ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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ようやく闇落ちララァ周りがひと段落しました。


第24話 ララァの結末

アムロは、白旗を振るララァを見て数秒固まった。

 思考が止まった、というより——理解を拒んだ。

 

「……何だこいつ」

 

 ヘルメット越しでも分かるほど、アムロの顔には露骨な嫌悪と困惑が浮かんでいた。

 ララァはそんな視線にも微笑したまま、ひどく静かだ。

 

 Hi-νガンダムのスピーカーが短いノイズを吐き、アムロの低い声が響く。

 

「今まで散々、数多の可能性の宇宙を生み出しては……ボロ雑巾みたいに捨てておいて」

「そのお前が——命が惜しいのか?」

 

 刺すような声音だった。

 だがララァは眉ひとつ動かさず、むしろ穏やかに問い返す。

 

「私がどう思っているのかなんて……関係ある?」

「ただ、ジオンの女が連邦の男に降伏しているだけよ。どうするの? 無視して殺す?」

 

 アムロは言い返そうとしたが、喉奥に言葉が詰まった。

 舌の上に広がるのは鉄の味に似た苛立ちと、どうしようもない不愉快さ。

 

 ——苦虫を噛み潰した。まさにその表情だった。

 

 ララァは一歩、虚空を踏みだすように浮かびながら微笑んだ。

 

「さぁ、私の命はあなたの手の中よ?」

「どうするの? 地球連邦のアムロ・レイ?」

 

 挑発でも誘惑でもない。ただ事実を突きつける声。

 その静かさが、かえってアムロの胸をざらつかせた。

 

 やがて、アムロは吐き捨てるように言った。

 

「……お前が投降しようとも、俺にはお前を入れておく独房なんて持ってない」

 

 戦場に降伏者を収容する設備など、当然Hi-νガンダムにはない。

 合理主義のアムロらしい、冷酷な現実の提示だった。

 

 しかしララァは、そこでようやく楽しそうに目を細めた。

 

「まぁ、大変」

「じゃあ……あなたに着いていくしかないわね」

 

 両手を胸の前でそっと合わせる。

 光の粒が手のひらの間で集束し、きらりと銀の輪の形をとった。

 

 次の瞬間、空間からふっと手錠が生まれた。

 それは幽霊めいた質量を持ち、ララァの両手首を確かに繋いだ。

 

 彼女は手錠を掲げて、まるで芝居のように首を傾げる。

 

「はい、これで“捕虜らしく”なったでしょう?」

 

 アムロの沈黙は、怒りでも困惑でも説明しきれない“何か”だった。

 それこそが、ララァの思うつぼであるかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ララァ・スンの残骸めいた“彼女”は、虚無の闇の中に浮かびながら、かすかに微笑んでいた。

その姿を前に、アムロは Hi-ν のコクピットで沈黙していた。殺せばいい。この女はシイコを殺した“シイコ殺しの主”だ。怒りの矛先は、とうに冷たい鉛のように胸に沈殿している。

 

――だが、本当にそれだけなのか?

 

「……ララァ。お前がいなければ…俺は、シイコとは出会えなかった」

 

言葉を発した自分に、アムロ自身が最も驚いていた。

憎悪のはずの名を呼ぶ声が、かすかに震えている。

 

Hi-ν の結晶化段階で見た、“無数の宇宙”。

あれは祝福でも啓示でもなく――ただの“現実”だった。

 

始まりの宇宙のアムロ・レイは、シイコどころか、誰とも結婚しなかった。

父とはろくに会話もなく、死別に等しい形で別れた。

よき先輩であり人生の先達だったウッディとマチルダ夫妻は、ジオンの攻撃で死に、胸に残ったのは痛みだけ。

 

連邦にニュータイプとして扱われたのは希望ではなく“危険因子”としての隔離だった。

骨を抜かれた日々を抜け、戦場へ戻っても、待っていたのは貧乏部隊。

シャア・アズナブルとの最終決戦は、急造のνガンダムという半ば試作機で挑む羽目になり、結末は――アクシズを止めるために自分とシャアを犠牲にした人柱としての運命。

 

しかも、その戦いの余波は、一人の少年の人生を狂わせた。

ブライトの息子。ハサウェイ。

彼がテロリストになる未来すら、アムロは可能性空間で目撃した。

 

――だが。

目の前に彼が現れたら、今の自分は迷いなく殺すだろう。"クスウィー"などという自分の父が心血を注いで作ったHiνの次を意味する名前の機体を望むこと自体が烏滸がましい。戦場でロマンチズムに焦がれ逆上して味方を撃つようなガキを助けてやる義理などない。例えそれが戦友の息子だろうとだ。

 

そんな救い難い未来を辿った"別の自分"とその世界の運命を思い出しアムロは思いを巡らせる。

 

ゆえに。

 

《ララァがいなければ、自分はシイコと出会うこともなかった。》

 

その事実が、アムロの心臓の奥で、静かだが確かな重さを持っていた。

 

「……皮肉な話だよ。お前はシイコを殺した。だけどお前がいなければ、シイコに“出会う”こともなかった」

 

Hi-ν の指がララァの魂の残滓に触れようと伸びる。

アムロは、自分の手が震えていることに気づいた。

 

殺すべきだ。

連れて行くべきだ。

どちらも間違いではないし、どちらも正しくない。

 

――シイコの仇だ。

――だが、同時にシイコへ導いた存在でもある。

 

その矛盾が、アムロ・レイという人間を捩じり潰すほどに圧してくる。

 

ララァがふ、と微笑む。

その笑みは、かつての彼女の柔らかさとも、今の“成れの果て”の残酷さとも違う、奇妙な静けさを孕んでいた。

 

「アムロ。あなたは……どうしたいの?」

 

挑発ではない。嘲笑でもない。

ただ、アムロ自身に投げ返す問い。

 

アムロは唇を噛む。

 

もしここでララァを殺すなら、それは“復讐”ではなく――

自分の過去、無数に見た宇宙すべてへの“決別”になる。

裏側のアムロを形作ったすべての分岐を切り捨てる行為。

 

逆に連れていけば、彼女との因果はさらに深まり、逃げ場はなくなる。

それはそれで、恐ろしい未来だ。

 

「……クソッ」

 

吐息が漏れる。

答えは出ているはずなのに、言葉にできない。

 

拳を握り、アムロはようやく――自分の本音に触れた。

 

「……俺は、お前を……」

 

その続きを言う前に、空間が震えた。

エルメスの残骸が光の粒子へ崩れ、Hi-ν のフレームもまた結晶化の輝きを帯び始める。

 

ララァの瞳が金色に揺れた。

 

アムロは迷いの中、決断を迫られる。

 

――連れていくか。

――ここで終わらせるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アムロは決断した。

 

 やはりこの女は危険すぎる。

 宇宙をいくつも作り、壊し、気まぐれで命を弄ぶ存在を放置する理由はない。

 

 Hi-νガンダムのビームサーベルがゆっくりと持ち上がる。

 結晶化したサイコフレームが淡く輝き、刃はララァの存在そのものを断ち切る軌道を描いた。

 

 ——その瞬間。

 

「……なに?」

 

 アムロの意識が、ふいに別の場所へ引き寄せられた。

 

 マチュたちの戦場。

 

 ララァによって死者の思念を詰め込まれたバイオセンサー。

 その影響で、ニャアンはしばらく治療施設で眠り続けるはずだった。

 

 だが。

 

 彼女は、目を覚ましていた。

 

 アムロの眉がわずかに動く。

 

「……何かしたのか?」

 

 振り向かずにララァへ問いかける。

 

 だが、返ってきた声はあまりにも軽かった。

 

「私は何も?」

 

 そして、ほんの少しだけ楽しそうに続ける。

 

「したとしたら……地球を潰す弾にするために毒ガスで生贄にされて尚」

 

「殺したジオンへの恨みよりも、強い心残りがある2つの魂かしらね。あなたになら見えるでしょ?」

 

 アムロの視線が鋭くなる。

 

 Hi-νのサイコフレームが共鳴を強めた。

 結晶化したフレームはニュータイプ能力を極限まで拡張する。

 アムロはその力を使い、ニャアンの精神の奥へと意識を伸ばした。

 

 そこは、死者の海だった。

 

 無数の声。

 無数の記憶。

 無数の怨念。

 

 普通の精神なら、瞬時に飲み込まれる。

 

 だが。

 

 その中心に、二つの光があった。

 

 少女を守るように立つ、二つの魂。

 

 アムロは目を細める。

 

「……両親か」

 

 その二つは、死者の群れを押し返しながらニャアンの精神を包み込んでいた。

 まるで嵐の中で子を抱きかかえる影のように。

 

「すごいわよね。巣穴に殺虫剤を撒かれるみたいに殺されて、周りは怨みに染まった怨霊だらけなのに、挙句私の干渉を受けても、それでもあの二つの魂はたった1人の娘を守ってる」

 

 アムロはゆっくりとララァへ視線を戻す。

 

「なぜわざわざあの娘の両親までバイオセンサーに入れた?」

 

 低い声だった。

 

「お前なら、どうとでもできただろう」

 

 ララァは肩をすくめる。

 

「さあね。どうしてかしら」

 

 そして、少しだけ遠い目をした。

 

「私にも……ララァ・スンの成れの果ての私にも、残っていたのかもしれないわね」

 

 静かな声で続ける。

 

「親を亡くした子には、優しくしたくなる気持ちが」

 

 アムロは鼻で笑う。

 

「今さらか?」

 

 その言葉には容赦がなかった。

 

「百歩譲って、シャアを生き残らせるためだけに宇宙を作り直していた“始まりのララァ・スン”は理解できる」

 

 視線が鋭くなる。

 

「だが、ある時期を境に生まれたお前は——

 もう別物に等しい」

 

 吐き捨てるように言う。

 

 ララァは少しだけ目を細めた。

 

「なんでも知ってるのね」

 

 だが、否定はしない。

 

 むしろ、静かに続ける。

 

「でも仕方ないでしょ?」

 

 その声は、ほんの少しだけ歪んでいた。

 

「シャアのために、たくさん宇宙を作ったのに」

 

 笑みが崩れる。

 

「そのシャアに——」

 

 声が低く落ちた。

 

「“お前なんていらない。消えろ”って、邪魔者みたいに処理されたのよ?」

 

 空間がわずかに揺らぐ。

 

「“私”みたいなのだって……生まれるわよ」

 

 アムロは黙って聞いていた。

 

 始まりのララァの目的は理解できる。

 善悪はともかく、動機は単純だった。

 

 シャアを生き残らせる。

 

 だが、目の前の存在は違う。

 

 シュウジ・イトウを駒として利用し、

 不要になれば機体を奪い、

 その友人を廃人にしかけた。

 

 始まりのララァから、あまりにも遠い。

 

 なぜここまで剥離したのか。

 

 その答えを、アムロは思い出していた。

 

 ある世界で、シュウジが言った言葉を。

 

 ——「シャア自身が彼女を否定しようとしている。それは彼女にとって耐え難い事だろう」

 

 その通りだった。

 

 始まりのララァ・スンは、シャア自身が企図した

 イオ・マグヌッソの力で、別の宇宙へ放逐された。

 

 シュウジは、その結果をこう予測していた。

 

 彼女はすべての宇宙を崩壊させる。

 

 だが、そうはならなかった。

 

 始まりのララァは——

 

 その記憶を、自ら消した。

 

 そして。

 

 その空白から生まれたのが。

 

 今、目の前にいる。

 

 ララァ・スンの成れの果てだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アムロは決断した。

 

 目の前のララァ・スンは、どうしようもない存在だ。

 だが――処分は、一時保留にする。

 

「そんな手錠……お前には何の役にも立たないだろう」

 

 ララァは小さく目を伏せた。

 

「そう」

 

 その声は、先ほどまでの皮肉めいた調子とは違い、どこか静かだった。

 

 限界だったのだろう。

 人生のすべてと言っていいシャアに否定され、宇宙を越えて現れたアムロにまで切り捨てられた。

 精神は、いよいよ自ら死を選ぼうとしていた。

 

 その時だった。

 

「だから――せいぜい俺の役に立て」

 

 ララァが、はっと顔を上げる。

 

「Hi-νのサイコフレームの中で薪になるなら……今殺すのはやめておく」

 

 アムロの声は淡々としていた。

 

「……私を連れていくっていうの?」

 

「お前の思念が尽きたら勝手に消える薪としてな。どうする?」

 

 ララァはしばらく沈黙した。

 

 そして。

 

「…………ふふふ」

 

 小さく笑った。

 

「やっぱり……そんなに変わっても、あなたも“アムロ”なのね」

 

 アムロは肩をすくめる。

 

「始まりのアムロなら絶対にやらない事だと思うがな」

 

「かもしれないわね」

 

 ララァは頷く。

 

「じゃあ……せいぜい、あなたの旅に役立つとしましょうか」

 

 その瞬間だった。

 

 ララァの身体が、光へとほどけた。

 

 精神体となった彼女は、吸い込まれるようにHi-νガンダムの結晶化したサイコフレームへ溶け込んでいく。

 

 翡翠色に輝いていたフレームの中へ――どこか冒涜的な白い光が混じる。

 

 そして。

 

 その白は、一瞬で全体を覆い尽くそうとした。

 

「……殺されたいのか」

 

 アムロの思念が、サイコフレームを震わせる。

 

 その瞬間。

 

 侵食はぴたりと止まった。

 

『あら? ごめんなさい』

 

 サイコフレームの内側から、ララァの声が響く。

 

『思念としてサイコフレームに入るなんて、どの宇宙でもやった事ないのよ。加減が分からなかったわ』

 

 アムロは小さく息を吐いた。

 

 薪として取り込んでも、会話くらいはできるとは思っていた。

 だがここまで明瞭に意思を返してくるとは思っていなかった。

 

 この女のニュータイプ能力は――底がない。

 

『ふふ……』

 

 ララァがくすくす笑う。

 

『これからよろしくね。マスター? ご主人様? それとも主とかの方がいい?』

 

「名前でいい」

 

『ああ、でも……』

 

「?」

 

『“シャア”にも渡してない初めてを取られた訳だし、“旦那様”とか“恋人さん”とかの方が――』

 

 アムロの思念が、ぴたりと動く。

 

『……って、待って。私の部分を切り捨てて行こうとしないでよ。お茶目な冗談よ』

 

 アムロはララァの言葉を途中で遮るように、サイコフレームの侵食部分を、ハイパービームサーベルの巨大な光刃で切断しようとしていた。

 

 だが、ひとまずそれはやめる。

 

「次にそのくだらない冗談を吐いたら、容赦なく捨てる」

 

 声は低かった。

 

「それから――これからの戦いでも、お前相手に遠慮はしない。徹底的にお前の魂を薪にして燃やして戦う」

 

 少しの間を置いて。

 

 ララァは楽しそうに答えた。

 

『もちろん』

 

 そして囁く。

 

『徹底的に使い尽くしてね?』

 

 翡翠色のサイコフレームの奥で、白い光が静かに揺れていた。




以上が本作の闇落ちララァの誕生経緯です。
詳しく書くと、アニメジークアクスに近い流れで進んでいったが、シャアがイオマグヌッソでララァを邪魔者として宇宙から捨てた。シュウジがシャアを止められず、ララァを殺してリセットもできず、ララァにとって死より辛い事になり、始まりのララァはそれも(夢)として忘却したがショックによって溜まりに溜まった怨念が[慣れ果てララァ]です。

これならアニメジークアクスでお礼を言って去っていった始まりのララァを不当に貶めず、かつ整合性が取れてるはず!取れてるといいなぁ。


そしてララァの結末は賛否あるかもしれませんがサイコフレームの薪になってもらいました。最初は徹底的に貶めて命乞いするララァを容赦なく結晶体の力で消滅させる闇落ちアムロも考えたんですが、ファーストアムロの辿る未来もなかなかに酷いので。親父は酸素欠乏症からの転落死、好きだったセイラとは軍のせいで結婚できず、軟禁から逃げて色々あって正規軍のロンドベルに再編成されても貧乏部隊。  エンデミオンユニットから俺だってお前が所属してるみたいな連邦軍に入りたかったと言われそう。
ここの闇落ちアムロさんはシイコさんの復活にある程度目処を立ててるのもあり、憎しみのまま殺すのではなく、これからの旅に役立つ強化アイテムとしてララァをHiνに取り込みました。
それにシイコが生き残る未来を見れた上で別の可能性だとしても自分に気づいてくれた事に優しさが引き出されました。まあだからってララァルートなんてものはありませんが!リタ周りを読んでくれればわかると思いますが筋金入りの純愛主義なので。
それにほら。いつか小説版逆シャアこと、ベルトーチカチルドレンの迷いのないナイチンゲールに乗るシャアにララァのオーラを纏ったHiνのファン・ファンネルをぶつけてやるIFを書けるかもしれませんし(邪悪笑顔)
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