ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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アンケートに投票してくれた読者様方ありがとうございます。
多少ご都合ですが、これぐらいしか腕利きの戦艦クルーを殺さない理由が思いつかないのでお許しを。


第7話

【サイド6外縁宙域/ソドン艦隊 vs ホワイトベースJr部隊】

 

 宙域に点在する残骸の影を縫い、6機のジオンモビルスーツが広がる。

 その中央を行くのは、エグザベ・オリベの純白の機体――エグザベ専用ギャン。

 その周囲を守るように、5機のプロトタイプ・キュベレイが隊形を取っていた。

 

 「――敵影、4。識別コード、RXナンバー……ガンダム系だ!」

 「ふん、上等じゃねえか。連邦の白い悪魔どもを沈めたら、俺らの名前も上がる!」

 

 通信が弾む。強化人間たちの声には興奮と狂気が混じっていた。

 

 「おい、お前ら。あの二機、女パイロットだぜ」

 「は? 本当か?」

 「サイコミュで拾った。あの感応波、間違いねえ。女特有の脳波パターンだ」

 「マジかよ! こりゃ鹵獲したら“好きにしていい”よな、主席様よぅ!」

 

 エグザベはコクピットの中で歯を食いしばる。

 (……本当に、救いようのない連中だ。これが軍人か? ただの人間の屑だ)

 

 「……お前たちの主人に頼むんだな」

 エグザベの声は低かった。

 (キシリア様ならそんな真似、許すはずがない……)

 

 「分かってる、分かってる! “尋問”するだけさ、へへっ」

 強化人間たちは嘲るように笑いながら、推進を上げた。

 

 

【交戦開始】

 

 「来るぞ!」

 ゼロ・ムラサメの声が無線に響く。

 

 ソドン隊の5機が一斉に展開、ビームの雨を撒き散らした。

 連邦側のアレックス4機――ゼロ、カミーユ、ドゥー、フォウは散開。

 推力を絞り、回避に徹する。

 

 白い残光が宙を走る。アレックスたちはほとんど反撃を行わず、ただ滑るようにかわしていた。

 

 「へっ、奴ら回避に手一杯だぜ!」

 「時間の問題だな! ニュータイプ様も、女も男も関係ねえ、所詮人間だ!」

 

 勝ち誇る強化人間たちの笑い声が通信回線に満ちる。

 

 しかし――エグザベだけは笑っていなかった。

 (おかしい……動きが、鈍くない。反撃が適当すぎる。あれは“避けている”んじゃない、“見ている”……)

 (何を企んでいる?連邦……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【視点変更:ホワイトベースJr/パイロット待機室】

 

 テム・レイ博士がモニターを前に佇み、横のソファにはマチュとニャアン。

 さらに、ダグザ・マックールとコンロイ・ハーゲンセンの代理として派遣された、エコーズの女性隊員2名が立っていた。

 彼女たちはつい先ほどまで、マチュとニャアンのボディチェックを別室で終え、監視に戻っていた。

不審な持ち物が無かったので彼女達の監視レベルが1段階下がり飲み物と持っていたハロの携帯が許されていた。

 

「これ……ソドン!? サイド6から出てきたの?」

 

「みたいだね。敵は6機……こっちはガンダムタイプが4機? あの、艦の中の緑の機体は出ないんですか?」

 

 「ネモⅡのことかい?」

 「問題ないよ。アレックス4機を前に、ジオンのモビルスーツ6機じゃあ少なすぎる」

 

「そうなんですか……(そんなに技術差があるのか)」

 

「それで? 私たちのボディチェックを女性隊員に任せて、見張りを交代した――あの暗殺専門の特殊部隊みたいな2人は?」

 

 「あまりダグザ中佐と揉めないでくれよ? 君たちの身元と目的が分かったからね。武器も持っていないから元の仕事に戻ったんだよ。というか君がマチュなんて名乗らずにアマテ・ユズリハとちゃんと名乗ってくれればあそこまで警戒されることもなかったんだが?」

 

 マチュが眉をひそめる。

 「……クラバで身バレは厳禁だったんだから仕方ないじゃん」

 

 テムレイは答えず、モニターを指差した。

 そこには、宙を縫うアレックス4機の姿。

 その動きが――突然、変わった。

 

 「……4機の動きが変わった!」

 

 「おや? 実戦データ収集は終わったらしいね。なら私も整備区画に行くとしよう。彼らが戻ってきた時のためにね」

 

 その声音は穏やかだったが、背後に潜む冷たい理性は隠しようもなかった。

 “戦闘データの収集”――つまり、彼らは今まで、戦ってすらいなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静寂の宇宙が、光の奔流で裂けた。

 

 4機のアレックスが一斉に加速――。

 これまで防御に徹していた白い影たちは、一転して獣のように宙を駆ける。

 

 「なっ……!? 動きが――!」

 「速い!? いや、さっきまでの倍どころじゃねぇ!!」

 

 プロトタイプ・キュベレイのパイロット達が悲鳴を上げる間もなく、光の線が幾筋も交錯した。

 アレックスの背部と腰部から、粒子を散らす六機のビットが射出される。

 制御波が空間を震わせ、ビームが乱舞する。

 

 「――あれが……ビット!? 嘘だろ、ニュータイプじゃなきゃ動かせないはずだ!!」

 

「いいや!ニュータイプだろうがセリーヌに植え付けられた俺たちの力ならこんな簡単に負けるはずが!」

 

 ジオンの強化人間たちは即座にサイコミュを起動。

 プロトタイプ・キュベレイのファンネルを展開するが――。

 

 その反応速度が、まるで違った。

 

 アレックスのビット群は、狙い澄ました動きで敵の射線の間を滑り抜け、わずか0.4秒の遅延でプロトタイプ・キュベレイの本体を撃ち抜いていた。

 一機、胴体を貫かれて爆散。

 次の瞬間には、もう一機の頭部センサーを正確に撃ち抜いていた。

 

 「な、何だこいつら――ビットの精度が、桁違いだッ!!」

 

 ドゥーのアレックスが前進。

 紫の残光が閃き、右腕のガトリング砲が火を噴く。

 強化人間の1機が必死にビームサーベルで防御するが、砲弾の雨がシールドを削り取っていく。

 爆光。機体の片腕が弾け飛んだ。

 

 「1機撃破!」フォウの声が重なる。

 フォウのビットが死角から迂回し、敵機の脚部スラスターを正確に切断――。

 推進制御を失ったキュベレイが宙を回転しながら炎を上げる。

 

 「……やはり違う。彼らのファンネルは命令待ちの“遠隔兵器”。」

 ゼロの声は冷静だった。

 「だが俺たちのビットは“もう一つの自分”だ。思考と同時に動く」

 

 「そんなことが……」ジオン側のパイロットが息を呑む間に、カミーユのビットが縦横に閃光を描いた。

 軌道を交差させ、敵ファンネルを一つ残らず迎撃。

 火花と爆散する光の中、カミーユのアレックスが姿を現す。

 

 「ジオンのサイコミュ……遅れてるな」

 カミーユが呟く。ビーム・ライフルを構え、撃ち抜く。

 光が一直線に敵機のコクピットを貫いた。

 

 残る敵は、2機。

 だが恐怖で動けない。ファンネルを飛ばすが、制御が乱れて自分の弾幕に巻き込まれた。

 

 「う、うわああっ!!」

 ドゥーのビットが残骸を切り裂き、完全に沈黙させた。

 

 

 その光景を見ていたエグザベ・オリベは、震える手でハクジのグリップを握りしめた。

 

 (……何だ、これは。ジオンの方が先にサイコミュを完成させたはずだ! それなのに、何故だ!!)

 

 通信を切り、独り言のように呟く。

 「なぜ連邦が――これほどのサイコミュシステムを……!? 我々が血を流して築いた技術を……!」

(僕がジークアクスのオメガサイコミュを動かせていれば!)

 

 怒りと絶望が入り混じる声。

 しかし答える者はいない。

 宙域には、わずか数分で沈黙した5機の残骸が漂っていた。

 

 「敵MS、全滅確認。残るは一機――ギャンタイプだ」

 

 「……あれが指揮官機?」

 「そうだな。さっきまであいつの部下だった奴らが、今はもう……」

 

 「終わらせよう。彼にも、戦場の現実を教える」

 

 4機のアレックスがゆっくりと陣形を組み、エグザベ専用ギャンへと進む。

 光の輪が広がり、ビットの群れが宙を漂う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白い閃光がソドンの艦体を撫で、残骸の雨がゆっくりと散った。

アレックス四機の一撃は容赦がなかった。主砲の旋回軸が焼き切れ、砲身が垂れ下がる。副砲の砲塔は装甲をえぐられ、回転停止。ミサイル発射菅の格納部は内部で裂け、発射管群が無力にぶら下がった。

 

「主砲、副砲に続いてミサイル発射管も全滅しました!」

通信士セファの声が艦橋にこだました。緊張と諦観が混じる。

 

ラシッドはモニターの映像を噛みしめるように見据えた。

「ちっ! ご丁寧に武装を全て破壊してくれやがって。鹵獲し返す気か? 意趣返しでもされてる気分だな!」

 

コモリがすぐに食い下がる。

「この艦を盗んだのは赤い彗星であって、私たちじゃないんですけど!」

 

ラシッドは冷たく笑っただけで返す。

「向こうからしたら同じだろ。」

 

その言葉に、ブリッジの空気が一気に重くなる。

誰もが――思い出していた。

 

この〈ソドン〉が、かつて連邦の誇るペガサス級〈ホワイトベース〉だったことを。

赤い彗星――シャア・アズナブルが強襲し、艦長以下のクルーを皆殺しにして奪い取ったジオンと連邦にとって運命の分かれ目となったあの日を。

 

その瞬間、艦橋の正面が――影で覆われた。

ソドンのメインブリッジを照らす照明が一瞬で奪われ、視界を覆うのは“白と青の巨影”。

 

「なっ……」

誰かが息を呑む。

 

正面モニターを切り替えるよりも早く、視界いっぱいに“それ”が現れた。

連邦のガンダム――RX-78NT-1 アレックス。その顔部が、ブリッジの透明装甲越しにほとんど数メートル先に迫っていた。

センサーの赤い光が、まるで人間の眼のようにブリッジを覗き込む。

 

「れ……連邦のガンダム……!」

通信士セファが、声を震わせながら呟いた。

 

ブリッジの全員が息を止める。

次の瞬間、艦が沈黙に包まれる――。

まるで、死神が覗き込んでいるかのようだった。

 

誰もが、次の瞬間にビームを撃ち込まれると覚悟した。

だが――違った。

 

アレックスの右手がゆっくりと動いた。

巨大な指がブリッジ前面の装甲を“そっと”撫でるように接触し、

その手のひらから、かすかな共鳴音が伝わってくる。

 

コンソールが一斉に点滅。

艦内通信回線が、外部から強制的に開かれた。

 

『……こちら、民間輸送会社アマラカラ商会の護衛小隊だ』

 

冷たいが、どこか理知的な青年の声。

それは、アレックスのパイロット――ゼロ・ムラサメの声だった。

 

『テロリストの諸君。おとなしく盗品の艦から退艦することを勧める』

 

その言葉が艦内に響いた瞬間、誰もが息を呑んだ。

あまりに静かで、あまりに断定的な“宣告”。

 

セファが思わず叫ぶ。

「な、なにを――!」

 

だが、ラシッド艦長の怒声がすぐに飛んだ。

「セファ! 黙ってろ!」(民間の護衛小隊か。うまい建前を思い付く!)

 

ブリッジに再び沈黙が戻る。

外では、アレックスのセンサーがまだこちらを覗いていた。

光が細く、しかし鋭く、まるで「心を見透かす」かのように。

 

ラシッドは息を吐き、マイクを操作する。

「了解した。総員の退艦に――三十分欲しい」

 

ゼロの声が返る。

『良いだろう。そちらが“妙な気”を起こさなければ、全員の退艦を認める』

 

通信が切れ、艦を静寂が包むがすぐさまオシロが叫ぶ。

 

「艦長! 何で“テロリスト”なんて認めたんですか! 我々は――」

 

ラシッドは鼻で笑った。口調は変わらない、荒っぽくも明快だ。

「分からないのか? 要するにザビ家も連邦もまだ全面戦争する気はない。だからここで戦ったのは一部の暴走か、それ以外の勢力として扱われても良い、切り捨てられる人間しかいないんだよ!」

 

(――まあ向こうは負ける可能性がないから送り出されたんだろうな。戦力の逐次投入は下策だと知ってるが、それにしたって四倍近い差がひっくり返されたらたまったもんじゃない。負けたこっちはどう切り捨てられてもおかしくない)

 

オシロは言葉を失った。

「そんな……」

 

ラシッドは肩をすくめ、皮肉を吐き捨てるように言った。

「大体ジオンだと認めてどうする? 捕虜にしてもらうのか? たとえ本国の命令だったにせよ、サイド6の目と鼻の先で殺し合いしてた厄介者の一人なんだぞ、我々は」

 

サイド6で流れた放送を見た記憶が艦内をよぎる。クランバトルに割り込んだ一団。赤いガンダムとジークアクスを標的にした襲撃。そして、それを止めたシイコ・レイのゲルググが後方から撃たれる映像。あの断片が、市民の目には“ジオンの軍事行動”と映っている。事情の違いなど通用しない。

 

「クランバトルに割り込んだのは私たちとは別部隊です! 無関係じゃないですか!」

 

ラシッドは艦長席の手すりを強く握りしめる。爪が食い込む。屈辱が顔に走る。だが口は冷徹だ。

「向こうはそう思っちゃくれないさ。私たちに残された選択は、武装がなくなったこの艦で玉砕するか、奴らが脱出する私たちを殺さないことを祈って逃げるかだ。テロリスト扱いとはいえ、逃げて良いってんなら逃げるさ」

 

ラシッドは短く息を吐く。どこか諦めたような色もあるが、命令は厳格だ。

「セファー伍長、総員に退艦命令を出せ。ランチの用意だ」

 

「了解」とセファは返す。その命令の響きには、皮肉めいた落ち着きと、最後まで部下を守ろうとする指揮官の矜持が宿っていた。

 

オシロが食い下がる。

「艦長。機密の処分はこちらで――」

 

「やめとけ」ラシッドがすぐに切った。表情には怒りがにじむ。

「‘妙な気’を起こすなと向こうは言ってたろ」

 

オシロは押し黙る。だが、退艦マニュアルを曲げることへの抵抗がまだ残っている。

 

コモリが顔をそむけながら呟く。

「ニュータイプを欺けるならやっても良いと思うけど、みんなが出て自分だけ残ってやったほうがいいよ。今やったらみんな道連れになるから。見なよ」

 

コモリが指差す先、外部モニターには四機のアレックスが冷然とこちらを見据えていた。白い機体は、たった今まで凶暴に動いていた影とは思えないほど静かだ。

 

「向こうはこっちの強化人間部隊を全滅させられるレベルのニュータイプ何だから。私はあの四人を騙せる自信はないよ」コモリの声には、あきらめにも似た現実認識が含まれていた。

 

ラシッドは最後まで艦橋の中央に立ち、顔をゆがめながらも決断を示した。外部の圧力に対してここで“立ち居振る舞い”をするしかない指揮官の冷たさと悲しみが、その姿に宿っていた。




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