ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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アナハイムを今後どうするかで資料読み込んでたらだいぶ時間かかりました。マジかよ!?ってなる情報がいろいろ出てきて悩んだ結果長文になったので時間がない方は後書きに要約を書いてあるのでそちらをどうぞ。

今の星二号作戦で重要なのは後書き直前のひとまとまりなのでそこだけでもいいかもです。


第三十四話: アナハイムの今後

 

【地球連邦本部・ジャブロー/人事部応接室】

 

  白い蛍光灯の下、書類の山を片付けたばかりのクローディア・ペール中佐は、深く一息をついた。

 向かいのソファには、気品を纏った若い女性――ルオ商会の令嬢、ミシェル・ルオが腰掛けている。傍らには、無表情を崩さぬ秘書のブリックが控えていた。

 

「え〜と……」クローディアは書類をめくりながら口を開いた。

「ミシェル・ルオ。あなたの仰る“戦争終結前にアナハイムを見定める"というお話、大変意義のある案件だと考えます。もしアナハイムが改心するなら良し、今のように“死の商人”を気取って利益ばかりを啜るのであれば――戦後、然るべき処置を講じる。

 そして、その交渉のためにルオ商会からご令嬢自らが出てくださること、連邦としても感謝しております」

 

ミシェルは涼しい笑みを浮かべ、ゆっくりと脚を組んだ。

「では、護衛の件も問題ないわね?」

 

「ええと……」クローディアは視線を落とし、少し居心地悪そうに言葉を探した。

「当初の話では、ジャブロー守備隊の中から“操縦技能に長けた人員”との事なので、……すでに候補を決めておりまして」

 

「そう?」ミシェルは小首を傾げ、机の上に置かれた資料を指で叩く。

「でも――重要な仕事もなく、師匠に恵まれて上位の腕を持っているのに、何の役目もない“無駄飯ぐらい”がいるじゃない。せっかくなら、その人材を働かせるって話よ。何か問題でも?」

 

 クローディアは小さくため息をつきつつ、資料を見返した。

 そこには、はっきりと「ヨナ・バシュタ」の名があった。

 

「その……」

「ヨナ・バシュタの幼馴染であるミシェルさんには、説明するまでもないかも知れませんが……彼は大変“慎重な扱い”が求められる立場でして」

 

「はっきり言ったら?」ミシェルの瞳が鋭くなる。

「ヨナに何かあったら、リタがどうなるか分からないから――大人しく“籠の鳥”でいろってことでしょう?」

 

「そういう……考え方もあるかも知れませんが」クローディアは額を軽く押さえた。

「ただ、もしジオンが地球へ降下して来た場合、彼は重要な戦力ですし――」

 

「軌道決戦であれだけ連邦が完勝したのに?」

「そこからさらに要塞を守りながら、地球まで攻め込む余力が、あんな一つのサイドの経済力をどう計算したって出てくるはずないでしょ。ビグザムを15機ってだけでも狂ってるのかと疑うレベルよ?頭を一度、開いて見てみたいものだわ。あの“上層部”ってやつらのね」

 

 クローディアは心の中で悲鳴を上げた。

(分かってますよ! これでも元は作戦士官なんですから! ああもう……ルオ商会のお嬢様の相手なんて、人事部とはいえ新人の私に持ってくる案件じゃないってば! 中佐の肩書きなんて持つもんじゃない!)

 

 ミシェルは肩をすくめ、口調を和らげた。

「まあ、あなたの立場が難しいのも分かるわ。だから――はっきり言うわね。ルオ商会は、月のアナハイムが戦後の世界を支える存在なのか、それとも蝕む害虫になるのかを見極めに行きます。

 その護衛として、ジャブロー守備隊の中で上位の腕を持ち、なおかつ暇を持て余している“無駄飯ぐらい”――ヨナを同行させてください。もし彼が来ないのなら、この交渉は私ではなく、別の人間に任せることになります」

 

「う、うぅ……」クローディアは眉をひそめ、書類を抱え込んだ。

 

 

 

 

 ミシェルは書類を指先で軽く叩いた。

「アナハイムとの会談は表向き“技術提携の話し合い”だけれど、裏ではもうひとつの催しがあるの」

 

「催し……?」

 

「デモンストレーションを兼ねた模擬戦よ」ミシェルはわざと軽く言った。

「アナハイム側が“ぜひ互いのモビルスーツ性能を比較したい”って提案してきたの。おかしいでしょう? 戦争終結前に、どうしてそんなものをわざわざ開くのかしら」

 

 クローディアは眉をひそめた。

「……アナハイムが、連邦の最新機体のデータを欲しがっている?」

 

「ええ」

「これまで連邦は、アナハイムに鹵獲したジオンのデータは流したけれど、こちらの最新型――特にガンダム系列の詳細は渡していない。あの人たちは、今の立ち位置に飽きているのよ。戦争の勝敗が見え始めたから、どちらにつくのが得か試算している」

 

「……戦後、自分たちの価値を高く売るために、ですか」

 

「そのとおり」

「もし模擬戦で連邦が弱いと見れば、ジオン寄りの“中立”を装うでしょうし、強いと分かれば“連邦寄り”の中立に立つはず。要するに、アナハイムは今のうちに天秤を量りたいのよ」

 

 

「……それで、あなたはヨナ・バシュタを連れて行きたいと」

 

 彼女が逡巡するのを見て、ミシェルはゆったりと背もたれに身を預けた。

「分かっているでしょう、クローディア中佐」

 その声音には、ルオ商会の当主代理としての冷ややかな響きがあった。

「この戦争の勝敗は、もう見えているのよ。連邦が最終的に勝つ――それは誰の目にも明らか」

 

「……ええ」クローディアは慎重に頷いた。

 

「だからこそ、これからが本当の勝負」

「重要なのは、勝った連邦のその先。ダイクンの娘、アルテイシア・ソム・ダイクンがサイド3に築く新しい政権に、他のコロニーをどこまで協調させられるか――そこにかかっているの」

 

 彼女は一息つき、冷ややかな視線をクローディアに向けた。

「戦前から連邦寄りだったコロニーは、この戦争が終わればすぐにでも再び連邦に従うでしょう。でも、ジオンが“解放”したことで……下層の人々は苦しんでも、一部の上位層だけが富を得ているコロニーもあるの。そういう場所は、今後の不満分子の温床になる」

 

「……アナハイムが、そういう連中に武器や資金を流しかねない、と?」

 

「そう」

「もしアナハイムがこのまま“死の商人”を気取るなら、戦後は反連邦組織を焚きつけ、自分たちの利益を作るでしょう。けれど、彼らにもまだ選択肢はある。アルテイシアの新政権や連邦に協調し、戦後の秩序を支える側に立つ道もあるはず」

 

 ブリックが静かに腕を組み、言葉を添えた。

「要するに――アナハイムが“秩序の側”に立つか、“混沌の側”に堕ちるか、ということですね」

 

「ええ」ミシェルは淡い笑みを浮かべた。

「その見極めが、私に与えられた仕事。だから、模擬戦では絶対に負けられないの。ルオ商会の名にかけて、彼らの本音を引き出してみせるわ」

 

 クローディアは小さく息を吐き、書類を握り直した。

(この人は……いつだって鋭い。ヨナ少尉を連れていく理由も、結局はその“勝ち筋”のためか)

 

 部屋の空気には、交渉を終えたばかりの緊張と、二人の胸に宿る静かな決意が混じり合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ペガサス級強襲揚陸艦/ブリッジ】

 

 月に向けて加速する艦のブリッジには、緊張と好奇心の入り交じった空気が漂っていた。

 ミシェル・ルオは艦長席の脇に立ち、窓外に広がる蒼白い月面を眺めながら足を組む。傍らには無表情な秘書ブリックが控え、ヨナ・バシュタは少し距離を置いて前方モニターを見つめていた。

 

「……本当に、ただの企業とのデモンストレーションに俺やジャブロー守備隊の一部まで連れてくる必要があるのか?」

 ヨナは眉をひそめ、控えめに疑問を口にする。

 

 ミシェルはちらりと横目で彼を見て、ため息を一つ。

「ヨナ、あんたはまだ“アナハイム”を、ただの兵器メーカーだと思ってるのね」

 その声には呆れと諭しが混じっていた。

「裏に誰がいるか、忘れてないでしょう? ビスト財団よ。地球の美術品や世界遺産を、環境が安定したコロニーに運ぶ“公益財団”なんて表の顔をしておきながら、裏じゃマネーロンダリングに利用してるような連中」

 

 ミシェルは椅子に腰を下ろし、指先で艦内パネルを軽く叩く。

「アナハイムとビスト財団の癒着を、可能な限り分断しなきゃいけないの。今のままだと、あの会社はビスト家の私物同然よ」

 

 艦長席に座るアバーエフ大佐が腕を組み、低く唸った。

「だからといって、ペガサス級を丸ごと動かすほどの話なのか? 軍の目もある。これじゃ――」

 

「砲艦外交、って顔をされるかもしれませんね」ミシェルは平然と肩をすくめた。

「でも、このくらい“本気”を見せないと、アナハイムはのらりくらりと逃げて、本音も真実も絶対に見せないわ」

 

 モビルスーツ隊を率いるイアゴ・ハーカナ――“イアゴ隊長”が、後方のパネルから顔を上げる。

「そのために、あのやせっぽっちの《ガンダム》まで連れてくってのか?」

 

「ええ、もちろん」ミシェルはにっこり笑った。

「アナハイムはきっと“新型”を出してくる。こちらもカードを切らないと、彼らは対等に扱ってくれないでしょう」

 

 アバーエフは額に手を当て、やや渋い表情を見せた。

「確かに、あの企業に裏があるのは聞いている。だが、ネモⅡで勝てないほどの機体を出してくるか?」

 

 ミシェルは一拍置いてから、穏やかに言葉を返した。

「アナハイムのエンジニアが辞表を叩きつけて地球に降り、連邦に提出した“ガンダム”の設計図……あれはネモⅡを完全に圧倒する性能だったわ。コストが高すぎてアナハイムでは却下したそうだけど、それが“3号機”とされている以上、1.2号機がどこかにあっても不思議じゃない」

 

 ブリッジの一角で、ヨナは無言のまま息を整えた。

(やはりこれは、ただの模擬戦じゃない……)

 艦窓の向こうに広がる月の光は、これからの任務の重さを静かに照らしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【月面・アナハイム社 第三ドック】

 

 格納庫のシャッターが静かに開き、白い照明に照らされたモビルスーツの影が姿を現した。

 ルオ商会から来たミシェル・ルオとブリック、連邦側からはイアゴ・ハーカナとヨナ・バシュタが、その様子を慎重に見守っている。

 

 先に現れたのは、赤白の装甲をまとったモビルスーツ――ゲルググカスタムだった。

 イアゴは片眉を上げ、口の端をわずかにゆがめる。

 

「……ほう、こいつは」

 横でヨナも険しい表情を浮かべる。

「イアゴ隊長、あれ……」

 

「ああ、間違いない」イアゴは小声で答えた。

「ジオンでエース向けに使われているゲルググのカスタム機だ。……随分とジオン寄りらしいじゃないか、アナハイムは」

 

 二人がひそひそと話していると、そのやり取りを見逃さなかったのが、スーツ姿の中年――アナハイム常務のオサリバンだった。

 彼はにこやかに笑みを浮かべ、両手を軽く広げる。

 

「ああ、誤解なさらないでいただきたい」

「これはあくまで“数合わせ”ですよ。ジオン製の機体を参考にしたのは確かですが、本命はこの後にお目にかける機体です」

 

 その言葉を合図にするかのように、格納庫奥のゲートが開き、別のモビルスーツが姿を現した。

 背中に二つのブースター・ポッドを背負い、青と白を基調とした装甲に輝きを宿す――洗練されたシルエットのガンダム。

 

 オサリバンは誇らしげに胸を張った。

「これこそ、我が社が誇る新型――ガンダム試作1号機《フルバーニアン》です」

 

(映像で見せつけられたアムロ・レイのアレックスは確かに圧倒的だった。だが今やそのアムロも最前線に釘付け、同格の連中も同じだ。残った手駒相手なら、このフルバーニアンと専属のテストパイロットで十分勝てる……! 戦後の覇権を握るのは、あくまで我々アナハイムだ)

 

 技術部門の責任者、オクトバー・サランは上司の自慢気な口調にちらりと視線を送り、何か言いたげに眉をひそめたが、結局は周囲のスタッフに作業の指示を出す方を選んだ。

 

 その時、オクトバーの端末が短く振動する。

 彼は小さく息を吐き、画面を開いた。高い女性の声が、少し怒りを含んで響く。

 

『オクトバーさん! どういうことですか! 私のフルバーニアンを模擬戦に使うなんて、聞いていません!』

 

 オクトバーは肩をすくめ、淡々と答えた。

「常務の判断だ。……君も、今回は聞き分けろ」

 

『そんな――私に直接話を――』

 

 女性の声が続く前に、オクトバーはそっと通話を切り、周囲に向き直って軽く頭を下げた。

「失礼。お騒がせしました」

 

 ブリックは無表情のままだが、ヨナは思わずイアゴと視線を交わした。

 ミシェルは口元をわずかに引き上げ、フルバーニアンをじっと見つめている。

 

 月面のドックに、これから始まる模擬戦の予感が、静かに満ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【月面・アナハイム社 試験宙域/模擬戦フィールド】

 

 ヨナ・バシュタはナラティブガンダムA装備のコックピットに深く腰を預けた。

 視界の端には、背にブースター・ポッドを背負った白青の機体――フルバーニアンが、月面の薄い光の中に静止している。

 通信越しにイアゴ隊長の声が届く。

 

『いいか、ヨナ。これは模擬戦だ。だが、アナハイムに連邦の力を見せつける機会だ。遠慮はいらん』

 

「了解」ヨナは短く答えた。

 握った操縦桿に力がこもる。ナラティブのブースター群が低く唸り、機体全体が緊張を帯びた。

 

◆ ◆ ◆

 

【観戦室】

 

 防弾ガラス越しに、格納庫を改造した試験宙域が一望できる。

 オサリバン常務は腕を組み、強張った笑みを浮かべていた。隣でオクトバー・サランは腕を組みつつ、無言のままモニターを注視している。

 ミシェル・ルオは脚を組み替え、悠然とした視線を戦場に向け、ブリックは背後で控えていた。イアゴは腕を組み、眉をわずかにひそめている。

 

「さて――どちらが先に仕掛けるか、ですね」オクトバーが低く呟く。

「フルバーニアンは悪い機体じゃない。ただ、あのナラティブは……化け物だ」イアゴが鼻を鳴らした。

 

◆ ◆ ◆

 

【ヨナ視点】

 

 スタート信号が鳴った瞬間、ヨナは推力を全開にした。

 A装備の大型ブースターが青白い光を吐き、ナラティブは稲妻のように宙域を駆ける。

 

 ――速い。

 

 自分でも思わず息をのむ加速。全身に重い圧力がかかり、視界の端が白く染まった。

 目の前に迫るフルバーニアンは、確かに優秀な機体だ。しかし、直線加速で既に置き去りにしている。

 

 ヨナは機体を翻し、サイコ・キャプチャーを展開。四方にクロー状のユニットが広がり、捕獲フィールドが淡く光を放つ。

 フルバーニアンのパイロットが驚き、必死に回避行動を取るのが見えた。

 

 ――だけど、遅い。

 

 ヨナはビームライフルを「模擬モード」で照準。

 トリガーを引くと、戦術コンピューターが「命中」を認識し、フルバーニアンのHUDにダメージ表示が走った。

 

◆ ◆ ◆

 

【観戦室】

 

 ミシェルは静かに笑みを浮かべた。

「やっぱり、ヨナは外さないわね」

 

「ふん、所詮はデータ上の“命中”だ」オサリバンが声を荒げる。

「我々の技術が劣っているわけではない!」

 

 オクトバーが肩を竦め、諌めようとした。

「常務、ここは冷静に――」

 

「うるさい!」オサリバンは振り払うように手を上げた。

「我々のフルバーニアンが負けたのは、あの女(ルセット)が余計なことをしたせいだ! 3号機――デンドロビウムを捨てろと言ったのは正しかったのだ!」

 

 その言葉に、オクトバーの表情が一瞬だけ険しくなったが、何も言わずに視線を逸らした。

 

◆ ◆ ◆

 

【ヨナ視点】

 

 ナラティブは宙域を縦横に駆け、5連装ミサイル・ポッドを順に発射。

 誘導モードで相手の進路を塞ぎ、サーベルを「模擬ヒット」させる。

 フルバーニアンは次第に逃げ場を失い、システムが「大破」判定を表示した。

 

 ヨナは軽く息をつき、操縦桿を緩めた。

 

◆ ◆ ◆

 

【観戦室】

 

 モニターに“勝者:ナラティブ”の文字が浮かび上がる。

 オサリバンはなおも不満げに叫んだ。

 

「アレックスを出していただきたかったな! あれ相手なら我々のフルバーニアンは勝てたのだから!

 同じ高機動を売りにするガンダムとして、アレックスこそ模擬戦相手にふさわしい!」

 

 ミシェルは片眉を上げ、冷ややかに微笑んだ。

「そう? じゃあ――次はアレックスでやりましょうか」

 

「はぁ?」オサリバンは面食らった表情を見せる。

 

「ちょうど乗って来ているの」ミシェルはブリックを振り返る。

「ブリック、連絡をお願い」

 

「了解しました」ブリックは端末を開き、艦の格納庫にいるヤハギ・フランジバックへ通信を送った。

 

『ヤハギ中尉、出番のようです。アレックスでこちらに来てください』

 

『了解……』スピーカー越しに疲れたような声が返る。

(何で教え子達や娘が前線で戦ってるってのに、俺がこんな企業の政治ショーに付き合わなきゃならんのか……。

 まあ、死の商人どもの鼻をへし折れば、あいつらも余計な戦を起こさなくなる。――アスナのためにやるか)

 

 ヤハギは短く息をつき、格納庫に並ぶアレックスへと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【月面・アナハイム社 試験宙域/模擬戦フィールド】

 

 開始の合図が鳴った瞬間、ヤハギ・フランジバックはアレックスを軽く前傾させ、スロットルを押し込んだ。

 ガンダムは月面の重力をものともせず、白い残光を引きながら一気に加速する。対するフルバーニアンは、推進剤を吹かせて上昇し、ビームライフルを構えた。

 

(やれやれ……サイコミュ抜きで勝て、とは随分なハンデを背負わされたもんだ)

 ヤハギは内心で肩をすくめる。

(アナハイムに“立場”ってやつを分からせるためだろうが、俺が負けるとは思ってないらしい。まあ――技術盗用とジオンからの横流しで作った向こうのガンダムと違って、こっちは正真正銘ガンダムの生みの親が作ったガンダムだ。格の違いを分からせてこいってことかな)

 

 フルバーニアンのライフルから青白いビームが放たれた。ヤハギは滑るような機動でかわし、逆にバルカンを連射。センサー付近に「命中」のマーカーが点る。

 さらに姿勢を反転させ、ビームサーベルを引き抜くと、フルバーニアンの右肩に軽く擦りつけるように斬撃を与えた。

 

(……やっぱり杞憂だったな)

 ヤハギは目を細めた。

(もしこのフルバーニアンの性能を100%引き出せるパイロットが乗っていれば、もう少し有意義な模擬戦になったろうに。今、デンドロビウムで暴れ回っているコウ・ウラキ中尉あたりなら、勝敗は別にしても双方に次につながるデータが取れただろう)

 

 フルバーニアンは焦りを見せながら距離を取るが、その機動はどこかぎこちない。ヤハギは機体を軽くバンクさせ、あっさりとその背後へ回り込んだ。

 そしてビームサーベルをコクピットに突きつける。システムが「大破」の判定を示す。

 戦いはあまりにも一方的に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【観戦室】

 

 モニターに「勝者:アレックス」と映し出された瞬間、オサリバン常務の顔は引きつり、みっともなく声を荒げた。

 

「くそっ……! これではデータにならん! パイロットの腕の差が大きすぎる! 本来なら我々のフルバーニアンが――!」

 

 その醜い言い訳を遮るように、背後の通路から落ち着いた低い声が響いた。

 

「――いい加減にしたまえ、オサリバン君」

 

 その場の空気が一瞬にして張り詰める。現れたのは白髪交じりの初老の男。アナハイムの頂点に立つ人物――メラニー・ヒュー・カーバイン会長だった。

 

「か、会長……」オサリバンは蒼ざめ、しどろもどろに頭を下げる。

 

 メラニーは薄く笑みを浮かべ、後ろに控えていた黒服に視線を送った。

「オサリバン君は働きすぎて疲れているようだ。少し仮眠室で休ませてやりなさい」

 

「はっ」

 黒服が恭しく頷き、なおも何か言い募ろうとするオサリバンを両脇から抱えて連れ出していく。

 

 ミシェルは静かに背筋を伸ばした。ようやく――この巨大企業の“本物の支配者”が姿を現した。ここからが、本当の勝負だ。

 

 メラニーはゆったりとミシェルの前に腰を下ろし、穏やかな声で口を開いた。

「それで? わざわざ連邦と深くつながっているルオ商会が、我々アナハイムの思惑に乗って来たのはなぜですか?」

 

 ミシェルは一瞬も躊躇せず、紅い瞳を細めて答える。

「簡単なことよ。――アナハイムがどれだけジオンと手を組み、技術を進めたとしても。連邦は必ずそれを上回る。そう示すために来たのよ」

 

「……テム・レイですか」メラニーはわずかに目を細めた。

「確かに、我が社の如何なるエンジニアも、彼の前では霞むでしょうな。コストを度外視すれば、ルセット・オデビーが設計した3号機ならば対抗できたかもしれない。しかし、彼女はオサリバン君の無神経な言葉に失望して連邦に渡ってしまった。おかげで残ったのは、ヒステリックな女ばかりだ。――全く、どうせなら彼女ではなく、そっちを失望させて追い出せばよかったのに。……失礼、話を戻しましょう」

 

 ミシェルは薄く笑みを浮かべた。

「ええ。あなた方はこれまで死の商人を気取ってきた。でも、戦後も同じやり方で甘い汁を吸えると思わないことね。私は警告に来たのよ」

 

 メラニーの声色がわずかに冷たさを帯びる。

「我が社の利益を害する、と? ……敵を増やしてもよろしいと?」

 その言葉は、暗に“ジオンへのさらなる肩入れ”をほのめかしていた。

 

 しかしミシェルは、まるで相手を小馬鹿にするように肩をすくめた。

「ご自由にどうぞ。けれど――先ほど見せてもらったガンダムが多少性能向上したところで、テム・レイのガンダムを超えることは不可能よ。逆に聞きましょうか?」

 

 彼女は鋭く問いを突きつけた。

「――アムロ・レイの乗るガンダムに勝てる機体を、あなた方は作れましたか? どうせジオンから映像データぐらいは貰っているのでしょう?」

 

 メラニーは沈黙した。その沈黙こそが答えだった。

 ジオンからデータを受け取り、アムロ・レイの操るアレックスを、超えるモビルスーツを作ろうと必死にもがいた。しかし結局、実現できなかった――それがアナハイムの現実なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静まり返った空気の中、ミシェルは一歩も引かずにメラニーへと向き合った。

「今後は――戦後世界の調和のために動く企業へと変わる意志を、今から示していただきます。そうでなければ、連邦はこれ以上あなた方に甘い対応はしません」

 

 メラニーは静かに目を細め、指先で顎を撫でた。

「……私としても、軍事産業でいつまでも儲ける気はないのですがね」

 彼の声音にはわずかな逡巡が混じっていた。

 

 ミシェルは口角をわずかに上げ、さらなる一撃を加える。

「ああ、それと――ジャブローのモグラさんから伝言です。『美術商がいつまでも保管している切り札は、もう切って構わない』と」

 

「……!」

 メラニーの瞳に驚愕が走った。

 彼には思い当たる節があった。自分たちアナハイムと癒着する財団の切り札――それが連邦にとっての弱みであることは理解していた。しかし、その“中身”までは知らない。まさか、連邦がそれを隠すことをやめるとは思いもよらなかったのだ。

 

 ミシェルは青い瞳を細めて続けた。

「私も何かまでは知りません。ですが――アルテイシア・ソム・ダイクンが表舞台に立ち、政治の場に出る以上、それはもう意味をなさないのだそうです」

 

 メラニーはしばし沈黙し、深く息を吐いた。

「……なるほど。確かに、それなら私の意思でこれからのアナハイムを決められるわけですな」

 

「ええ」

「そしてあなた方には、“死の商人”をやめてもらい、A.E.I.ソーラーやAEI・建材工業などの事業に集中してほしい――そういうことです」

 

「しかし……」

「我が社の規模を考えれば、すぐに軍需部門を畳めと言われても現実的ではありませんな」

 

 ミシェルは待っていたかのようにブリックへと視線を送る。

「元帥はこう仰っていました。この戦争が終わる前に、あなた方が“連邦側につく”意思表示をしてくださるなら――モビルスーツ産業の人員と設備は、こちらで責任を持って引き取る、と」

 

 ブリックが恭しく鞄を開け、一束の資料をメラニーへと差し出す。

 

 目を通したメラニーが思わず声を漏らした。

「……サナリィ? S.N.R.I.(Strategic Naval Research Institute)、海軍戦略研究所……ですか」

 

「ええ」

「地球連邦政府が買収し、公社として半官半民の企業となったサナリィが、今後は官営工場などをまとめ、地球連邦のモビルスーツ生産を一手に取り仕切ります」

 

「よって――そこ以外で生産されたモビルスーツであれば、すぐに出所が割れ、然るべき処置が取られることになります」

 

「それと……アナハイムがこれまで行ってきた数々の“連邦への利敵行為”については、公的に追及するつもりはありません。その代わり――金銭と物資で戦後復興に支払っていただきます」

 

「……利敵行為?」

 メラニーは首を傾げ、飄々とした笑みを浮かべる。

「はて、何のことですかな。我が社が連邦に敵対するなど、事実無根です」

 

 その芝居じみた言葉に、ミシェルはすぐさまブリックへ視線を送った。

 ブリックが恭しく鞄を開き、分厚い資料を取り出して机上に置く。そこには――連邦製モビルスーツのデータの盗用からの横流し、モビルスーツ自体の横流し、部品供与、秘密裏の資金の流れといった“裏切りの痕跡”が詳細に記されていた。

 

「……!」メラニーの目が見開かれる。

「これを……どうやって?」

 

 ミシェルは肩をすくめ、冷ややかに返した。

「さあ? 少なくとも私には、こんな情報を入手するのは不可能ですわ」

――(私だって驚いたわよ。まさかパン屋の店員の妹ちゃんが、これだけの情報をハッキングで集めたなんて。元スパイを随分手厚く保護していると思っていたけど……身内にこれだけの能力を持つ娘がいるなら納得ね)

 

「……なるほど。これは……確かに言い逃れできませんな」

 メラニーは苦々しい笑みを浮かべ、椅子の肘掛けに指をトントンと叩いた。

「……分かりました。その要求は受け入れましょう。それで?……利敵のペナルティはこれだけではないでしょう?」

 

「それと、人材受け入れの条件を付けさせていただきますわ。軍需の人材や設備は引き取ります。ただし“スパイ”だけは受け入れません。段階的に、まずは期限付きの出向という形で受け入れ、問題がなければ正式な転職へ移行する――そんな手順で進めましょう。ですが、もし紛れ込んでいる者がスパイであると判明した場合は、次からはこちらも相応の対処を取らせていただきます」

 

「しかし我々の方でも、全てのスパイを把握しているわけではない。内部に潜り込んでいる者を完全に排除するのは至難の業だ」

 

 ミシェルは意味深に微笑み、声を落とした。

「“段階的”と言ったでしょう? こちらには、自白剤も尋問も要らずに見抜ける人材がいます。あなた方が“人事相談”とでも称して個室で面談しているところを、マジックミラー越しに観察するだけでいい。敵意や悪意を抱いている者かどうか――判別できますから」

 

 その言葉に、メラニーはニュータイプを思い浮かべ、すぐに理解した。

「……なるほど。人の心の奥底を探れる者を、人材選別に使うわけですか」

 

「ご存じだったでしょう? これからの時代、彼らの力は戦場だけでなく、組織の未来をも左右するのです。まあこんな暗闘をやりたい人たちなんて少ないでしょうから軍などの一部の組織に限られるでしょうが」

 

「……あなたも“そう”なのではないですか?」

 

 その一言に、観戦室の空気がわずかに張り詰める。ニュータイプ――アナハイムのトップがそう口にした意味は、誰の耳にも明らかだった。

 

 しかし、ミシェルは表情を崩さず、肩をすくめて応じる。

「そう見えるとしたら……あなたが“本物”を知らないからです」

 

 彼女の声には冷ややかな響きが混じっていた。

「私に備わっているものなど、本物の彼らからすれば誤差でしかありません。けれど――その誤差すら使いこなせない組織には、未来はないのです。ああそれと、彼ら全てがただ話してるのを見ただけでスパイかどうか分かるわけではありません。彼ら自体2.30人に1人いればいい方ですが、その中でもそんなことができるのは全体の極一割くらいですよ」

 

 観戦室に漂う沈黙は、もはや重苦しいものではなかった。

アナハイムにとっての転換点が、確かに訪れたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ペガサス級・ブリッジ】

 

 航行を続ける艦のブリッジに、低い機械音が響いていた。観戦室での一連の交渉を終え、ミシェル、ブリック、そしてヨナは艦長アバーエフとイアゴ隊長の待つブリッジへ戻ってきていた。

 

 ブリッジのモニターには月面が迫り、艦内には緊張と安堵が入り混じった空気が漂っている。

 

 ヨナが腕を組み、少し戸惑いを滲ませて口を開いた。

「……あれで良かったのか? ナラティブまで持ち込んで、相手の機体を圧倒したけど」

 

 ミシェルは紅い瞳を伏せ、すぐに顔を上げた。

「必要があったのよ。アナハイムは今後、さらに巨大化する可能性がある。その時――軍需産業の利益は、実際にはA.E.I.ソーラーのわずか2%程度にすぎないのに、“アナハイムの生命線”だと誤解して、反政府組織に武器を売り捌かれたら堪らないでしょう?」

 

 彼女は椅子の肘掛けに指を軽く打ち付け、鋭く続ける。

「だからこそ、軍需がまだそこまで大きくない“今”、ビスト財団の呪縛を解いて、メラニー会長にバトンを渡す必要があったの。オサリバンのメンツも、もうボロボロにしておいたしね。これで会長も動かざるを得ないはずよ」

 

「しかし、戦争が終わった後でも良かったんじゃないか? 今の段階で首を振らせるのは大変だろう。」とイアゴが続ける。落ち着いた声だが、疑問の芯ははっきりしていた。

 

ミシェルはゆっくりと顔を上げ、鋭い視線を向ける。

「“今”じゃないといけないのよ。戦前にアナハイムがこちら側につく意思を示せたなら、彼らを秩序側として数えられる。けどアナハイムが混沌側で戦後を乱すとしたら――ルオ商会が、あの企業を潰した後の“消費”や“再建”の負担を背負わされることになるの。冗談じゃないわ」

 

ヨナがじっとミシェルを見据える。彼の表情には疲労と覚悟が入り混じっている。

 

「今から、どの工場でどの物資をどう回すか、避難民の住める新サイドのインフラを予測して組み替える準備をしておいてくれ――そんな要請が来てるのに、そこへアナハイムの産業まで引き継げと言われたら、お姉さまも私も過労死するわよ。あの企業には民需中心で末永く生きていてほしいの。死の商人で巨大化されても、こちらは迷惑なだけよ」

 

艦長アバーエフが小さく咳払いをしてから、慎重に口を開いた。

「なるほど、戦略的意味は分かりました。……ルオ商会がそこまで腹を括るなら、こちらも出来る限りの支援を約束します。艦として貴殿の意思に沿いましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ア・バオア・クー/中央管制室】

 

 警報が鳴り響く中、巨大なモニターには、漆黒の虚空を切り裂きながら落下するコロニーの影が映っていた。

 ア・バオア・クーめがけて、質量の巨塊が迫ってくる。

 

「なぜだ!」

 グレミー・トトが声を荒げる。

「地球に落ちるはずだったコロニーが、どうしてア・バオア・クーに向かってくるんだ!」

 

「詳細は不明です!」通信士の一人が絶叫する。

「傍受した連邦通信では、コロニー護衛部隊と連邦精鋭の戦闘の余波で、核パルスエンジンが暴走したとのことですが……!」

 

「馬鹿な!」グレミーは顔を紅潮させ、机を叩く。

「そんな偶然があるはずが――!」

 

「有り得んな」

 ギレン・ザビがゆっくりと立ち上がった。

 その瞳には、冷ややかな光が宿っている。

「おそらく連邦は予期していたのだろう。我々が、最後には再び“コロニー落とし”を企むと」

 

「ですが!」グレミーはなおも食い下がる。

「地球へのコースを進んでいたコロニーを逸らすならともかく、ほぼ逆方向のこの要塞に叩き返すなど、核パルスエンジンをどう弄ったとしても――!」

 

「用意したのだろうさ」ギレンの声は淡々としていた。

「それを可能にする兵器を。」(……おそらく、キシリアが自派閥で独占した“オメガ・サイコミュ”の発展型だろうが確証は無いな)

 ギレンの視線は、遠い記憶を見つめるように宙を泳ぐ。

(妹よ、どこまでも私の足を引く。……いや、イオ・マグヌッソを内戦で使わせぬためとはいえ、パイロットを暗殺させ、機体の実動データを潰した私も同罪か。……ドズル、なぜソロモンで死んだ。脱出しろと言っておいたのに。もし生き残っていたのがキシリアではなく、お前だったなら――)

 

 思考を振り払い、ギレンは現実に目を戻した。

 

「総帥を死なせるな!」グレミーが叫ぶ。

「グレート・デギンの発進は!? 他のドックは破壊されたが、あれは秘密ドックに――!」

 

「それが……」通信士が青ざめた顔で報告する。

「敵は秘密ドックの情報まで把握していたようで……ヤザン・ゲーブルの率いるガンダム部隊の襲撃により、つい先ほど破壊されました!」

 

「なに……! どうやって見つけたというのだ!」

 グレミーは信じられぬという顔をした。

「“灰色の幽霊”が裏切ったとしても、秘密ドックの情報は最重要機密だぞ!」

 

「どこから漏れたかなど、もはや重要ではない」

 ギレンは静かに言った。

「つまり我々は、脱出不可能になったということだ」

 

「……はい。全ての出口は破壊されました。我々は、この要塞に閉じ込められました」通信士が震える声で答える。

 

「ふふふ……面白いな、ブレックス」ギレンの口元にわずかな笑みが浮かぶ。

「いや――闇に堕ちた英雄の、ザビ家への復讐か」

 

「総帥、それはどういう意味です?」グレミーが問う。

 

「我々が見ているこの光景こそ、一年戦争で我々が地球の人々に与えた“絶望”だ」

 ギレンはモニターを指さした。

 そこには、巨大な建造物が視界を覆い尽くしながら迫ってくる映像。通信士の何名かは悲鳴を上げ、椅子から転げ落ちた。

 

「……コロニー落としの被害者たちが、宇宙を呪ったのも無理はない」

「この光景を見た人間は、ザビ家を決して許さぬだろう。――私が夢見た“ザビ家による統治”は、もはや不可能だ。仮に新たな旗を掲げる者が現れたとしても、連邦はどれほど遠くにいようと、潰しに来るだろう」

 

 通信士の中には、後悔の色を浮かべる者もいた。

 地球連邦は、この光景を見たにもかかわらず、ギリギリまで報復に走らなかった。それをジオンは、自らの手で踏みにじったのだ。

 

「今のまま終われば……な」

 

「さて……脱出も不可能、降伏も無意味だろう」

「連邦は再び軌道を変える術を持つかもしれん。しかし、それを使わせようと我々が降伏したとしても、どうせ現場の兵が無闇に発砲し、さらなる汚名を重ねるだけだ」

 

「では、どうなさるおつもりですか?」グレミーが恐る恐る問う。

 

「このア・バオア・クーの核パルスエンジンを全開にし、連邦艦隊へ突撃する」

 

「なっ……!」

「しかし、あのコロニーからも逃げられない状況で、無意味です!」

 

「違う」

「意味ならある。ザビ家は最後まで戦った――その事実が残るのだ。この事実があれば、アクシズか火星のジオンに火を残せるかもしれん」

 彼は周囲を見渡した。

「貴様らも選べ。ただ連邦とダイクンの娘が築く“平和な時代”の踏み台となるか、我らザビ家の後継者のための“始まりの火種”となるか」

 

 その言葉に、室内の大半の者の目に狂信の光が宿った。

 死を無駄にしない――その甘言は、ザビ家という呪いをさらに後世へと繋ぐ。

 

 ――もしもこの時ギレン・ザビの悪あがきが実行に移されていたとしたら。連邦に勝てるかどうかなど度外視し、アクシズや火星に潜むジオン残党へ確かな火が灯っただろう。その炎はやがて地球圏に再び戦乱を呼び込み、経済と人心を疲弊させたかもしれない。

 

 静まり返った空間に、誰もが息を潜めた。

 鼓動の音すら響きそうな張りつめた沈黙。狂信に目を光らせる者たちと、恐怖に汗を滲ませる者たち。全員が、次の一言を待っていた。

 ――その均衡を破るように。

 

 鋭い銃声が幾つも鳴り響いた。

 いつの間にか入室していた数名のジオン兵――パイロットスーツ姿の影が、ためらいなく引き金を引いたのだ。

 

 ほとんどの通信士は声を上げる間もなく崩れ落ちた。

 ギレンとグレミーだけが、両腕を撃ち抜かれながらも命を留めている。

 

「貴様ら、ジオンの兵でありながら……!」グレミーが呻き、目の前の影を睨みつけた。

 しかし、ヘルメットのバイザーは外から顔を読み取れない。影の一人――体格からして女と分かる兵が、グレミーを蹴り飛ばし、別の兵が床にねじ伏せる。

 

 ギレンは血に濡れた腕を押さえながらも、冷ややかな眼差しを崩さなかった。

「……何者だ?」

 

 女は鼻で笑った。

「顔を見ても、どうせ分からないでしょうけどね」

 そう言ってヘルメットのスモークを解除する。

 

 ギレンの瞳が見開かれた。

「!……貴様は……シーマ……ガラハウ……」

 

「ははっ、流石にあたしの顔は知ってたかい。総帥様」

 女は冷ややかに微笑んだ。

 

 かつて、ジオンに裏切られ、虐殺の汚名を一身に背負わされた女。

 シーマ・ガラハウが、ついにザビ家へ牙を剥きに現れたのだった。

 




オサリバン「アナハイムが本気出せば連邦のガンダムなんぞ!化け物連中も前線にいるし残り物相手なら勝てる!」

ミシェル「テム・レイのガンダム持ってきましたが?
パイロットはジャブローの無駄飯ぐらい。でも腕は基地に残ったメンツの中では最上位です」

アナハイム製ガンダムボロ負け

メラニー会長登場。オサリバン退場

メラニー「用件は?」

ミシェル『主要事業の2%しかない利益の軍事産業で戦乱起こすのやめろ。今ならサナリィでお前の金と引き換えに軍需部門を引き取ってやる。それとお前のバックにいる元テロリストに言っとけ。そんな石碑使いたいならご自由に。サイド3はダイクンの娘が治めるから今後公開しても意味ないよ。」

要約するとこんな感じなのにアナハイムのことを書こうとすると大分長文になりました。
いやマジでおかしいよあの企業。主要産業の2%の利益のためにどんだけ戦乱起こすんだよ。サンダーボルトはより悪辣になったアナハイムなんだろうけど、殲滅しようとしたのもわかるわ。
キッカの記者インタビュー漫画を読んで左遷されたオクトバーさんを引き取りたいからアナハイムを書き始めたのに設定の闇が深すぎた。
アナハイムに厳しすぎる!民間にここまでやるなって思う方がいたらすみません。こいつらに甘い顔すると本当に大変なことになるので。でもマジで潰しても困るんですよ。発電がほとんどアナハイムオンリーって独占禁止法仕事しろってレベル。
正史連邦がアナハイムが後ろ暗いとわかってたのに大したペナルティも課せなかったのが良く分かる。

☆9評価ありがとうございます! 質やさん ナマケモノ7さん
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