ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
■無力化されたZ、残されたもの
閃光が走ったあと。
宇宙には、ばらばらになった四肢が静かに漂っていた。
Zガンダム。
その両腕、両脚は切断され、完全に戦闘能力を失っている。
だが――
コックピットだけは、無傷のまま残されていた。
シュウジはアレックスのコントロールを最小限に抑え、機体の挙動を安定させる。
(ララァの意識がニャアンから逸れたおかげで無力化できた)
冷静に状況を整理する。
(でも一体誰が?)
一瞬、思考が止まる。
(あのララァのいるところは……普通のニュータイプが行ける場所じゃあ……)
“宇宙の裏側”。
言葉にすれば簡単だが、そこは生半可な存在が踏み込める領域ではない。
それでも。
確かに、誰かがララァの意識を引き剥がした。
その余韻だけが、微かに残っている。
その時だった。
片腕のジークアクスが、ゆっくりとZガンダムへ近づいていく。
マチュだった。
損傷した機体を無理やり動かしながら、必死に距離を詰める。
そして。
震えるマニピュレーターで、Zガンダムの装甲に触れた。
「ニャアン……!」
声が震えている。
「ニャアン大丈夫なの!?ねえ返事してよ!ニャアン!」
何度も呼びかける。
だが。
返答はない。
通信も、沈黙したままだ。
その様子を見て、シュウジは一瞬だけ目を伏せる。
そして。
すぐに意識を切り替えた。
今やるべきことは、別にある。
「マチュ」
落ち着いた声で呼ぶ。
「今はニャアンをホワイトベースJr.に運ぼう」
短く、しかしはっきりと言い切る。
「僕たちじゃあ声をかけることしかできない」
マチュが一瞬、言葉に詰まる。
「……そっ、そうだね」
それでも頷いた。
だが、その声には不安が滲んでいる。
「ニャアン……大丈夫だよね?」
Zガンダムに触れたまま、呟く。
「返事がないし、通信も……触れても繋がらなくて……」
その言葉に。
シュウジはほんのわずかだけ、言葉を選んだ。
「それは……」
そして、静かに告げる。
「彼女の精神力次第としか言えないよ」
残酷なほど現実的な言葉だった。
だが、それ以外に言いようがない。
(ニャアンはメンタル面で強い)
シュウジは内心でそう評価している。
実際、ここまで生き延びてきた時点で、それは疑いようがない。
だが。
(ララァに、あれだけの干渉を受けて……)
あの“圧”を思い出す。
あれは、ただの精神感応ではない。
もっと深い――
死者の記憶。
怨念。
そういったものに触れる領域の力だった。
(死者の怨念に触れられてしまった)
それは、強さだけで耐えられるものではない。
(すぐには起きれないだろう)
結論は、自然と出ていた。
(おそらく……しばらくは医務室で眠るしかないかもしれない)
静かに、そう思う。
その間にも。
損傷した二機のモビルスーツは、ゆっくりとホワイトベースJr.へ向けて進路を取っていた。
ララァはようやく理解した。
——自分の死が来たのだ、と。
不思議なほど心は澄んでいた。死の恐怖も、アムロへの恨みもない。
ただ、自分の“終わり”と少しだけ話をしたかった。
「ねえ、アムロ?」
動かないエルメスの中で、ララァは静かに問いかけた。
「あなたは、何故私の前に現れたの? 私を殺すことで得られるものなんて、あなたはもう全部手にしている。目的のために私を消す必要なんて、ないはずよ。……まさか、あの子たちを助けるため?あなたの世界であの子たちはあなたに殺されたのに?」
ララァが思い浮かべたのは、この世界のシュウジやマチュ、ニャアンの姿だった。
だがアムロは苦笑すらせず、ただ事務的な声で返す。
「確かに俺は“数多のアムロ・レイ”とは違う」
Hi-νガンダムの装甲を透かすように、冷えた声が響く。
「アクシズ落としが起きたからって、自分と赤い彗星の命を犠牲に地球を救う……なんて救世主みたいな真似はしない。」
「そんなことをやった俺の世界のカミーユにもジュドーにも散々言われた。"あなたは自分の知るアムロとは思えないだの、バナージには“あなたにフルサイコフレームの到達形を見せてはいけない”だの散々言われて、手を抜かれて負けられた事もある」
アムロは小さく息を吐く。
その声には怒りも、哀しみもなかった。
「じゃあ……何故?」
ララァはなおも問わずにいられない。
「世界が違っても、復讐を背負っていても……俺は地球連邦のアムロ・レイだ」
「後輩が頑張っているなら、道に転がってる石ころを蹴り飛ばして道を開けるくらいはしてやるさ」
「この宇宙であの3人は地球連邦に入るようだしな。お前の邪魔を弾くぐらいさした苦労もない」
その言葉こそかつてリタが言った、どんなに闇に落ちても自分たちを救ってくれたアムロ・レイは、
辿らなかった未来で全てを滅ぼそうとした強化人間のようにはならないという、言葉であり願いが真実である証明だった。
ララァは一瞬ぽかんとし……そして。
「ふふふふふ! そんな理由?」
感情が堰を切ったように笑い出した。
「おかしいか? お前はジオンの女で、俺は地球連邦の軍人だ。殺す理由なんてその程度で充分だろ?」
「——そうね。本当に、それで充分」
その瞬間だった。
エルメスが、ふっと光の粒になって崩れた。
まるで最初から存在しなかったかのように、モビルアーマーは消え、残ったのはララァただひとり。
虚空に佇む彼女はまっすぐアムロを見つめ、静かに口を開く。
「なら……これだけ聞いてくれる?」
「何だ?」
ララァはゆっくりと右手を上げた。
棒きれに白いハンカチを巻きつけただけの、どこまでも手作りの——子どもがおままごとで使うような、頼りない白旗。
「——投降するわ」
その白旗が、光に照らされて揺れた。
闇落ちアムロだのなんだの言っておいてなんだって話ですが彼は一度も条約破りも戦場の最低限のルール破りもやってないんですよね。ジオンの要塞へのコロニー落としもジオンがやらなければやる気もなく、連邦で前もって上申して軍事作戦として許可をもらっているという。
ちょっと気に食わないことがあればすぐ脱走だの反逆だのやらかす己が道を行く系主人公達より遥かに軍人してます。
まあ軍自体が改革されて脱走する理由も反逆する理由もないのが大きいですが。
短くてすみません。明日の1800に次話投稿するつもりです。