢の果てに、〈ソドン〉が破滅へと向かっていることを、まだ誰も知らなかった。

 

「16機もいるなら、加勢に行く必要あるの?」コモリが小さく呟く。

「一応、“念のため”ってやつだよ」エグザベは曖昧に返した。

(……本当は違う。極秘命令書には、こう書かれていた。“アレックスを一機鹵獲後、残存戦力を撃滅。可能なら連邦艦を奪取せよ”――と)

 

ラシッドはその横顔を横目で見て、内心でため息を吐いた。

(……あの顔。何か隠してるな。まったく、開戦当初を思い出す後ろ暗さだ。こういう時に限って、中佐は別任務で留守とは……。頼りたい時ほどいない)

 

その時――。

「艦長!」通信士セファ伍長が、叫ぶ。

短い金髪が揺れ、緊急アラートが艦橋を染めた。

「レーダーに反応! 本艦と酷似した出力です!」

 

「……ペガサス級、だと?」

ラシッドの眉が動く。

「連邦はまだあのクラスを製造してたか。羨ましい懐具合だね……。――味方のモビルスーツ部隊は!? ギュネイ・ガスの反応は!?」

 

「ありません!」セファが叫ぶ。「反応が消失しています!」

 

操舵席のタンギ・マルコス曹長――色黒の巨漢が首を振る。

「……殲滅されていますね、艦長」

 

「役立たずどもめ!」

ラシッドの拳が肘掛けを叩く。「エグザベ少尉! モビルスーツ隊を出せ! ――奴らの手綱を緩めるな! いざとなったら……」

 

「はい!」

エグザベは立ち上がり、コモリの視線を振り切って走り出す。

 

「艦長、ノーマルスーツの着用を!」

オシロ少尉が呼びかけるが、ラシッドは首を振った。

「そんな暇あるか! ――全艦、戦闘配置! 敵はペガサス級だ! 油断するな!!」

 

警報が赤く点滅し、〈ソドン〉の全砲門が回転を始める。

 

彼女の直感が警鐘を鳴らしていた。

“ここで自分たちは終わる”――と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦の外壁を滑る微かな光の波が、静かな緊張を滲ませていた。

ギュネイ・ガスとの戦闘宙域から少し離れたこの場所に、ホワイトベースJr.は浮かんでいる。

アムロはすでに出撃し、シイコの救出に向かった。

残された艦には、カミーユ・ビダンとゼロ・ムラサメの2機のアレックス、

そしてドゥーとフォウの姉妹機、さらにネモⅡ2機の護衛部隊が控えていた。

 

格納庫の空気はひどく張り詰めていた。

マチュとニャアン、そして傷ついたシュウジを艦に収容したゼロとカミーユは、

再びコクピットに乗り込み、機体のハッチを閉じる。

 

「……さて」

ゼロ・ムラサメの声が無線に乗る。

「あのよくわからない3人もひと段落ついて、

 あとは艦の防衛と、アムロさんの援護に分かれて動くか」

 

「ですね」

カミーユが軽く息を整える。

「じゃあ俺が……と言いたいところですが、敵みたいですよ?」

 

「何?」

 

緑色に塗り替えられた巨大艦影が、宇宙の闇から浮かび上がっていた。

艦体形状、推進部構造、艦首カタパルトの形――見覚えがある。

まるで、記憶の底から悪夢が蘇るようだった。

 

ゼロが呟く。「あれは……ホワイトベース、だと?」

 

「いえ――今は“ソドン”と呼ばれてるみたいですよ」

カミーユの声が冷たくなる。

「赤い彗星が連邦から奪い、ジオンが誇らしげに掲げた、あの“裏切りの艦”です」

 

2人の目が変わった。

ゼロの声から感情が消え、氷のような静寂だけが残る。

「ホワイトベース……この名を汚した艦か」

 

ホワイトベースJr.――連邦が再建した新たな白き艦。

“かつての希望を取り戻すため”という願いを込め、その名を授けられた艦。

だが今、元祖ホワイトベースを汚したソドンと、継承艦ホワイトベースJr.が、

宇宙の闇の中で対峙していた。

 

カミーユが低く息を吐く。

「……アムロさんには見せたくない光景ですね」

 

「同感だ」

ゼロの言葉は氷の刃のようだった。

「アムロさんやテム・レイ博士から全てを奪った男が使っていた艦、それを我が物顔で乗り回すジオンども。あの2人が今、あの艦を見たとしても崩れるとは思わない。

 でも許せないんだよ。艦は取り戻す、だが乗っている連中は」

 

カミーユが頷く。

「そうですね。俺たちの艦にはエコーズが2個小隊も乗っているんです。彼らにも仕事をしてもらいましょう……」

 

「それはいいな。なら早速艦の方に……」

 

それはもはや“命令”ではなく、“裁き”のような響きだった。

 

――尊敬する先輩から多くのものを奪った“赤い彗星”。

その亡霊はもう乗っていない。だが、彼らの中で燃え上がった憎悪は、今も色褪せてはいなかった。

 

ゼロとカミーユの中にあるのは、もはや戦術的な判断ではない。

心の底から、理屈抜きに「全てを消し去りたい」という純粋な破壊衝動だった。

 

ソドンに乗るクルーが何者であろうと関係ない。

彼らは“赤い彗星の遺産”という罪を背負っている――そう思い込むことでしか、怒りを抑えられなかった。

 

「ストップだよ、ゼロ」

 

冷たい闇の中に、柔らかな光が差し込んだ。

ドゥー・ムラサメのアレックスが、ゼロの肩を掴んでいた。

紫の瞳孔を持つ彼女の眼差しは、まっすぐで、優しいが決して折れない強さを宿している。

 

「……ドゥー?」

 

「それと、カミーユもね」

フォウ・ムラサメのアレックスが前に出る。

その声は幼いが、どこか大人びていた。

 

その瞬間、4人のニュータイプ能力者の間で感応が生じた。

電磁ノイズではない。思念の共鳴だ。

時間がゆっくりと流れ、周囲の光が遠ざかる。

意識が、無限の白い空間へと滑り込んだ。

 

 

ニュータイプの世界。

4人の姿がそこに立っていた。

言葉を交わすまでもなく、思考が互いの胸を打つ。

 

(……ドゥー、だが俺たちは)

 

(わかってる。僕だって、ジオンには言いたいことが山ほどある。

 シイコさんを人質に取ったり、アムロさんを拘束して電撃を流したり……。

 正直言って、バスクの研究所時代に聞いた“ジオン星人は皆殺しにした方がいい”って言葉、否定しづらくなってきた)

 

(なら、話は早いだろ! あいつらのやったことは許されない!)

 

(でも……私たちは違うでしょ?)

 

(……)

 

(バスクたちと、同じことをしてどうするの?

 私たちは復讐のためにここにいるんじゃない。

 ザビ家の独裁を止めて、人類の虐殺を止めるために来たんだよ?

 今のままじゃ、また同じことを繰り返すだけ)

 

(そう。僕たちは“終わらせるため”にここにいる。アムロさんが殺される可能性なんて今まで考えたこともなかったから揺れるのもわかるけど、それでもジオンと同じになっちゃ駄目だよ

 だから、落ち着いて。ね、ゼロ)

 

その言葉に、ゼロとカミーユはようやく気づく。

なぜ自分たちが、あれほど自然に“皆殺し”を決断できたのか。

 

――アムロ・レイが死ぬかもしれない。

その可能性が頭をよぎった瞬間、彼らの中で“ジオンを殲滅する”という強迫観念が生まれていた。

 

それほどまでに、アムロという存在は重かった。

彼は“勝つ”ことが前提の人間。敗北を想像することすら、彼らにとっては禁忌だった。

 

模擬戦でこそヤザン・ゲーブルが勝つこともある。

だが、実戦で――殺し合いの中で――アムロ・レイが誰かに負けるなど、考えたことすらなかった。

その“不可能”が揺らいだだけで、彼らの心は均衡を崩したのだ。

 

時間が止まったように静まり返る。

ゼロは拳を握り、深く息を吐いた。

 

(……悪い、ドゥー)

 

(いいよ。昔のゼロってあんな感じだって知れたし)

 

(フォウも。ありがとう)

 

(ふふ、わかればいいの)

 

4人の間に、わずかな温もりが戻る。

思念の世界が溶け、再び現実の宇宙が視界に戻った。

 

 

アレックスのモニターに、ゆっくりとソドンの艦影が近づく。

怒りではなく、決意の光が彼の瞳に宿る。

 

「……艦を奪還する。殺すためじゃない。終わらせるために」

 

「了解。フォウ、ドゥー、行こう」

 

そして――ホワイトベースJr.のカタパルトが開く。

彼らの戦いが、再び始まろうとしていた。

 




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