ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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第九話: マチュとニャアンのジオン入り

【場所:ア・バオア・クー要塞/独房エリア】

 

金属の冷たい壁に囲まれた独房の中で、マチュとニャアンは向かい合って座っていた。手錠が冷たく肌に食い込む。

ニャアンが、不安そうに顔を歪めてマチュに尋ねた。

 

「マチュ。わたしたち、捕まっちゃったけど大丈夫かな?このまま殺されたり……。」

 

マチュは落ち着いた声で答えた。その瞳の奥には、変わらぬ決意が宿っている。

 

「大丈夫。殺すならその場で撃ち殺してる。私たちにジークアクスのことを聞くまでは殺さないはず。」

 

「そう……だよね。」

 

ニャアンは、わずかに安堵の息を漏らした。

 

マチュは視線を下げ、自らの手錠を見つめながら、静かに言った。

 

「巻き込んでごめん。いざという時は、ニャアンは私のことなんて気にせず、自分が生き残ることだけ考えていいから。」

 

その言葉に、ニャアンは顔を上げた。

 

「私、そんな薄情じゃないよ! シュウちゃんを殺したアムロ・レイにマチュが復讐するっていうなら、ちゃんと手伝うよ!」

 

マチュは顔を上げ、ニャアンの真剣な瞳を見つめた。

 

「ごめん。……ありがと。」

 

その時、独房の扉が金属音を立てて開いた。デラーズが二人の部下を引き連れて立っている。

 

「2人とも、出ろ。」

 

部下二人が独房の鍵を開ける。マチュはデラーズを真っ直ぐに睨みつけながら独房から出てきた。ニャアンは怯えた表情で、おずおずと後に続く。

マチュはデラーズを見据え、挑発するように問うた。

 

「あんたたちのボスからの呼び出し?」

 

デラーズはマチュの態度に一瞬驚いたような顔を見せたが、すぐに無表情に戻した。 

 

「ついてくれば分かる。」

 

デラーズはそう言って、通路の先へと歩き出した。銃を下げた部下達は、いつでも発砲できるよう銃口を下げたまま、マチュとニャアンの前後に立ち、彼女たちを連れて行く。冷たい通路に、四人の足音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【場所:ア・バオア・クー要塞/デラーズ執務室】

 

デラーズの執務室の扉が開かれ、マチュとニャアンが中に案内された。部屋の中央には大型モニターが設置され、そこにはジオン総帥ギレン・ザビの顔が映し出されている。隣にはグレミー・トト、そしてセシリア・アイリーンの姿もあった。

 

「ジオンの総帥……」

 

ニャアンが怯えながら、マチュの影に隠れるように呟いた。

 

ギレンの冷徹な視線が、モニター越しにマチュを射抜く。

 

「お前達だな?ジークアクスを我々から奪っておいて、半壊させた上に治せなどとのたまっている輩は。」

 

マチュは一歩も引かず、ギレンの視線を受け止めた。

 

「そうだよ。私がアムロ・レイを殺してやるから、さっさとジークアクスを修理してって言ってるの。」

 

ギレンは鼻で笑った。

 

「お前に任せる理由がないな。我が方にも優秀なパイロットもニュータイプもいる。そちらに回せばいいだけだ。」

 

その言葉に、マチュは苛立ちを露わにした。

 

「大人って周りくどいやつばっかり。」

 

デラーズが鋭い声で叱責する。

 

「貴様、総帥に何という口の聞き方を!」

 

しかし、マチュはデラーズを無視し、ギレンを挑発するように言った。

 

「あんた達の選んだパイロットはジークアクスのオメガ・サイコミュを起動出来なかったんでしょ。だから私に盗まれたりするんだよ。」

 

ギレンの目が微かに細められた。

 

「お前なら起動できるとでも?」

 

「私が乗ればいつでも起動する。隣のニャアンも一度乗ったけど起動出来たよ。」

 

通信の先のグレミーが、驚きを隠せない声で叫んだ。

 

「何だと!?」

 

「ジオンってロクなニュータイプがいないんじゃない?私たち、初めて乗った時から使えた機能を全然使えないんだから。」

 

その言葉に、部屋の片隅に控えていたガトーが怒りを爆発させた。

 

「貴様!黙って聞いていれば!」

 

ガトーはマチュに掴みかかろうと、猛然と近づいてくる。

 

「待て。ガトー少佐。」

 

ギレンの静かな声が響き、ガトーの動きを制した。

 

ガトーは即座に停止し、敬礼する。

 

「は!失礼しました。」

 

ギレンは再びマチュに視線を戻した。

 

「貴様が仮にオメガ・サイコミュを起動出来たとしても、それがジークアクスを任せる理由にはならんな。」

 

「何で!」

 

「機体を半壊させていたな?やられたのは、お前が殺したがっているアムロ・レイにだろう?何故それで自分なら殺せるなどと言える?」

 

ギレンの核心を突く問いに、マチュは言葉を詰まらせた。

 

「それは!」

 

「やられた相手を殺すと言い張る根拠は、どこにある?

“それでも私はやれる”と――

そう叫ぶだけの子供に、我が軍の資産を委ねる理由は、どこにもない」

 

その小さな体が震えたのは、怒りか、悔しさか。

だが、今のところは――そのどちらであっても、ギレンの論理を打ち破るには足りなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギレンの問いに、マチュは一瞬言葉を詰まらせた。

だがすぐに、鋭くギレンを見返し、その瞳には一切の迷いがなかった。

 

「さて、大佐。重要機密を盗んだ上で半壊させた他国の人間に、我々がすべきことは何だ?」

 

ギレンが静かに問いかけると、モニター越しのデラーズはすぐさま背筋を正し、冷酷な定型を返した。

 

「は! 尋問で情報を搾り取った上で銃殺かと。」

 

その言葉に、ニャアンが思わず悲鳴を上げた。

 

「そんな……!」

 

しかしギレンの表情に変化はない。

冷たく、感情のかけらもない声で、さらに言い放つ。

 

「難民の女とサイド6の学生。……躊躇う理由はないな。」

 

だが次の瞬間、マチュが皮肉を込めた一言でギレンの言葉を切った。

 

「周りくどいって、さっき言ったんだけど?」

 

ギレンの目が微かに細められた。興味の色が一瞬だけ混じったようにも見える。

 

「殺すのも拷問するのも、あんたは部下に命令するだけでいいでしょ?

目の前にわざわざ連れてくる理由なんてない。」

 

その声は挑戦的だったが、決して感情的ではない。

むしろ、状況を冷静に読み切った者の確信に満ちていた。

 

「……自分には利用価値があるから、殺されないと?」

 

「違う? 連邦との戦争が始まって、戦力がいくらあっても足りない状況で、

怪しい女二人に、忙しい総帥様がわざわざ通信で話すなんて――

私たちに、利用価値があるからでしょ?」

 

ギレンの口元がわずかに動いた。皮肉とも、評価とも取れるごく小さな笑み。

 

「……軍からモビルスーツを盗んだというから、どんなバカかと思っていたが。

――頭は悪くないらしいな」

 

マチュはふん、と鼻を鳴らす。

 

「でも、さっきのあんたの言うことも正しい。

私にアムロが殺せるなんて、あんたたちから信じられないのも理解できる」

 

ギレンの視線が静かに、しかし鋭く突き刺さる。

 

「なら、どうする?」

 

マチュは躊躇わなかった。

呼吸も乱さず、即座にその答えを叩きつける。

 

「私をパイロットとして鍛えて」

 

部屋の空気が一瞬、静止したように凍りつく。

 

その沈黙を破ったのは、デラーズの隣に控えていたガトーだった。

 

「なに!?……貴様ッ!」

 

彼が憤怒に駆られ詰め寄ろうとしたその瞬間――

マチュは横目で一瞥しただけで、再びギレンに正面を向き直った。

 

「アムロ・レイと戦ったから分かる。

あいつはニュータイプだから強いんじゃない。

ただのパイロットとしても――はるかに格上だった」

 

ギレンは挑むように問いかける。

 

「貴様が付け焼き刃で鍛えて勝てるとでも?」

 

「可能性はあると思うけど?

ただニュータイプってだけでも駄目。

パイロットとして強いだけでも駄目。

ニュータイプである上で、パイロットとしても強くなきゃ、あいつには勝てない」

 

その言葉に、セシリアもグレミーも無言のまま表情を引き締める。

 

「どっちかで勝てるやつがいるなら、そいつはある意味アムロ・レイ以上の化け物だよ。

どうせジークアクスのバトルログは見たんでしょ?」

 

一瞬、デラーズが唸るような声を漏らした。

 

「……む」

 

たしかに。あのガンダムの戦闘記録――

常軌を逸した機動、サイコミュの挙動、パイロットの反応速度――

それらは確かに“只者ではない”ことを物語っていた。

 

ギレンは沈黙のまま、マチュの目をじっと見据えた。

そして――静かに口を開いた。

 

「……いいだろう。

貴様を、ジオンのパイロットとして――認めてやろう」

 

「総帥!?」

 

通信の向こうで、グレミーが思わず声を上げた。

 

だがギレンは一顧だにせず、マチュに告げた。

 

「その上で。ジークアクスの修理部品と、その2号機ジフレドは――グラナダにある。

届いて修理が完了するまでの間、そちらのゲルググに乗って、

ガトー少佐の下で訓練を受けろ」

 

言葉を区切って、ギレンはニャアンにも視線を向けた。

 

「そちらの“難民の女”も、オメガ・サイコミュを起動したのだったな?

ならば――ジフレドに乗ってもらう」

 

その命令は、あくまで理性に基づいた判断だった。

だがその裏には、“最小のコストで最大の成果”を求めるギレンらしい冷徹な選択が滲んでいた。

 

(――使えるなら使う。使えないなら切り捨てる)

ザビ家総帥のやり方に、情はなかった。

だが、マチュの反骨と執念は――その合理の中に、一条の価値を見出させたのだった。

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