ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
【ア・バオア・クー:特別宙域ファンネル訓練エリア】
宙域に漂う静寂を破るように、五つの小型粒子が閃光を描いて飛び交っていた。
ファンネル──ニュータイプ専用兵装。その軌道は思考と直結し、感覚で制御する。
だが──。
「ちっ、めんどくさい……!」
ジークアクスの機体から発射されたファンネルは、右に左に機敏に動くものの、まるで噛み合わない。
攻撃の角度、同時性、回避の間合い。すべてが“半拍ずれて”いた。
「ファンネルって、こんなに操るのに神経使うの……?」
マチュの吐き捨てた声には、苛立ちが滲んでいた。
ニュータイプとしての能力は十分。だが、繊細な操作が追いつかない。頭で全部コントロールしようとすればするほど、制御はぎこちなくなっていく。
《マチュ! 頭で操るな! 意思で使えって言ったろ!》
通信越しに鋭い声が叩きつけられる。
プルツーだった。
彼女の量産型キュベレイは、訓練宙域の対面で悠然と待機している。五基のファンネルがすでに戦闘態勢で周囲を旋回していた。
《意思って言われても……具体的に何をすればいいの?》
マチュの返答は、苛立ちよりも困惑に近かった。
《何でもいい。敵意でも、殺意でも……私にぶつけてこい。ファンネルはそれに応えて動く。》
(殺意……)
その言葉に、マチュは息を止めた。
静かに目を閉じる。
思考ではなく、“心”を研ぎ澄ませる。
暗闇の中に、かつての光景が浮かび上がる。
シュウジの命が消える瞬間。
崩れ落ちる赤いガンダム。
そして──蒼白い閃光を放ち、虚無のように静かに佇む、アムロ・レイのアレックス。
その姿が、目の前にいるキュベレイの輪郭と重なっていく。
「……殺意か」
喉の奥から、自然に声が漏れる。
「――殺れ……ファンネル!!」
叫んだ瞬間、ジークアクスの周囲に散っていたファンネルが、まるで荒ぶる意志を得たかのように爆発的に動き出した。
波紋のように広がるサイコウェーブ。
ファンネルは一気に敵機を囲み、ランダム性を排した殺線を描いて突撃する。
《ッ!?》
プルツーの表情が初めて揺れた。
(動きが違う……さっきまでとまるで別人)
即座にカウンターで自機のファンネルを指向させる。
だが、その一基が捕捉する前に、ジークアクスのファンネルが“回避”ではなく“撃ち落とし”の動きを取った。
《やるじゃない。だが──!》
「やれば出来るじゃないか!」
プルツーが嘲るように笑いながら、残りのファンネルを全力で放つ。
「でも、たかが数回の操作経験で、あたしのファンネルに勝つのは――!」
だが──。
次の瞬間、プルツーは“知らなかった”ことを知る。
マチュが持つのは、与えられたサイコミュ適性ではない。
“殺意”そのものを波動に変える、凶暴で、純粋なニュータイプ能力。
それは、強化人間がどれほど訓練を重ねても得られない、天賦の差だった。
ギュン――!
プルツーのファンネルが、追尾中に押し戻される。
「……は?」
制御が一瞬、切れる。
自分のファンネルが、自分の意思を“逸れた”のだ。
「こいつ、何……?」
マチュのファンネルは、制御という枠を超えていた。
まるで意志を持った獣のように、ただ“殺すべき対象”に向かって突撃する。
プルツーが動揺した一瞬の隙を突いて、ジークアクスのファンネルが彼女のキュベレイの装甲をかすめ、警告信号が鳴り響く。
《訓練中、直撃は避けろ!》
ローゼンハインの制止が飛ぶが、マチュはすぐには応じない。
その声すらも、今の彼女には“音”でしかなかった。
「……アムロ・レイ……お前を……殺す」
空間が冷えた。
プルツーですら、目を見張るほどの“殺意の濃度”が、その一言に込められていた。
(これが……本気の殺意を持ったニュータイプ……)
(あたしとは、根っこが違う……!)
やがてジークアクスのファンネルが停止し、静かに戻っていく。
マチュは、はっと息を吐き、我に返った。
「……っ」
ローゼンハインが静かに呟く。
「……危険すぎるわ。だけど、使える。あの力なら、“あれ”とすら戦えるかもしれない」
訓練宙域のサイコミュ濃度が、じわじわと冷たく沈んでいく。
そして──マチュの背後には、視察用シャトルがすでに接近しつつあった。
【ア・バオア・クー宙域上空/視察用シャトル内部】
グレミー・トトは、無言のまま宙域を見つめていた。
シャトルの窓に映るのは、ジークアクスとキュベレイがファンネルを交差させる模擬訓練。
訓練宙域では、オメガ・サイコミュ搭載型MS「ジークアクス」がファンネルを試射していた。
搭乗者はマチュ。かつて機密を奪った敵であり、今や戦力候補として選抜された“高適性者”の一人だ。
だが――。
「……オメガ・サイコミュを搭載したモビルスーツに乗っているのに、この程度か」
グレミーは唇をわずかに歪め、低く呟いた。
「反応速度は悪くないが、制御が甘い。軌道は分断、攻撃の集束もできていない……所詮は素人か」
彼の手元に浮かぶホロパネルには、マチュの脳波・サイコウェーブ安定値・リアクションラグの統計が並んでいた。
いずれも標準ニュータイプ兵の上限を超えてはいる――が、制御に“意思”の一貫性がなかった。
「これでは、プルツーには届かないな」
モニターの片隅では、冷静に応戦する量産型キュベレイの姿。
搭乗者、プルツー。グレミーが自ら選び、育て上げたニュータイプ兵の一人。
訓練を積んだ“強化人間”の精鋭だった。
(オメガ・サイコミュといえど、操るのがこの程度では……。戦力としては誤算か)
その瞬間だった。
マチュが、動きを止めた。
目を閉じ、息を殺す。
「……?」
グレミーの眉が微かに動く。
ジークアクスの周囲を漂っていたファンネルが、一拍の沈黙の後――まるで何かを“感じ取った”ように、突如として軌道を変えた。
「ッ……!?」
弾かれるように飛び出す五基のファンネル。
まるで“怒り”そのものを動力とするかのように、一斉に殺線を描き、プルツーのキュベレイへ突撃する。
(これは……!)
制御反応が激変していた。さきほどまで散漫だった出力が、驚異的な密度と直線性を持ち、明確に「殺す」ための動きへと変貌している。
「殺意……?」
グレミーの目が見開かれた。
(まさか、あの娘……敵意をサイコミュに変換しているのか!?)
プルツーのファンネルが自動迎撃に出る。しかし、マチュのファンネルは一歩も引かず、真正面から撃ち合い、衝突し、軌道を捻じ曲げてさえ押し返した。
(これは……並のファンネル操作じゃない。いや……プルツーのファンネル制御を……“上回っている”?)
思わずグレミーは椅子から前のめりになる。
補佐官が困惑して声をかけた。
「ご覧になりますか? データの異常が──」
「いや、これは……“異常”ではない。“才能”だ」
グレミーの声が震えていた。
(殺意を核とし、ファンネルに“意思”を宿らせる。そんな制御……強化人間は普段からやっている。だが実際の力は比べ物にならない。彼女は……本物のニュータイプだ)
一瞬、脳裏にある名がよぎる。
アムロ・レイ。
その“化物”に届く可能性を持つ、ほんの一握りの者。
(もしかすると……マチュは、“その領域”に届きうる……?)
目の前で展開されるファンネル戦は、もはや訓練ではなかった。
殺意を込めた意思と、それに応じる兵器との――“感応”の戦いだった。
「……面白い」
グレミーが低く笑った。
「まだ未熟だが、“素材”としては……逸品だな」
その声音には、指揮官としての冷徹な評価と、戦術家としての興奮が宿っていた。
「問題は……彼女がどこまで“その意志”を燃やせるかだ」
ホロスクリーンに映るジークアクスの輪郭が、青白く揺れていた。
(プルツーですら気圧されるほどの“殺意”。この力を“戦略”に変えるのが……私の役目か)
「――場を整えてやろう。徹底的に、戦場で使えるように」
グレミー・トトの目に、“価値”ある兵器を見出した者の光が灯った。
そして、その裏で――シャトルの視線には気づかぬまま、マチュの隣にいたニャアンは、仲間が“何か”に呑み込まれていく気配を、感じ取り始めていた。
【ア・バオア・クー内部:第3兵装棟・休憩区画】
白いプラズマ灯が照らす休憩室に、蒸気を立てるマグカップがいくつも並んでいた。
訓練後の汗がまだ乾ききらぬまま、マチュとニャアンは作業着の上着を脱ぎ、テーブルを挟んでプルツーとローゼンハインと向き合っていた。
冷却飲料をぐいっと煽ったローゼが、唐突に口を開く。
「最初聞いた時は、頭の逝かれた女だと思ってたんだけどね」
「誰が頭が逝かれてるだ!」
マチュが即座に反応し、ローゼに睨みを送る。
「そりゃあそうだろ。だってあんた、“あのアムロ・レイを殺す”なんて言って、ジオンに入ったんだろ?」
ローゼの目は笑っていたが、同時にどこか本気の色も帯びていた。
マチュはわずかに黙り込んだ後、低く返した。
「……ジオンでは、あいつを倒そうって奴はいないの?」
「そりゃあ、いるさ」
ローゼは小さく肩をすくめた。
「あいつを倒せば、永遠に語り継がれる英雄になれる。孫の代まで遊んで暮らせるほどの褒賞だってもらえるってな。軍学校の入学式の後なんか、“白い悪魔を倒して英雄になってやる!”って叫ぶ馬鹿はザラにいるよ」
「じゃあ……力になってくれる人が大勢いるってことですか?」
珍しく、ニャアンが前のめりになって訊ねた。
その目には、ほんのわずかな希望が浮かんでいた。
だが──。
「甘いな」
ローゼが即座に笑いをかき消した。
「みんな現実を思い知るのさ。あいつの戦闘映像を見れば、誰でも理解する。“こいつには何十年鍛えても勝てない”ってな」
空気が静かになる。
室内の冷房の風が、静かにマチュの髪を揺らす。
「……映像越しに見たにしては、随分と実感があるね。直接戦ったの?」
「さすがにないよ」
ローゼが鼻で笑った。
「あたしは一年戦争後、地上で残党やってたからね。遠目に見ただけ。それでも分かったよ。“こんな奴の前に立ったら10秒も持たない”って」
マチュの拳がわずかに震えるのを、ニャアンは隣で感じ取っていた。
「……で、最初の話。“頭の逝かれた女”って思ってたってことは、今は違うの?」
マチュの問いに、ローゼはわずかに口の端を上げた。
「可能性はあるんじゃない?」
そこに割って入ったのは、黙って飲み物を啜っていたプルツーの声だった。
淡々と、しかし何かを見透かすような静けさを持った声。
「少なくとも、ジオンで現場にいる最強のニュータイプは“灰色の幽霊”。次があたしだ。あたしに勝てるんなら、アムロ・レイに届く可能性はゼロじゃない。なら、ただの逝かれ女じゃ無いさ」
ローゼが肩をすくつつ内心で思う。
(ゼロじゃない。まあ“0.0000001”くらいにはなるかもね。でも、あたしは0だと思ってる。だからせいぜい頑張ってくれ。……正直なところ、あいつの前に出るなんて、私は絶対にごめんだよ。そんなことになったら──武装放棄して、降伏するさ)
その心の声には一片の冗談もなかった。それは圧倒的な差に心折られたものの諦めだった。
ニャアンは、プルツーの話を聞いて少しだけ俯いた。
(……マチュは、本気であの人を倒そうとしてる)
(本気で、“アムロ・レイ”っていう化け物に、立ち向かおうとしてる)
(私は、マチュの“友達”としてここに来た。マチュが戦うなら、私も戦う……そう思ってた)
でも、ファンネル訓練中に見た、あの光景。
プルツーのファンネルをねじ伏せたときのマチュの“瞳”。
それはもう、ニャアンの知っている“マチュ”じゃなかった。
(……あれは、“戦場の目”だ)
(復讐の目、憎しみでしか前を見られなくなった人の目……)
飲み物に口をつけようとしたが、手が少しだけ震えていた。
(……マチュが、全部を“復讐”で染めてしまったら、どうなるんだろう)
(シュウちゃんはもう戻らない。だけど、復讐が終わったら……あたし、3人の夢だった、地球に一緒に行ってみたかったんだ。青い海で、浮かんでみたかった。何も考えずに、笑い合ってみたかった)
(でも、今のマチュは、その“先”を考えていないような気がする。ただ、アムロ・レイを殺す。それだけが存在理由みたいに……)
(そんなの、怖いよ……)
胸の奥に広がる不安と、恐怖と、言いようのない焦燥。
(でも違う……違うよね、マチュ。そうじゃないよね?)
(アムロ・レイさえ倒せば――きっとまた、前みたいに戻ってくれるはず)
(だから、あたしは信じる)
(信じて、一緒に戦う)
皆さんのナナイさんのイメージってどれですかね?
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逆シャアで総帥を公私ともに支えた才女
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カイシデンレポートで出て来た非検体↓
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で可哀想系の少女ナナイ
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UCエンゲージのペッシュもロザミィも↓
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利用し尽くした根っからの研究者
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ベルトーチカチルドレンのメスタ・メスア
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それ以外のナナイ