ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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前日譚: 01ガンダムのパイロットの献身3 サイド7の避難民たち

セイラ・マスは、静かにうつむいた後、再び顔を上げる。その瞳には、誰もが気づかぬほど小さな、しかし確かな炎が宿っていた。

 

「そう。じゃあ――ガンダムを盗まれた以上、連邦はますます苦戦するのね?」

 

唐突な問いに、場の空気がまた変わる。

 

「……多分、そうなると思います」

 

アムロが正直に答えると、セイラは小さくうなずいた。

 

「じゃあ、士官さん――聞きたいんだけど」

 

「なんだ?」と、ブライトが眉をひそめる。

 

セイラはあくまで淡々と、しかしはっきりと言った。

 

「連邦でモビルスーツのパイロットの募集も、これから増えるわよね? そこに志願したいの。誰に言えばいいのかしら?」

 

「なっ……なんだと!?」

 

ブライトの声が一段跳ね上がる。

 

「君みたいな女性が!?」

 

「それって差別よ」セイラの表情は微動だにしない。「で、質問の答えは?」

 

「そ、それは……」と、ブライトは口ごもる。「ジャブローで志願すれば、適性があれば訓練所に……行けると思うが」

 

「それじゃ遅いのよ」セイラが一歩、彼に近づいた。「今回の件で、避難民の数は相当になるわ。連邦がその全員を快く受け入れるとは限らない。だったら、今からでも“軍属になる意志”を示しておいた方が、後で面倒が少ないと思うのだけれど」

 

その理路整然とした言葉に、ブライトは唸る。

 

「……確かに……そうかもしれんが」

 

「だから、上の人に聞いておいてくれる?」

 

「……わかった。聞いておく」

 

セイラは一礼もせず、踵を返した。その背に、ブライトは小さく呟く。

 

「……すごい女性だな」

 

その姿に、誰よりも驚いていたのはアムロだった。

 

(セイラ・マス……やっぱり、普通の人じゃない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦長室に、控えめなノックの音が響いた。

 

「入りたまえ」

ブレックスが声をかける。

 

ドアが開き、姿勢正しく立った若い士官が一歩中へと進んだ。

 

「失礼します。ブライト・ノア少尉です。艦長に報告すべきことがあり、参りました」

 

「どうしたね?」

 

「避難民の中に――モビルスーツのパイロットに志願したいという者がおります」

 

「……志願?」

ブレックスは思わず顔をしかめる。

「いや、彼らは家を追われたばかりだ。今は心身を癒す時だろう」

 

「しかし、ジャブローで全ての避難民が歓迎されるとは限りません。ですので、今のうちに軍属になる意思のある者がいるなら、記録しておくべきだと言う者がいまして」

 

ブレックスは腕を組んだまま、唸るように低く言った。

 

「それは……確かにな。だが、志願を受けるにしても、この船には訓練施設などない。モビルスーツのパイロットにするにも、ジャブローか、途中で立ち寄れるならルナツーにでも着かねばどうにもならん」

 

そのとき、椅子に座っていたテム・レイがぽんと手を打った。

 

「なら、シミュレーターをやらせればいいんじゃないかね?」

 

「シミュレーター?」

ブレックスが目を向ける。

 

「ええ。適性が前もってわかれば、志願する側も受け入れる側も無駄な負担がなくなる。双方にとって助かると思うがね」

 

「……だが、君も知っているだろう。この船のシミュレーターは、セイバーフィッシュ用にしか対応していないはずだ」

 

「ジムのデータを入れるぐらいなら、1時間もあればできるよ」

テム・レイはひょいと立ち上がった。

「許可さえもらえれば、すぐにやる。あとは私に任せてくれればいい」

 

ブレックスは一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに深くうなずいた。

 

「……一時間で、か。わかった。許可する。必要なら人を使って構わん」

 

「いや、許可だけでいいよ。みんな他の作業があるだろうし、私ひとりで十分さ」

 

そう言って、テム・レイはすたすたと室内を出ていった。

 

部屋に残されたブレックスとブライトは、しばらく沈黙する。

 

「……自分は、あまり詳しくないのですが」

ブライトが、沈黙を破る。

「シミュレーターは、そんなに短時間で機体を追加できるものなのですか?」

 

ブレックスはわずかに苦笑して肩をすくめた。

 

「私も詳しいわけではないが……ジャブローで見たときは、数日から数週間かかっていたよ。だが――」

彼は扉の向こうに視線をやる。

「……あの男は、あの男だからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サラミス艦内の訓練室――そこには、テム・レイの手によって急ごしらえで再調整された二台のシミュレーターが並んでいた。

 

テム・レイは端末の最終確認を終え、周囲にいた避難民たちに向けて言った。

 

「これでよし。今この二台のシミュレーターに、ジムの標準データを入れておいた。モビルスーツの操縦適性を知りたい者は、自由に使うといい」

 

その言葉に、最初に手を挙げたのは――セイラ・マスだった。

 

「私がやるわ」

 

躊躇いも見せず、すっとシミュレーターのコックピットへと乗り込む。その姿に、他の若者たちが小さくざわめいた。

 

「女性なのに……すげぇな」

 

「度胸あるよなぁ……」

 

テム・レイがシミュレーションをスタートさせる。画面の中で、ジムが滑らかに起動し、模擬戦闘エリアに進む。操作こそまだぎこちないが、初動の動きからはしっかりとした反応速度と、状況把握の速さが見て取れた。

 

「なかなかだな……初めてにしちゃ、よくやってる」

 

セイバーフィッシュのパイロットが頷く。

 

模擬戦終了のアラートが鳴り、スコアが表示された。平均を少し上回る、そこそこの結果。

 

「悪くないわね」と、セイラは何事もなかったように席を立った。

 

それを見ていたカイ・シデンが、ポケットに手を突っ込んだまま、ひょいと前に出た。

 

「ふ〜ん。じゃあ俺もやろうかね」

 

「カイさん、志願するんですか?」と、隣で驚くハヤト。

 

「ん〜、モビルスーツのパイロットになるかどうかまでは分かんねえよ。でも、こっちは家もねえ。セイラさんの話じゃ、ジャブローに着いたからって安心できるとは限んねえってんならさ……今のうちに自分が何できるかぐらい知っとこうかと思ってな」

 

軽口を叩きながらも、その目にはわずかな真剣さが混じっていた。

 

そしてカイはニヤリと笑って、ハヤトの肩を叩く。

 

「ま、ビビってんならお前はやんなくていいぜ?怖いだろ?」

 

「こ、怖くなんてありません!」

ムキになって返すハヤト。

「僕もやります!」

 

そして、ふたり並んでそれぞれシミュレーターに乗り込んだ。

 

結果は――セイラよりはやや低かったが、どちらも及第点以上の成績を出した。

 

「ま、こんなもんか……」と肩をすくめるカイに、「思ったより難しかったなぁ」と汗を拭うハヤト。

 

その後ろから、静かに歩み寄る影が一つ。

 

「じゃあ、次は僕がやります」

 

アムロ・レイだった。

 

「アムロもやるの?」

少し不安そうにフラウ・ボウが声をかけ、彼の手を取る。

 

アムロは少しだけその手に目を落とし、すぐにやさしく振りほどいた。

 

「しょうがないじゃないか。中立でもジオンは攻めてきた。だったら、適性を知るぐらい……やってもいいだろ」

 

彼の声には、わずかに怒りと――何より、父テム・レイが作ったガンダムを奪われたことへの、複雑な感情がにじんでいた。

 

静かにシミュレーターに乗り込み、システムが起動する。

 

最初は、ややぎこちなかった。明らかに機体との呼吸が合っていない。

 

が――数分も経たないうちに、それは劇的に変化した。

 

アムロの操るジムは、模擬敵の動きを先読みし、狙いすましたように射撃を命中させ、反応速度も異常なほどに上がっていった。

 

周囲がざわめく中、スコアが最終的に弾き出される。

 

――セイラの倍近い数字。これは、すぐにでも正規のテストパイロットに推薦できるレベルだった。

 

 

周囲に静けさが満ちる中――アムロだけが、なぜか静かに目を伏せていた。

 

彼の中で、何かが確かに目を覚まし始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルナツー――かつて小惑星帯の要衝として築かれたその要塞のドックに、サラミスが静かに接岸した。

 

艦のハッチが開くと、整然とした軍人たちの列の先に一人の男が立っていた。胸に輝く階級章は「少佐」。ルナツーの現司令官、ワッケインである。

 

「ワッケイン少佐であります。ブレックス准将、テム・レイ大尉、ようこそルナツーへ。ルナツーは皆さんを歓迎します」

 

「ありがとう、少佐」

 

ブレックスは敬礼を返し、短く礼を述べると、すぐに本題へと移った。

 

「ところで、我々が抱えている避難民について――少し話しておきたいことがある」

 

「……了解しました。こちらの会議室へどうぞ」

 

三人は静かに、応接用の小会議室へと歩を進める。

 

室内に入ると、ブレックスが椅子に腰かけながら単刀直入に口を開いた。

 

「少佐、避難民の中に、モビルスーツのパイロットを志願している者がいる」

 

ワッケインの眉が少し動いた。

 

「志願者、ですか? それはまた……しかし、サラミスには適性を測る装置などあったのですか?」

 

「なかったよ」とブレックスが肩をすくめる。

 

「だが、テム・レイ大尉がデータを追加してくれた。わずか一時間でな」

 

「……一時間で?」

思わずワッケインが復唱する。驚きのあまり思考が一瞬止まったのだろう。

 

「信じられん話かもしれんが、この大尉に限っては信じていい。シミュレーターはすでに複数回使用されている。そして、その結果――何人かは、現在の連邦軍パイロットより高い適性を持っていた」

 

「それは……確かに看過できませんな」

 

ワッケインは頷きつつ、事態の重さを受け止めている様子だった。

 

「彼らに軍籍を与えておきたいと思っている。正式な訓練はジャブローで受けることになるが、それまでの間に教えられることは教えておきたい。彼らは、ジオンに襲われた市民でもあると同時に――我々が巻き込んでしまった“責任”でもあるからな」

 

「……准将の仰ること、理解しました。こちらでも準備いたします」

 

「もう一つ、頼みがある」

 

ブレックスの声が少しだけ低くなった。

 

「できれば、その中でも“すぐにでも”モビルスーツに乗りたいと言っている者を、ルナツーに残してやってもらえないか」

 

「ルナツーに……ですか? しかしそれは……避難民をこの基地に留めるとなると、上層部からの指示が……」

 

「申し訳ないが、何とかならないだろうか。スコアも高い。それだけではなく、並々ならぬ意思を持っている」

 

ワッケインは訝しげに目を細めた。

 

「その志願者とは?」

 

テム・レイが、腕を組みながら口を開いた。

 

「セイラ・マス、という女性だ。ガンダムのテストパイロットだったヴェルツ大尉ほどではないが、ガンキャノンのパイロットより上だと考えていい。現時点で、そのくらいの操縦ができている」

 

「女性が……? それほどの操縦を?」

 

「ああ。それに、彼女の意思は明確だ。復讐とは違うが、ジオンに対して確かな怒りと決意を持っている。ああいう人間こそ、今の連邦軍に必要なんだ」

 

しばしの沈黙が流れた後、ワッケインが静かに息を吐いた。

 

「……分かりました。責任は私が取ります。そのセイラ・マスという志願者、ルナツーに残しましょう」

 

ブレックスは小さく頷き、感謝の意を表す。

 

「すまないな、少佐。恩に着る」

 

会談は、静かに――しかし確かな一歩をもって終わった。

 

 

既に幕間が本編の2倍あります。かといってアニメが進んでジオン周りの情報が出ないと次が書けません。読者様方てきにはどんな感じですか?

  • 幕間が3倍になろうが4倍になろうが↓
  • 関係ない。書け(無慈悲)
  • アニメが進んだら書いて(慈悲)
  • 作者のペースで書いて(聖人かな?)
  • どうでもいい
  • 以上テスト兼読者様の意見を聞く回でした
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