ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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前日譚: サイド7の避難民達 ジャブローに降りてから

ジャブロー着・避難民たちの場面

 

 

─── ジャブロー降下直後。

 

サイド7からの避難民たちは、軍倉庫の仮設待機所に詰め込まれていた。

土の匂いが染み込んだ湿った空気と、仄暗い照明。

ここが自分たちを迎える場所なのか――誰もが不安を抱えていた。

 

セイラはルナツーでパイロットに志願し、そこに残った。

ジャブローに降りたのは民間人枠でアムロ、フラウ、カイ、ハヤト、ミライ。

軍人枠は唯一リュウが同行した。

 

ブライトとテム・レイ博士も軍人枠だったが、軍の手配ですぐに姿を消していた。

 

 

 

 

「……檻、だってさ。」

 

アムロは仮設待機所の壁に背を預け、静かに呟いた。

 

父・テム・レイはジャブローに降下して間もなく、軍人たちに連れて行かれた。

「檻」と呼ばれる雑用部屋へ――それをアムロは、既に知っていた。

 

「……親父……。」

 

けれど、その口元は強張っていた。

 

傍らにいたフラウ・ボウが、そっと声をかけた。

 

「アムロ、大丈夫……? 無理に頑張らなくていいんだから。」

 

その声は柔らかく、彼女なりの精一杯の気遣いだった。

 

しかしアムロは――遠くを睨むような目で、どこかを見据えていた。

 

「……大丈夫だよ。」

 

声は穏やかだったが、そこには僅かな怒りの影が滲んでいた。

 

───

 

彼の中に憎しみはまだなかった。

ガンダムを盗まれたこと。

テム・レイが軍の中で扱われている現実。

 

それらが、心の奥で少しずつ澱のように怒りとなって溜まりつつあるのは確かだった。

 

アムロはこのとき既に、軍人になることを決めていた。

モビルスーツのパイロットとして、自分の力で戦うつもりだった。

 

けれど――彼はまだ少年だった。

「復讐」という言葉を、自分の中に明確に持つほどには至っていなかった。

 

……だが、もし。

 

もし、この時――彼の目の前に「赤い彗星」が現れていたなら。

 

あのモビルスーツを奪った者が、父を追いやった原因であると理解したら。

そのときのアムロは、怒りを抑えきれなかったかもしれない。

憎しみへと転じ、復讐の炎に飲まれていた可能性さえあった。

 

だが――幸いにも、赤い彗星は宇宙でしか戦っていなかった。

アムロの前に、シャア・アズナブルは現れなかった。

 

それは僅かな偶然であり、しかし確かな運命でもあった。

 

アムロが復讐の鬼に堕ちるのは、もっとずっと先の話になる。

彼が家庭という新たな幸せを手に入れ――

それを、この世界が奪った時こそが、その始まりになるのだった。

 

───

 

「セイラさんの言っていた通り、歓迎は……されないかもしれない。」

ミライの言葉が重く響いていた。

“民間の避難民は軍にとって厄介な存在だ”という噂は、皆の間に広まっていたのだ。

 

不安に包まれた空気の中、顎のしゃくれた士官が現れた。

表面上は丁寧な口調だったが、

「こちらも限られたリソースの中でやっております」という一言に、その本音は滲んでいた。

 

(やっぱり……歓迎されていないんだ)

誰もがそう感じかけた、その時だった。

 

扉が開き、マチルダ中尉とウッディ大尉が現れた。

 

「皆さん、ようこそジャブローへ。

長旅でお疲れでしょう……。我々もできる限り皆さんのお力になります。」

 

柔らかな微笑みと、まっすぐな言葉に、空気が少しだけ緩んだ。

 

「まずは復職の支援を行います。

どんなお仕事をされていたか、どんなスキルをお持ちか、それをお聞かせください。

もちろん軍への志願も歓迎しますが、これは任意です。ご安心ください。」

 

さらにこう続けた。

 

「本日はお疲れでしょうから、こちらの記入用紙だけお渡しします。

明日の午後までにお書きいただければ大丈夫です。」

 

その場にいた誰もが、わずかに肩の力を抜いた。

 

「……セイラさんの予測も外れたかね?」

カイが軽口を叩いた。

「思ったよりずっと丁寧な対応だったじゃないか?」

 

だがその時、ミライが静かに首を振った。

 

「……違うわ。

マチルダ中尉とウッディ大尉は本心からの親切よ。

でもあの士官の態度は……迷惑そのものだった。

対応が変わったのは……理由があるの。」

 

ハヤトが目を見開いて尋ねた。

 

「理由って……何ですか?」

 

ミライは少し考えてから答えた。

 

「……誰が動いたか、もしかしたら“あの人”だと思う。

でも……あの人は善意でそんなことをする人じゃない。

何か、別の意図があるはずよ。」

 

名は挙げなかった。

 

その場に静かな余韻が流れた。

 

避難民として迎えられたはずの彼らが、いま確かに別の意図のもとに扱われている――。

そんな現実を、心の奥に刻み込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

避難民たちは仮設待機所のテーブルに散り、それぞれが配られた記入用紙と向き合っていた。

 

「前職……。何を書けば……。」

「私はパートだったし……軍人になれるわけでもないわ……。」

 

周囲ではそんな小声が漏れ聞こえてくる。

 

ある者はじっとペンを止めたまま考え込み、ある者はウッディ大尉に質問を投げかけていた。

その対応に大尉は一つ一つ丁寧に答えていた。

 

顎のしゃくれた士官は、その場をちらりと見回すと、そっけなく言った。

 

「後は補佐の二人に聞いてくれ。」

 

それだけ告げて、さっさとその場を離れていった。

 

───

 

その様子を静かに見ていたミライ・ヤシマは、意を決して立ち上がった。

マチルダ中尉のもとへと歩み寄る。

 

「中尉、少しお時間をよろしいでしょうか。」

 

マチルダは視線を向けて微笑んだ。

 

「もちろん。どうされましたか?」

 

ミライは静かに頭を下げ、凛とした声で言った。

 

「ゴップ中将に、お話したいとお伝えいただけますでしょうか。」

 

その言葉にマチルダは思わず目を見開いた。

 

「あなたは……?」

 

ミライは堂々と名乗った。

 

「ミライ・ヤシマと申します。」

 

マチルダの表情が一瞬、明らかに変わった。

 

「あの……ヤシマ家の!?」

 

わずかに息を呑み、すぐに顔を引き締めて頷いた。

 

「承知しました。中将にお伝えいたします。 少々お待ちください。」

 

ミライは静かに一礼してその場を離れた。

 

───

 

時が流れる。

 

避難民たちは依然として記入用紙を前に、誰もが思い思いに考えを巡らせていた。

テーブルの上にはペンが走る音と、小さな質問の声が重なっていた。

 

─── 約20分後。

 

マチルダが再びミライの元に現れた。

 

「中将は、一時間後でしたらお時間が作れるとのことです。」

 

ミライはわずかに頷いた。

 

「承知しました。 一時間後に伺います。」

 

毅然としたその態度に、周囲の視線がわずかに集まった。

 

ミライは静かにその場を後にする。

自ら動いて、事態を変える――その覚悟が、彼女の中に確かに宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャブロー司令部・応接室。

 

ミライ・ヤシマが通されたのは、厚い防音扉の奥にある応接室だった。

扉が静かに閉まり、中に入るとそこにはゴップ中将が待っていた。

 

大柄な体格、柔和にも見えるが底知れない目。

その目がミライをとらえる。

 

「やあ、ミライさん。」

低いがどこか温かな声が響いた。

「無事でよかったよ。」

 

ミライは一礼し、静かに答える。

 

「ありがとうございます。」

 

一歩進んで正面の席につくと、すぐに問いを投げた。

 

「マチルダ中尉とウッディ大尉を、避難民の対応につけたのはあなたですか?」

 

ゴップは微かに口元を緩めた。

 

「そうだよ。

担当の人間……」

 

ふっと笑みが深まる。

 

「あの士官は、良い対応はしなかったろう?」

 

ミライはわずかに表情を崩した。

 

「口調こそ丁寧でしたが、良い対応ではありませんでしたね。」

 

ゴップは満足げに頷いた。

 

「だろうな。

やはり2人をつけて正解だったよ。」

 

ミライは視線を逸らさずに続ける。

 

「その理由を聞かせて欲しいのです。

あなたはそんな無償の善意を振り撒く趣味はないでしょう。」

 

ゴップの目が僅かに細められる。

その表情は愉しげですらあった。

 

「さすがヤシマ家の女性だ。

人をよく見ている。お父上も優秀な政治家だった。

あなたも政治家に向いているかもしれませんよ?」

 

ミライの声は冷ややかだった。

 

「父の話は今はしていません。」

 

ゴップはわずかに肩をすくめた。

 

「そうですな。

……あなたの父上への恩返しなどという気持ちはありませんよ。

何か頼みたいことがあれば言ってください。」

 

それでもミライは一切動じなかった。

 

ゴップはわずかに前のめりになる。

 

「さて――なぜ避難民への対応を優しいものにするよう仕向けたか、でしたね。」

 

一呼吸置いてから続けた。

 

「言うなれば――未来への投資ですよ。」

 

ミライの眉が僅かに動いた。

 

「投資?」

 

ゴップは静かに微笑みを深める。

 

「この戦争が――仮に我々が負けた後の話です。

次の大戦に、万全の体制で挑むための準備。

そのための“未来への投資”ということですよ。」

 

───

 

冷たい現実が、その言葉の奥にひそんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミライの目がわずかに鋭さを増した。

 

「……次の大戦のために?」

 

切り返した声は静かだったが、

その中に明確な知的な探りの気配が漂っていた。

 

ゴップは目を細め、少しだけ微笑んだ。

 

「あまり知りすぎることは、あなたにも良いことではありませんよ。」

 

その言い方に、ミライはほんのわずか表情を動かした。

 

だが、ゴップは軽く手を振りながら続けた。

 

「……とはいえ、あなたの問いに全く答えないのも失礼でしょう。

一つだけ、例を挙げましょうか。避難民の中の“アムロ・レイ”君、知っていますか?」

 

ミライは頷いた。

 

「はい。

サイド7では、機械に詳しい少年として有名でしたから。」

 

ゴップはうんうんと頷き、さらに問いかけた。

 

「その彼の、ジャブローに着くまでのシミュレーターでのスコアはご存じですか?」

 

ミライは少し眉を寄せた。

 

「あの子の父親のテム・レイさんが、何度かアップデートしているとは聞きました。

……ですが、そのスコアまでは知りません。」

 

ゴップは、わずかに口の端を上げた。

 

「正規のパイロットを遥かに上回る数値ですよ。

アップデートはね――シミュレーターの難易度が“息子には物足りなくなった”ために、テム・レイ自らが行ったものだ。」

 

椅子の背にもたれながら、低く続ける。

 

「着いてから、ジャブローのパイロットたちがシミュレーターの難易度を見た。

“トップエース級でもないとこのスコアは出せない”と、そう言っていたよ。」

 

そして――。

 

「それを……実戦経験もない。訓練学校を出たわけでもない。

ただの15歳の少年が、平然と成し遂げてしまった。」

 

ゴップの目は静かだったが、その裏には特別な素材に対する鋭い評価が潜んでいた。

 

「……そういう“未来の材料”が、あの避難民の中には混じっている。

それだけでも、手荒に扱う理由などないということです。」

 

───

 

その言葉の重さが、部屋の空気をわずかに変えていた。

 

 

既に幕間が本編の2倍あります。かといってアニメが進んでジオン周りの情報が出ないと次が書けません。読者様方てきにはどんな感じですか?

  • 幕間が3倍になろうが4倍になろうが↓
  • 関係ない。書け(無慈悲)
  • アニメが進んだら書いて(慈悲)
  • 作者のペースで書いて(聖人かな?)
  • どうでもいい
  • 以上テスト兼読者様の意見を聞く回でした
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