ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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次は午前11時に登校します。


第十三話: 地球衛星軌道決戦準備2

【場所:アーガマ・ブリーフィングルーム(小会議室)】

 

ホログラム表示が揺れる小さな作戦会議室に、アムロ・レイが立ち、ゼロ・ムラサメ、カミーユ・ビダン、リタ・ベルナル、そして整備士のアルレット・アルマージュが席に着いていた。

 

「というわけで――」

 

アムロがタブレットの操作を止め、端的に言った。

 

「地球から上がってくる艦隊を、ジオンは軌道上で待ち伏せてる。俺たちは、あいつらの背後を突いて、ビーム・マグナムで奇襲をかける」

 

机の上に、ビーム・マグナムの出力データが投影される。

その火力は、通常のビームライフルの比ではなかった。

 

アルレットがやや呆れたように苦笑する。

 

「……ビーム・マグナムの運用としては最適解なんでしょうけど、えげつないですねぇ」

 

アムロの目には迷いがなかった。

 

「容赦なんていらないさ。やつらは“地球に降りない”だけで、降りられれば何をやらかすか分かったもんじゃない。

イオ・マグヌッソの“ゼク・ノヴァ兵器転用”はサイド6が拒否して実現しなかったが……いずれまたコロニー落としだってやりかねん」

 

淡々と語るその声の奥に、微かに滲む怒り――。

 

それは、シイコを失った男の、今も消えぬ憤り。

 

その微細な変化を、ゼロも、カミーユも、リタも、アルレットも、鋭敏に察知していた。

胸の奥に重いものが落ちる。仲間には優しいアムロ。それでも、失ったものの大きさは──簡単には癒えないのだ。

 

ゼロが空気を変えるように話題を切り出す。

 

「……しかし、奇襲がバレたら、敵はビグ・ザムを俺たち側へ動かして、盾にするはずです。その対応は?」

 

カミーユも思案顔で続く。

 

「俺たちが接近して破壊するにしても、護衛のモビルスーツ次第じゃ、時間がかかりますよね」

 

アムロは即答した。

 

「接近はしない。

中距離でビグ・ザムを潰す。向こうの攻撃を“余裕を持って避けられる”距離を保ちながらな。

一年戦争の頃と違って、対空火器の性能も上がってるかもしれない。無闇に近寄るのは悪手だ」

 

リタが首を傾げた。

 

「……バズーカとか、実弾兵器を山ほど持っていくんですか?」

 

アムロはわざと意味深に笑ってみせた。

 

「さて。俺はこの作戦について、艦長たちにすでに説明して許可を得てある。

昔の連邦なら“気が狂ったか”と医務室送りにされたかもしれない作戦だ。

当ててみてくれ。リタの案じゃないし、重武装で動きが阻害されるほど持っていくわけでもない。

艦隊とビグ・ザムを叩いた後は、敵のモビルスーツも相手しなきゃならんからな」

 

アムロは一呼吸置いて、さらに声を落ち着かせて続けた。

 

「ちなみに──

予想される敵の攻撃は、主にビームと実弾。

ビームはシールドのIフィールドで防ぐ。

接近してくる敵機と実弾兵器は、フィン・ファンネルで迎撃または遮断する。

……守りはフォウが専任で担当してくれるが、全員、攻撃だけに集中しすぎないようにしてくれ」

 

ゼロが頷きかけたところで、アルレットがやや呆れ顔で口を挟む。

 

「つまりアムロさん、今から作戦までに“アムロさんのHi-νガンダムとフォウのZガンダム用に調整してあるフィン・ファンネル”を、3人の機体にも合わせてインストールしろと?」

 

アムロは申し訳なさそうに苦笑した。

 

「すまん。だが一応、3人にも訓練中にシミュレーターでデータは蓄積させてある。

だから基本はインストールと微調整で済む。俺も手伝う。

……それに、フィン・ファンネルそのものの数は充分に、用意してあるはずだ」

 

アルレットはタブレットで手元の作業リストを確認して、ふぅと溜息を吐いた。

 

「……フォウが守り担当で使うって聞いてましたがメインで使うのはアムロさんなのに、妙に数作らせてるなとは思ってましたが……。この時のためでしたか」

 

肩を竦めつつも、どこか納得したように椅子にもたれかかる。

 

「……まあ、これで誰も落とされないなら、整備士冥利には尽きますけどね……」

 

彼女の視線が天井へと向いたときには、すでに脳内でチェックリストと作業スケジュールを組み立て始めていた。

 

ゼロがようやく言葉を挟む。

 

「……ハードなスケジュールですね。ビグ・ザムを“中距離”で……ですか」

 

カミーユが横を向き、アルレットに振る。

 

「アルレット、中距離でビグ・ザムに通じる兵装って、何かある?」

 

「そりゃあ……」アルレットが肩をすくめながらアムロに目を向けた。「対艦ミサイルでも背負っていけば、ある程度は効くでしょうけど……」

 

アムロは首を横に振る。

 

「ミサイルは迎撃される。あのサイズの敵なら、周囲に護衛が付いてて当然だ」

 

考え込んでいたリタの目がふと見開かれる。

 

「……まさか……アムロさん」

 

アムロは嬉しそうに頷いた。

 

「おめでとう。リタが一番乗りだな。3人に説明してやってくれ」

 

カミーユが思わず乗り出す。

 

「リタ、分かったのか?」

 

「ええ。……でも、これを“軍事作戦”と言っていいのかどうか」

 

ゼロが眉をひそめる。

 

「一体、どんな作戦なんだ?」

 

リタはゆっくりと、アムロのかつての言葉をなぞるように語った。

 

「アムロさんが、昔こう言ってましたよね。

“この機体は、やろうと思えば大体のことができる。

推進剤を使わずに武器を飛ばす、

シールドに仕込まれたIフィールドを使わず、

“バリアを意識だけで展開”する。

あるいは――“ビームサーベルを巨大化させて、敵艦そのものを一刀両断”することさえ可能だ”って」

 

ゼロとカミーユが息を呑む。

 

「つまり、中距離からIフィールドを無視して、巨大化させたビームサーベルで斬るってことなんじゃないですか?」

 

アムロが軽く頷いた。

 

「その通り。艦長方には“通信での混乱を防ぐため”に、同じサーベルでもこれはハイパー・ビームサーベルと呼称してくれ、と言われた」

 

部屋の空気が、一瞬だけ凍りついた。

冗談ではなく、本当にそれを実行しようという男が目の前にいる。

 

だがその空気の中で──誰も否定はしなかった。

 

 

 

 

ゼロが静かに口を開いた。

 

「……もし、俺たちが作戦までに――ビームサーベルの巨大化を扱えるようにならなかったら?」

 

その問いに、アムロは少しも迷わず答えた。

 

「その時は……俺が責任を取る。

俺ひとりで、ビグ・ザム5機を切る」

 

その言葉が放たれた瞬間、部屋に再び沈黙が訪れる。

 

誰も声を上げない。ただ、全員がその言葉に宿る覚悟と意味を理解していた。

 

アムロ・レイは、すでにその技術を会得している。

この作戦――この“無謀”は、彼が実現可能と見込んだからこそ、口にされたのだ。

 

その事実が、否応なく全員の胸に響いていた。

 

そして、次に声を上げたのは、カミーユだった。

 

「……まだ今日は、外に出てガンダムで試せますよね?」

 

彼の声には、迷いがなかった。

 

「俺は今日中にやってみせます!」

 

その瞳には、強い決意が宿っている。

 

アムロの隣に並び、共に戦う――

それはカミーユ・ビダンがずっと目指してきたことだ。

 

そして今、アムロ一人にすべてを背負わせるようななら、最初から目指す意味などなかった。

 

ゼロもまた、言葉を重ねる。

 

「分かりました。……俺も、出て試してみせます」

 

続いて、リタが静かに頷いた。

 

「私もです。この手で、未来を切り拓くために」

 

アムロは一瞬だけ目を細めた。心の奥底で、わずかに安堵したような色が浮かんだ。

 

「……分かった。俺が最初に見本を見せる。

仮に今日はできなくても、焦らなくていい。

本来は、もっと後にやってもらうつもりだった。ただ、状況がそれを許さなくなっただけだ」

 

アムロの声は穏やかだったが、言葉の端々に緊張と責任の重さが滲んでいた。

 

彼らの戦いは、まだ始まってもいない。

だが、最強の4機のフル・サイコフレームガンダムが、ついに動き出そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【場所:ペガサス級強襲揚陸艦《ブランリヴァル》/作戦司令室】

 

艦橋奥にある作戦司令室の一角、簡素なミーティングテーブルを囲んで、ペガサス級《ブランリヴァル》の艦長・ココノエ大佐と、モビルスーツ隊隊長であるヤザン・ゲーブル大尉が、並んで座っていた。

 

壁際の椅子には、カイ・シデン、ハヤト・コバヤシ、リュウ・ホセイの3名も控えていたが、あくまで隊長と艦長の会話を見守る立場に徹している。

 

モニターに表示されているのは、アムロ・レイらによって発案された“奇策”の概要。

ハイパー・ビームサーベルによる中距離からのビグ・ザム斬撃作戦――その詳細だった。

 

静かに、ココノエが口を開く。

 

「さて、ヤザン大尉。君はこの作戦を聞いてどう思う?」

 

視線はモニターから離さないままだが、その声音にはわずかな懸念が滲んでいた。

 

「私は正直、上層部が“危ない状況”にハマり込んだのではないかと、半分ほど心配しているのだが」

 

ヤザンはくつろいだ姿勢のまま、ふっと笑う。

 

「半分、ですか? ――それがもう、“答え”ですな、艦長」

 

「ほう?」

 

「今の連邦にとって、ニュータイプは“希望”。

その中でも象徴的な存在、アムロ・レイが立案した作戦となれば……否定するのは政治的にも難しい。

たとえ、正気を疑うような作戦であっても、です」

 

「……だが、本当に可能なのかね?」

 

ココノエは、モニターに表示された赤文字の通達を指で叩く。

 

「“ビームサーベルを巨大化させ、敵の攻撃を余裕で回避できる距離から、Iフィールドごと切り裂く”。

そんな芸当、聞いたこともないぞ。上層部はハイパー・ビームサーベルなどと呼称していたが」

 

「“ハイパー・ビームサーベル”……ですか」

 

ヤザンがにやりと笑った。

 

「それは面白い。今後はそう呼ぶとしましょう」

 

一拍置いて、ヤザンの声が真剣になる。

 

「――可能か、ですか? 可能ですよ。

あいつらならやる。それができるから、あの《フル・サイコフレーム》が用意されたんです」

 

「君の機体も、確か……あの新型のプロトタイプを改修したものだったな。シナンジュ、と言ったか」

 

「ええ、シナンジュ・スタイン。あれもまた“化け物”ですが……」

 

ヤザンは肩を竦めて首を横に振る。

 

「俺には無理です。あれは“ニュータイプだけの力”ですから」

 

「なるほどな。では――もし、君なら、ビグ・ザムをどう倒す?」

 

問いに、ヤザンは即答した。

 

「接近して、Iフィールドの内側から破壊します」

 

その目には迷いがなかった。これが、歴戦の強者・ヤザン・ゲーブルの戦い方だった。

 

ココノエは一度ゆっくりと息を吐く。

 

「……なるほど。我々が心配していた“ビグ・ザムの撃破”は、君たちにとって簡単なことだということか」

 

「ええ。ビグ・ザムをどうすれば倒せるかではなく、“どう倒すのが最も効率的か”を悩んでいただけの話です」

 

その言葉に、艦長は小さく頷いた。

 

「ならば我々は――“ビグ・ザムが倒される前提”で動けばいいというわけだな」

 

「はい。そのつもりでいてください、艦長」

 

その瞬間、部屋の隅にいたカイ、ハヤト、リュウの3人の視線がヤザンへと集中する。

彼らは言葉を挟まなかったが、内心は言いたいことが山ほどあるようだった。

 

──やがて、会話が終わり、ヤザンが退室する。

 

その背中を追いかけるように、3人も静かに立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦長との会話を終えたヤザンがブリーフィングルームを出て、格納庫へ向かう通路を歩いていると、後ろから小走りにカイ、ハヤト、リュウの3人が追いついてきた。

 

「隊長」

 

先に口を開いたのは、ハヤト・コバヤシだった。

 

「……“ハイパー・ビームサーベル”ですか。そんなものまで、あいつら使えるようになったんですね」

 

ヤザンは横目で彼を見て、口元をわずかに歪めて笑った。

 

「ゼクノヴァ……敵のソロモンを軌道ごと吹き飛ばした、あのバケモン兵器に対抗するために作られたガンダムだぜ?」

 

「――その程度で驚いてるようじゃ、まだまだだぞ」

 

次に口を開いたのはカイ・シデンだった。

 

「余裕っすね、隊長。……いや、マジで余裕だな」

 

彼は肩を竦めて皮肉混じりに続ける。

 

「隊長のシナンジュも十分ヤバいですけど、あいつらの“フル・サイコフレーム”と模擬戦したら、さすがにもう勝てないんじゃないですか?」

 

ヤザンは立ち止まり、くるりと3人に向き直る。

 

「――関係ないな」

 

ピシャリと、即答だった。

 

最後にリュウ・ホセイが口を開いた。

 

「でも隊長、俺たちと同じで……“オールドタイプ”ですよね?

ニュータイプじゃないから、“サイコフレーム”の恩恵は基本的に受けられない。

……だからこそ、制御系は“バイオセンサー”の反応を最大限にしてるんじゃ?」

 

「そうだ」

 

ヤザンはリュウの言葉を認めるように頷き、だがそのまま、胸を張った。

 

「それで十分なんだよ。

どんな高威力な兵器でも、当たらなきゃ意味がない。

相手の攻撃をかわして、コクピットにぶち込めば――勝ちだ。

それがモビルスーツ戦ってやつだ」

 

言い切るその声に、3人は思わず押し黙った。

 

(……この人は、やっぱり“そういう人”だった)

 

そんな想いが、3人の胸に共通して浮かぶ。

 

ヤザンはさらに一歩、彼らに近づいてきた。

 

「いいか、連中がビームサーベルを巨大化させようが、Iフィールドを切ろうが、そんなのにビビって足を止めるようじゃ生き残れんぞ」

 

指を立てて、厳しい目で言い放つ。

 

「お前らは、お前らの武器と連携で敵を倒せ。それだけだ」

 

「……はい!」

 

自然と3人の背筋が伸び、敬礼が揃った。

 

その背中を見ながら、ヤザンは再び歩き出す。

 

彼の歩幅は変わらない。

 

――たとえ、時代が“ニュータイプの時代”に変わろうとも。

“ヤザン・ゲーブル”という男の戦い方は、決してブレないのだった。

 




教導の新人さん誤字報告ありがとうございます。
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