ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
【ホワイトベースJr./第3格納庫・技術区画】
油と金属の匂いが充満する整備エリア。
クレーンに吊るされた“白い機体の片腕”――ジークアクスの右腕は、鈍く光を反射していた。
それは本来、ジオンのプロトタイプ・キュベレイに切断され、一時は失われたはずの部品。だがシイコ・レイがそのキュベレイを撃破し、連邦によって回収されたのだ。
「……しかし、妙な構造をしているな」
テム・レイは溶接装置を止め、手元の装甲板を持ち上げた。
内部の基盤には、通常のサイコミュ回路には存在しない層が幾重にも重なっている。
それはまるで、金属と光が共鳴する“生きた機械”のようだった。
「この反応パターン……電磁共鳴だけじゃない。位相がずれてる。
同一空間上に存在してるはずなのに、別の“波”で動いてる……?」
アムロが隣で眉をひそめる。
「つまり、普通の電力じゃないってことか?」
「いや、それどころじゃない」
テム・レイは顔を上げた。
「このパーツは、“別の世界”から来た物質を媒体にしている。
連邦に亡命してきた元ジオンのニュータイプから聞いた。“ゼクノヴァ現象”というやつだ。
平行世界――向こう側の宇宙から、物質あるいはエネルギーが“流れ込む”現象らしい」
ゼロが小さく息を呑む。
「平行世界……そんな非科学的な話が……」
「だが、現にある。見てみろ、これが“オメガ・サイコミュ”の中核だ」
テム・レイは、切断面から覗く発光体を指差した。
それはわずかに脈動し、淡い緑色の光を放っていた。
「これ……サイコフレームですか?」
「……いや、正確に言うなら、親父達が作った“サイコフレーム”よりは遅れてる。
連邦がサイコフレームを手に入れたのは一年戦争後に、未来で実物と理論を知っていたリタの力による技術的ブレークスルーあってのものだ。
ジオンが一年戦争の時点でこれを手にしてたなんて、ありえないだろ」
テム・レイはゆっくり頷く。
「私もそう思っていた。だが、これは現実だ。
“ゼクノヴァ現象”によって流れ着いたオーパーツが、ジオンの手に渡り、解析された。
奴らは理解できない技術を“再現”した。結果、理論上は不可能なサイコミュが生まれた。
オメガ・サイコミュ……つまり、“向こう側のサイコフレーム”だ」
ゼロは複雑な表情でその光を見つめた。
「……つまり、オカルトと科学の融合、ですか。
ジオンは自分たちの科学で追いつけないものを、“異世界”から奪って利用したと」
テム・レイは短くうなずく。
「だからこそ危険だ。ジオンはいきなりサイコフレームを手に入れているから中間がない。
我々とていきなりサイコフレームを作るのではなく、段階を踏んで進化させてきた。
パイロットへの負担を減らした一世代目のサイコミュ、ビット機能をカットし補助AIを加えた第二世代“バイオセンサー”、
そしてようやく第三世代のサイコフレームに辿り着いた。
ジオンがこれを使うとしても兵器としてしか使えないのも納得だ。連中は本来貯まるはずの技術的蓄積がない」
ゼロは苦笑し、肩をすくめた。
「暴走事故を起こすのも納得ですね。問題は、その暴走を真正面から止めなきゃならない僕らの立場ですが……」
アムロは静かに頷いた。
「……そして、止めるためには、まず理解しなきゃならない。
“どこから来た技術なのか”、そして“なぜ今、ここにあるのか”。」
彼はそう言いながら光を見つめ、わずかに息を吐いた。
「……そう思うと、なんだか笑えてくるな。
平行世界からオーパーツを拾って、戦争に使う。
……この世界は、ずいぶんジオン贔屓でできてるらしいな」
「だが、現実だよ」
テム・レイは立ち上がり、アームを支えるクレーンを操作した。
「オメガ・サイコミュは、我々の想像の外にある“何か”と繋がっている。
もしこの技術が完成したら……人の意志が、“宇宙の向こう”に届くことになるかもしれん」
「届いた先が、敵の心の中じゃなければいいんですがね」
ゼロが肩をすくめた。
アムロは、ただ黙ってジークアクスのオメガサイコミュの放つ光を見つめた。
それは“向こう側の世界”から流れ込んだ異質な輝き。
その色は、アムロがかつてテストしたサイコフレームの光に酷似しているように見えた。
まるで、別の宇宙での“アムロ・レイ”が、そこにいるかのように――。
【ホワイトベースJr./第3格納庫・技術区画】
油と金属の匂いが充満する整備エリア。
その片隅では、テム・レイが腕まくりをしながら、吊り下げられた“白い機体の片腕”――ジークアクスの修理に没頭していた。
その集中した背中を見つめながら、アルレットが両手を腰に当てて息を荒くして戻ってきた。
顔には怒りと安堵が入り混じっている。
「ジオンの新型の修理ですから、本来は指示して後ろで監督する先生が作業してるのには文句ありませんよ? でも、なんか――違和感がありませんか?」
アムロはぽかんとした顔で振り向いた。
「違和感? なにかな、親父、何かあったか?」
「さあ? 特には。ゼロはどうだ?」
ゼロは少し考えてから答える。
「僕もありませんね。あ、でもカミーユが来てませんね。あいつが新型に触らないのは珍しい……」
アルレットはそれを聞いてさらに顔を紅潮させた。
「ちっがいます! あなたたちはパイロットでしょう!? 休憩時間にのんびり格納庫で修理見物してていいんですか!?」
ゼロが慌てて「あっ」と手を上げ、アムロは気まずそうに肩をすくめた。
「つい……な」
アルレットは二人の背中を押して追い出すように言い放つ。
「そんなに暇ならゼロはレイラさんとニャアンさんの見張り役! アムロさんはシイコさんと仲良しでもしてください! なんならお守りでももらってきたらどうですか!」
アムロは思わず咳き込み、顔をしかめた。艦のパイロットに“お守り”という言葉は、ただの飾りではなく縁起や絆を意味する。
「アルレット!? そんな前時代的なのはやめてくれ!……」
アルレットは一歩も引かず、両手で二人を格納庫の外へ押し出す。
「2人は夫婦なんですから気にしなくて良いのでは? 分かったらさっさと行ってください! あなた達が過労で倒れたら連邦全体が傾くんですからね!」
「そ、それは言いすぎだろ……」
アムロが苦笑するが、押し出された二人の背後で格納庫の扉がしっかり閉まる音がした。
静寂を取り戻した格納庫。
アルレットは深呼吸を一つしてから、きびすを返し、テムに向かって声を張る。
「さあ先生、指示ください! 何をしますか!?」
テムは苦笑を浮かべながらも、手元の作業を止めなかった。
「そうだな……コクピット側の“リミッターデバイス”だ。サイコフレームの力を抑えていると思しき制御系を解析してくれ」
アルレットの目が輝く。
「リミッターデバイスですか!? 面白そうですね! 具体的には?」
テムは溶接槍を脇に置き、いつもの穏やかな調子で説明を始める。
「まずこの機体は、機体側に“サイコミュを絶対に起動させない”ようロックがかけられている。それを外すための起動デバイスなんだが、起動しても性能は20%程度しか発揮できていない。だから、代替デバイスを作るか、既存のデバイスを改修すれば、もっと引き出せるはずだ。……ただし、いきなり100%を出すのは危険だし、理論的にも難しい」
アルレットは唇を噛み、真剣な目つきに変わった。
「つまり、代替デバイスを作るか、条件を緩めて性能を上げる……ってことですね。宿題、頂きました!」
テムは頷き、工具箱から小さな基板を取り出して見せた。
「まずはこの基盤の論理読取と、出力方向のサンプリングをやってくれ。君なら端末で解析しながら実物に触れるのが早いだろう」
「了解!」
アルレットは即座に動いた。軽やかにジークアクスのコクピットへ駆け上がると、ハッチを開け、膝をついて接続ポートに端末を差し込む。
一瞬で画面が光り、複雑なデータの列が流れ始めた。端末のバックライトが彼女の頬を青白く照らす。
「よし、データの取り込み開始。まずは読み取りプロトコルを走らせて――あ、サンプリング周波数を上げます。テム先生、上げてもいいですか?」
テムはモニターを覗き込みながら軽く頷いた。
「いい。だが安定化回路のバイパスは後だ。まずは読み取りを優先しろ」
「了解!」
アルレットは舌を出して笑い、端末上で指をすべらせる。
データが流れるたびに、彼女の瞳はまるで子どものように輝いた。
格納庫の外では、追い出されたアムロとゼロが顔を見合わせて苦笑していた。
ゼロがぼそりと呟く。
「……彼女、本当に楽しそうですね」
アムロは腕を組み、肩をすくめた。
「楽しげに解析される兵器、ってのも妙なもんだな。まあ、誰かがやらなきゃならない仕事だ」
そのとき、格納庫の奥からアルレットの明るい声が響いた。
「ふふん、読み取ったデータ……おや、ここに鍵がある! 面白いですよ、これ!」
テムは思わず笑みを浮かべた。
「いいぞ、アルレット。君の興味本位が、時には世界を救うこともある。」
アルレットは満面の笑みで解析を続ける。
格納庫には、金属音と端末のクリック音、そして彼女の楽しげな声が響き続けていた。
【ホワイトベースJr./第2訓練ブロック・シミュレーター室】
仮想空間に広がるのは、灰色のコロニー外壁を模した模擬戦宙域。
マチュの機体――ジークアクスがゆっくりと姿勢制御を取り、対面には青白いガンダム・アレックスが浮かんでいた。
「じゃあ始めようか。まずはサイコミュなし、マニュアル操作限定戦だ」
カミーユの落ち着いた声が通信に響く。
マチュはヘルメットの中で唇を尖らせた。
「了解、先生」
シミュレーターの合図音が鳴ると同時に、両機が動き出した。
マチュはレバーを必死に捌き、慣れないマニュアル操作で機体を翻す。
ジークアクスの関節が鈍く反応し、ビームライフルの照準はカミーユのアレックスを捉えきれない。
その隙を縫ってアレックスが加速。
ビームサーベルを構え、マチュのシールドを軽々と弾き飛ばすと、逆袈裟に機体を斬り抜けた。
「っ、うそ……もう!?」
通信にノイズ混じりのマチュの叫び。
「焦りすぎだよ」
カミーユの声は穏やかだが、完全に余裕があった。
「サイコミュを使わない時は、身体の動きだけで機体を制御しろ。考えてから動くな、感じて動け」
マチュは悔しそうに舌打ちした。
(感じて動けって……ニュータイプにしかできないでしょ、それ)
だが、マチュにはもう一つ気づいたことがあった。
(……この人、サイコミュ使ってない。なのに、どうしてこんなに反応が速いの?)
「ねえ、サイコミュ使ってないのに、なんでそんなに速いの?」
彼女の問いに、カミーユは少しだけ笑いを含ませて答える。
「アレックスには“マグネット・コーティング”が施されてるんだ。関節可動部の摩擦面に磁力コーティングをして、動作抵抗を限りなく減らす。結果、反応速度は通常機の三倍になる」
「さんばい!?」
マチュは半ば呆れたように声を上げる。
「……それ、チートじゃない? 連邦とジオンで技術差ありすぎでしょ」
カミーユは軽く首を横に振る。
「別に連邦の独占技術ってわけじゃないぞ。君たちがクランバトルで戦うはずだった“ドミトリー”のモスク・ハン博士が、もともとの提唱者だ。
もしあのまま大会が実施されてたら、マグネットコーティング済みのゲルググに乗ったシイコさんが、君たちの相手だったろうね」
「……私たち、勝ち目あった?」
「普通にやったら、何回やってもシイコさんが勝つ」
「うげぇ……」
マチュの情けない声が通信に混ざる。
カミーユはふと目を伏せ、思考を挟んだ。
(だが――“赤いガンダム”に搭載されたアルファ・サイコミュ。あれはテム・レイ博士の技術を盗用してジオンで改修された機体だ。
一度ゼクノヴァ現象を引き起こしている……実際に何が起こるかは分からないが)
模擬戦・一回戦終了。結果はカミーユの圧勝。
⸻
再戦のチャイムが鳴る。
「次は君はオメガ・サイコミュあり。こっちはサイコミュとバイオセンサーあり。お互いの“本気”でやってみよう」
マチュは息を整え、ゆっくりと目を閉じた。
意識が拡がる――ジークアクスが、自分の四肢のように反応する。
関節の動きが軽い。光と感覚が一体化していく。
「(……これなら、いける!)」
ジークアクスが加速し、カミーユのアレックスに斬りかかる。
アレックスは推進剤の噴射だけで軌道をずらし、ビームサーベルの一撃を紙一重でかわす。
「反応速度が違いすぎる!マグネットコーティングずるい!早すぎ!」
「まあ、アレックスと比べたらね」
カミーユは余裕の笑みを浮かべた。
「不用意な接近戦はおすすめしない」
「あたしのジークアクスにも施してよ!」
「今の君じゃあ扱い切れるかどうか」
(この娘、間合いを読む力は高いけど、ニュータイプ能力以外がおざなりすぎる。最近まで民間人だったから仕方ないんだろうが、判断の尺度が難しい。前もってプチモビを使ってた俺やシミュレーターで慣らしてた軍人とは違ってサイコミュ操作オンリーの実戦経験持ちって、特殊すぎて鍛え方が難しいな)
ジークアクスはアレックスとの間合いを離さずに攻め続ける。
「接近したら四方から攻撃なんてできないでしょ!」
「そうか?」
次の瞬間、アレックスの肩の後方――六基のビットが射出され、ジークアクスの周囲を囲む。
そのうちの一基が一瞬だけ光り、マチュのシールドの側面を正確に撃ち抜いた。
「はあ!? なにそれ!? そんな繊細に操れるの!?」
「君が見た赤いガンダムの初期型ビットとは違うんだ。アレックスのビットは――もう“手足”みたいなもんだよ」
マチュは奥歯を噛み、両手でビームサーベルを構える。
「こんのぉ……!」
火花を散らしながら突進。
だがカミーユのアレックスは二本のサーベルを交差させ、刃を挟み込むように受け止めた。
「敵の武装を知らずに接近するなって言いたいんだけどね」
「ビット? 次は避けてやる!」
「……はぁ」
呆れたように息を吐いたカミーユの機体の両腕装甲が展開。
内蔵されたガトリングガンが、ジークアクスの目前で回転音を轟かせた。
「はぁ!? なにそれ、ずるい!!」
マチュの叫びもむなしく、ガトリングの掃射がジークアクスの装甲を貫く。
シミュレーターの警告灯が点滅し、撃墜判定。
「ドヒキョー! 隠しガトリングとか反則でしょ!」
カミーユは肩をすくめる。
「隠し武器ぐらい警戒しておくもんだよ。戦場では“想定外”が一番の敵だからね」
マチュは歯ぎしりをしながら操作桿に突っ伏した。
だが、その表情はどこか晴れやかだった。
(……負けた。でも、手応えはあった。次は……もう少し)
「マニュアル操作はまだぎこちないけど、間合いを読む力は高い。
君の感覚とジークアクスの反応は、かなり相性がいいな」
マチュはぱっと顔を上げ、わずかに笑みを浮かべる。
「……本当? じゃあ、聞くけど――」
少し真面目な顔になって続けた。
「私のニュータイプ能力って、連邦全体で見たらどんな感じ?
正直言うと、あんたの力……アムロさんとかゼロさんより大きく感じるんだけど」
カミーユは短く息を吐き、少し困ったように笑った。
(“分かり合える人類”のはずなのに、強弱で語るのも可笑しい話だ……でも、彼女には尺度が必要か)
「そうだな。ニュータイプ能力“だけ”で見るなら、君は全体の上位十位以内には入る」
「十位以内!?」マチュの目が輝く。
「ただな――」と、カミーユは軽く指を上げる。
「ニュータイプ能力が高いからって、戦場で勝てるわけじゃない。
俺も能力値だけならかなり上のほうだが、模擬戦の勝率が五割を切る相手が四人はいる」
「え、あんたでそれ!? 上から三位にも入れないの?」
カミーユは苦笑しながら首を振った。
「上から三人は不動だよ。
あの人たちは、お互いに模擬戦した時にしか黒星がつかない。
俺と同等か、それ以上の感応力を持つ人もいるけど――
それでも三人のうち一番近いシイコさんには、誰も勝ちきれない」
マチュは呆れたように息を吐く。
(あの人で四位? ……修羅の軍隊かよ)
カミーユは肩を竦めながら続けた。
「ちなみに、その“勝てない三人”の中に、オールドタイプが一人いる」
「は? オールドタイプで!?」
「“ヤザン・ゲーブル”って人だ。ニュータイプ適性ゼロなのに、
レーダーにも映らない距離からの狙撃を、普通に避けてくる」
「化け物じゃん……」
マチュは思わず呟く。(ニュータイプ能力だけで敵を判断するのは危険か……)
少し間があって、マチュはぽつりと聞いた。
「そんなすごい連中がいっぱいいるのに、なんで一年戦争で負けたわけ?」
カミーユは小さく苦笑し、遠い目をした。
「一年戦争のころ、テム・レイ博士は左遷されてた。
現場には“軽キャノン”っていう、上層部の見栄で作られたおもちゃしかなかったんだ。
それに――俺たちは、まだ軍人ですらなかった」
静かな声の奥に、決意が宿る。
アレックスさえも置き去りにする新型が、もうすぐ完成する。
それは、連邦が“再び立ち上がる”ための象徴――新しい旗印となる機体たち。
その力が揃ったときこそ、ようやく“ジオンを終わらせる時”が来るのだと、カミーユは自分に言い聞かせていた。
マチュは息を吐き、ぽつりと呟く。
「あんた達とアレックスの組み合わせなら、もっと早くジオンに勝てたんじゃないの?
……正直言って、あたし、友達だったニャアンの“難民の辛さ”なんて全然わかってなかった。
スペースノイドの代表ヅラして、自分たちがコロニーぶっ壊して難民作っといて、
それを“他のコロニーだから”って放ってるジオンなんて、早く倒してほしかったよ」
(そしたら、ニャアンだって……あんな思いしなくて済んだのに)
尋問室で聞いた話を思い出す。アイランド・イフィッシュの毒ガスによる虐殺から必死に生き抜いた友。
両親を失い、家を失い、それでも必死に生きてきた少女の笑顔。最近になって同郷の友達と再会できたことが彼女の救いになるよう祈るしかない。
“難民”という言葉がどれほど重いかを、マチュはようやく理解した。
学校に行けないだけではなく、医者にもかかれず、
闇医者に見せるために大金を工面しなければならない――そんな現実。
特別を求めて飛び出した自分がどれほど恵まれていたかを、今さら思い知る。
命を賭けて助けに来てくれた友に、ただ感謝しかなかった。
カミーユは苦笑しながら言った。
「その“赤いガンダム”のパイロットを相棒にしてた君が言うか?」
マチュは即座に言い返す。
「別にシュウジは“赤い彗星”じゃないし。一年戦争にも出てないよ」
「だが、機体は戦ってた」カミーユの声が低くなる。
「多大な戦果を挙げ、最後には行方不明になる直前、
落ちるソロモンを軌道ごと変えるほどの現象――“ゼクノヴァ”を起こした。
それを仮想敵にした以上、ただ“強い”だけじゃダメだった。
相手のとんでもないオカルトを、さらに上の力でねじ伏せる必要があったんだ」
そう、ゼクノヴァというジオンの"誰か"を助けるために神に等しき力を持った個人の干渉を跳ね除ける為には、ただのサイコミュでは到底足りず、バイオセンサーでも届かず、一部のサイコ・フレームでもなお及ばない。フル・サイコフレームという人が神の力に届きうる器が必要だったのだ。