ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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1800少し遅れてすみません。微調整してました。
明日も1800ごろに投稿します。


第二十三話:星二号作戦3

【ジオン側・接近宙域】

 

 濃い緑の巨影、クィン・マンサのコクピットでプルツーは冷徹な瞳を光らせた。

「お前ら、分かってるな? 鬱陶しい遊撃部隊を殲滅して旗艦を落とせ――それがグレミーから下された命令だ」

 

 その声に応じて、十機の量産型キュベレイが隊列を組む。

「分かってるよ〜。さっさと終わらせて、アイス食べたいな〜」と、エルピー・プルが笑いながら返した。

 

 その背後で、プルスリーからプルイレブンまでの姉妹が声を上げる。「「「了解!」」」

(十機の量産型キュベレイ。そのコクピットには、エルピー・プルとプルスリーからプルイレブンまで、プルシリーズが搭乗している。連邦に鹵獲され解析されたとも知らず、彼女たちはいまだキュベレイの性能で敵を圧倒できると傲っていた。)

 

 さらに、その後方に三機の“異形”が続く。

(《マグナ・マーテル》。キュベレイの上位機でありながら、プルシリーズですら乗りこなせない難物。そこに縋るのは失敗作とされた少女――ノン、リン、レイ。ジオンは彼女たちに「戦果を上げればナンバーを与える、人間として生きたいなら戸籍を与える」と囁き、使い捨ての強化手術を施した。希望にすがり、恐怖に縛られながら戦場に立つ三人は、己の命が戦闘の終わりを待たずに尽きることを知らなかった。)

 

「はい。理解しています」ノンが小さく呟く。

「連中を倒して旗艦を落とせば……」

 

「うん。きっと私たちも処分されなくて済む……」リンが答える。

 

「そうだよ! 戸籍をもらえて、人間になれるんだから……!」レイは必死に自分を鼓舞するように声を張った。

 

 プルツーはそんな彼女たちを見下ろすようにモニターを伏せた。

(……哀れだな。自分たちの命がこの戦いで尽きるとも知らずに。まあ、失敗作にしては悪くない終わりかもしれないな)

 

さらにその隣には、もう一機のクィン・マンサが浮かんでいた。

 パイロットはアンネローゼ・ローゼンハイン。かつてプルツーとマブと組んで戦った経験を持ち、今はこのプルシリーズとその失敗作たちで構成された“首狩り部隊”に配属されている。

 

 アンネローゼはコクピット内で小さく吐息を漏らす。

(自分たちの失敗作を哀れんでいるだろうけど、哀れなのはあんたも同じだよ……いや、私もか)

 彼女の目は、隣のプルシリーズや異形の機体に乗る少女たちに向けられる。無理に戦わせられる彼女たちを見守る自分に、言いようのない同情と、戦場に立つ哀れさを感じていた。

 

 そして思う――

(クィン・マンサ――こいつは予算も資材も足りず、開発中止になったはずの機体だ。それを決戦前にいきなり持ってきて使えって、上層部は相当、連邦のニュータイプが怖いらしいね。設計上のカタログスペックは圧倒的だけど、どこまで本当に作り込まれてるのか……)

 

 かつて地上のジオン残党で戦った経験が、彼女の胸に冷たい現実を刻んでいた。アムロ・レイの圧倒的な力を目の当たりにして心が折れた過去――あの時の恐怖は、今も鮮明に蘇る。

(もし“最強の三人”と呼ばれる連邦のニュータイプが前に現れたら……試しに攻撃して、勝てないと分かったら即、白旗を上げて投降してやる)

 

 この作戦は、アンネローゼにとってギリギリのラインだった。最強の三人は最前線で暴れ回り、旗艦の防衛にはついていない。ならば、旗艦を素早く撃墜し、三人に遭わずに済ませればいい――生き延びるための、当然な計算だった。

 

 彼女達が乗る深緑の機体――《クィン・マンサ》。

(ジオンの上層部が、連邦のニュータイプ部隊を恐れ、フラナガン機関へ無理を押し付けて作らせた巨躯のモビルスーツ。本来は予算不足で開発中止になっていたはずの機体だったが、突如どこかから調達した資金と資材によって復活した。そのため完成度は“本来の歴史”よりも下の水準に留まり、設計思想の壮大さに比して性能は未成熟。だが、それでもなお単機で戦艦をも沈め得る、怪物の名を冠するに足る兵器である。)

 

 やがて、敵影がモニターに映る。三機のアレックス、青いガンダムタイプ――Zガンダム。そして、黒々とした巨体を誇るサイコガンダムMk-II。

 

「ちっ……デカブツまでいるのか」プルツーの眉が僅かに動く。

「いいだろう。あのデカブツは私が相手をする。他のやつは、あんたらで倒せ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【連邦側・遊撃隊】

 

 戦場を漂う気配が、五人の心を圧迫する。

「……来るね」ドゥーが呟いた。

 モニターに、キュベレイとクィン・マンサ、そして見慣れない三機の異形が次々と映し出される。

 

「キュベレイは知ってる。でも……最後の三機は……何?」エリシアが眉をひそめた。

 

「分からない……けど、ただのキュベレイじゃない」アスナもまた、その圧に小さく震える。

 

 フォウの声が鋭く響いた。「来るよ! 全員、構えな!」

 

 その時、通信機越しに強い声が響いた。

「ゲーツ中尉! 聞こえるな! ジオンめ、不利な戦況の要塞を放置してここまでの戦力を捨て身で出してくるとはな!」

 ペガサス級《ブランリヴァル》の艦長、ココノエ大佐だ。

「すぐにヤザン・ゲーブルをそちらに向かわせる! それまで防衛主体でやり過ごせ! 多少は旗艦の直掩部隊に任せるつもりで、取り逃がしても構わん!」

 

「了解!」ゲーツが即答し、さらに通信で遊撃隊に告げる。

「と言うわけで、俺たちの仕事は時間稼ぎだ。相打ちで一機二機落とすより、ここで陣取っていた方が役に立つ」

 

 遊撃隊の陣形に、新たな四機が合流する。二機一組で動くネモⅡが二組――計四機。彼らは無言のまま、五人の隊列にぴたりと寄り添い、戦場の緊張を共有する。

 

「……ネモ隊も来てくれた」アスナがほっと息を漏らす。

 

「彼らは足手まといじゃない」エリシアが冷静に言葉を添えた。「基礎動作も連携も十分に訓練されている。戦力として考えていいわ」

 

その中から、ひときわ落ち着いた女性の声が通信に割り込んだ。

「やあ、ドゥー。敵の奇襲部隊だって? 応援に来たよ」

 

「ポカダさん!」ドゥーが思わず笑みを浮かべる。

「ありがとう。心強いよ」

 

「何言ってんだい。最強の三人の弟子たちの力、当てにさせて欲しいね」

 暗い紫の髪を揺らすポカダは、軽口を叩きながらも目は鋭い。

 

「僕にあの三人並の活躍を期待するのは、もう少し待って欲しいな〜」

 ドゥーが肩をすくめる。

 

(……いずれ辿り着けると思ってるからこそ、あんた達は私たちとは違うんだよ。だから――この娘たちは、私が守らなきゃいけない)

 ポカダは心中でそう呟き、ビームライフルを構え直した。

 

 ――初対面の頃、あたしはこの娘たちを偏見で見ていた。

 ムラサメ研究所出身、そして“最強の三人”のうちの一人、ゼロ・ムラサメの弟子。きっと、近寄りがたい存在だと思い込んでいた。

 

 けれど違った。

 機体への理解も、敵の新型機の情報を叩き込む姿勢も、分からなければ素直に人に聞ける柔らかさも――全部、大人になればなるほど失われていく大事なことばかりだった。

 

(……最強の三人だって、背負っているプレッシャーは相当だろう。けれど今の連邦にとって、かつての敗北は少しも足かせになっていない。それは、あの三人がいるからだ)

(“あの人たちなら勝てる”。自分が負けても、流した血や掴んだ情報を必ず無駄にせず繋げてくれる。そう信じられるからこそ、全てのパイロットは敵がニュータイプだろうがエースだろうが臆さず立ち向かえるんだ)

 

(――この娘も、必ず同じ存在になれる)

 

(だからこそ……いざとなれば、この子たちの盾にならなきゃいけない)

 

ポカダは思案を区切り話す。

「キュベレイってやつの情報は私達にも回ってきてる。だが、悪いけどあのモビルアーマーは情報なしだ。多分倒せるとしたら応援でくるヤザンか、あんた達だけだと思ってる」

 

「だね〜。キュベレイとその似た機体はどうにかなりそうなんだけど、緑のでかいのはヤバそう。あ〜あ、ゼロならアレックスでも倒せそうなのに……」

 

「僻まないの……」フォウが軽く微笑みながら言った。「私たちにできることをやろう。全力で」

 

 九機の連邦遊撃隊は互いに視線を交わし、静かに構えた。

 戦場の光が彼らの機体を照らす――だが、その光景の向こうには、圧倒的な十五の敵影が待ち受けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【戦場・宙域】

 

 灼熱の光弾が飛び交い、宙域そのものが焼けただれるかのようだった。

 クィン・マンサのファンネル三十基が放つビームが奔流となり、ゲーツのサイコガンダムMk-IIを包み込む。

 

「……っ、速いな!」ゲーツは即座にiフィールドを展開。鏡のように光をはね返しつつ、反撃の光条を撃ち込む。

 

 だが、クィン・マンサは微動だにしない。バインダーと胸部、背部から立て続けにメガ粒子砲が火を噴き、広域にビームを撒き散らした。

 

「ジオンにも……こんなニュータイプがいるのか!?」ゲーツは驚愕しながらも、歯を食いしばる。

(シイコさんに鍛えてもらえてなかったら、とっくに押し潰されていたな……勝てるとは思う。だが、時間がかかる! このままじゃ周りのフォローに手が回らない! ドゥー達は大丈夫なのか!?)

 

 刹那、クィン・マンサが巨大なビームサーベルを抜き放つ。

「私相手によそ見とは、余裕だな!」プルツーの瞳が鋭く光った。

 

「悪いが、俺は君と違って一対一だけ考えてりゃあ良いわけじゃないのでな!」ゲーツもまた、腕部のビーム・ソードを展開。

 両者の刃が衝突し、閃光が虚空を裂いた。

 

「何だと!」

 怒りの色を隠さないプルツー。だが、その瞳の奥には子供らしい激情が渦巻いている。

 

(そうだ……怒れ。怒って精神を乱せば、攻撃の軌道は読みやすくなる。プルトゥエルブの姉妹――年齢を考えればまだ子供だ。怒りながら頭を冷たくして攻撃なんて、出来るわけがない!)

 

 ゲーツのサイコガンダムMk-IIが押し返す。リフレクタービットとインコムがクィン・マンサのファンネルの間を縫い、わずかな隙を突いて次々に光条を撃ち込む。

 

 しかし、決定打には至らない。クィン・マンサのIフィールドが幾重にもビームを受け止め、なおも戦場に君臨する。

 

 灼熱の光と衝撃波。両者の巨体がぶつかり合い、数十発の光束が互いを焦がす。だが、どちらも決して倒れない。

 

 だからこそ――この戦いの勝敗は、ゲーツとプルツーの外側に委ねられていた。

 遊撃隊と、旗艦への奇襲部隊。戦場を決めるのは、彼らだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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