ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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第18話 マチュvsサイクロプス

【宇宙宙域・サイド6領域外】

 

散らばったデブリが流れ、破片が光を反射し続ける混沌の空間。

そのただ中で――マチュの乗る ジークアクス は、もはや孤立無援だった。

 

ネモはすでに2機落ち、1機は撃破寸前で1機のギャンを相打ちに持ち込み、戦線離脱。

残ったのは――マチュただ一人。

 

対するは、ギャン4機とケンプファー。

そして、こちらの出方を読みきった“隊長機”のギャン。

 

ジークアクスのコクピットには、ハロの叫ぶ絶え間ない警告音が鳴っていた。

 

《Warning! 右腕部パワーダウン――》

 

《機体フレーム歪曲 第三警告――》

 

マチュは歯を食いしばる。

 

(負けるか……!

よりにもよって、こいつらなんかに!

サイクロプス隊なんかに――殺されてたまるか!!)

 

彼女は一度深く息を吸い、意識を研ぎ澄ませる。

 

4対一――絶望的な数だ。

しかも、隊長機ハーディを「捕獲」しなければならないという制約がある。

 

それを悟られた今、敵隊長は自分が撃破されない前提で、

徹底して“マチュに距離を詰めて”きていた。

 

他の攻撃を庇い、マチュの射線を潰す。

まるで、こちらの意図を読み切っているかのように。

 

(窮屈なのが……嫌だった)

 

ビームサーベルを振り下ろし、ギャンの腕を一刀で切り落とす。

 

(私たちのコロニーの全部は……

偽物の大地、模造の空、遺伝子操作された食べ物……

なんで、そんな世界で……皆は“普通に”未来なんて見られるの?)

 

 

そのままビームライフルでコクピットを狙う――が、

 

しかし、またも隊長機がわざと射線に割り込む。

 

「ちいっ……!」

 

引き金が――止まる。

 

その一瞬の躊躇。

それが、戦場では致命的な“死の隙”となった。

 

(でも……そんな窮屈な世界で、私と同じ世界を見るシュウジに会えた。

同じように地球へ行きたいって、あの本物の海を見たいって言ってくれた友達にも!)

 

押し寄せる敵の圧力が増す。

ミーシャのケンプファーが、距離を見切った完璧な軌道でバズーカを撃ち込む。

 

爆風がジークアクスを揺らし、ハロの警告音がさらに増えた。

 

《衝撃波直撃! 姿勢制御32%低下!》

 

ギャンのサーベルが迫り、マチュは咄嗟にスラスターを逆噴射。

ギリギリでかわし、ビームサーベルを逆手に取って反撃。

その刃は敵機の胴を割こうとする――が、また隊長機が割って入る。

 

(わかってる……クラバは違法で危険で……

一歩間違えたらいつ死んでもおかしくなかったって……)

 

遠距離から一斉に飛んでくる実体弾。

ジークアクスの装甲が火花を散らし、衝撃がコクピットを揺らす。

 

(でも――“死ぬなら私”のはずでしょ?)

 

ギャン4、ケンプファー1。

5機分の視線がマチュに集中する。

 

殺気が、刺すように皮膚を刺す。

 

(なのに……!)

 

病院。

眠ったままの母。

腕の片側が凹む布団。

医者の「もう目覚めないかもしれません」という声。

 

(どうして……

どうして、お母さんがこんな目に遭うの……?

普通に……ううん、違う。真面目に精一杯家族のために働いてくれてただけなのに!)

 

胸の奥――沈んでいた何かが、燃えるように浮かび上がる。

 

(それをやったやつら――

サイクロプス……!)

 

ギラつく思考が一つに収束した。

 

(私が夢のために苦しんだり、死ぬのはいい……

でも――

こんな奴らに殺されるのだけは、死んでも嫌だ!!)

 

その瞬間――

 

ジークアクスの全スラスターが一斉に点火した。

 

まるで弾丸のような軌道。

ギャンの一機の懐に飛び込み、肘でスラスターを吹かして回避不能な距離に押し込む。

 

マチュが叫ぶ。

 

「――どけぇッ!!」

 

ビームサーベルが、ギャンの肩口から腹部へ貫通。

 

爆発。

 

だが――

 

「ッ!?」

 

隊長機がすでに背後に回り込んでいた。

 

そのサーベルがジークアクスの右腕の盾を切り飛ばす。

 

《シールド lost!》

 

警告音が悲鳴のように響く。

 

ミーシャのケンプファーが追撃。

ミサイルが至近距離で炸裂し、ジークアクスの装甲が剥離する。

 

《ダメージ警告レベル3! 致命傷間近!》

 

マチュの視界が赤い警告で染まる。

 

(――まだ……!

私は、死なない……!

こんな奴らの手で死ぬなんて……絶対に!!)

 

「喰らえよッ!!」

 

ミーシャのケンプファーが、チェーンマインを投げ放った。

 

「しまっ……!?」

 

避けきれない。

左腕に絡みつき――

 

シュタイナーのギャンが右膝を蹴り抜いた。

 

ドォォォンッ!!!

 

左腕が肩ごと吹き飛び、機体が大きくのけ反る。

 

「ぁぁぁあッ!!」

 

《左腕欠損! 出力低下! Cモニター・ロスト!》

 

火花と煙。

その中で――

 

ミーシャの“心の声”が、マチュへ届いた。

 

(左手を無くした機体か……あの黒髪の女を思い出すぜ。

次はあいつと同じように……頭を潰してやる)

 

言葉ではない。

ただの“内心の吐露"だった。

 

だが――

 

マチュの逆鱗を引き剥がすには十分だった。

 

ジークアクスのメインカメラが、紫に染まる。

マチュの瞳も、母と同じ碧色から深い紫へ変わった。

 

「ミハイル・カミンスキー!!」

 

敵同士であるはずの通信が――つながる。

 

「なっ……! なんで、俺の名を!?」

 

「お前だけは……殺す!!」

 

「俺がさせるとでも思ったか!」

 

ハーディがミーシャの前に割り込む――

だがマチュはもはやためらわない。

 

先ほどまでとは違い庇ってくる隊長機から射線をずらさない。

 

(あんたは後回し――!)

 

ビームが飛ぶ。

 

(なっ!俺を鹵獲する気じゃ無かったのか!?)

 

死の間際だからかハーディの視界にスローモーションのように迫る光。

 

だが――

 

撃墜されたネモのビームサーベルが漂い、

偶然にもビームの間へ割り込み、ビーム・コンヒューズが発生。

 

光が弾け、ハーディのギャンのカメラが一時的にダウンする。

 

(ビームサーベルを狙って撃っただと!?

どんな空間認識してる……!?)

 

邪魔が消えた。

 

マチュは――ミーシャへ突っ込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビームライフルでビームサーベルを撃って散らせるたぁ、曲芸かよ! そんなもんが俺に通じるか!

ライフルは弾切れだろうが!!」

 

確かに、ライフルは空だ。

だが、マチュはゆっくりと吐き捨てるように言った。

 

「……あんたは知らなくても――」

 

「撃ち抜いてやるよ!!」

 

ケンプファーのショットガンが連射され、散弾が星屑のように迫る。

マチュはライフルを投げ捨て、火花の中からサーベルを抜いた。

 

「――あたしは知ってる」

 

「あばよ!知らねえガキ!」

 

間髪入れずミーシャはさらに踏み込み、

ショットガンの銃口をジークアクスへ向ける。

 

ズドォッ!!

 

だが、その全弾を――

針の穴をつくような隙間に入りジークアクスは全弾を回避する。

 

「な、なんだと……!?」

 

マチュは一歩、前へ踏み出しながら静かに告げる。

 

「……あんたは」

 

「くそがッ! 食らえぇぇ!!」

 

ミーシャは背部タンクを噴かし、

ケンプファーを射出された弾丸のように高速突進させる。

その腕がショットガンを叩きつける軌道に入った――

 

しかし、マチュの刃は動じない。

 

「この宇宙で、私が――」

 

「まだだぁぁ!!」

 

ミーシャはショットガンを投げ捨て、

腰からサブマシンガンを引き抜き乱射する。

実弾の暴風がジークアクスを包むが――

 

紫の光がすべてを焼き切った。

 

紫の瞳。

紫のカメラアイ。

殺意だけがある、静かな声。

 

「――一番殺したい存在だよ」

 

「!!」

 

その瞬間、

ケンプファーのショットガンが暴発するように放たれた弾丸は――

全て、マチュのハイパービームサーベルの巨大な刃に飲まれて消えた。

 

「……死んでよ」

 

紫の刃が振り下ろされる。

 

混乱しながらも、ミーシャは最後の悪態を吐こうとする。

 

「てめぇは……あの女の、むす――」

 

その続きを言う前に、

ケンプファーは頭部から胸部まで一線で焼き切られた。

 

そして――爆散。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケンプファーが爆散した余波がまだ視界に残っている。

だが休む暇は、一瞬たりとも与えられなかった。

 

「ミーシャ……!? 貴様ぁぁぁ!!」

 

怒号と共に、隊長ハーディのギャンが翻る。

さらにもう一機――ガルシアのギャンが横合いから回り込む。

 

左右から挟み込まれる形で、

二機のビームライフルがジークアクスを狙った。

 

マチュは息を荒くしながら操縦桿を握りしめる。

 

(っ……! 来る……!!)

 

警告音。

視界に奔る真紅の線――敵の照準が重なる。

 

「死ねぇッ!!」

 

ハーディとガルシアが同時に引き金を引いた。

 

――ビームが迫る。

 

マチュは歯を食いしばり、

反応速度ギリギリでスラスターを蹴る。

 

(来る……! 避けなきゃ……!!)

 

だが、

片腕を失い、右膝を痛め、モニターの一部が死んだジークアクスは

本来の機動力をすでに失っていた。

 

オーバーロード寸前のフレームが悲鳴をあげる。

 

(このままじゃ……!)

 

その瞬間だった。

 

視界を裂く青の閃光。

 

――キィィィン!!

 

戦闘機のようなシルエットが急制動をかけるように割り込み、

ジークアクスの機体を“攫う”ように抱え込むと、

迫るビーム射線をすべてかわして加速した。

 

「新手だとっ!?」

 

青い機体は、滑らかに旋回しながらマチュを安全圏へ引き離す。

 

通信が飛んだ。

 

「マチュ! 生きてるよね!? 大丈夫だよね!?」

 

ニャアンの声だった。

 

マチュは、荒い呼吸のまま目を見開く。

 

「ニャアン……? その機体……なに……?」

 

「〈Zガンダム〉だって。非常時ってことで、貸してもらったの!」

 

その声は、震えてはいたが確かに頼もしかった。

 

マチュは、かすかに笑って答える。

 

「そっか……助かった……ありがとう。

じゃあ、2人がかりで――ハーディを捕まえないと」

 

「ううん、大丈夫。

私1人で来たわけじゃないから」

 

「えっ?」

 

その時、ジークアクスのメインカメラが、

後方から迫る一つの機影を捕捉した。

 

月光を浴びたように白く輝く機体。

胸に青のライン、肩と腰に背負った有線インコム――

 

〈NT-1 アレックス〉。

 

だが――マチュはもっと深いところで、その“中”を感じ取っていた。

 

この空気、この気配、この震え。

 

「……シュウジ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジークアクスを救い出したZガンダムが離脱し、

戦域中央にアレックスが滑り込む。

 

四つのインコムが青白い光を灯し、

白い機体の縁を粒子が撫でる。

 

サイクロプス隊の動きが一変した。

 

ハーディが怒声を上げる。

 

「やるぞ、ガルシア!!

もう一機のギャンも合わせて三機がかりでアレックスを潰す!!」

 

「了解です隊長!」

ガルシアが続ける。

 

「ジークアクスは手負いにしましたが……

可変機とアレックスに組まれたらまずい。

――先にアレックスからですね!」

 

「その通りだ!

あのインコム持ちのアレックスはシイコ・レイの機体!

だが本人ならもっと早く出てくるはずだ!

代役の雑魚が乗ってるなら――沈めるのは容易い!!」

 

ガルシアが吠える。

 

「ええ、こいつを片付けて早いとこミーシャの仇を取ってやりましょう!!」

 

三機のギャンが三方向に散開、

アレックスを三方から狙い撃つ態勢に入った。

 

 

 

しかし、彼らは身の程を知らなかった。

 

確かにシュウジ・イトウは

アムロ、ヤザン、ゼロという“最強の壁”には及ばない。

 

だが――

 

彼は別の歴史で、アルファサイコミュによる転移現象ありきとはいえ、その3人に近いシイコを倒した男だ。

 

そして今乗っているのは

テム・レイが総力で仕上げたエース機、アレックス。

 

しかもシュウジは

“パイロットスーツ無しで乗せても良い”とテムが保証した適応力の怪物。

 

三対一でも――勝負にならないのは、必然だった。

 

 

 

「撃てぇぇ!!」

 

三方向からビームの十字砲火が迫る。

 

だが次の瞬間――

 

アレックスの姿が消えた。

 

ギャン三機のセンサーが狂ったようにアラートを鳴らす。

 

「な……!?」「反応が一瞬で消えたぞ!?」「ば、化け物かッ!?」

 

実際には横へ超加速で移動しただけだ。

ただし、人間の限界を越えた速度で。

 

「そこだ」

 

ハーディの背後から、静かな声。

 

振り返る暇はなかった。

 

 

四つのインコムが射出される。

 

青い光跡が戦場に幾何学模様を描き、

ギャン三機の死角をすべて潰していく。

 

「ぐっ!?」「どこから来る――」「避けられっ……!」

 

ビームがギャンの脚・腕・推進器を次々と貫く。

 

ガルシアの盾が砕け、

もう一機のギャンは腕を吹き飛ばされ、

ハーディの槍が弾き飛ばされる。

 

 

「バ、バカな!!」

 

半壊した脚を押さえながら吠える。

 

「俺たちジオンの新型ガンダム、ジークアクスには勝てた!

あの新型より、連邦のアレックスはこうも違うのか!?

なんでだ……!!

どうして――!」

 

その言葉は

“マチュが弱い”と言外に言っていた。

 

次の瞬間――

 

アレックスの通信が割り込んだ。

 

「……違うよ」

 

ガルシアは言葉を失う。

 

「君たちが勝てたのは、

隊長のギャンが“自分が殺されないと分かっていた”からだ。

だから盾になれた。

だから、マチュは撃てなかっただけだ。」

 

シュウジの声は静かで、しかし確信に満ちていた。

 

「今の彼女は……

君たちが六機で組んで勝てるような娘じゃない。」

 

一瞬、通信の向こうでマチュが息を呑むような気配がした。

 

(……クラバで、僕と“マブ”として戦っていた頃とは……

まるで違う。

――強くなったね、マチュ)

 

胸が痛んだ。

 

強くしたのは――

自分じゃない。

 

でも、その“強さ”のおかげで、

彼女は母を傷つけたサイクロプス隊を

“あと少しで屠れるところまで”追い詰めた。

 

(……ありがとう。

カミーユ……

マチュを、強くしてくれて)

 

その感謝は、僅かに声へ滲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マチュは、Zガンダムの肩にジークアクスを寄りかかるようにして、荒い息を整えていた。

片腕を失い、あちこち火花を散らす機体のコクピット越しに、新たに広がる戦場を見つめる。

 

そこでは――

 

青いアレックスが、三機のギャンを相手に“次元の違う戦い”をしていた。

 

 

一瞬。

 

本当に、一瞬だった。

 

ガルシアのギャンがビームで貫かれて爆散し、

ついで残りの一機が斬り裂かれる。

 

光が消える頃には、残ったのは隊長ハーディ機ただ一つ。

 

そのハーディも、

必死の突撃はシュウジに軽くいなされ、槍は粉砕。

拳は避けられ、腕を切られ、

逃走すればインコムの光線に両脚を奪われ――

最後はワイヤーで捕縛された。

 

ジークアクスのカメラ越しに、

すべてが“あっけないほど簡単に”終わっていた。

 

 

「……え?」

 

言葉が出ない。

 

自分が死にもの狂いで相手していた“サイクロプス隊”が、

まるで紙細工のように壊されていく。

 

Zガンダムの通信が開き、ニャアンの声が響く。

 

「マチュ!シュウちゃん、すごいね!」

 

マチュは、焼ける喉でようやく声を出した。

 

「……ニャアン、シュウジは……強いね。

私……勝ちきれなかったのに……」

 

言った瞬間、胸が少し痛んだ。

悔しさか、情けなさか、理由はうまく飲み込めない。

 

だがニャアンは、強く首を振るように言った。

 

「違うよ、マチュ!

マチュは――本当に頑張ったんだよ!」

 

「……でも……」

 

「隊長機の動き、わかってたでしょ!?

あいつ、マチュが自分を殺せないのに気づいて、

味方の盾になって動いてた!」

 

マチュの胸がきゅっと締めつけられる。

 

そうだ。あれがなければ――

ミーシャに集中できていれば、

もっと早く決着できていた。

 

でも。

 

ニャアンは続けた。

 

「マチュはね、あの状況で四機相手に戦ったの。

しかも片腕飛ばされても諦めなかった。

シュウちゃんが強いからって、

マチュの強さが消えるわけじゃない!」

 

その言葉は、

焦げたコクピットに優しく降り積もった。

 

マチュは少しだけ、息を吐いた。

 

「……そっか。

うん……ありがとう、ニャアン」

 

視線の先で、アレックスが捕縛したハーディを引きずりながら戻ってくる。

 

その姿は――

少しだけ、眩しく見えた。

 

 

 

 

 

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