ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
とりあえず背景で強化人間の扱いが変わったって書いたのでその辺を。
下にアンケートあります。
場所:連邦軍ジャブロー地下施設 会議区画C-2(通称「隔離技術会議室」)
仄暗い会議室。モニターにはゼロ・ムラサメの戦闘記録。アムロとの模擬戦、ヤザンとの訓練。血が通っていくような動き、鋭く、しかしどこか柔らかくなった瞳の輝き。
その映像を背に、白衣を着た男――ムラサメ博士は熱弁を振るっていた。
過去、ムラサメ研究所で強化人間開発の中心にいた一人。今もなお「理想の兵士」に執着している。
「彼は“まだ仕上がっていない”!私はゼロ・ムラサメをここまで鍛えた!アムロ・レイが優れているのは否定しない。だが、私が自由に実験を行えば……いや、次の個体では確実にそれを超える!」
周囲は静まり返っていた。
ゴップが椅子にもたれたまま、顎に手を当てながら言った。
「……なるほど。“超える”ね。だがそのゼロ・ムラサメ、君の元で“実験体”だった時より、今の方が適応値も戦闘評価も高いようだが?」
冷たい空気が場に満ちた。
隣にいたテム・レイが端末を操作し、淡々と続ける。
「精神波動の安定、反応速度、マニューバ回避率、いずれも改善。投薬量も減っている。ヤザン、アムロとの模擬戦が刺激になっているらしい。戦術理解も“命令”ではなく“思考”が始まっている……」
「君の“実験”では、その兆候は一切なかった。」
ムラサメ博士が唇を噛む。
「私の手法が……早すぎたのです……今なら、もっと……」
「やめたまえ」
ゴップの声が低く、しかしはっきりと場を断ち切る。
その視線は政治家ではない。軍を率いる者の目だ。
「我々は“使い捨てるための人間”を作るつもりはない。アムロもヤザンも、“意志を持って戦う者だけを仲間として迎えたい”と述べている。そして……」
ゴップは再びモニターを指す。そこには訓練後のゼロが、仲間の強化人間たちと穏やかに笑っている姿が映る。
「ゼロ・ムラサメ自身も、今は“同じような強化人間たちの治療”を望んでいる。彼の仲間の中には、すでに穏やかな日常を取り戻し、整備班や情報部に配属された者もいる。」
沈黙。
ムラサメ博士は立ち尽くす。
「……それでは……私の研究は……」
「不要とは言わない。しかし、人間を壊して強くする時代はもう終わる。」
それが、白い悪魔が切り開いた未来。
現場の兵士たちの希望を、もはや“実験体”にしてはならないのだ。
ムラサメ博士はゼロたちのデータを閉じたまま、背筋を伸ばして立ち上がった。ゴップは無言で視線を送る。しばしの沈黙の後、ゴップが低く言った。
「ムラサメ博士。君には別件で任せたい仕事がある」
「……はっ」
「サイコミュの研究は禁止された。ジオンとの条約でな」
ゴップは重々しく言いながら、指で机をとんとんと叩く。
「だが、どうせやつらは裏で続けている。手口は分かっている。……連中は“本物”を手にした時に、必ずそれを戦場に持ち出す」
ムラサメはわずかに表情を曇らせる。ゴップはそのまま言葉を続けた。
「こちらも手をこまねいているわけにはいかん。一部ではあるが、サイコミュに関する旧データが我々の手にも渡っている。
……それを解析し、ニュータイプ兵器、特に“ビット”の類に対して一般兵が死なずにすむ防衛技術、対抗装備の研究を進めてくれ」
「……畏まりました」
ムラサメの声に、さきほどまでの硬直とは違う、わずかな熱が宿っていた。
彼は一礼して、静かに部屋を退出する。その背には、かつて“道具”として扱ってきた存在への複雑な思いと、新たな使命が混じっていた。
扉の向こうに姿を消す直前、彼はわずかに立ち止まり、誰にも聞こえない声で呟いた。
「……あれが、“本物のニュータイプ”……」
【幕間:再会 ―実験体でなく、仲間として―】
医療区画の一角。かつては強化人間専用の閉鎖施設だったそこは、今は白を基調とした穏やかな空間に変わっていた。
だが、それでも扉の軋む音が過去の記憶を引き起こす。
ゼロは、静かにその部屋に足を踏み入れた。
そこにいたのは――クナギとエリカ。
「……ゼロ」
先に口を開いたのはクナギだった。短く刈った黒髪に、淡い笑み。
あの頃、何も話さず、感情すらなくしていたはずの彼女が、今は“感情のある目”で彼を見ている。
「驚いたよ。あんた、まだ生きてたんだな」
「お前こそ、リハビリで歩けるようになったんだな」
「……それもこれも、扱いが変わったからだよ」
横からエリカが口を挟む。淡々とした声は変わらないが、その口調には以前にはなかった“熱”があった。
「私たち、道具じゃなくなった。ちゃんと“人間”として扱われてる。いつの間にか、医者が質問してくるようになった。“痛いか?”とか“疲れてるか?”って。今さらかよって思ったけどね」
ゼロは黙って、二人の顔を見渡す。
「……俺も思ったよ。少し遅ければ、ここに戻ってくる気力はなかった」
「そっちのほうが、らしいけどな」
クナギが鼻を鳴らして笑った。
「でもさ……たぶん、あんたのおかげだよ」
「……は?」
「“アムロ・レイ”とか、“ヤザン・ゲーブル”とか。あの化け物どもが、上層部に何度も言ってくれたんだって。『強化人間を使い潰すな。意思のある奴だけ戦わせろ』って。何度も何度も。あいつら、上から嫌われてるくせに、やたらと声は通るんだよ」
「……通したんだろ、力で」
ゼロが呟いた。
「本物のニュータイプ、か。化け物どもめ……」
「でも、もうひとつ理由がある」
エリカが言葉を継ぐ。
「ゼロ、あんたが“アムロやヤザンの仲間”になったからだよ。誰よりも近くで訓練して、模擬戦で彼らと互角にやり合って、それで強くなっていく姿を見せた。……上層部の何人かが言ってた。“実験室で培った強さより、仲間との訓練の方が成果が出ている”ってね」
「お前、誇れよ。私たちがまだ生きてるのは、あんたのおかげでもあるんだぜ」
しばらく沈黙が続いた。
ゼロは視線を落とし、口の端を少しだけ上げた。
「そうか……そうかもな」
仲間として、ここに戻ってきた。
もう一度、ここから始めるのだ。
彼らの名が番号だった時代は、確かに終わった。
【幕間:記録されなかった選択の朝】
――オーガスタ研究所第03実験区画。冬の朝。
天井の照明は常に白く、時間の概念は薄れていく。リタ・ベルナルは壁に向かって目を閉じていた。
眠っているようで、目覚めている。彼女はよく「声が聞こえる」と言っていた。たいていは、誰も聞き取れなかった。
ベッドの隣では、ヨナが黙って本を読んでいるふりをしている。
ページは進まない。隣の部屋で、また誰かの存在が消えた気配がしたから。
ミシェルは部屋の端で、指で自作のパズルを組んでいる。
あの子だけが、生き残り方を真剣に考えていた。リタは「ヨナ」を守るために力を使おうとし、ミシェルは――リタを差し出すことを考えた。
リタが「本物」だから。
彼女は静かに思った。「あの子さえいれば、きっと私たちは見逃してもらえる」と。
だが、ある日、その閉ざされた空気に風が入った。
部屋に入ってきた担当官の口調が、いつもの「次のテストだ」ではなかった。
「……君たちに、選択の権利がある」
ミシェルの指が止まる。ヨナが顔を上げる。リタは相変わらず天井の“光”を見ていた。
「上層部の方針が変わった。ゼロ・ムラサメという、強化人間の一人が記録的な成果を上げた。……だが、彼は“人間として”扱われて初めて、能力を制御した。
それを支えたのが――アムロ・レイとヤザン・ゲーブル、連邦のエースたちだ。彼らが軍へ嘆願を出した。
“強化人間を兵器ではなく、仲間として扱うべきだ”と」
沈黙の中で、ミシェルの目が揺れる。
「……つまり、私たちは、捨てられない?」
担当官は頷く。「君たちは“人間”として進路を選べる。軍人を目指しても、研究を続けても、あるいは――外の世界を選んでもいい」
「リタは……」とヨナが呟く。「彼女はずっと、死ぬつもりで力を使ってた。みんなの代わりに」
ミシェルは静かにリタを見た。あの無垢な顔に、どれほどの犠牲が刻まれていたか。
今、選べるのだとしたら、彼女に代償を払わせる必要はもうない。
「……道があるなら、私は選ぶわ。リタを、生贄にしない道を」
リタは静かに微笑んだ。それが答えだった。
【幕間:記録された希望】
――選択の日から半年後。連邦軍・記録保管局別室
静かな部屋に、電子記録のスクリーンが淡く灯っている。
ゼロ・ムラサメは無言のまま、画面を見つめていた。管理官の声だけが、静かに響く。
「君の活躍が“生き残った者たち”に何をもたらしたか――それを知ってほしい。
これは彼らの記録。そして、君の成果でもある」
スクリーンに浮かび上がるのは、3人の子供の名。
リタ・ベルナル、ヨナ・バシュタ、ミシェル・ルオ。
⸻
【ヨナ・バシュタ】
彼は軍学校への進学を選んだ。
「俺は、人間として戦場に立つ。二度と道具にはならない」
その言葉を胸に、彼は人並みに訓練を受け、努力を重ねていた。
かつて戦うことを「義務」として教えられた少年は、いま「誇り」として銃を持つ。
⸻
【ミシェル・ルオ】
政治経済を学びながら、ある転機を迎えた。
その頭脳と論理性を見込まれ、軍需企業「ルオ商会」の当主ルオ・ウーミンに見出されたのだ。
「君の冷静な視点と生き残る意志は、いずれ“力なき者”を守る力になる」
ミシェルはルオ家の後継候補として迎えられ、権力と制度の両面からニュータイプの保護と権利擁立に向けた準備を進めていた。
あの日、研究所の死体の山を見て育った少女は、いま――“死なせないための世界”を造ろうとしていた。
⸻
【リタ・ベルナル】
彼女だけが、進路をすぐに決めなかった。
「……未来が、見えない」
ニュータイプとしての感応力が強すぎるがゆえに、彼女には“未来に起こるはずだった光景”がずっと焼きついていた。
自分がネオ・ジオングと対峙し、自らを犠牲にしてそれを止める運命。
それが「当然」と思っていた。
だが、世界は変わった。ゼロ・ムラサメという存在、アムロ・レイという“本物のニュータイプ”の姿。
彼女の感覚すら、かすかに揺らぐ。
「……会ってみたい。アムロ・レイに。ゼロ・ムラサメにも。
あの人たちなら信じてくれるかな?」
希望とは、命を差し出す役目ではなく、共に歩ける誰かの存在かもしれない。
リタはまだ戸惑いの中にいる。だが、すでに一歩を踏み出していた。
⸻
――現在:ゼロ・ムラサメ視点
「生きてるのか……あの時の、子供たちが」
ゼロは画面を見つめたまま、呟くように言った。
彼の手が、かすかに震える。過去を思い出す、あの地下の白い壁の感触を。
管理官が語る。
「彼らは、君が“道具”から“人”になった記録を見ていた。
だからこそ選べたんだ。命を、自分の意志で」
ゼロは、短く息を吐いた。
「……そんなつもりじゃなかったんだがな」
「でも、そうなった。君がそういう希望だったんだ」
ゼロは画面を閉じた。
その胸の奥で、名前も覚えていないほど多く死んでいった仲間たちの顔が浮かぶ。
今度は、生き残った者たちが未来を作る――そう信じたくなる、わずかな光が差し込んでいた。
【邂逅:白い光と金色の予兆】
ジャブロー地下、非公式な面会室。空調の音すら控えめなその空間に、リタ・ベルナルは静かに通された。
そこにはすでに二人の男がいた。ゼロ・ムラサメ、そして連邦軍が誇る白い流星、アムロ・レイ。
金色の髪を揺らしながら、リタは礼儀正しく頭を下げる。
「……お会いできて、嬉しいです。アムロ・レイ、ゼロ・ムラサメ」
アムロが小さくうなずく。ゼロは警戒を隠さない表情でリタを見つめていた。
「私は……かつてニュータイプ研究所にいました。たくさんの子供たちと一緒に。……でも、最後に生き残ったのは、私と二人だけだった」
リタの目がほんの少しだけ遠くを見た。
「未来が見えたんです。……私は、生贄になるって。ネオ・ジオングという存在を壊すために、自分が“壊れる”必要があるって」
アムロは黙って彼女を見つめたまま。ゼロは思わず、目を伏せた。
(……そういう未来も、確かにあったろうな。アムロたちが動いてなけりゃ、連邦はきっと彼女を最後まで使い潰した。俺たちみたいに)
アムロが口を開く。
「……要するに、そのネオ・ジオングってのが現れたら、壊さなきゃいけないんだな」
リタは、静かにうなずいた。
アムロは笑わなかった。ただ、確信を込めて言った。
「だったら、俺が壊すよ。……これから先、ジオンが何世代先のモビルスーツを作ってくるか分からない。でも、うちの親父なら――それを超える機体を造れる。俺は、それに乗って止めるよ」
ゼロが小さく息を吐く。その横で、リタの肩が微かに震えた。
「……そんな風に言えるなんて、あなたは……本当に、希望のような人ですね」
そして心の奥に沈む疑問を、リタは口にせずにはいられなかった。
(こんな人が未来にいたなら……あんな未来は来ないのに。なぜ……あの未来で、あなたはいなかったの?)
小さな悲嘆と、大きな安堵。リタの瞳が初めて柔らかくなる。
「……ありがとうございます。もし、あなたが“生きている”のなら。私はきっと、もう――“壊れなくて”済むんですね」
アムロは何も言わず、それを受け止めた。ゼロもまた、もう一人の“実験体”の少女に、静かな敬意を覚えながら。
未来はまだ定かではない。だが、希望がかすかに灯ったことだけは――確かだった。
いずれ現れるかもしれない全裸さんと失敗作さんは白い流星にロックオンされました。
☆8評価ありがとうございます! 麦茶マンさん