ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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第二十二話: 星二号作戦2 アムロvsマチュ、ニャアン

【復讐鬼たちの交錯】

 

 光の雨が戦場を覆った。

 マチュのジークアクスがビームライフルを連射し、同時に背部から六基のファンネルを展開する。遅れてニャアンのジフレドも追随し、二機のガンダムタイプがアムロを挟み込むようにして殺到する。

 

「アムロ・レイ! お前を殺すために私たちはここまで来たんだ!」

 マチュの声は憎悪に震えていた。

 

「そうだ! あなたさえ倒せば……私たちは……!」

 ニャアンの言葉にも、強迫めいた切実さが滲む。

 

 Hi-νガンダムとアレックスの二機を同時に操るアムロは、冷めた瞳で二人を迎え撃った。

 

(なるほど……武装はライフル、サーベル、それにファンネル六基か。悪くない……が、足りない)

 

 マチュのファンネルが光の矢を放ち、ジフレドのビームライフルがその死角を狙う。

 だが、Hi-νは僅かな機体の傾きとスラスターの調整だけで射線を外した。ファンネルの弾幕を抜けながら、逆にライフルを放ちニャアンの射撃を撃ち落とす。

 

「なっ……!」

 ニャアンの顔が引き攣る。

 

 すぐさまジークアクスが懐へ飛び込み、ビームサーベルを振るう。

 しかしアムロは自らの機体を動かさず、代わりに遠隔操作のアレックスを前へ出す。

 アレックスのサーベルが、マチュの一撃を受け止めて弾き飛ばした。

 

「ぐっ……!」

 反撃の衝撃にマチュの機体が体勢を崩す。

 

「悪いが……見逃すのは一度きりだ」

 アムロの冷徹な声が響いた。

「もう君たちに次はない」

 

 その殺気に、マチュとニャアンの背筋が凍りつく。

 次の瞬間、Hi-νの背から飛び立っていたフィン・ファンネル群が一斉に収束し、戦線を切り裂くように旋回する。

 マチュとニャアンの視界が、光の矢に埋め尽くされた。

 

 アムロの操作は桁違いだった。

 如何にマチュとニャアンがジオンでファンネルの操作や回避を叩き込まれてきたとはいえ――避けられる次元の攻撃ではない。

 

 彼女たちの訓練相手はプルツー。ジオンでもトップクラスのニュータイプのファンネル使いとされる少女だ。

 だが、連邦においては“そこそこのエース”に過ぎない。ましてや、その連邦で最強の三人の頂点に立つアムロを想定した訓練相手には、あまりに役不足だった。

 

 現に今も、マチュとニャアンは全力で防御しているにもかかわらず、何度も撃墜の瀬戸際に追い込まれていた。

 光の奔流が装甲をかすめ、機体の表層を焦がす。ほんの一瞬でも反応が遅れれば、即座に破壊されるだろう。

 

「くっ!」

 マチュが咄嗟にジークアクスを跳躍させ、ビームライフルで迎撃する。

 

 ニャアンも必死にファンネル六基を展開し、対抗射撃を浴びせかける。だが、押されるばかりだ。

 

 ――その時だ。

 本来なら直撃するはずのビームの雨を、ジークアクスとジフレドが自律的に回避した。

 マチュもニャアンも、その挙動に気づきすらしなかった。

 

 まるで、嵌められた枷を一時的に無理矢理外し、機体そのものがパイロットを守っているかのように――。

 

 アムロの瞳が鋭く光る。

(……なるほど。致命打の瞬間にだけ、機体がパイロットを庇っている、か。……“オメガ・サイコミュ”の仕業だな)

 

 そして彼は即座に思考を組み替えた。

 認識してしまえば、もう手遅れだ。

 アムロはその特性を前提に、戦術を再構築する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アムロは息を整えながら、二機の少女たちを追い詰め続ける。

 無駄なく、確実に。だが決して急がない。

 

(……致命打だけを避ける。つまり“命の危険”を感知したときにだけ、機体のサイコミュが強制的に軌道を変える。ならば――その瞬間を誘導すればいい)

 

 アムロは心中で冷徹に算段を組み立てた。

 

 フィン・ファンネルが弧を描き、ジークアクスとジフレドを追い詰める。

 マチュは必死に迎撃するが、いくら撃ち落としても別の角度から迫ってくる。

 ニャアンのジフレドはすでに装甲の一部を焼き切られ、閃光の尾を曳いている。

 

「はぁっ……はぁっ……!」

 ニャアンの呼吸が荒い。額を伝う汗が、操縦桿を握る手を滑らせそうになる。

 

アムロの目がわずかに細められた。

「……温存の必要は、もうないか」

 

 その呟きと同時に、Hi-νの掌がわずかに動く。

 するとアレックスの腰にマウントされていた巨大な銃――ビーム・マグナムが、磁力でも引かれるように軌道を描き、無人のままHi-νの手に収まった。

 

「なっ……!」

 マチュの息が詰まる。

「あれは……!」

 

「普通のビームライフルじゃない……!? 」

 ニャアンの声は震えていた。

 

 その瞬間――アムロは、あえて隙を見せるようにHi-νの機体を振った。

 真正面のマチュへと狙いを集中させ、圧倒的な火力で叩き込む。

 

「マチュ!」

 ニャアンが叫び、仲間を守るためにジフレドを飛び込ませる。

 

 アムロの瞳が鋭く細まった。

(……そうだ。その判断が欲しかった)

 

 狙いはマチュではない。

 仲間を庇うために飛び込んでくるニャアン、そのジフレドこそが標的だった。

 

 アムロは思念でHi-νとアレックスを同時に動かす。

 アレックスのライフルから閃光が放たれる――だが、それは明らかな“殺しの一撃”だった。

 

 ジフレドのサイコミュが、即座にパイロットの命を守ろうと反応する。

 だがその回避軌道は、アムロが既に予測し尽くしていた。

 

「そこだ!」

 

 回避した直後の位置に、待ち構えていたのはアレックスのファンネルと、構えていたビーム・マグナム。

 砲口が閃光を吐き、戦艦すら穿つ光条がジフレドに迫る。

 

「え……っ」

 ニャアンの瞳に、信じられない光景が映る。

 マブを守るために飛び込んだ自分が、逆に逃げ場を奪われ閃光が目の前にあったのだ。

 

 次の瞬間、ジフレドは閃光に包まれ、無数の破片となって四散する。

 

「ニャアン!!」

 マチュの絶叫が戦場を震わせた。

 

 だが返事は、もうなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニャアン……!!」

 絶叫と共に、マチュの全身から怒りが迸った。

 ジークアクスのコクピットが赤く明滅し、機体全体をオメガサイコミュの光が包み込む。

 

 次の瞬間、ジークアクスの推力は跳ね上がり、今まで以上の速度と反応を見せた。

 Hi-νのファンネルが放ったビームを、ジークアクスは両手を広げて受け止める。

 そこに生じたのは、まるで宇宙の星を無数に集めて渦巻かせたかのような光球――ニュータイプの力が生んだ小型の光の渦だった。

 

「こんなもの……通さないッ!!」

 ビームが光の渦に吸い込まれ、掻き消える。

 だが、それは万能の盾ではなかった。アムロがHi-νに装備したビーム・マグナムだけは、その防御を易々と貫き、マチュは死に物狂いで回避運動を強いられる。

 

 さらに、怒りに駆られたマチュはジークアクスのビームサーベルを巨大化させ、巨刃のごとく振り回しながらHi-νに斬りかかった。

 その動きは確かに今までの彼女を凌駕していた。だが――

 

(……経験が足りない)

 

 アムロの視線は冷徹だった。

 マチュの力は確かに膨大だ。だが、模擬戦で磨き抜かれたヤザンやゼロは言うまでもなく、カミーユやリタにすら及ばない。

 ニュータイプ能力そのものはフォウやドゥーを上回る光を見せていたが、戦場で生き抜く技量が伴っていないのだ。

 

 もし彼女らの師がアナベル・ガトーではなく、ジークアクスやジフレドに搭載された特異なサイコミュの裏側まで知るシャリア・ブルであれば――話は違ったかもしれない。

 シャリアなら、そのサイコミュに仕込まれたリミッターの存在を告げ、外し方を教えただろう。

 だが、現実の師はガトーだった。優れた教官であり、彼女たちを一流の兵士に育てはしたが――オールドタイプの彼には、機体に潜む“その存在”も、リミッターの意味も分からなかった。

 そしてギレンもまた、それを隠した。二人には決して伝えずに。

 

 ――もしも。

 もしもジークアクスとジフレドに仕込まれたサイコミュのリミッターが外され、【潜む誰か】が完全に機体の主導権を握っていたならば。

 その時、彼らは勝利を求めはしなかっただろう。

 むしろ迷わず戦いを捨て、逃走を選んだはずだ。

 

 なぜなら、【潜む二人】は知っているからだ。

 ――Hi-νガンダムのアムロ・レイを前にしては、いかなる策も無意味であることを。

 ジークアクスとジフレドを何機並べようと、勝利どころか生存さえ叶わぬことを。

 

 だからこそ、彼らは戦わない。パイロットを生き延びさせるために全力で退く。

 それが【潜む誰か】の冷徹な選択であり、また唯一の正解だった。

 

だが、リミッターに縛られた今の彼らは、それを伝える術を持たない。

 ただ時折、機体の挙動にわずかな意志を刻むことしかできなかった。

 ――まるで「守りたい」と願う声が、機械の奥底から滲み出しているかのように。

 

 ゆえに、この結末は必然だった。

 

「これで終わりだ」

 

 アムロのHi-νが、冷徹にビームサーベルを振るう。

 青白い閃光が一閃、ジークアクスの腹を貫いた。

 

「……あ」

 マチュの唇から、短い声が漏れた。

 次の瞬間、機体は爆炎に包まれ、宇宙に閃光が煌めいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ア・バオア・クー/中央管制室】

 

 モニターに映るジークアクスとジフレドの戦況が、一瞬にして消えた。

 画面が暗転し、反応が途絶える。

 

「ばかな……あの二人はガトー少佐の元で鍛えられ、オメガサイコミュに相応しい乗り手になっていたのに……こうもあっさりと負けるのか……」

 グレミー・トトは目を見開き、呆然とつぶやく。

 

 ギレン・ザビは頬杖をつきながら、静かに画面を見据えた。

(切り札を切るにはまだ速い。ならば、今の手駒での最善手は……)

 一拍の沈黙の後、鋭い声が響く。

 

「グレミー、ニュータイプ部隊とその失敗作の準備はできているな?」

 

「はい、閣下」

 グレミーは立て続けに報告する。

「失敗作の三人には、連邦のバスク・オムが作った強化人間用の技術を施すことで、足手纏いにはならない程度に仕上がっています」

 

「ならばそいつらに命令を下せ」

 ギレンの眼光が冷たく光る。

「最強の三人は今、要塞に取り付いている。今こそ旗艦への奇襲のチャンスだ」

 

「なるほど……奴らを首狩り部隊にするわけですね」

 グレミーは軽く頷き、即座に通信回線を操作した。

「了解しました! 直ちに命令を伝達します!」

 

 中央管制室の空気が張り詰める。

 暗黒の策謀が、静かに動き始めた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【遊撃の五人】

 

 虚空を裂く閃光がまたひとつ弾け飛ぶ。

 破片となって漂うゲルググを見届け、ドゥーは小さく息を吐いた。

 

「……これで十五機目だよ。そろそろ補給に戻りたい……」

 

「我慢しなよ」隣を飛ぶZガンダムの声は、やや不機嫌に響いた。

「私だって十二機も落としてるんだから」

フォウの声音には疲労の色が滲んでいたが、それでもまだ余裕を感じさせた。

 

「私は五機ですね」アスナが少し肩を落としながら答える。

「エリシアさんは?」

 

「六機よ」淡々と返すエリシア。

そしてさらりと続けた。「さすが最強の三人の近くにいたドゥーやフォウは、格が違うわね」

 

「ちょ、ちょっと!」アスナは慌てて声を上げた。

「エリシアさんはいいじゃないですか。ゼロさんに鍛えてもらったんでしょ? 最強の三人のひとりに!」

 

「あなたもだって立場は同じようなものでしょう?」エリシアは涼しい声で返す。

「私と違って生まれながらのニュータイプで、ヤハギ教官に鍛えられた。そんなに卑下することないわ」

 

「う……まあ、お父さんの教えは分かりやすくて、身にもなってますけど……」アスナは視線を落とす。

「でも、旗艦への奇襲を防ぐ遊撃に私みたいなのが立ってるのは、やっぱり荷が重いんじゃ……」

 

「お前ら雑談が多い」

低い声が割り込んだ。サイコガンダムMk-IIの巨影――ゲーツだ。

「いくらサイコフレームを通した、味方のみのニュータイプの思念通話っていっても、こっちには全部聞こえてるんだからな」

 

「す、すみません! ゲーツ中尉!」アスナが慌てて背筋を伸ばした。

 

ドゥーは苦笑する。「あれ? ゲーツは旗艦の盾役じゃなかったっけ?」

 

「他のサイコガンダムMk-IIに任せてきた」ゲーツの声音は相変わらず淡々としていた。

「お前とフォウは補給に戻れ。その間は俺が穴埋めする」

 

「助かったよ。じゃあ、行こうかドゥー」フォウが軽く笑う。

 

 その直後だった。

 

「……何? これ……」アスナが息を呑む。

「同じ気配が、いっぱい向かってくる」

 

「え……?」

 

エリシアの瞳が鋭く光った。「ドゥー! フォウさん! ゲーツ中尉! 警戒を! 何かが十五機、こっちに向かってる! その中に……十一の同じ気配がある!」

 

 天然のニュータイプであるアスナとエリシアがいち早く察知し、遅れて他の三人もその“波”を感じ取った。

 

「……アスナとエリシアの言う通りだ」ドゥーは低く呟いた。

「この気配……確か、カイさん達が捕獲したパイロットは“プルトゥエルブ”って名前で、クローン・ニュータイプだって話だった」

 

「そのクローン部隊をまとめて送り込んできたってわけね」フォウの声音には苛立ちが滲む。

「全く……補給休憩はお預けか」

 

「ゲーツ、あんたは――」

 

「分かってる」ゲーツは遮った。

「お前らの後ろで取り逃がしを防ぐ。いざという時は、お前らを守る。それでいいんだろ?」

 

「そうそう」ドゥーは軽く頷いた。

「普通ならiフィールド持ちの機体を前に出すところだけど、ゲーツのサイコガンダムMk-IIのほうが僕らより優先度は高いからね」

 

 言い終わるより早く、モニターに新たな影が映し出される。

 

「さて、敵の機体は……」

 

 やがて、虚空を埋め尽くすように現れたのは――十機の量産型キュベレイ。

 それは既に連邦軍が鹵獲し、解析し尽くした機体だった。各兵士に至るまで詳細なスペックが行き渡っている。だからこそ、出現した時点で識別は容易で、恐れるよりも「迎撃可能」と判断できる存在でもあった。

 

 だが次の瞬間、戦場の光が大きく翳る。

 2機の緑色の巨影――その異様な質量感は、両肩のバインダーなどはキュベレイと似ていたが、ただキュベレイを巨大化させたとは思えない、まるで要塞そのものが宇宙に歩み出たかのようで、視界に収めるだけで圧迫感を覚えさせた。

 

 さらに三機の“異形”が続く。

 一見すればキュベレイと同型機。だが、どこか違う。わずかな曲線の差、放たれる圧の質――解析資料にある既知のキュベレイとは明らかに噛み合わない。

 それは、経験豊富な強化人間やニュータイプほど敏感に察する“違和感”だった。

 




ノア・Tさん誤字報告ありがとうございます!
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