ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
5月13日22:43 バイオセンサーについてのゴップ、テム、ムラサメ博士により密談追加してます。
ムラサメ研究所。かつては、連邦軍の影に潜む非人道的な研究施設の象徴だった。
強化人間の実験と洗脳、人格の再構築、使い潰すことが前提の兵士製造工場。だが、それは過去の話となりつつある。
変革のきっかけは、トップエースたちの存在だった。
アムロ・レイとヤザン・ゲーブル。
ともに最前線で戦い抜いたパイロットであり、戦争を知り尽くした男たち。
彼らは強化人間の限界と可能性を現場で体感していた。
「強化人間を“道具”として使っても意味がない。人間として向き合って初めて、戦力として成長する」
それはヤザンの言葉であり、アムロの実践でもあった。
今やここは、ゼロ・ムラサメのように“自分の意思で戦う者”を支援する施設へと変貌した。
洗脳や薬物は廃され、治療と訓練に重点が置かれ、適正に応じた支援機体の開発も行われている。
強化人間の少女たちは「武器」ではなく、「兵士」あるいは「人間」として見られ始めていた。
そこにリタ・ベルナルがやってきたのは、アムロ・レイがアレックスを駆るようになった後のことだった。彼女は自ら志願し、ムラサメ博士の直属の技術補佐という立場に就いた。
「ここなら……アムロを支える力になれると思ったの」
研究所の深部では、極秘裏に進められている別の計画があった。
それが――“簡易サイコミュ制御装置”の研究だった。
この研究は、軍の上層にいるゴップ将軍の非公式命令によるもの。
公式には「サイコミュ兵器への迎撃技術の研究」とされているが、裏では「ニュータイプにしか扱えない機体の開発」――その足がかりとして、ムラサメ博士が動いていた。
「ジオンのように人間を壊すわけにはいかん……だが、奴らの技術に追いつかなければ、連邦はまた蹂躙されるだけだ」
その答えの一つが、リタ・ベルナルの知識だった。
彼女はサイコフレームの存在を知っていた。ただし、それはまだ手が届かない未来の話。
「……まずは、“思念を拾う”程度の装置でいい。感情の波と反応速度を一致させるだけでも、パイロットの助けになるはずだ」
そうしてムラサメ博士とリタが設計したのが、「簡易サイコミュ」。
それはやがて、テム・レイの提案によって「バイオセンサー」と名付けられることになる。
この装置は、強化人間の反応速度や感情の乱れを補助し、機体制御を安定化させると同時に、思念を通じて機体の出力や反応を向上させるという、夢のような“共鳴装置”だった。
テム・レイは言う。
「強化人間は、心が折れたときに機体に置いていかれる。それなら、心を支える機体を作ればいい。ゼロ・ムラサメがそうであるように、“戦う理由を持った人間”を支えるシステムをな」
こうして、アムロの希望が軍の形を変え、ムラサメ研究所の理想が少しずつ現実に近づいていく。
サイコミュは恐怖の象徴ではない。
それは、孤独な才能たちを“つなぐ”ための技術になるかもしれなかった。
ブリーフィングルームの奥、軍上層部の立ち入りを許された数少ない部屋のひとつ。
分厚い防音壁に囲まれたその部屋で、連邦の重鎮たちがこっそりと語り合っていた。
テーブルに投影されたホログラムには、未完成の機体と脳波干渉グラフが映っている。
ニュータイプの思念が直接駆動系に働きかける――“バイオセンサー”と名付けられた新技術だ。
「サイコミュではない、が……機体が搭乗者の意思に反応する仕組みか」
ゴップが厳めしい顔で資料に目を通しながら呟く。「まさか本当にここまで来るとはな」
「正確には、ニュータイプの脳波に含まれる高周波のパターンをAIで解析・変換し、操作系統にフィードバックしているだけです」
テム・レイが静かに答えた。「“思念で動く”というより、“意思の傾向を予測して先回りする”といった方が近いでしょうな」
「だが、実際の動作はほぼ直感的だ。手を触れずとも、ビームサーベルを避ける動きが可能になる」
ムラサメ博士が腕を組む。「ビットのように攻撃端末を使っていない以上、条約には抵触せん」
「それが良い」
ゴップが小さく笑った。「仮にジオン側が“連邦もサイコミュ兵器を使っている”と難癖をつけてきても、こう言える。“我々はビットなど使っていない。これは補助制御AIだ”と」
テムが口元を歪めた。「すっとぼけるには最適でしょうな。誰がどう見てもニュータイプ用の補助装置だが、理屈上はただの予測制御ユニット……我ながら皮肉な話だ」
「皮肉でも、必要な手だ」
ゴップの声が低く響く。「赤い彗星のような敵のニュータイプへの恐怖から、味方であろうとニュータイプというだけで差別、隔離しかねない。だが、この技術があれば“共に戦う仲間”として見られるようになる」
ムラサメ博士が頷いた。「リタ・ベルナルから聞いた“サイコフレーム”という未来の技術……あれに比べればまだ未熟だが、これは足掛かりになり得る」
「サイコフレームか」
ゴップが目を細めた。「それは……アムロ君に間に合うのか?」
「それはリタと私たち研究陣次第です」
テムが小さく笑った。「ただ、もし彼が真にあの機体と共鳴する日が来たなら……その時は、この技術の意味が変わるでしょう」
沈黙が一瞬、三人を包む。
それは科学の話ではなく、戦争と未来の話だった。
静寂な実験区画に、アレックスが立っていた。
両肩のハードポイントにテスト用の補助ユニットが取り付けられ、コクピットには新たにバイオセンサーの初期試験機が設置されている。
「……起動。アレックス、バイオセンサー実験開始する」
静かに告げたアムロの声と共に、機体が動き出した。
その動きは――異様だった。
重いはずの装甲が、呼吸するかのように滑らかに、アムロの意識に沿ってわずかに前傾する。
センサーが捉える前に、機体が敵の位置を探るように首を振る。ビームライフルの狙いが、まるで思考の予測線に沿って動いた。
「……すごいな」
ゼロ・ムラサメが唸った。隣のシミュレーション機で同じプログラムを試していた彼も、アムロと同じ驚きを覚えていた。
「身体が……勝手に動くってのとも違う。動かそうと思った通りに“既に動いてる”って感覚」
ゼロが首を振りながら続ける。「これがバイオセンサーかよ。反則だな」
アムロもわずかに口元を緩めた。「確かに、これはすごい技術だ。反応速度も追従性も、感覚的には……3割は向上してる」
その様子を後方の観測室で見ていたテム・レイの表情は、達成感ではなく、やや沈んでいた。
「……アムロ。確かに反応が上がったが、アレックスに不満はないか?」
通信越しに問われ、アムロは即答する。「いや、ないよ。確かにバイオセンサーの補助は感じるが、今のところ問題は感じない。親父、まだアレックスでも充分戦える」
だがテムは首を横に振った。
「“まだ”と言っているのが答えだ。今は充分かもしれん。しかし、お前たちが実戦を積めば積むほど、成長すればするほど――この機体が持つ構造的な限界を、いずれ不満に思うだろう」
「……アレックスは、バイオセンサーを積む前提で作られていないからな」
彼は静かにそう言った。
背後で黙って聞いていたムラサメ博士は、テムの言葉に胸の奥でため息を吐いた。
(想定してなかった? まるで、それが当然のように言うな……)
(ニュータイプが乗っても破綻せず、バイオセンサーの負荷に耐える――そんな機体を“前提なし”で作っておいて、まだ足りないだと?)
内心の感嘆を隠しつつも、ムラサメは冷静に言葉を選ぶ。
「仮に、次の機体を作るとしたら……アレックスのどこを改修する?」
「駆動系だな」
即答するテム・レイ。「まず出力リミッターと反応速度のバッファ調整。現状ではフレーム強度に余裕はあるが、将来的に制御不能になる。……この程度の改修なら1年以内に可能だが、ゼロからやるなら、今までのようにはいかん」
ムラサメの目がわずかに見開かれる。
(今までのように、か……この人、ガンダムも、アレックスも、数ヶ月で完成させたっていうのか?)
(……ジオンはガンダムを盗むことばかり考えていたが、真に危険だったのは、テム・レイその人だったんじゃないか?)
(赤い彗星がサイド6でv作戦の実物を蹂躙しながらもテム・レイを見逃した――いや、連れて帰らなかったのは……連邦にとっては、神に感謝するレベルだな)
ムラサメ博士は小さく肩をすくめた。
(とはいえ、その“神”が今、我々の側にいるのだから――その未来、見てみたくもある)
アレックスの整備が終わった格納庫で、テム・レイは端末のデータを眺めながら深く息を吐いた。
「……やはり、駆動系の負荷が気になるな。お前たちがこのまま成長すればバイオセンサーの反応速度にパーツがついてこない」
彼は作業台に肘をつき、仰ぐように天井を見上げる。
「いっそ、どんな素材を使えば最も反応に優れ、強度も耐久性も両立できるか――そんなことを一目で見抜けるニュータイプでもいればな……」
その呟きを背後で聞いていたアムロが、肩をすくめて振り返る。
「親父……わかってると思うけど、ニュータイプは超能力者じゃないぞ。透視や錬金術ができるわけじゃない」
「……ああ、分かっているさ」
苦笑を浮かべるテム・レイが、アムロの方を向いた。
「ただな、素材の研鑽ばかりはどうしても時間がかかる。試して、測って、積み上げていくしかない。その間に、お前たちの戦いがどれだけ過酷になるかを思うと……未来で、お前たちに“この機体じゃ足りない”と思わせてしまうのが、嫌でな」
彼は穏やかな目で息子を見る。
「だから、つい……無い物ねだりをしたのさ」
アムロは一瞬だけ言葉を失い、やがて静かに言った。
「……そういうのを、望んでくれる親父がいるのは、悪くない」
テム・レイは黙って目を細め、再びモニターへと視線を戻した。彼の心はすでに、次なる機体設計に向かっていた。
正史だと例の彼女シャアのために働いててめちゃくちゃ忙しいだろうけどジークアクス世界だとシャアは赤いガンダムに乗り続けたわけだからこっちで登場させっちゃっても良いのでは?と悪巧みしてます。安易なオリキャラは出さずに可能な限りいるとされてる人物への設定盛りでssを書きたいのもありますが。
☆9評価ありがとうございます! フルパワー扇風機さん トライポッドさん トミさん