ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
【アーガマ格納庫/アレックス前】
機体前方に立ったアムロを前に、格納されたアレックスは静かに佇んでいた。
まるで呼吸を止めたまま、沈黙する巨人のように。
その背後で、テム・レイが低く問いかけた。
「……アムロ」
彼の声音には、科学者としてではなく、“父”としての複雑な色が混ざっていた。
「お前は、なぜ“アレックスのバイオセンサー”が……“他の人間”に使えなくなったか、分かっているのか?」
その言葉に――ゼロ、フォウ、アルレットの3人が、同時に「他?」と心の中で反応した。
だがそれ以上に――
リタとカミーユの表情が、さらに痛ましいものへと変わっていった。
――ようやく、確信に至ってしまった。
ぼんやりと感じていた違和感。それが、確かな“意味”を帯び始めた。
「……何となくはな」
アムロがそうだけを言い残し、ゆっくりと歩み出る。
アレックスの足元、膝、胸部、そして頭部。
その一つ一つに埋め込まれていたサイコフレームが、淡く――しかし確かに、発光を始めた。
紅とも緑ともつかぬ光が、機体の境界からにじみ出る。
「なっ……まだアムロさん、乗ってないのに……!?」
アルレットが息を飲んだ。
光は徐々に強くなり、まるで「帰還した主を歓迎する」かのように、アレックスがその存在を主張している。
「……やはりな」
アムロの声には、もはや驚きはなかった。
予想していた――いや、分かっていたのだ。
これは“自分の機体”なのだと。
「もう……お前しか、このアレックスは使えないんだな?」
テム・レイが、低く重く問う。
「……"今は"そうらしいな」
アムロが応じる。
その声音はどこか遠く、哀しみに沈みながら、安堵が浮かんでいた。
「こいつは……“あの時”、シイコを殺された瞬間の俺の激情、怒り、絶望――そのすべてを受け止めた」
目の前のアレックスに手を触れず、ただ見つめたまま。
「他のニュータイプがバイオセンサーで“繋がった”ら、どうなるか分からない。あるいは……耐えきれず、壊れるかもしれない」
カミーユとリタが、わずかに眉をひそめる。
アルレットが唇を噛みながら言った。
「……だから……アムロさん以外のニュータイプを……このアレックスが“拒絶”していたんですか?」
「サイコフレームとバイオセンサーって……そこまで影響しあうんですね……」
「理論上は……ある程度の同調と記憶反応は予測されていたが……」
テム・レイも困惑を隠せず、眉間に皺を寄せる。
「だが――どうする?」
問いかける父に、アムロは一つ、深く息をついた。
「……考えてることがある」
「考えてる?」
「……ファンネルのように、モビルスーツを“遠隔操作”できないかって」
一瞬、空気が止まった。
その場にいた全員が、反射的にアムロを見た。
「……まさか……!」
アルレットが声を震わせる。
「Hi-νガンダムに乗りながら……このアレックスを、サイコフレームを介して“操作”するつもりなんですか!?」
アムロは、ゆっくりと頷いた。
「元々、Hi-νには“複合制御中枢”がある。俺の脳波でファンネルを操作する時に、他のパイロット用に調整されたファンネルを借りて使う制御ルートが存在する。その延長線上に――“これ”があるなら、可能性はゼロじゃない」
その言葉に、誰もが一言も返せなかった。
人の想いを宿したモビルスーツ。
そして、宿しすぎたがゆえに“他人を拒む”モビルスーツ。
Hi-νとアレックス――二機を同時に操る戦場など、誰も想定していない。
だが、この男は――
“それすらもやろう”としていた。
【模擬戦宙域:アーガマ付近 宇宙空間】
艦隊の補給が続く中、アムロ・レイのHi-νガンダムが格納庫を飛び立った。
だがそのコクピットには彼ひとり。にもかかわらず、数秒遅れて青と白の機体――アレックスも、無人でゆっくりと射出される。
艦橋でその動きを見守っていたブレックスとブライトは、静かに息をのんだ。
「本当に、遠隔操作しているのか……」
「……まるで、幽霊が乗っているみたいだな」
Hi-νとアレックスが並び、宙域で一定距離をとった。アムロはHi-νの操縦桿から右手を離し、視線だけをわずかに傾ける。
「アレックス、行くぞ」
次の瞬間、アレックスの目が赤く光り、無人のままブースターを噴かして前に出た。まるで生きているかのような滑らかな挙動。サイコフレームを通した遠隔操作――思考だけで動くファンネルとは異なり、“本体”を操るには並のニュータイプでは到底不可能な芸当だった。
そして――対峙するは、ゼロ・ムラサメのバンシィ。
「さて……お手並み拝見といこうか」
模擬戦が開始された。アムロはHi-νを後方に置いたまま、アレックスのみを操作して戦いを挑む。
機体性能では圧倒的にバンシィが優位。それでもゼロは、途中で思わず息を呑んだ。
「……!」
――ビーム・ライフルの一射、ギリギリでかわしたが、あれは狙い澄まされていた。
続けざまに飛んできたビーム・サーベルのフェイントにも、ほんのわずか対応が遅れた。危うく装甲をかすめるところだった。
「遠隔でこれかよ……」
模擬戦終了後、ゼロは脱力気味にアムロへ通信を繋いだ。
「バンシィに乗っててアレックスに負けることは、正直、そうそう無いと思ってたんですけどね。2回もヒヤリとしました。やっぱりアムロさんはアムロさんだ」
【二度目の模擬戦――2対2】
数日後。リタ・ベルナルが乗る金色のフェニクスが参戦する。今回はアムロがHi-νに乗ったまま、アレックスを同時に操作。1対2、ではなく「1人マブ」対「ゼロ&リタの2人マブ」という形式だった。
(こっちはユニコーンタイプ2機……性能は互角以上。アレックスは旧式なんだから)
リタは心の中でそう念じた。だが、戦闘が始まった瞬間、冷や汗が背筋をつたう。
「は、速い! アレックスの動き、さっきの時より精度が上がってる……!?」
一瞬の連携。Hi-νがサーベルでリタの注意を引いたその間に、アレックスが死角からサイドスラスターにビームを放ってくる。
ゼロが慌てて割り込んで弾くが、その刹那にもアムロはHi-νのファンネルを展開、三機分の連携を構築していた。
「バカ! アムロさんが“2人いると思え”って前に言っただろ!」
ゼロが叫んだ。
「聞いたけど! ……でも、ほとんど腕に差がないように見えるんですけど!?」
「長い間アレックスに乗ってきたからな。この機体を操るのに思考のリソースはそんなに取られない。他の機体をファンネルのように操れと言われても無理だよ。それにさっきのゼロとの模擬戦で要領は分かったからな」
アムロの通信越しの声が、平然としているのがまた腹立たしい。
「何の慰めにもなりませんよ!」
「一回の模擬戦で自機と対して差無く操られたら立場ないんですけど!」
ゼロとリタは形勢を逆転すべく、ユニコーンタイプに装備されたサイコミュ・ジャックを起動。Hi-νのフィンファンネルの奪取を試みた。だが、力が弾き返される。
「駄目……! 操られてる情報に、入り込めない……!」
「ニュータイプ能力の差が大きすぎる……!」
Hi-νのフィンファンネルが展開し、リタとゼロの間に割って入るように射線を形成。アレックスがリタのDEアーマーを射線に釘付けにし、逃げ場を潰した。
(本当に……2人いるみたい)
リタはそう感じた。Hi-νの正面に立つアムロの意識と、アレックスの中に宿るもう一つの“アムロ”。その両方が、自分たちを完璧に包囲している。
そして――
リタのフェニクスが先に、ゼロのバンシィが後に、それぞれ模擬戦停止ラインへ強制排除された。
「……はぁ、完敗だ」
ゼロが息をつき、リタはぽつりと呟いた。
「いくらアムロさんとはいえ、Hi-νとアレックス……片方は無人、もう片方は1人で操作してるのに……」
その隣で、Hi-νの機体が静かに降下していく。
アムロ・レイは、まだ余裕を見せていた。
(やはり、この機体を“予備”として後方から使えるのは大きい……)
アレックスは、すでに“人の乗る機体”ではなく、“意志ある兵器”として戦場に立つ。
そして、それを操るアムロの思考は、いまだ衰えることがなかった――。
【地球連邦軍本部/応接室】
重苦しい沈黙の中、会話が始まった。
窓の外には夜景が広がるが、この部屋の空気は張り詰めたままだ。
セイラ・マス――本名アルテイシア・ソム・ダイクンは、鋭い視線でゴップ元帥を睨んでいた。背後には護衛のランバ・ラルとシャリア・ブルが立ち、その表情には警戒と決意が浮かんでいる。もし納得できる答えが得られなければ、この場から姫を連れ出す覚悟すら漂わせていた。
「納得できません! そのような作戦!」
セイラの声は凛としていたが、震えも含んでいた。
ゴップは腕を組み、短く答える。
「だが理解はしていただきます」
「ただの報復ではないのですか!? 一体誰の発案ですか!」
「アムロ・レイ大尉ですよ」
その名を聞いた瞬間、セイラの瞳が揺れる。
「そんな……アムロ……。ではこれは、妻のシイコさんを殺された彼の復讐だと?」
ゴップは否定しなかった。
「その面がないとは思いませんな。だが彼の言葉には理がある」
「どんな理ですか!?」
「戦後の話ですよ。この戦争で勝っても、残党が絶えずコロニー落としを企てるなら、いつまでもスペースノイドとの融和などできなくなる」
「ザビ家さえ倒せば融和も可能なのでは? 軌道決戦では、連邦が圧倒的大差をつけて勝利したはずです」
ゴップは小さくため息をつく。
「我々も開戦前までは、ザビ家さえ倒せば良いと考えていました。ですが、軌道決戦で敵の司令コンスコンは、敗北が確定しても降伏せず、艦隊もろとも特攻を命じた。部下も従い、降伏した兵は僅かだった。これでは、ジオンの兵のほとんどはそうだと考えざるを得ません」
セイラは後ろを振り返り、二人の護衛に問う。
「そうなのですか?」
シャリア・ブルが低く答えた。
「否定はできませんね。連邦は脆弱で、自分たちは選ばれたエリートだと叩き込まれてきたのが今のジオン軍人です」
ランバ・ラルは一歩前に出て、苦渋に満ちた声で続けた。
「……私はかつて、ドズル中将にコロニー落としを説明された時、これは悪魔の作戦だと叫びました。ザビ家の中で、あの人だけはまともだと信じていたからです。だから復隊しました。しかし――そのドズルでさえ、効率的だ、どうせ殺すならせめての慈悲だ、と言い放った。同胞を虐殺し、コロニーを落とし、地球の民間人を数十億も殺す作戦を実行しても、ザビ家の栄光だと……。
アルテイシア様。今のジオン軍人に情けをかけるべきではありません。それは、戦後あなたに救いを求めるであろう、ザビ家を信奉しない、あるいは信奉をやめたスペースノイドに向けるべきです」
セイラは言葉を詰まらせた。
「……だからこの作戦に、納得しろと?」
「納得はしなくても構いません」
ゴップは静かに首を振った。
「だが理解はしていただきます。引き金を引くのは我々ではない。アムロ大尉の求めた許可は、幾重にもセーフティがかかっています。それが、復讐鬼に堕ちても“一線を超えない”彼らしさなのだと思います」
シャリアが眉をひそめる。
「セーフティとは?」
「彼が求めた許可が降りる条件です」ゴップは答えた。
「敵がア・バオア・クー戦で、我々の戦力分断のため“だけ”にコロニー落としを実行する時。しかも、それを止めようとする勢力がジオン内部にいない場合に限ります。もし、コロニー落としを正義と考えない者がいれば、彼らは必ずこちらに着くでしょう。今の連邦には、スペースノイドの希望――ダイクンの子であるあなたがいるのだから」
シャリアは静かに頷いた。
「……逆に言えば、ジオンの中に止めようとする勢力がいなければ、ジオン軍人全てにとってコロニー落としはただの“戦術”にすぎない。だから、それがどれだけ恐ろしいことか理解させる必要がある――そういうことですね」
ゴップは深くうなずいた。
「ええ。その方が、戦後に“いつまたコロニー落としをするかもしれない”と警戒して、スペースノイドを締め付け監視する特殊部隊を設けるよりは、遥かに未来が開ける。少なくとも私はそう考えています」
ランバが苦い顔をして低く問う。
「……そのような案まで出ていたのですか?」
「ええ。あれだけ大差をつけて負けても降伏しない勢力相手ですからね。こちらも恐怖しているのです。――あそこまで差をつけられても降伏しないのか、と。そして、そんな連中がコロニー落としを、拳銃を撃つ程度の認識で実行しようとする未来を、アムロ大尉に突きつけられては……考えざるを得なかったのです」
部屋に再び重い沈黙が落ちた。
だが今度は、セイラもその沈黙を受け止める覚悟を固め始めていた。
アレックスは殆どジークアクスみたいなものですね。どっちもアムロを宿してる。
まあ中のアムロの精神状態は全然違いますが。優しくパイロットを守るのがジークアクスなら、敵を殺すために予定されていた引き継ぎパイロットを拒否して、オリジナルが使えとザビ家を殺せと囁いてくるのがアレックス。
操作許可はザビ家を心底憎んでるニュータイプであることです。つまり、カミーユやリタ、ゼロが闇堕ちすれば使わせてくれる。
宇宙世紀のガンダム作品アニメも漫画も結構見てるんですけど、ジオンやスペースノイドを憎んでる人は割と見るんですけど、そもそもの原因ザビ家を明確に殺そうとする人があんまり見たことないんですよね。
シャアしかいなくねってレベルで見ない。