ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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第十二話: 地球衛星軌道決戦準備1

【場所:ジオン軍旗艦 艦内/作戦会議室】

 

広々とした会議室の中央に設けられた戦術テーブル。その上には、地球圏と宙域の地図がホログラムで投影されていた。重力の境界線、地球周回軌道、連邦の打ち上げ予測地点――全てが詳細に示されている。

 

ジオン軍のコンスコン少将は、その中央に立ち、周囲を囲む各艦長たちを見回した。

 

「――各員、静粛に。これより、地球から上がってくる連邦軍の迎撃作戦について、最終説明を行う」

 

会議室内の空気がピンと張り詰めた。

 

「我々の目的は、地球から打ち上げられる連邦の艦隊を、宇宙に出た直後に殲滅することだ。重力の引力に逆らいながら上がってくる艦隊に、我々は上から、撃ち下ろす」

 

ホログラムが切り替わり、ジオン艦隊とビグ・ザム5機の布陣が示される。

 

「ビグ・ザムは我が防衛線の主軸だ。5機を地球との中間宙域に等間隔で配置する。艦隊はその背後に配置、ビグ・ザムのIフィールドを盾にしつつ、一斉砲撃を行う」

 

1人の初老の艦長が手を挙げて問うた。

 

「少将、敵の戦力規模は……いかほどと予測されていますか?」

 

コンスコンは静かに頷き、その問いに答えた。

 

「数では向こうが上だ。戦力差は倍以上になるかもしれん。だが、心配は無用だ。我々にはビグ・ザムのIフィールドがある。あれを前面に立て、我が艦隊の砲撃支援で迎え撃てば、地球から打ち上げられたばかりの艦艇など、宙に出た瞬間、灰になる」

 

「ビグ・ザムの行動時間は短いのでは……?」別の若い艦長が不安げに口を開く。

 

「それも織り込み済みだ」コンスコンは即座に言った。「ビグ・ザムには“前に出ず、盾に徹させる”――これが今回の要請だ。巨体ゆえの燃費の悪さ、行動時間の制限も、動かさなければ問題ない。地球との間で静止し、Iフィールドを展開し続けるだけでよい。そこに飛び込んでくる連邦艦隊を、我々が後方から砲撃で仕留める」

 

ホログラム上に、連邦艦隊の予測進路が赤く描かれた。その先にはビグ・ザムの盾、その背後に控えるジオン艦隊の砲撃ライン。

 

「ビグ・ザムが時間を稼ぎ、我々が敵を掃討する――これが今回の作戦の骨子だ。あのモビルアーマーは、ただ前に出して暴れるだけの兵器ではない。“動かさずして勝つ”ことにこそ、真価がある」

 

艦長たちは次々に頷き、戦術の要点を確認していく。

 

「地球の重力井戸に引かれない距離で、我々は待つ。地球の空を突き破り、ようやく宇宙に出たばかりの連邦艦隊に、こちらは慣性の優位と砲撃の雨で迎え撃つ――その優位を、最後まで崩さぬようにせよ。撃ち漏らしは許されん」

 

コンスコンの目が鋭く光る。

 

「地球から上がってくる者を、1隻たりとも通すな。これはジオン本国防衛を賭けた最後の宇宙戦線だ。勝利あるのみ」

 

「「了解!」」

 

会議室には一斉に響く敬礼の声が満ちた。

 

このとき、誰もが――たとえ心のどこかに不安を感じていたとしても、コンスコン少将のもとで自分たちは勝てる、という幻想を信じようとしていた。

しかし、彼らの知らぬところで、すでに“白い悪魔”たちは、次なる奇襲を練っていた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【場所:連邦宇宙軍旗艦《アレキサンドリア》/第1戦略会議室】

 

艦橋近くの戦略会議室に集められたのは、宇宙・地球双方の作戦を統括する幹部たちだった。

 

ブレックス・フォーラ准将を筆頭に、ヘンケン・ベッケナー中佐、ブライト・ノア少佐、エイパー・シナプス大佐、そして一人だけ艦長職ではないが、戦場の要として呼ばれた男――アムロ・レイ大尉が席についていた。

 

ホログラムに映し出された宙域マップには、地球から上昇する連邦艦隊、サイド7から展開する連邦宇宙軍、そして中間宙域に構えるジオン艦隊の布陣が表示されている。

 

「――以上が、諜報部と前線偵察機からもたらされた最新の敵戦力情報だ」

 

ブレックス准将の低く、厳粛な声が静寂を破った。

 

「敵艦隊の数自体は、我々が地球から打ち上げる艦隊と、グリーンノアで整備を終えた新編艦隊の合計戦力に比べれば、劣っている。しかし問題は、あの“ビグ・ザム”だ」

 

ホログラムが切り替わり、5機の巨大モビルアーマーの映像が浮かび上がる。

 

「ジオンは、ビグ・ザムを5機投入してきている。全機がIフィールドを展開可能で、こちらの艦隊砲撃は大半が通らんと見ていい」

 

エイパー・シナプスが眉をひそめる。

 

「こちらでIフィールドを展開できる戦力は――?」

 

「アムロたちのフル・サイコフレーム機にはIフィールドが搭載されている。だが、あれはあくまで個体防御用であって、艦隊を守る盾にはなれん。艦隊の砲撃から味方を守るには、ビグ・ザムのような巨体か、せいぜい《サイコガンダムMk-II》のサイズでなければならない」

 

「そして我々が今使えるサイコガンダムマークIIは宇宙にあるのは一機のみだ。地球にはさらに3機あるが、これはもしビグ・ザムがジャブローに降下した際の迎撃用として配置されている。動かせる戦力ではない」

 

「……分が悪いな」ブライトが苦く呟く。

 

ヘンケンが立ち上がった。

 

「ならば、地球から艦隊を上げる前に、我々宇宙側が強襲をかけるのはどうだ? 敵の布陣が完全に整う前に、崩してしまう」

 

エイパーが腕を組んで反論する。

 

「手ではあるが、敵は上から狙い撃つ体勢を整えている。こちらが突撃すれば宇宙側の艦隊は……大きく数を減らすことになるだろうな」

 

ブライトが口を挟んだ。「だが、地球側と挟み撃ちにしても、我々が敵を崩しきるまでに時間がかかれば、地球から上がってくる艦隊が半壊しかねん。タイミングを誤れば、連邦の損耗は取り返しのつかないものになる」

 

一同の視線がブレックスへと集中する。准将は深く息を吐き、静かに言った。

 

「さて……どうするか」

 

その時だった。

 

「――提案があります」

場の空気を切り裂くように、アムロ・レイの声が上がった。

 

「ブレックス准将、俺たち――フル・サイコフレーム搭載機に乗る4人で、先行奇襲を仕掛けるのはどうでしょうか」

 

会議室の視線が一斉にアムロに向く。ブレックスは目を細めた。

 

「……奇襲?」

 

アムロは頷き、続けた。

 

「俺たちの新型機――ゼロ、リタ、カミーユ、そして俺のガンダムは、ビーム・マグナムを装備している。1発で艦を撃沈できる火力を持ち、1.7秒のインターバルで連射も可能だ。エネルギーパック3つで15発。正確に撃てば、敵艦隊を壊滅させられる」

 

ヘンケンが思わず小声で漏らした。

 

「まったく……テム・レイの天才ぶりには恐れ入る。こんな兵器を作るとは」

 

ブライトも表情を険しくしながら言葉を継ぐ。

 

「それほどの力があるなら艦隊には有効だろうが、問題はビグ・ザムだ。Iフィールドを貫ける保証はないんだろう?」

 

「ああ」

「ビームマグナムがビグ・ザムの装甲やIフィールドを貫通するかどうかは、正直言って未知数だ。しかも、やつらがあれを改良していたら、下手をすれば無力化されかねない」

 

ブレックスが問いかける。

 

「では、どうするつもりか。艦隊を崩しても、ビグ・ザムが残れば……」

 

アムロは一瞬沈黙し、そして言った。

 

「――だから、別の案を考えてある。今の連邦でなければ、“気でも狂ったか”と医務室送りにされるような作戦だがな」

 

艦長たちの表情が引き締まる。ヘンケンが椅子の背にもたれて呟いた。

 

「……これはまた、穏やかじゃない作戦が来そうだな」

 

緊張が増す中、ブレックスがアムロに向き直り、静かに言う。

 

「では、詳細を任せる。アムロ大尉、戦力の要である君のその“奇策”――我々は耳を傾けよう」

 

アムロは頷き、その奇策の説明に入った。

 

 

 

 

 

 

そして――

彼は、ゼロ・ムラサメ、カミーユ・ビダン、リタ・ベルナル。

3人の仲間の元へと向かう。

 

その背を見送りながら、各艦長たちはふと思う。

確かに、かつての地球連邦軍であれば――アムロ・レイの提案など、「錯乱したニュータイプ」として医務室送りにされていたかもしれない。

だが、今は違う。

 

幾多の戦場を生き抜き、幾度となく味方を救ってきた男が言うならば、

たとえ“狂気の作戦”に見えても――それは、試すに値する「現実」なのだ。

 

彼らは黙して頷いた。

アムロ・レイの“奇策”に、可能性があるのなら。

 

今、賭ける価値はある。

 

その作戦が、やがてこの戦局を大きく動かすことになるとは、まだ誰も知らないまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【場所:サイド7近傍 アーガマ・新型ガンダム整備区画】

 

4機のフル・サイコフレーム搭載型新型ガンダムが鎮座する前で、ゼロ・ムラサメ、カミーユ・ビダン、リタ・ベルナル、そして技術士官アルレット・アルマージュが談笑していた。

 

ゼロが満足そうに機体を見上げながら言う。

 

「……流石にフル・サイコフレームの新型ガンダムは違うな。アレックスの次に相応しい名機だよ」

 

カミーユも頷きながら隣で微笑んだ。

 

「ですね。長い間待った甲斐がありました」

 

その言葉に、アルレットは笑顔を浮かべつつ、どこか怒気を含んだ声で口を挟んだ。

 

「Zやナラティブのことを“無かったこと”にするの、そろそろやめてくれませんか? 特にカミーユ。あなたが“可変機に乗ってみたい”なんて言うから、あなたのお父さんが頑張って作ったZガンダムを、現場から追い出してしばらく“倉庫温め係”にした自覚、少しはありますか?」

 

突然の“本命パンチ”に、カミーユは目をそらし、ゼロに視線で助けを求める。

 

「いや……Zがいい機体だったのは間違いないと思うよ……」

 

ゼロが口の端で笑いながら、引き継ぐようにぽつりと呟いた。

 

「でもネモとパーツ共有ができないんじゃなあ」

 

その瞬間、アルレットの笑顔が引きつり、声がひときわ大きくなる。

 

「──あのですね!? 普通、“ワンオフ高性能機”と量産機でパーツの互換性なんて無いんです! テム・レイ先生が天才だから共用できてるだけで、それが普通だと思わないでください!!」

 

「……はい。申し訳ありません」

カミーユは即座に頭を下げる。

 

横で見ていたリタ・ベルナルは苦笑した。

彼女はつい最近までジャブローで、Zもナラティブも含めた機体のテストパイロットを務めていた。

現場での扱いやすさを優先するカミーユやゼロの意見も、作ってきた側のアルレットの怒りも、両方よく分かる。

 

「まあまあアルレット。新しいガンダム達はネモⅡとパーツ共用できるようになったからこの人たちの文句も無くなったし、これからの作戦で使うプロトタイプたちの方もパーツが共用できるように再設計したんでしょ? 先生と一緒に」

 

その言葉に、アルレットはピタリと黙り、次の瞬間には――むしろ感情を乗せるように、早口で返してきた。

 

「しましたよ! ええ、しましたとも! テム先生と!」

 

彼女の目には怒りではなく、もはや呆れと尊敬が混じっていた。

 

「私の、“素材の良し悪しがわかる目”は、素材開発の分野では先生に匹敵する成果も出せてると思ってます!

……でも、モビルスーツの設計や再設計になると、まだまだ……あの人の背中を追いかけているだけです」

 

アルレットは悔しそうに肩をすくめた。

 

「技術者として“見えている世界が違う”って、こういうことなんだなって、改めて思い知らされましたよ。……さすが先生です、本当に」

 

「だからこそ、まだ言い足りません。フランクリン技師も言ってましたけど、今の連邦はテム・レイ先生の“才能”に甘えすぎなんです。

この人たちの一言で、他の技術者が“先生と比べられて”心を折られるかもしれない。そうなったらテム先生が一番気にするんです」

 

彼女はテム・レイを「先生」として本気で尊敬していた。

だからこそ、彼がその才能を周囲に「押し付ける形」になることを、苦慮していることを知っていた。

そして何より、その恩恵を受けているパイロットたちが無神経に口にする一言で、他の技術者たちが潰れてしまうことを──テムが悲しむことを恐れていた。

 

その想いを痛感し、ゼロとカミーユは思わずぺこりと頭を下げる。

 

「すみませんでした……!」

 

そんな時だった。

後方からふと穏やかな声が聞こえた。

 

「なかなか賑やかだな」

 

整備区画に現れたのは、アムロ・レイ。

場に漂っていた緊張が、少しだけ和らぐ。

 

アルレットがくるりと振り返り、笑顔を浮かべながらも――その背後に怒りのオーラをまとって応じた。

 

「アムロさんにも、言いたいことは山ほどありますよ?」

 

その気配を察してか、アムロは軽く手を上げて制した。

 

「……すまん。作戦の説明をしたいから、その話はまた後でな」

 

にこやかに流したその一言に、ゼロとカミーユは思わずアムロの方をちらりと見やった。

 

(……アムロさんだけ、ずるい……)

 

二人の顔にはそんな感情がありありと浮かんでいた。

 

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