ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

49 / 178
幕間: アレックスの性能評価

【模擬戦試験:アムロ・レイ vs ゼロ・ムラサメ】

 

宇宙空間を模した全天候型試験区画。

二機のアレックスが、それぞれのスタートゲートで静止していた。

 

白と青を基調にしたその機体は、未だ未完成――“試験型アレックス”。

だが、駆動系・武装系統・反応制御はすでに本運用と同等に設定されている。

 

「ゼロ・ムラサメ、機体正常。問題ない」

「アムロ・レイ、了解。こちらも良好だ」

二人の通信が交差する。

 

タワーからの指示が飛ぶ。

 

「模擬戦開始まで5秒。4、3、2、1――開始!」

 

瞬間、ゼロの機体が猛然と加速した。

バーニアを最大噴射し、機体を旋回軌道に乗せながら一気に距離を詰めていく。

 

「来るか……!」

 

アムロは即座に後方へ回避行動を取りつつ、ハイパー・バズーカを構える。

ゼロは横滑りしながらビーム・ライフルを連射、バズーカの照準を潰していく。

 

「させるかよっ!」

 

ゼロの機体が回り込む。バズーカを避け、斜め下から肉薄するその動きは、獣じみていた。

 

近距離――!

 

アムロはとっさに左腕のシールドでゼロの突進を受け流し、右手のビーム・サーベルを引き抜いた。

青い閃光が閃き、火花が舞う。

 

「やっぱりな……この機体、反応が速すぎる!」

 

ゼロは叫びながら、アムロの斬撃をバーニアで強引に離脱。背後から頭部バルカンを連射。

 

「ちっ!」

 

アムロも反転、ビーム・ライフルを右手に再装備し、正確なカウンターショットを放つ。

ゼロの左肩装甲に掠る直撃。警告ランプが灯る。

 

「……はっ、まだだっ!」

 

ゼロは再度突進。今度は上下左右を回避しながら、変則的な弾幕を構成する。

 

その動きに、観測室のテム・レイが目を細めた。

 

「ゼロ……制御が限界に近い。追いついていない……」

 

一方で、アムロの動きは――冷静だった。

 

「強い……けど、迷いがある。押し切れば、崩れる」

 

ゼロが懐に入り込んだ瞬間。アムロはビーム・サーベルを構えたまま機体を急停止。

ゼロの突進をあえて受け、直前で姿勢を崩させた。

 

「――もらった!」

 

アムロのサーベルがゼロの背部ユニットをかすめる。直撃なら大破だ。

緊急停止アラートが模擬戦用OSに響いた。

 

《ゼロ・ムラサメ、戦闘不能判定》

 

空間に静寂が戻る。

アレックス二機が、再び向かい合って静止する。

 

通信が開かれた。

 

「ゼロ、大丈夫か?」

「……ああ。くそ……俺が、俺の身体が、追いつかなかっただけだ……!」

 

彼の声に怒りと悔しさが滲む。

 

テム・レイはそれを黙って見つめながら、周囲に告げる。

 

「アレックスは“性能を引き出す者”を選ぶ。ゼロ・ムラサメの反応は試験基準を大きく上回っている。ただし、制御訓練が必要だ」

 

そして、アムロのデータを見て呟いた。

 

「だがアムロ・レイは、機体に合わせるのではない。……“機体を制御していた”。まるで自分の手足のように」

 

模擬戦結果――

アムロ・レイ:アレックス適合レベル A+

ゼロ・ムラサメ:アレックス適合レベル A(要追加訓練)

 

離れて見ていた技術士官が呟く。

 

『アレックス・・あれを作るやつも化け物だが使いこなすやつもまた化け物だな』

 

 

視線は自然と立ち尽くすテム・レイへと向いた。

 

「やはりテム・レイは天才だ……あの機体を設計し、想定どおりに動かせる者を想定していたとは」

「“やつの才能”に敗北したのだと実感するよ」

 

【模擬戦終了後:別視点】

 

模擬戦終了を告げるアラートが鳴り響いたとき、観測室のモニター越しに戦いを見つめていたひとりの男が、歯を鳴らした。

 

ヤザン・ゲーブル。

 

「……化け物が二匹、戯れてやがる」

 

その口調は嘲るようでいて、どこか嬉しそうだった。

 

彼の視線は、モニターに映るアムロ・レイの機体に注がれていた。

 

「やっぱりあいつは、“殺し合い”の空気を読むのが上手すぎる。機体が応えるんじゃない。あいつが“機体を殺し道具にしてる”んだよ……」

 

ヤザンはその凄みに舌を巻きつつも、もう一つ、内心に火が灯るのを感じていた。

 

(“アレックス”、なかなか面白ぇ。だが……あいつにだけ乗せる気かよ?)

 

その時、観測室にいたテム・レイが振り返った。

 

「ヤザン・ゲーブル大尉。次の適合試験は、あなたにも受けてもらいます。問題は?」

 

「あるわけねぇだろ」

 

ヤザンはニッと笑った。

 

「俺の腕で“この機体を壊せるか”、試してやるさ」

 

観測室にいた将官たちも、その言葉に軽くどよめいた。

 

 

同室の技術士官が、将校にデータを手渡しながら報告する。

 

「ゼロ・ムラサメは明らかに適正圏内。ただし、瞬間的な反応過剰で機体の動きが逸脱しています。戦闘中の精神ストレスに課題ありです」

 

「強化人間特有の負荷だな……ヤツはもう少し“落ち着き”を身につければ、アレックスを乗りこなせる。だが……」

 

将官の一人が唸った。

 

「アムロ・レイの戦い方は……あれはもはや、戦闘ではなく“制御術”だ。新型のスペックを、初戦でここまで引き出せるとはな」

 

「奴の空間認識と反応制御は、すでに人間の限界領域です。アムロ・レイこそが、アレックスという兵器の“完成形”を示しました」

 

別の年長の将軍が静かに呟く。

 

「テム・レイの言っていた“人間と機体の融合”……あれは、実現されつつあるのかもしれんな」

 

テム・レイはその声に、背を向けたまま答えた。

 

「……私は、“アレックス”を作った。あとは、誰がそれに“到達”できるかだ」

 

そして、モニターには既に次の模擬戦準備――

ヤザン・ゲーブル 対 アレックスと表示され始めていた。

 

戦いは、これからだ。

 

 

【アレックス同士による“頂上対決”】

 

宇宙戦闘用コロニー内試験区域――

ヤザン・ゲーブルのアレックスが、白銀の閃光を引いてアムロの機体に突撃する。

 

「いけるッ!!」

 

ヤザンのハイパーバズーカが火を噴き、アムロのアレックスが咄嗟に機体を回避――その動きに、ヤザンの目が鋭く光る。

 

「避けると思ったよ!」

 

誘導射撃。回避先にすでに向けていたバルカンが火を噴くが、アムロはすでにさらに一歩外へ抜けていた。

 

「……ッたく、なんだあいつ。読みが一手、いや二手先だと……!?」

 

ヤザンの機体が追撃に出る。ビーム・サーベルを抜き、低速で急接近――わざと自分の動きを読ませる。

 

アムロもまた、ビーム・サーベルを抜いて応じる。

 

「ヤザン……本気か」

 

刹那、青と白の残光が交差。サーベルが弾き合い、圧力が空間を震わせる。

 

ヤザンのサーベルが下段から振り上げられた瞬間、アムロは身を反らす。

だがヤザンはそれも計算済み――左の脚部スラスターで強引に体勢を崩し、アムロの機体の脇腹を突こうとする。

 

(避けるなよ……食らえ!)

 

しかし、次の瞬間――アムロのアレックスが、まるで“滑るように”ヤザンの機体をすり抜けた。

 

「な――にっ!?」

 

スラスターの微調整、関節制御、全てが緻密。限界ギリギリの制御で、アムロは攻撃を無効化しつつ背後を取っていた。

 

「やっぱり、すげえなアムロ・レイ……」

 

ヤザンの口元が、笑う。

 

すぐに距離を取る。再びバズーカで牽制、アムロのアレックスを自分のリズムに引き込もうとするが――

 

「……逆に引き込まれてるのは、こっちだな」

 

アムロは動きを変えない。あくまで自然体、だが回避も攻撃も完璧。

一瞬、ヤザンは思った。

 

(こいつ……“戦ってる”というより、“観察してる”んじゃねえか?)

 

まるで自分のすべての動き、癖、スラスターの噴射タイミングまで――

すでに読まれていたかのように、アムロの攻撃が次々と命中寸前でかわし、反撃に転じる。

 

三度目の接近戦――サーベル同士が交差した瞬間、アムロの機体が微かに“揺らす”。

 

「っ……!」

 

姿勢制御の揺さぶり。ヤザンの操縦感覚が一瞬だけ乱れ、その隙に――アムロのサーベルがヤザンのアレックスの肩を捉えた。

 

警告灯とともに模擬戦は強制終了。

 

【試合後・観測室】

 

戦闘を見届けた将官たちが、誰も声を出せずにいた。

 

「……あのヤザン・ゲーブルが押されたか」

 

「しかも、ほとんど消耗してないように見えたぞ……アムロ・レイは」

 

テム・レイは、戦闘データを食い入るように見ていた。

 

「……あれは機体の性能だけじゃない。“人間の制御”が限界を超えてる」

 

「……やはりテム・レイは天才だ」

「そしてその“天才の産物”を使いこなすアムロ・レイは……もはや化け物だな」

 

別の将官が震える声で呟いた。

 

「……あれに勝てる兵器が、ジオンにあるか……?」

 

だが、テムは静かに首を振った。

 

「問題はそこじゃない。我々に、“あれを超える者”を育てられるかどうかだ」

 

 

 

【模擬戦後・ヤザン視点】

 

格納庫の一角。機体から降りたヤザンは、ヘルメットを脱ぎ、ゆっくりと汗をぬぐった。

 

アムロの姿が遠くに見える。整備員たちに囲まれ、どこか物静かに微笑んでいる。

 

「……あいつ、変わったな」

 

模擬戦中、何度も“読み合い”があった。通常、トップレベルのパイロット同士なら、どちらが先に仕掛けるかの心理戦になる。

 

だがアムロは違った。まるで、すべてを知っているかのような動き――

 

(読まれてる。いや、“見透かされてる”)

 

決して力で押し切るわけでもない。精密な操縦、最小限の動き、無駄のない攻防。

感覚ではなく、理と経験の蓄積。だがそこに、“理屈だけじゃ届かない何か”がある。

 

「……一体、どこまでいく気だ、アムロ・レイ」

 

嫉妬じゃない。だが、胸の奥にざらついた感情が残る。

 

ヤザン・ゲーブル――自分は叩き上げだ。実戦で腕を磨き、修羅場を潜り抜けてきた。

操縦の鋭さと勘の冴えには自信がある。今でも誰にも負ける気はなかった。

 

だが、あの戦いで――ほんの一瞬、“届かない壁”を感じた。

 

(……違うな。届かないんじゃない。あいつは、“まだ登ってる”んだ)

 

自分もまだ成長できる。まだ終わっちゃいない。

だが、アムロ・レイもまた、止まらない――それが分かってしまった。

 

(追い続けるしかねえな……化け物の背中をよ)

 

ヤザンは、苦笑しながら天井を仰いだ。

 

「まったく……テムの野郎、“化け物ホイホイ”でも作ってやがるのかよ」

 

静かに立ち上がり、また歩き出す。戦場はまだ、終わっていない。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。