ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
時空の歪みが起きた局地戦域
深く蒼い宇宙。星の瞬きも届かぬ戦場に、煌くΖガンダムの輪郭が浮かび上がる。
カミーユ・ビダン。歴史の歪みを修正するため、歪んだ因果の中に現れた彼は、ある“気配”を追っていた。
「この……殺意……アムロさん? でも違う……これは、こんなはずじゃない!」
カミーユの言葉は戦慄に染まる。目の前に現れた白と青の重厚な機体——Hi-νガンダム。
そしてその中にいるのは、かつて自分が“ヒーロー”と感じた男、アムロ・レイ。しかし今、そこにいたのは——
「……殺すために、ここに来たのか?」カミーユは問いかけた。
「そうだ」
低く、乾いた答えが返ってきた。
「ニュータイプが感じ取ったもの……戦場で死んだ者たちの声……届かなかった。ならば、俺が声を、力で刻む」
Hi-νの瞳が紅く光り、フィン・ファンネルが展開する。
その気配に、カミーユの全神経が総毛立った。
「違う、違う!あなたは……僕の知ってるアムロ・レイじゃない!」
「当然だ。お前の知ってる“平和を願うアムロ”はもうどこにもいない」
Hi-νが動いた。サーベルを抜き放ち、一直線にカミーユへと斬りかかる。
Ζガンダムが迎え撃つも、ただ生存を目的とした戦いと、“殺す”ために練り上げられた戦術の間には深い断絶があった。
——ギィン!!
「ぐっ……この動き……完全に殺意で研ぎ澄まされてる!」
カミーユは押し込まれながらも、精一杯に叫ぶ。
「あなたは……こんなことがしたかったのか!?ニュータイプとして、人とわかりあうんじゃなかったのか!!」
アムロの声が、冷ややかに返ってくる。
「なら聞く。お前の背後に——今も囁いている“あの女たち”を救いたくはないのか?」
カミーユの意識が、かすかに後ろを振り返る。そこには、戦場で散った数多の存在——エマ、フォウ、ロザミア、そしてレコアたちの姿があった。
「お前はそれでも彼女たちを戦場に送った。ならば、なぜ変えようとしない?」
「うるさいっ!!彼女たちは……僕の中にいる!消えてない!」
だが、その言葉を拒絶するように、Hi-νガンダムの光が、再び鮮烈に宇宙を貫く。
「ならば、その魂ごと、断ち切ってみせろ!カミーユ・ビダン!!」
戦場が、純粋な殺意と魂の叫びで染まった。
ニュータイプ同士の激突。だが、そこにはすでに明確な違いがあった。
カミーユは「守るため」に戦っていた。
アムロは「変える」に戦っていた——過去も、世界も、自分自身さえも。
魂の叫びとぶつかり合うニュータイプ
激突する二つの光。フィン・ファンネルが一斉に展開し、Ζガンダムの周囲を縦横無尽に駆ける。カミーユは懸命に機体を旋回させ、殺到するビームをかわしていた。
「……こんなにも、差があるのか……っ!」
Ζの機動性は決して劣っていない。だが、Hi-νガンダムの動きには「迷い」がなかった。どの動作にも、どの一撃にも、「殺すためだけの決断」が宿っている。
守ることも、語り合うことも捨てた男の刃。それが、カミーユを押し潰そうとしていた。
「ならば……っ!」
カミーユがビームサーベルを抜き、Hi-νに肉薄する。だが次の瞬間、Hi-νの動きが一段階、いや、数段階加速する。
「……遅い」
その声と同時に、カミーユの視界が白く弾けた。
——ガンッ!!
「……うっ、があああああっ!!」
Ζガンダムの左腕が吹き飛ぶ。さらに右脚を突き上げられ、バランスを崩した瞬間、フィン・ファンネルの一点集中射がΖの背部に炸裂。推進器が焼け、完全に機動力を奪われた。
「まだだっ……まだ俺は……!」
カミーユの叫びが、真空に響く。しかしその前に、Hi-νのビームサーベルが突きつけられた。
「……終わりだ。お前のΖは、もう“戦場の道具”じゃない」
アムロのHi-νが、Ζガンダムのコックピットにサーベルを当て、わずかに圧をかける。だが、貫かれることはなかった。
「……なぜ、殺さない」
カミーユが絞り出すように問う。
「お前は“憎しみの外”にいる。俺の戦いの対象じゃない。……だがな、カミーユ・ビダン」
Hi-νがサーベルを引く。
「気が変わったら、こちらに来ればいい。お前にも、この世界の痛みはわかるはずだ」
「……断る。俺は……俺の戦いをする」
「そうか。なら、次は……殺すぞ」
その言葉を最後に、Hi-νガンダムはファンネルを回収し、静かに背を向けた。
カミーユのΖガンダムは半壊し、ただ宇宙に漂う残骸と化していた。
それでも、その瞳は消えていない。叫びも、途絶えていない。
「俺たちは、すれ違うしか……ないのかよ……アムロさん……」
闇に沈むHi-ν。その背中に、かつての英雄の影はなかった。
【アムロvsジュドー】
宇宙に、静かに浮かぶ壊れたコロニーの残骸群。
かつてサイド3と呼ばれたその宙域は、いまや歴史の墓標にすぎない。
ジュドー・アーシタは、ΖΖガンダムの操縦桿を握りながら、静かに目を閉じた。
空間を震わせるような、異質な“何か”がそこにいる。
それは、言葉にできない不気味さと、背筋を凍らせるような憎悪の気配だった。
「……これが、アムロ・レイ……?」
かつてホワイトベースで戦った“伝説のパイロット”。
連邦の英雄。シャア・アズナブルのライバル。
ジュドーにとっては憧れというより、遠い存在だった。
けれど今、その存在が目の前にいる。
いや、かつて“アムロ・レイ”と呼ばれていた“何か”が——
「ニュータイプの気配じゃねえ。これは……もっと深い、闇の中の……!」
警戒するジュドーの前方に、緩やかに迫ってくる機影。
機体は白と青を基調に、禍々しいまでの威圧感を放っていた。
Hi-νガンダム。
そのコクピットには、鋭く、そして虚無を宿した瞳を持つ男がいた。
「来たな。……君の気配は、希望に満ちすぎている。試すにはちょうどいい」
アムロ・レイ。
だが、その声音に“かつての英雄”の片鱗は残されていなかった。
ジュドーは叫ぶ。
「アムロ・レイ!俺はあんたを止めに来た!ニュータイプが殺し合う時代を終わらせるために!」
アムロは、ふっと鼻で笑った。
「殺し合わなければ終わらない時代もある……君がその“例外”であることを祈ろうか、ジュドー・アーシタ」
空間が唸る。
次の瞬間、希望と絶望を背負った二つのガンダムが、死神のような音を立てて交錯する。
——魂がぶつかる戦いの幕が、静かに上がった。
ビームが交錯し、ファンネルが宇宙の静寂を破る。
その軌跡一つひとつが、殺意を含んだ意志の飛礫だった。
ΖΖガンダムの操縦桿を握るジュドー・アーシタは、目の前のHi-νガンダムから放たれる気配に、強い違和感を抱いていた。
「アムロ……なのか?だけど……何かが違う。俺の知ってる、あのアムロ・レイとは……!」
動きが理知的すぎる。研ぎ澄まされすぎている。
戦いというより“処理”に近い、無機質な殺意。
「お前は何を背負って、何を切り捨てた!?アムロ・レイ!!」
Hi-νのコクピット内。
闇に沈んだアムロは、感情のない瞳でジュドーの怒りを受け止める。
「……背負うものを選んだ結果が、これだ。
——父から奪われたガンダムで、妻を殺された。
世界を歪めてでも救いたい人がいる。……それだけの話だ」
「そんな理屈で……!」
ジュドーはトリガーを引く。ビームが閃く。
だが、Hi-νは“すでに知っている”かのようにかわし、すれ違いざまにΖΖの右肩を切断する。
「お前の後ろにいる女たちを救いたくはないのか?」
その問いに、ジュドーは目を見開いた。
「戦場で、無惨に死んだ人間たちを——お前の力で、もう一度この手に取り戻したくはないのか?」
ニュータイプとしての感応で、ジュドーの脳裏にはいくつかの影が浮かぶ。
——エルピープル。
——プルツー。
かつて命を落とした少女たち。
だが、彼女たちはあの世からジュドーを哀れむような声ではなかった。
《……確かに、私たちは死んだけど——哀れに思われる謂れはないよ、ジュドー》
《あなたがいたから、最後まで戦えたの》
《大丈夫、ジュドー。あなたは正しい》
その声に励まされるように、ジュドーは吼えた。
「……違う。俺は、過去のためじゃない!未来のために戦うんだ!!」
「未来?その希望とやらで、何人の死者を救える?」
ジュドーのΖΖは、懸命にHi-νに食らいつこうとするが、その性能と技量の差は歴然だった。
数手先を読むファンネルの連携、絶対に無駄のない操作。
やがてΖΖは大破寸前に追い込まれる。
アムロは静かに言った。
「……殺さない。君は憎しみの対象ではないからだ。
だが、気が変わったらこちらに来ればいい。お前には力がある」
ジュドーは、火花の散るコクピットで、拳を握りしめる。
「……来るかよ……!そんなやり方、俺は絶対に——!」
だがアムロはもう、背を向けていた。
背後でジュドーの仲間たちの名が、心の中で呼びかける。
《ジュドー、見失わないで——》
《あなたはあなたのままでいい》
宇宙の闇に溶けていくHi-νガンダム。
残されたジュドーは、機体の影に沈みながら、強く誓った。
——次は、絶対に負けない。
【アムロvsバナージ】
暗い宇宙の中、赤い輝きを帯びるHi-νガンダムと、純白の光をまとうユニコーンガンダムが対峙する。
対話ではなく、最初の一閃が語る意思の衝突を予感させる中——
「……ユニコーンガンダムか」
アムロ・レイの声が通信回線を通じて静かに響いた。
「リタから聞いている。あれは——ニュータイプの可能性を収束させる兵器。
サイコフレームの塊……人類の革新を喰らう、白い獣だと」
ユニコーンのコクピットで、バナージ・リンクスの瞳がかすかに揺れる。
「……リタとユニコーンを、知っている……?」
「知っているさ。だが俺の機体には、君の機体より遥かに強い“意思”が宿っている。
こちらは——構造全体が、共鳴するために作られている」
Hi-νガンダムが淡く燃え上がるように光を放つ。
その輝きに、バナージはかつてアクシズを押し返した“光”を思い出す。
「あなたは……アクシズを止めた、アムロ・レイだ。
僕たちの世界では、あなたは地球を救った英雄のはずだ!
どうして……どうして、そんなあなたが……!」
その声に、Hi-νの中の男は冷たく笑う。
「……“そんなあなた”?並行世界の、都合のいいアムロ・レイを期待するな。
俺は“お前たちの”知っているアムロじゃない。……だが一つだけ教えてやる」
「……!」
「希望を信じて手を差し伸べた先にいたのは、愛する者を殺した赤いガンダムだった。
そして——その機体は、父が奪われたままのモビルスーツだった」
「……!」
「俺は、それを忘れない。いや、忘れてはならない。
だから俺は今、可能性を殺す力として戦っている」
静寂が訪れた後、バナージは呟くように、しかし確かな決意を持って答える。
「……なら僕は、もう一度あなたに“光”を見せる。
たとえあなたがどんな闇に沈んでいようと——それでも、人の可能性は死なない!」
二機のモビルスーツが火花のように宇宙を裂いた。
交戦:折れた角、届かぬ祈り
白い光と蒼い残光が交差する。宇宙に舞う残骸を跳ねのけながら、Hi-νガンダムのビームサーベルがユニコーンの装甲をかすめていく。
「君はかつてその機体で、神にも等しい力を振るったそうじゃないか?」
Hi-νのコクピットで、アムロは静かに、しかし執拗に問いを重ねる。
「戦場のモビルスーツを、まるで意思でもあったかのように“パーツ”にまで戻した……。
その力を今、なぜ使わない? 使えば俺を止められるかもしれないのに」
ユニコーンの中で、バナージの拳が震える。
「ニュータイプは……神様じゃない。人はそんな存在になっちゃいけないんだ」
Hi-νの猛攻が襲いかかる。だがバナージはギリギリで捌きながら続ける。
「……俺はもう二度と、オードリーを1人にはしない。だから、あんな力には頼らない……!」
剥き出しの信念が、白い機体を一歩も退かせない。だが、アムロの瞳には違う光が宿っていた。
「優しいな。……けど、甘い」
Hi-νのライフルが閃く。ユニコーンのバルカンが迎撃するも、弾道は押され、機体は徐々に押し込まれていく。
バナージの胸の内で、ある懸念が、言葉ではなく焦燥として広がる。
(……この人には、見せてはいけない。
リディ少尉とも、マリーダさんとも違う……)
(この人は、“一度見ただけで使いこなしてしまう”。
あの光の本質を、深く、速く、鋭く理解して……。
そして——迷いなく、それを“殺すために使う”)
「なら——使わず死ね」
アムロの声と共に、Hi-νガンダムが一気に間合いを詰め、ビームサーベルがユニコーンの左腕を斬り飛ばす。
「うっ……!」
「希望は祈りだけじゃ届かない。君は“可能性”を守るといったな。
だが俺は、“それを殺した者”なんだよ」
ユニコーンが膝をつく。バナージは苦悶の中で、再びアムロの姿を見る。
だがその表情には、かつてアクシズを押し返した英雄の面影はなかった。
そこにいたのは、希望の象徴を誰よりも愛し、そして最も深く裏切られた者の顔だった。
「……アムロさん……」
「……行け。今のお前では、俺は殺せない。
だが気が変わったら——こちら側に来い。
あの力を、俺の手に預けたくなったらな」
Hi-νガンダムは背を向ける。その背中から放たれるプレッシャーに、バナージは声を失った。
戦場に静寂が戻る。
白き角は折れ伏し、しかし心の中にまだ熱を宿していた。
⭐︎9評価ありがとうございます! kaguramai1986さん
⭐︎8評価ありがとうございます! イワシ丸さん