ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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第三十三話: 星二号作戦13 リタvsケリィ

「くっ、ガンダムども! どけぇ!」

 ケリィ・レズナーの怒声が宙域に響き渡る。

「俺はガトーの仇――灰色の幽霊を討ち、このコロニーを墓標として地球に叩き落とす! それが俺の手向けだ!」

 ヴァル・ヴァロの機体がスラスターを全開にし、突撃してきた。

 

「地球の軍人でもない人を大勢殺すような作戦を平気で実行しておいて……よくもそんなことを!」

 リタ・ベルナルは怒りを込めて叫び、ビームマグナムを構える。初撃でコクピットを仕留めようと、胴体中央を正確に狙った。

 

 しかし、ヴァル・ヴァロは大型モビルアーマーとは思えぬ鋭い旋回でビームをかわす。

 

「なっ!?」リタの瞳が揺れる。

(この人からはニュータイプの力は感じない。だからサイコミュの恩恵はないはず……なのに、今の反応速度は何!?)

 

 人類全体で見て同格はいても、彼女以上を探す方が難しいニュータイプであり、ムラサメ博士の助手として、モビルスーツやサイコミュの発展、そしてサイコフレームの研究に携わってきた彼女は、直感と経験の両方からその“違和感”を捉えた。

 

「ふん! この機体の速さに驚いているようだな!」ケリィの声が響く。

「ジオンの技術は、連邦のそれに劣っていないということを証明してやる!」

 

 リタは目を細めた。サイコフレームの力で研ぎ澄まされた感覚が、ケリィの機体の奥にある“何か”を探り当てる。

(……左腕の義手。そこから直接、機体に接続されている?)

 

「あなたのその反応速度の秘密は……左腕の義手ですね」

 

「……! ニュータイプというやつか」ケリィは一瞬だけ息を呑むが、すぐに笑みを浮かべた。

「そうだ! これはサイコザクとやらに使われていた技術だそうだ。前の大戦で技師も被験者も全滅したが、コクピットと義手が1セットだけは残っていてな。再現は無理でも、モビルアーマーに組み込むことはできた。この力があれば、俺はガトーの仇を討てる!」

 

 リタはその言葉に眩暈を覚えた。

(……この人は気づいていない。そんな技術で戦果を上げれば上げるほど、窮地に陥った勢力は健常者から手足を奪ってでも兵士を作り出す――その負の連鎖に)

 

 彼女は決意する。目の前の機体のコクピットと制御系は、完全に破壊しなければならない。この技術は、二度と残してはいけない。

 

「あなたは……絶対にここで、機体ごと破壊します!」

 

「やってみるがいい!」ケリィはヴァル・ヴァロのすべての火器を解放した。

 機首の大型メガ粒子砲がカバーを展開し、砲口を光らせる。格納式の対空ビームガンが火を噴き、両側のミサイルポッドが雨のように弾頭を放つ。110mmバルカン砲も加わり、モビルスーツ一機を狙うには過剰な灼熱の光がフェネクスを襲った。

 

 しかしリタのフェネクスは、ビームの中を舞うように抜けた。加速と減速を繰り返し、敵の射線を完全に外していく。

 

「このリユース・サイコ・デバイス以上の反応速度だと……!」ケリィの焦りが無線を通して滲む。

 

「私は連邦軍――いいえ、アムロさんやブレックスさんのいる連邦にいられたことに感謝します」リタの声は静かだった。

「そんな技術を使うジオンにいなくて、本当に良かった」

 

「その侮辱は高くつくぞ!」ケリィは怒号を上げ、両腕の大型クローアームを振り上げた。

「こちらが大型だから接近すれば有利を取れるとでも思ったか! このヴァル・ヴァロは接近戦の方が得意だ! 捻り潰してやる!」

 鋭い爪がフェネクスを挟み潰そうと迫る。

 

 だが、フェネクスの両腕のビームトンファーがサイコフレームの光に包まれ、巨大な光刃――ハイパービームトンファーへと変貌した。

 

「何ぃ!?」

 

「さようなら」リタは冷ややかに告げる。

「あなたの痕跡は、何も残しません」

 

 巨大化したビームトンファーがクローアームを焼き払う。そのまま、ビームマグナムがヴァル・ヴァロの中心を正確に撃ち抜いた。

 

 閃光が爆ぜ、ケリィの機体は跡形もなく散った。リタは黙して、その残滓を見つめる。戦場に、静かな決意だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 四機のガンダムは、コロニーの前方で次々と向かってくる敵を蹴散らし、遊撃戦を展開していく。

 進路上の敵はほぼ全滅し、コロニーへの侵入は不可能となった。

 

 そして近距離で最後の防衛ラインとして待ち構えるのは、シャリア・ブルのニュータイプ仕様デンドロビウムと、コウ・ウラキの通常型デンドロビウムだった。

 

「僕らに取り残しを倒してくれ。コロニーにジオン兵を誰も入れさせないって話ですけど…」

 コウ・ウラキが静かに通信で告げる。

 

「ええ…あの四機を抜けてくるなど誰もできそうにありませんね」

 シャリア・ブルは冷静に答えた。

 

「あなたはいいんですか? このままだとコロニーはア・バオア・クーに落ちてしまう。元ジオンとして、思うところはないんですか?」

 コウが少し詰め寄る。

 

「元ジオンだから絶対に手を抜けないんですよ。戦後にあくまで悪いのはザビ家であり、酌量の余地のある人間に対しては温情を引き出すためにもね…」

 シャリアは目を細める。

 

「そうですね。あなたが手を抜くようなら、自分は…」

 

「ええ。その時は、あなたが私を撃ち抜けばいい」

 シャリアの言葉に、コウは静かに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【休憩室・モニター越しの戦況】

 

 補給作業と捕虜の輸送のために帰艦したネモⅡのパイロット三人は、休憩室のモニターに映る宇宙戦の光景に目を凝らしていた。虹色に輝くガンダムたちと、迎え撃つジオン兵の姿が映し出されている。

 

カイ・シデンが、腕を組みながら低く呟いた。

「なるほどね……地球へのコロニー落としの阻止に、いくら強いって言ったって、たった六機じゃ少ないだろうと思ったが……」

 

「カイさん、リュウさん……これ……」

 

リュウ・ホセイは、ちらりとモニターを見てため息混じりに返す。

「余計なことを言うなよ、ハヤト。ブレックス准将から通信があっただろ。これはコロニー落とし阻止のために戦ったアムロ達とジオン兵の戦いの余波で、核パルスエンジンが暴走して軌道が変わっただけだ」

 

「そうそう。ジオンの奴ら、懲りずにコロニー内に入ってまた地球への落下コースに軌道変更しようとしてるだろ? なら、それを阻止するために戦うのだって仕方ねえよ。まさかジオンの奴らをコロニーまで素通りさせろって話か?」

 

ハヤトは小さく首を振る。

「でも、この戦いはもう連邦の勝ちですよ。ジオンのビグザムは全滅で、今更戦況をひっくり返せる手札なんて無いでしょう」

 

「でも、降伏しねえじゃん、あいつら」

 

「それは……」

 

カイは続ける。声に少し熱を帯びた。

「最前線にいた、人質を取られてたダイクン派扱いの連中は武装解除して投降してきてるけどさ。ザビ家の信奉者は、今も元気に『アースノイドくたばれ! サイド3以外のスペースノイドも連邦と戦え!』って叫んでるだろ。これであいつらを助けるために、あいつらに背中を向けてコロニーの破壊をしろなんて……ごめんだね。後ろから撃たれるのがオチだ」

 

 沈黙の中、三人の視線はモニターに集中する。戦場の光景は残酷で、だが同時に、戦うべき理由がはっきりと浮かび上がっていた。

 

「俺はザビ家とその信奉者共を許さないぜ。戦争中に負けそうになったからって、戦力分断のためだけに地球にコロニーを落とすような連中だ。地球にはミハルとその弟達だっているんだ。俺はあいつらを守るためなら、鬼だって言われても構わねえ」

 

「だな。それに、戦力分断のためだけにコロニー落としができるなら、他のどんな理由でも出来るだろ。もう二度と誰もコロニー落としなんて企めないように、“コロニー落としを企んだ奴は自ら落としたコロニーに潰されて死んだ”――って結末は、いい教訓だよ」

 

 その時、館内放送が流れる。

「ネモⅡ三機、補給作業終了。発進お願いします」

 

カイは笑みを浮かべ、リュウに目を向けた。

「さて、俺とリュウは行くぜ。こんな作戦、嫌なハヤトは出撃ボイコットするか?」

 

ハヤトは眉をひそめ、首を横に振った。

「出来るわけないでしょ、そんなこと」

 

リュウはにやりと笑いながら答える。

「出来るかできないかで言えば、出来るだろ。後の処分が怖いなら、そこでこけて骨でも折ったって軍医に泣きつけばいい。診断が出れば他の奴にお前のネモⅡはあてがわれるだろうさ」

 

ハヤトは真剣な眼差しで二人を見返す。

「二人して……僕にだって戦う理由はあります! 地球にはフラウ・ボウがいるんです! コロニーの軌道変更なんて絶対にさせませんよ!」

 

 三人の決意が重なり、モニター越しの戦場を前に、ネモⅡ三機は休憩室を後にした。地球の未来を守るため、彼らの小さな戦いが今、宇宙に向かって始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




☆8評価ありがとうございます! 絵微地狸さん
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