ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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第十六話: ギレン・ザビ2

ザビ家、血の継承

 

【場所:ジオン政庁区・戦略情報室/深宙通信制御棟】

 

 大型ホロスクリーンが点滅している。表示されているのは、全滅を示す赤い印の列──宇宙艦隊、撃沈70隻以上。帰還艦艇、ゼロ。

 

 報告を聞いたグレミー・トトは、無言のまま両の拳を握りしめていた。淡い金髪が静かに揺れ、爪が掌に食い込む音すら響くほどの沈黙。

 

 やがて、震える声が空気を切り裂いた。

 

「……ば、バカな……ッ。迎撃艦隊には、ビグ・ザムが5機……重巡だけで30隻以上がいたはずだ。たった一日で全滅……そんな、そんな道理があるものか……!」

 

 少年の声は、怒りとも怯えともつかない悲鳴だった。

 

 だが、その背後から返るのは、冷ややかで柔らかな声だった。

 

「その“道理”を、現実が塗り替えたのです。」

 

 静かに進み出てきたのは、セシリア・アイリーン。

 

 漆黒のスーツを纏い、凛とした美しさを保ったその姿は、グレミーの生物学的“母”としての気品を体現していた。だが、その眼差しはあくまで冷静で、情に流される母性とは異なる種の鋭さを帯びている。

 

「連邦軍の新型ガンダムが戦線に姿を現したと報告されています。最強のニュータイプ“アムロ・レイ”その人です」

 

「アムロ・レイ……!」

 

 グレミーの声に鋭い苛立ちが宿る。

 

「奴さえいなければ……!」

 

「“たら・れば”を語るのは、敗者の言葉よ。あなたにはまだ、その資格はない」

 

 アイリーンは諭すように言ったが、その声音には決して甘さはなかった。

 

 そこへ、重厚な扉が静かに開く。

 

 踏み入ってきたのは、ジオン総帥──ギレン・ザビ。

 

 黒き軍服を完璧に着こなし、すらりとした長身のまま、無言で二人を見下ろす。その威容だけで、部屋の空気が一瞬にして張り詰めた。

 

「……我が艦隊の損耗率、98.6%。残存艦艇ゼロ。捕虜少数。――だそうだ」

 

 ギレンは一言ごとに、まるで軍法会議の判決を下すかのように淡々と述べた。

 

「戦場に出た兵は、よくやった。しかし“指揮”が足りなかった」

 

 彼の視線が、無言のままグレミーを貫いた。

 

 だが、叱責はない。ただ、それが事実であるというだけの無機質な確認だった。

 

 グレミーは、深く頭を垂れる。

 

「……申し訳ありません、父上」

 

「誤るな。今、お前に必要なのは冷静な思考と、次の手を打つ速さだ。」

 

 ギレンの声に、一切の情はない。だがその冷酷さは、鋼の盾のように彼らを守る理と秩序を象徴していた。

 

「ア・バオア・クーは健在だ。我が支配する宙域の要であり、連邦の突進を止めうる唯一の砦だ。そして何より――そこには“私の指揮”がある」

 

 ギレンは一歩、グレミーに近づき、低く語りかける。

 

「私が前線に立つ。“無敵”の連邦艦隊とやらに、“恐怖”を教えてやろう」

 

「父上……それは……!」

 

「貴様に命ずる、グレミー・トト。各宙域のニュータイプ部隊を招集せよ。“実用レベル”に達した個体のみを選抜すること。虚飾は不要だ」

 

「……はっ!」

 

 グレミーの声に、もはや怯えはなかった。あるのはただ、冷たく整然とした戦略の思考。

 

 ギレンの視線が、アイリーンに向けられる。

 

「セシリア、即時、残存艦隊の再編成と、ア・バオア・クーへの再集結命令を布告しろ。遅れるな。すでに、戦端は切られている」

 

「了解しました、総帥」

 

 アイリーンはわずかに口元を引き締めた。

 

「息子が父の“影”で終わらぬよう、私も最善を尽くしましょう」

 

 ギレンは何も言わず、背を向けた。

 

 その黒い軍服が、まるで宇宙そのもののように冷ややかで、巨大だった。

 

(――次の戦場は、ア・バオア・クー)

 

(ジオンの“心臓”にして、“墓標”となるかもしれぬ場所)

 

 だがギレン・ザビは、敗北を思考に入れない。

 彼にとって勝利とは、結果ではない。唯一の許容である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【場所:政庁区・総帥執務室】

 

 先に入室したのはグレミー・トト。その手にはタブレット端末が収められた薄型ブリーフケース。続いて入ってきたのはセシリア・アイリーン。胸元に抱えたファイルの厚みは、差し迫る戦局を象徴するかのようだった。

 

 室内では、ギレン・ザビ総帥が書類に目を通していた。視線だけで二人を認識し、言葉もなく手の動きだけで「始めよ」と促す。

 

「父上、ニュータイプ部隊の現状をお持ちしました」

 

 グレミーが口を開き、机上に端末を差し出す。

 

「現在、配備可能なプルシリーズはNo.1からNo.11までの十一名。プルトゥエルブはテスト実戦にて撃墜されましたが、あれは最下位個体でした。プルツーを筆頭に、他の個体は十分に戦力として期待できます」

 

 ギレンは無言で画面に目を落とす。成績グラフ、バイタルデータ、搭乗機適性、反応速度、ファンネル使用率──整然とした数字の羅列。虚飾も感情も、ここには一切なかった。

 

 続いて、セシリアが前へ進み、机にファイルを差し出す。

 

「これが、戦時下における急造艦艇も含めた艦隊再編成の構成表です。また、ア・バオア・クーにおける配備予定図を同封しています」

 

 ギレンは図面を手に取り、わずかに目を通しただけで即断した。

 

「……問題ない。これで進めろ」

 

「了解しました、総帥」

 

 セシリアは無駄のない動作で敬礼し、一歩下がる。

 

 再びギレンが口を開いた。

 

「グレミー。ニュータイプ部隊の“予備”……ナンバーを持たぬ個体たちはどうだ?」

 

「……彼らは現在、補欠要員として待機状態です。ファンネル操作能力も低く、反応速度もプルシリーズに比べ劣ります。実戦投入は困難かと」

 

「せいぜい露払い、といったところか?」

 

「はい。プル達の影として戦場に置くには支障ありませんが……それ以上は期待できません」

 

 ギレンは指を組み、無感情な声で言い放った。

 

「強化しろ」

 

「……強化、ですか?」

 

「そのままでは使えぬなら、使えるようにすればよい。連邦はすでに強化人間の生産を放棄したが……奴らのニュータイプ研究所で培われた技術の一部は、こちらにも流れてきている」

 

「なんと……」

 

 グレミーの目がわずかに見開かれた。

 

「ただし、参考にできるのはムラサメ研究所ではない。失脚した軍人バスク・オムが用いた、“命を使い潰す”前提の強化薬物技術だ。精度には劣るが、即効性と割り切れば有用だ。キュベレイの上位機、マグナ・マーテルの搭乗も可能になるだろう」

 

「マグナ・マーテル……」

 

 グレミーが呟いた。

 

「あの上位機体は、プルシリーズですら身体負荷が過大で適合しなかったはず……しかし、死を前提とした“失敗作”に施術すれば、戦場での一撃兵器としては成立すると・・」

 

「そうだ」

 

 ギレンは机に手を置き、冷たく続けた。

 

「モチベーションも与えてやれ。“強化施術を受け、この機体で戦果を上げれば、ナンバーを与える”……あるいは、戦後に退役を望むなら、“戸籍”を用意するとでも言っておけ」

 

「……“戦後”など存在しないと知らずに、ですか」

 

 ギレンは微かに口角を上げた。

 

「自らの“名前”を欲するほどに深く管理された個体は、手綱を握りやすい。死を意識させぬまま、消耗させる。それが最も効率的な道具の使い方だ」

 

「……了解しました、父上」

 

 グレミーが頭を下げる。そこには、もはや少年らしさはなかった。ただ一人の将校、一個の“戦略部品”として、ギレンの命令を機械的に実行しようとする姿勢だけがあった。

 

「セシリア、グレミー。準備に移れ。ア・バオア・クーの守りが、我らの“宣誓”となる」

 

「はっ!」

 

 二人の声が、完全に揃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ア・バオア・クー:特別兵装実験区画】

 

ジークアクスとジフレド――

オメガ・サイコミュを搭載した1号機と2号機の艶やかな機体が、回収されたファンネル群と共に格納庫に安置されていた。

 

「うわぁ……本当にファンネル使うんだ……」

 

ニャアンが半ば呆れたように呟いた。

ファンネル・コンテナの試験接続を受けているジフレドを見つめながら感嘆する。

 

「……“やらせてもらえる”ってことは、裏を返せば“殺れる”と思われてるってこと」

 

マチュが淡々と告げた声には、かつての迷いや怯えはなかった。

彼女の視線は、すでに戦場の先――アムロ・レイの姿を見据えていた。

 

そのとき、格納庫の天井のシャッターが開き、二つの黒い影がゆっくりと降下してきた。

機体は量産型キュベレイ。ファンネルの入ったバインダーを背負い、いずれも華奢なシルエットながら、ただならぬ威圧感を纏っていた。

 

「到着したようね」

 

「やれやれ、グレミーに呼ばれて面倒な役が回ってきたと思ったら、子供の面倒かよ」

 

二人の女性――

一人は、朱色の髪を軽く揺らす軍服姿の少女・アンネローゼ・ローゼンハイン。

もう一人は、鮮やかな瞳を覗かせたプルツーであった。

 

「こっちは“実戦に投入できる能力”が条件だって言ってたけど、さて――どっちがジークアクス?」

 

「……私がマチュ。ジークアクスのパイロット」

 

「私はニャアンです。2号機、ジフレドのパイロットです」

 

名乗った瞬間、ローゼンハインの目が鋭く細められた。

 

「オメガ・サイコミュの起動者、って話は聞いていたけど……なるほど。目を見れば分かるわ。“殺す”ために訓練してる目ね」

 

「ふん、どっちもまだ硬いけど、力の質は悪くない」

 

プルツーが軽く笑い、ふわっと肩をすくめた。

 

「いい? ファンネルってのは、ただ飛ばせばいいってもんじゃない。ニュータイプの“意志”と“反射”をどこまで同期できるかが勝負なの」

 

「ビット訓練やってるなら慣れてると思ってたけど、こっちは桁が違うからね。距離、速度、加速、角度――全部リアルタイムで変わる」

 

「ついてこれる?」

 

マチュは一歩前に出た。

 

「……やってみせる。殺したい奴がいるから」

 

プルツーの瞳が一瞬だけ揺れた。だが、すぐに笑みに変わる。

 

「いいね。その顔、嫌いじゃない」

 

ローゼンハインも口元をほころばせる。

 

「よろしい。じゃあ、まずはファンネルの同期テストから。頭じゃなく“意思”で制御するのよ。死にたくないなら、ね」

 

「うん、ニャアン……いこう」

 

「うん、行くよ。マチュが決めたなら、私も“そっち”に立つ!」

 

四機のMSが、ファンネル訓練用の特別宙域へと移動を開始する。

 

闇を纏うようなサイコミュ波が、静かに震え始めていた。




UCエンゲージのペッシュ編全部見切りました。こんなに利用されつくす主人公いる!?ナナイさんをムラサメ研究所入りさせたのを後悔するぐらいの利用されっぷりでした。逆シャアとカイシデンレポートのイメージだったから登場させたけど、ちょっと相応しい場所に移そうか悩み中です。

皆さんのナナイさんのイメージってどれですかね?

  • 逆シャアで総帥を公私ともに支えた才女
  • カイシデンレポートで出て来た非検体↓
  • で可哀想系の少女ナナイ
  • UCエンゲージのペッシュもロザミィも↓
  • 利用し尽くした根っからの研究者
  • ベルトーチカチルドレンのメスタ・メスア
  • それ以外のナナイ
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