ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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前日譚: 01ガンダムのパイロットの献身2

赤い彗星の脅威

 

「っ……来たか!」

 

ヴェルツ大尉の額に汗が滲む。サラミスから分離されたセイバーフィッシュ部隊から切り離され、彼とザクのパイロットは静かに待ち構えていた。予測通り、牽引されるペガサス級の陰から、白の機体――ガンダム2号機が姿を現す。

 

「ガンダム2号機、確認……!」

 

ヴェルツはすぐさまガンダム1号機の右肩に装備されたハイパーバズーカを構える。

 

しかし――

 

「!」

眩い閃光が走った。

 

「うわっ――!」

 

隣で援護するはずだった鹵獲ザクが、一瞬で閃光に飲まれる。

 

シャアのガンダム2号機が放ったビームライフルの一閃だった。ザクの装甲は為す術なく、蒸発していく。

 

「くそっ! 奪ったばかりの機体だろうに……よくもまあ、ここまで……!」

 

ヴェルツは歯を食いしばった。恐るべき適応力。やはり“赤い彗星”は伊達ではない。

 

「だが、ガンダムは囮……! せめてペガサス級だけは……!」

 

ヴェルツはバズーカをシャア機へと向ける。

 

だが照準の中心は、実のところ“その背後”――牽引されるペガサス級だった。シャアが機体を避ければ、榴弾は後方の艦体を撃ち抜く。いかに彼とて、囮を見抜けるものか――

 

「撃てぇぇぇッ!!」

 

ドン――ッ!

 

推進剤が火を噴き、砲身が爆鳴を響かせる。弾道は見事に赤い機体へと迫る――

 

だが。

 

「なっ……!?」

 

シャアは寸前で右舷に回避、ガンダム2号機の機体を“ひねり”で回転させながら、すぐさまビームライフルを引き抜いた。

 

「――見えている!」

 

ビームが奔った。バズーカ弾がペガサス級に届く寸前――光に焼かれ、爆散した。

 

「そんな……!」

 

唇を噛む暇もなく、シャアのガンダムが急速接近してくる。

 

「なら――まだだッ!!」

 

ヴェルツは叫びながらガンダムのビームサーベルを起動させる。ガンダム1号機の脚部バーニアを吹かし、白い機体へと突貫する!

 

距離、十――五――三――!

 

「うおおおおおおおッッ!!」

 

サーベル同士が交差する。スパークが散る。機体がぶつかる。その一撃、一撃に、ヴェルツの思念が宿る。

 

(博士を……! 連邦の希望を……!)

 

しかし――

 

シャアの剣閃が一歩、早かった。

 

ビームが走る。ヴェルツのガンダムが、切り裂かれ、宙に浮く。爆発まで数秒、もはや戦闘は不可能――

 

「……っ、ここまでか」

 

メインカメラがブラックアウトする中、ヴェルツは操縦桿に手を置いたまま、静かに口を開く。

 

「……艦長。……テム・レイ博士を、頼みます」

 

閉じゆく意識の中、ヴェルツは笑っていた。

 

未来を、信じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド7港湾区・ブレックス准将の視点

 

サラミス級巡洋艦が、静かに港に滑り込む。軋むような金属音と共にハッチが開き、白煙が舞う。すぐさま士官たちが次々に甲板を走り出し、艦首に立つブレックスは鋭い眼光で指示を飛ばした。

 

「最低限の人員だけを艦に残し、サイド7内部の捜索に向かえ! 最優先はテム・レイ博士の確保だ! 避難を希望する者がいれば、サラミスの港まで誘導しろ!」

 

「了解!」

 

作業服の兵士たちがプチモビへ飛び乗り、民間のトラックへと機材を積み込みながら次々に出発していく。その姿を見届けながら、ブレックスは帽子を深くかぶった。

 

(頼むぞ……ヴェルツ大尉の犠牲を無駄には、しない)

 

 

 

  ※ ※ ※

 

 

 

サイド7――かつて「安全圏」と呼ばれていたコロニー内部。だが今は、破壊された壁面と瓦礫、呻き声とすすり泣きが支配する空間と化していた。

 

「……私の……ガンダムが……盗まれるとは……」

 

項垂れる壮年の男――テム・レイ。肩の震えが止まらない。

 

すぐ隣に立つ少年、アムロ・レイは、どう声をかけていいか分からず、ただ立ち尽くしていた。

 

「父さん……」

 

こんなにも小さく見える父の背中を見るのは、初めてだった。

 

少し離れた場所では、肩を抱えうずくまるフラウ・ボウが嗚咽を漏らしていた。

 

「お父さん……お母さん……うう……」

 

その姿に気づきながらも、何も言えずに俯く少年たち――カイ・シデンとハヤト・コバヤシ。まだ“軍人”でも“兵士”でもない彼らに、できることなど何もなかった。

 

 

 

  ※ ※ ※

 

 

 

そこへ、数名の連邦兵が走り寄ってきた。

 

「――テム・レイ大尉!」

 

一人が声を張り上げ、男へと駆け寄る。

 

「……誰だ?」

 

うつむいたまま、テムが顔を上げる。視線は虚ろだ。

 

「ブレックス准将のサラミスの者です! 准将の命令により、あなたの捜索にあたっておりました!」

 

「ブレックス……准将……」

 

かすかに、目に光が戻る。

 

「では……01ガンダムは……! ヴェルツ大尉が来ているのか!?」

 

「……いえ」

 

兵士の顔が沈痛に歪む。

 

「ヴェルツ大尉は……先ほど、撃墜が確認されました。赤い彗星――シャア・アズナブルのガンダム2号機との交戦の末に……」

 

「……っ……!」

 

テム・レイは目を見開いたまま、膝から崩れ落ちた。

 

「そんな……では……もう、ガンダムは……一機も……」

 

その呟きに、若い兵士が懸命に言葉を重ねた。

 

「いえ! まだです!」

 

力強く、兵士が叫ぶ。

 

「あなたさえご無事でいてくだされば、我々はまだ戦えます! 大尉がいれば、盗まれたガンダム以上のモビルスーツが、きっと――!」

 

その言葉は、瓦礫に覆われた空間の中に、わずかながらも確かな“灯”となって響いた。

 

テム・レイの虚ろだった目に、かすかな決意の光が戻る。

 

「……ヴェルツ大尉は……そのために……」

 

 

 

  ※ ※ ※

 

 

 

港に戻ってきたブレックスは、遠くに連れられてくる男の姿を確認した。

 

「……見つかったか、テム・レイ博士」

 

その肩に重くのしかかる責任の重さを感じながら、ブレックスは背筋を伸ばして迎えに向かった。

 

 

――連邦の“反撃”は、ここから始まる筈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙と血の匂いがわずかに残る、サイド7港湾区の外れ。ブレックス准将は、再び地に足をつけたテム・レイの姿を目にして、静かに歩み寄った。

 

「……大尉。無事で良かった」

 

その声には、言葉にしきれぬ安堵と、これからへの期待が混ざっていた。

 

テム・レイは力なく笑い、そして視線を逸らすように小さく呟いた。

 

「……ガンダムは、全て失いましたが」

 

その声には、誇りと同時に、深い悔恨が滲んでいた。

 

「確かに。ジオンは……君のガンダムを解析するだろう。せっかく君が埋めてくれた技術差が、再び広がるかもしれん」

 

ブレックスは言い淀んだ。だが、すぐに言葉を強くする。

 

「――だからこそ! 君の力が必要だ、大尉。我々は、君を全力でジャブローまでお送りする!」

 

テム・レイは、微かに目を見開いた。

 

「……そうですね。ええ、機会さえあれば……やってみますよ」

 

確かに“言葉”には意思があった。だが、その声に乗る“希望”は、どこか薄く感じられた。

 

(この男ほどの天才でも……心は、折れかけているのか)

 

ブレックスは、わずかに眉を寄せ、そして静かに、しかし力強く語りかけた。

 

「弱気なことを言うな、大尉。連邦の皆が知っている。あなたの才能を!」

 

「ジオンに“10年の差”をつけられた――そう言われたモビルスーツ技術を、あなたは数ヶ月で覆したじゃないか!」

 

「ガンダムは、あなたの設計思想の結晶だ。……今度こそ、それを正しく活かす機会が来る! ジャブローで、再び――!」

 

しかしテム・レイは、その言葉に静かに首を振った。

 

「……それを、ジャブローの上層部が許してくれれば、ですが」

 

「……何を馬鹿な」

 

ブレックスは、一歩踏み出し、声を荒げかけたが――すぐに息を整え、言葉を選んだ。

 

「……確かに、君が技術部の古参たちに嫉妬されているのは知っている。だが、今は非常時だ。今さらそんな低次元な話をしている余裕など――」

 

「違うな」

 

テム・レイの言葉は静かで、それでいて断固としていた。

 

「……いや、違う、というのは言いすぎか。君の言葉も正しい。だが、私が今できることは――“その先”を考えておくことだ。そして、君に礼を言いたい」

 

ブレックスが目を見開く。テムは、初めてその視線を正面から返してきた。

 

「君が来てくれたおかげで、私は……このサイド7で、赤い彗星が蹂躙した跡に、息子を置き去りにせずに済んだ」

 

「避難民たちも、君のサラミスに乗せてもらえれば、安全にジャブローまで辿り着けるだろう」

 

「ありがとう、ブレックス准将」

 

その言葉は、どこまでも静かで、どこか別れのようでもあった。

 

ブレックスは、胸の奥がざわめくのを感じた。

 

(……何か、引っかかる。だが、今は――)

 

「礼などいらんさ。君の次の設計図で――それを“連邦の勝利”という形で返してくれれば、それでいい」

 

「……期待しているぞ、テム・レイ大尉」

 

ブレックスはこの時、目の前のテム・レイこそが今の連邦の苦境を覆す希望になるのだと信じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

居住ブロック区画・臨時避難民スペース

 

薄暗い照明と微かに揺れる振動の中、サラミス艦内の一角に集まった数人の若者たちは、誰からともなく言葉を交わし始めていた。

 

「……これから、どうなるのかな。私たち」

 

震えを帯びた声で、フラウ・ボウがぽつりと呟く。赤く腫れた目は、さっきまで涙に濡れていた証だった。

 

「ジャブローに行くんだ。そこから先は……まだわからないけど」

 

アムロ・レイの声は淡々としていたが、その目はどこか遠くを見ていた。昨日までの日常が、もう戻ってこないことを彼は既に理解していた。

 

その時、少し離れた通路から見習い服を着た一人の若者が歩み寄ってきた。軍帽の下の鋭い眼差しが、アムロをまっすぐに見据える。

 

「君は……テム・レイ大尉の息子のアムロ・レイ君か?」

 

「……そうですけど」

 

やや警戒するように応じるアムロに、青年は敬礼するような動作で頭を下げた。

 

「そうか。テム・レイ大尉の部下だった、ブライト・ノアだ。……まさか、あの人の技術で“反撃”が始まろうという矢先に、こんなことになるとはな」

 

その言葉には、失われた希望への悔しさがにじんでいた。

 

「ねぇ、聞いてもいい?」

 

突如、柔らかくも張り詰めたような声が割り込んだ。

 

振り向けば、金髪の女性――セイラ・マスが、静かな目でブライトを見つめていた。だがその瞳の奥には、何か鋭利なものが潜んでいるようだった。

 

「……あのモビルスーツって、そんなにすごいものなの? “ガンダム”って話してるのを聞いたけど」

 

その言葉に、一瞬だけ空気が固まる。セイラは“何か”を知っていると、誰もが感じた。

 

「悪いが――機密だ」

 

ブライトが淡々と答える。その目に、軍人としての責務が宿っていた。

 

「機密? ジオンに盗まれてるのにかい?」

 

冷笑混じりに言ったのは、壁にもたれていたカイ・シデンだった。わざとらしく肩をすくめるその仕草には、怖さを隠すための虚勢があった。

 

「なにっ……!」

 

ブライトの声が荒くなるが――

 

「叫ばないでください。ここには他にも避難民がいるんですよ」

 

ミライ・ヤシマが静かに、しかし強く制止した。その落ち着いた声に、皆が一瞬だけ沈黙する。

 

「……うぐ」

 

ブライトが唇を噛む。

 

その沈黙を、アムロの声が破った。

 

「……ガンダムは、すごかったみたいですよ」

 

全員の視線がアムロに向く。

 

「赤い彗星が盗んで行った……ガンダム2号機、あれが支援型のモビルスーツを一撃で倒してるのを見ました。圧倒的で……まるで化け物みたいでした」

 

その言葉には、恐れと悔しさと、そして憧れがないまぜになっていた。

 

再び、重苦しい沈黙が艦内の空気に満ちる。

 

この時、彼らはまだ知らない――それぞれの人生が、あの“ガンダム”と、その影に振り回される未来に、否応なく巻き込まれていくことを。

 

そしてその中で、誰が英雄となるのかを、そのために誰を置き去りにするのかを。

 

 

既に幕間が本編の2倍あります。かといってアニメが進んでジオン周りの情報が出ないと次が書けません。読者様方てきにはどんな感じですか?

  • 幕間が3倍になろうが4倍になろうが↓
  • 関係ない。書け(無慈悲)
  • アニメが進んだら書いて(慈悲)
  • 作者のペースで書いて(聖人かな?)
  • どうでもいい
  • 以上テスト兼読者様の意見を聞く回でした
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