ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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第十四話: 衛星軌道決戦1

【場所:衛星軌道上/ジオン軍・旗艦艦橋】

 

「フン、連邦め……このビグ・ザムが怖くて上がってこれんのか?」

 

コンスコン少将は椅子にどっかりと腰を下ろし、傲然と笑った。眼下の地球、その重力井戸の中で足掻く敵の姿すら見えない静寂を、彼は勝利の兆しと受け取っていた。

 

副官も、ニヤリと口元を緩めた。

 

「かもしれませんな。あんなもの——連邦の艦隊も、モビルスーツも、ビグ・ザムの前では紙クズ同然。巣の中で引きこもって震えている方が、奴らにはお似合いでしょう」

 

「フハハハ! 言い得て妙だ!」

 

その時だった——

 

遠く離れた宙域に配置されていた味方の艦隊。そのうちの一角——ムサイ級戦艦4隻が突如、閃光とともに膨れ上がった火球に呑まれ、爆発四散した。

 

「なに!?」

「……爆発!? 被弾か!?」

 

艦橋に警報音が鳴り響く。

 

「味方のムサイ級4隻、未知の長距離砲撃を受け壊滅! 火力規模から見て……戦艦級のビームと思われます!」

 

「……なに? 戦艦級だと!?」

 

コンスコンが怒号を飛ばす。「撃ってきた方角は!? そこに何がいる!?」

 

オペレーターが急いで周辺宙域のデータを確認し、目を見開いた。

 

「……これは……戦艦ではありません! モビルスーツです……!」

 

「モビルスーツぅ!? バカな、そんな火力が……!」

 

オペレーターの声は震えていた。

 

「ガンダムです! 複数のガンダムが、長距離から戦艦級の砲撃を行っています!」

 

「アレックスか!?」

 

「いえ、違います! ……アレックスよりも新型、明らかに違うタイプのガンダムです!」

 

その言葉に艦橋の空気が凍りついた。コンスコンが苛立ちに顔を歪める。

 

「……クソッ、ミサイルでもビームでも何でもいい、撃ち落とせ!!」

 

副官が一喝する。

 

「全砲門、迎撃体制! 一斉発射せよ!」

 

だが——

 

「無駄です! 攻撃が……攻撃が全部、弾かれています!」

 

オペレーターの声が叫びに変わる。

 

「奴ら、ビットのようなものでバリアを展開して防いでいます! 回避も異常に速い……! これは、まともに当たりません!」

 

「ビットでバリアだと……!? ビグ・ザム4機を回せ! あの化け物で押し潰せ!!」

 

コンスコンが怒鳴るが、その叫び声の裏で、別の四隻の艦もまた閃光で爆ぜた。

 

そして始まるのは、静かな“蹂躙”だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【連邦視点】

 

黒い宇宙空間。その一角、無数の岩塊に紛れるようにして、5機の機体がじっと潜んでいた。

 

4機のフル・サイコフレーム搭載ガンダムと、その背面に張り付くように固定されているのは、白と青のZガンダムだった。

 

「……ねえ、ちょっといい?」

 

Zのコクピット内、フォウ・ムラサメが呆れ声で通信を開く。

 

「Zの再設計ってさ、あんたたちの“ガンダムを万全の状態で運ぶ足”って役目もあるんじゃなかったっけ?」

 

ゼロ・ムラサメのバンシィが岩陰からひょいと顔を覗かせる。

 

「ああ、そんな建前もあったな。確か」

 

「じゃあさ、この状況は何よ」

 

フォウのZガンダムは、今まさに、4機のフル・サイコフレーム機の後を追っていた。サイコフレームの力で推進剤を使わず、岩陰を縫うように滑る4機の機体に、Zガンダムは掴まるようにして“牽引”されていた。自身では推進剤を使わず、まるで静かに引き寄せられるようにして移動している。

 

「……まあ仕方ないよ」リタ・ベルナルが小さく笑う。「Zにはできない移動方法だから」

 

「良いけどさ……もうちょっと丁寧に運んでくれても良くない?」

 

小声でぼやくフォウに、アムロの声がピリッと割り込んだ。

 

「――そこまでだ。位置取りはほぼ完了。これより、通信を閉鎖する。砲撃ポイントまで沈黙を保て」

 

「了解!」

「了解」

「了解です」

 

4つの声が、静かに重なった。

 

 

 

 

 

 

【衛星軌道宙域】

 

岩場に擬態した移動から、フル・サイコフレームの4機は一斉に身を起こし、持ち込んだ岩塊の上に四脚で伏せるようにガンダムが並んだ。彼らの手には、艦艇用の主砲並みの火力を誇る――ビームマグナム。

 

照準は、ジオン艦隊の背後――つまり砲撃戦に気を取られた無防備な船体。

 

「カウントで撃つぞ。ゼロ、カミーユ、リタ……行く」

 

それぞれが静かに息を整え、マグナムを構える。

 

「3」カミーユ

「2」ゼロ

「1」リタ

「0」アムロ

 

その瞬間、4本の紅い閃光が一斉に宇宙を貫いた。

 

轟然――。

 

4隻のムサイ級戦艦が、火花と爆発の花を咲かせて沈黙する。

 

 

【数分後/戦闘継続中】

 

「……20隻目だな」

 

岩陰に身を潜めたまま、アムロ・レイが敵艦の爆煙を静かに見下ろす。

 

「ビームマグナムは、1機につき残弾10発。計40。できればあと20隻、敵艦を沈めて戦線を崩壊させたかったが……そう簡単にはいかないか」

 

その言葉を呟くアムロの周囲には、先ほどから絶え間なく飛んできている敵の迎撃ミサイルやビーム砲――

それらを迎え撃ち、あるいは軌道を読んで回避させている、5機の機体と、それに連動するフィン・ファンネルの姿があった。

 

空間には、放たれた光線の網を裂くように、青白い軌跡を描きながら飛翔する無数のフィン・ファンネル。

フォウ・ムラサメのZガンダムが中央にあり、彼女の集中した思念は、防御に徹したファンネル制御を実現させていた。

 

フォウのファンネルは3機のフル・サイコフレーム機とデータリンクを組み、

ゼロ、カミーユ、リタの3人もまた自分のファンネルを展開し、補助・防衛網を維持している。

 

――それは、4機を中心に構築された、小さな防衛陣。

 

彼らは、フォウの制御するファンネルの護衛範囲内に自身の機体をわずかながら寄せつつ、目の前の攻撃を正確に迎撃・回避し続けていた。

 

フォウだけではない。3人もまた、自身のフィン・ファンネルを用い、局地的に迫る攻撃に即応しては迎撃。思念で補正された回避・防御のネットワークが、完全に機能していた。

 

「……充分に、使いこなしているな。さすがだ」

 

アムロは僅かに目を細めて呟いた。

 

が――彼のファンネルはさらにその先を行っていた。

 

敵から自機に向かってくる攻撃はもちろんのこと、ゼロの機体へ逸れたミサイル、リタの死角から伸びるビームの補足、カミーユの背後へ回り込むような砲撃――

 

そのすべてを、彼のフィン・ファンネルが察知し、静かに、的確に“援護”していた。

 

その動きは、もはや“防御”という範疇を超え、“指揮”と“介入”の域に達していた。

 

もし今のアムロの言葉を聞けば――誰もがこう答えるだろう。

 

「俺たちなんて、まだまだです」

 

同じフィン・ファンネルを操っていながら、その精度と対応範囲の差は歴然だった。

 

そしてアムロの視界に――その先に、さらなる巨影が現れる。

 

「……ビグ・ザムが、前に出てきた」

 

巨大なIフィールドのドームを展開しつつ、ゆっくりと姿を現す4機のビグ・ザムが、ジオン艦隊の前面に立ち塞がるように進出してくる。

 

まるで、今しがた壊滅した戦艦たちを守るために立ちはだかる“盾”のように。

 

「艦隊の盾になったつもりか。だが――こっちも想定済みだ」

 

アムロの目が、静かに、しかし確実に燃えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【場所:ジオン側/ビグ・ザム3号機コクピット内】

 

「くそっ……連邦のガンダムどもめ! まさか背後から来やがるとはな!」

 

「いいじゃねえか。正面から来れなかった時点で、ビグ・ザムが怖えって証拠だろ? 背中から来たところで、こいつの火力と防御力を前にゃ――楽勝だ!」

 

「よし、メガ粒子砲、発射準備! あの4機まとめて吹き飛ばす!」

 

「敵、距離およそ……まだ中距離圏。いける!」

 

コクピット内は勝利を確信した空気に包まれていた。

 

しかし、次の瞬間――

 

「……あれ、なんだ?」

 

前方のモニターに映る、4機のガンダムがビームサーベルを構えた姿。しかも、距離はまだ射撃で撃ち合う距離だ。常識では考えられない間合いだ。

 

「何を……? あいつら、まさかあの距離でサーベル構えて――何のつもりだ?」

 

「威嚇か? それとも挑発――」

 

その言葉が終わるよりも早く、異変が始まった。

 

「お、おい……あのサーベル、伸びてるぞ……!?」

 

「なに!?」

 

ガンダムの手に握られていたビームサーベルの刃が、まるで命を持つかのようにぐんぐんと巨大化していく。

 

長さ数十メートル……いや、それ以上――

桃色の刃が空間を裂きながら、眼前のビグ・ザムへと迫ってきていた。

 

「ありえねぇ……何だそれは!? あの距離から――!」

 

「Iフィールドを……貫通してるだと!? バカなッ――!」

 

斬撃が走る。

 

【ビグ・ザム3号機、被弾――装甲突破、コクピットブロック損傷!】

 

「ギャアアアア――!」

 

咆哮のような悲鳴が、爆発音に掻き消された。

 

続けざまに、2機目、3機目、そして4機目。

 

4本の“巨大な光の刃”が、空間ごと敵機を両断していく。

 

――これはもう、ビームサーベルではない。

 

それはまさしく、艦長達がハイパー・ビームサーベルと呼称したことを誰もが理解できる。

距離を超え、理を超え、常識をも両断する、新たなる戦術の幕開けだった。

 

爆散するビグ・ザム群。その光景を前に、ジオン側の通信は混乱と恐慌に包まれていく。

 

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