ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
【模擬戦試験:アムロ・レイ vs ゼロ・ムラサメ】
宇宙空間を模した全天候型試験区画。
二機のアレックスが、それぞれのスタートゲートで静止していた。
白と青を基調にしたその機体は、未だ未完成――“試験型アレックス”。
だが、駆動系・武装系統・反応制御はすでに本運用と同等に設定されている。
「ゼロ・ムラサメ、機体正常。問題ない」
「アムロ・レイ、了解。こちらも良好だ」
二人の通信が交差する。
タワーからの指示が飛ぶ。
「模擬戦開始まで5秒。4、3、2、1――開始!」
瞬間、ゼロの機体が猛然と加速した。
バーニアを最大噴射し、機体を旋回軌道に乗せながら一気に距離を詰めていく。
「来るか……!」
アムロは即座に後方へ回避行動を取りつつ、ハイパー・バズーカを構える。
ゼロは横滑りしながらビーム・ライフルを連射、バズーカの照準を潰していく。
「させるかよっ!」
ゼロの機体が回り込む。バズーカを避け、斜め下から肉薄するその動きは、獣じみていた。
近距離――!
アムロはとっさに左腕のシールドでゼロの突進を受け流し、右手のビーム・サーベルを引き抜いた。
青い閃光が閃き、火花が舞う。
「やっぱりな……この機体、反応が速すぎる!」
ゼロは叫びながら、アムロの斬撃をバーニアで強引に離脱。背後から頭部バルカンを連射。
「ちっ!」
アムロも反転、ビーム・ライフルを右手に再装備し、正確なカウンターショットを放つ。
ゼロの左肩装甲に掠る直撃。警告ランプが灯る。
「……はっ、まだだっ!」
ゼロは再度突進。今度は上下左右を回避しながら、変則的な弾幕を構成する。
その動きに、観測室のテム・レイが目を細めた。
「ゼロ……制御が限界に近い。追いついていない……」
一方で、アムロの動きは――冷静だった。
「強い……けど、迷いがある。押し切れば、崩れる」
ゼロが懐に入り込んだ瞬間。アムロはビーム・サーベルを構えたまま機体を急停止。
ゼロの突進をあえて受け、直前で姿勢を崩させた。
「――もらった!」
アムロのサーベルがゼロの背部ユニットをかすめる。直撃なら大破だ。
緊急停止アラートが模擬戦用OSに響いた。
《ゼロ・ムラサメ、戦闘不能判定》
空間に静寂が戻る。
アレックス二機が、再び向かい合って静止する。
通信が開かれた。
「ゼロ、大丈夫か?」
「……ああ。くそ……俺が、俺の身体が、追いつかなかっただけだ……!」
彼の声に怒りと悔しさが滲む。
テム・レイはそれを黙って見つめながら、周囲に告げる。
「アレックスは“性能を引き出す者”を選ぶ。ゼロ・ムラサメの反応は試験基準を大きく上回っている。ただし、制御訓練が必要だ」
そして、アムロのデータを見て呟いた。
「だがアムロ・レイは、機体に合わせるのではない。……“機体を制御していた”。まるで自分の手足のように」
模擬戦結果――
アムロ・レイ:アレックス適合レベル A+
ゼロ・ムラサメ:アレックス適合レベル A(要追加訓練)
離れて見ていた技術士官が呟く。
『アレックス・・あれを作るやつも化け物だが使いこなすやつもまた化け物だな』
視線は自然と立ち尽くすテム・レイへと向いた。
「やはりテム・レイは天才だ……あの機体を設計し、想定どおりに動かせる者を想定していたとは」
「“やつの才能”に敗北したのだと実感するよ」
【模擬戦終了後:別視点】
模擬戦終了を告げるアラートが鳴り響いたとき、観測室のモニター越しに戦いを見つめていたひとりの男が、歯を鳴らした。
ヤザン・ゲーブル。
「……化け物が二匹、戯れてやがる」
その口調は嘲るようでいて、どこか嬉しそうだった。
彼の視線は、モニターに映るアムロ・レイの機体に注がれていた。
「やっぱりあいつは、“殺し合い”の空気を読むのが上手すぎる。機体が応えるんじゃない。あいつが“機体を殺し道具にしてる”んだよ……」
ヤザンはその凄みに舌を巻きつつも、もう一つ、内心に火が灯るのを感じていた。
(“アレックス”、なかなか面白ぇ。だが……あいつにだけ乗せる気かよ?)
その時、観測室にいたテム・レイが振り返った。
「ヤザン・ゲーブル大尉。次の適合試験は、あなたにも受けてもらいます。問題は?」
「あるわけねぇだろ」
ヤザンはニッと笑った。
「俺の腕で“この機体を壊せるか”、試してやるさ」
観測室にいた将官たちも、その言葉に軽くどよめいた。
同室の技術士官が、将校にデータを手渡しながら報告する。
「ゼロ・ムラサメは明らかに適正圏内。ただし、瞬間的な反応過剰で機体の動きが逸脱しています。戦闘中の精神ストレスに課題ありです」
「強化人間特有の負荷だな……ヤツはもう少し“落ち着き”を身につければ、アレックスを乗りこなせる。だが……」
将官の一人が唸った。
「アムロ・レイの戦い方は……あれはもはや、戦闘ではなく“制御術”だ。新型のスペックを、初戦でここまで引き出せるとはな」
「奴の空間認識と反応制御は、すでに人間の限界領域です。アムロ・レイこそが、アレックスという兵器の“完成形”を示しました」
別の年長の将軍が静かに呟く。
「テム・レイの言っていた“人間と機体の融合”……あれは、実現されつつあるのかもしれんな」
テム・レイはその声に、背を向けたまま答えた。
「……私は、“アレックス”を作った。あとは、誰がそれに“到達”できるかだ」
そして、モニターには既に次の模擬戦準備――
ヤザン・ゲーブル 対 アレックスと表示され始めていた。
戦いは、これからだ。
【アレックス同士による“頂上対決”】
宇宙戦闘用コロニー内試験区域――
ヤザン・ゲーブルのアレックスが、白銀の閃光を引いてアムロの機体に突撃する。
「いけるッ!!」
ヤザンのハイパーバズーカが火を噴き、アムロのアレックスが咄嗟に機体を回避――その動きに、ヤザンの目が鋭く光る。
「避けると思ったよ!」
誘導射撃。回避先にすでに向けていたバルカンが火を噴くが、アムロはすでにさらに一歩外へ抜けていた。
「……ッたく、なんだあいつ。読みが一手、いや二手先だと……!?」
ヤザンの機体が追撃に出る。ビーム・サーベルを抜き、低速で急接近――わざと自分の動きを読ませる。
アムロもまた、ビーム・サーベルを抜いて応じる。
「ヤザン……本気か」
刹那、青と白の残光が交差。サーベルが弾き合い、圧力が空間を震わせる。
ヤザンのサーベルが下段から振り上げられた瞬間、アムロは身を反らす。
だがヤザンはそれも計算済み――左の脚部スラスターで強引に体勢を崩し、アムロの機体の脇腹を突こうとする。
(避けるなよ……食らえ!)
しかし、次の瞬間――アムロのアレックスが、まるで“滑るように”ヤザンの機体をすり抜けた。
「な――にっ!?」
スラスターの微調整、関節制御、全てが緻密。限界ギリギリの制御で、アムロは攻撃を無効化しつつ背後を取っていた。
「やっぱり、すげえなアムロ・レイ……」
ヤザンの口元が、笑う。
すぐに距離を取る。再びバズーカで牽制、アムロのアレックスを自分のリズムに引き込もうとするが――
「……逆に引き込まれてるのは、こっちだな」
アムロは動きを変えない。あくまで自然体、だが回避も攻撃も完璧。
一瞬、ヤザンは思った。
(こいつ……“戦ってる”というより、“観察してる”んじゃねえか?)
まるで自分のすべての動き、癖、スラスターの噴射タイミングまで――
すでに読まれていたかのように、アムロの攻撃が次々と命中寸前でかわし、反撃に転じる。
三度目の接近戦――サーベル同士が交差した瞬間、アムロの機体が微かに“揺らす”。
「っ……!」
姿勢制御の揺さぶり。ヤザンの操縦感覚が一瞬だけ乱れ、その隙に――アムロのサーベルがヤザンのアレックスの肩を捉えた。
警告灯とともに模擬戦は強制終了。
【試合後・観測室】
戦闘を見届けた将官たちが、誰も声を出せずにいた。
「……あのヤザン・ゲーブルが押されたか」
「しかも、ほとんど消耗してないように見えたぞ……アムロ・レイは」
テム・レイは、戦闘データを食い入るように見ていた。
「……あれは機体の性能だけじゃない。“人間の制御”が限界を超えてる」
「……やはりテム・レイは天才だ」
「そしてその“天才の産物”を使いこなすアムロ・レイは……もはや化け物だな」
別の将官が震える声で呟いた。
「……あれに勝てる兵器が、ジオンにあるか……?」
だが、テムは静かに首を振った。
「問題はそこじゃない。我々に、“あれを超える者”を育てられるかどうかだ」
【模擬戦後・ヤザン視点】
格納庫の一角。機体から降りたヤザンは、ヘルメットを脱ぎ、ゆっくりと汗をぬぐった。
アムロの姿が遠くに見える。整備員たちに囲まれ、どこか物静かに微笑んでいる。
「……あいつ、変わったな」
模擬戦中、何度も“読み合い”があった。通常、トップレベルのパイロット同士なら、どちらが先に仕掛けるかの心理戦になる。
だがアムロは違った。まるで、すべてを知っているかのような動き――
(読まれてる。いや、“見透かされてる”)
決して力で押し切るわけでもない。精密な操縦、最小限の動き、無駄のない攻防。
感覚ではなく、理と経験の蓄積。だがそこに、“理屈だけじゃ届かない何か”がある。
「……一体、どこまでいく気だ、アムロ・レイ」
嫉妬じゃない。だが、胸の奥にざらついた感情が残る。
ヤザン・ゲーブル――自分は叩き上げだ。実戦で腕を磨き、修羅場を潜り抜けてきた。
操縦の鋭さと勘の冴えには自信がある。今でも誰にも負ける気はなかった。
だが、あの戦いで――ほんの一瞬、“届かない壁”を感じた。
(……違うな。届かないんじゃない。あいつは、“まだ登ってる”んだ)
自分もまだ成長できる。まだ終わっちゃいない。
だが、アムロ・レイもまた、止まらない――それが分かってしまった。
(追い続けるしかねえな……化け物の背中をよ)
ヤザンは、苦笑しながら天井を仰いだ。
「まったく……テムの野郎、“化け物ホイホイ”でも作ってやがるのかよ」
静かに立ち上がり、また歩き出す。戦場はまだ、終わっていない。