ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
フランクリンを断罪系悪役令嬢みたいにボロカスにしてもかけらも面白く書ける気がしなかったので。
ならいっそ技術者としては筋を通す系に改変するしか無かったんです。
「……公開するのは構いません。ただ、先生が次の機体を形にしてからのほうが……」
理由はひとつ。技術部の一部──ほんのわずかではあるが──が、テム・レイを再び頂点に立たせまいとする動きを続けていたからだ。
それはかつて、彼を“狂人”として隔離し、檻に閉じ込めた者たち。今ではその多くが過ちを悔い、テム・レイに頭を下げ、むしろ弟子のように学ぼうとする者までいる。だが、ごく一部だけは違った。
「ゴップのような上層部に公式に逆らうことはできん。だから俺たちは“フランクリンを担ぐ”だけでいいのさ──」
そんな声が、アルレットの耳にも届いていた。彼らはフランクリン・ビダンを“もう一人の技術指導者”に仕立て、テム・レイとの二頭体制を敷こうとしている。
アルレットが研究棟の静かな自室で作業をしていると、ガラス越しの廊下を通る視線を感じることがある。そこには、常に一歩引いた距離からこちらを観察しているような眼差し──フランクリン・ビタンの影があった。
彼はムーバブルフレームの理論構築で知られる男だった。かつて自らも檻の中にいたテム・レイと異なり、フランクリンは軍の枠内で己の正当性を築こうとしていた。そして今、テム・レイが技術部の事実上の頂点に立ったこの状況に、彼は明らかな野心を持っていた。
「私は技術部の頂点に立つべきだ。テム・レイに勝って、だ」
それは彼の口から直接こぼれた言葉だった。だが、彼の背後にいる“派閥”──かつてテム・レイを檻に追いやった者たちの一部──の方が、より切実だった。彼らは今の技術部の空気を居心地悪く感じていた。自分たちが追いやった男が返り咲き、しかもかつての部下や新人の誰もがその能力に敬意を払っている。彼らにはそれが耐えがたかった。
「フランクリンを神輿にすればいい。二頭体制にすれば、あの男の“独裁”を崩せる」
そうした声が、研究棟の裏側で蠢いていた。
フランクリンはそのために提案を出した。「ネモを、ムーバブルフレーム構成で再設計する」と。運動性と整備性を飛躍的に向上させ、アレックスと対等以上の戦闘能力を発揮する──そう言い切った。
だが、それはそもそも矛盾に満ちた試みだった。ムーバブルフレームの骨格素材として、どうしてもガンダリウムγが必要になる。すなわち、アルレットとテム・レイが開発した新素材である。彼らはその技術を提供する立場でありながら、フランクリンとその派閥がそれを「自分たちの成果」として押し出すのは、明らかな略奪だった。
「私の……成果で、先生を追いやるための材料にされるなんて……」
アルレットは内心、複雑だった。技術を公表すれば自分が認められる。それは確かに嬉しいことだ。だが、それで恩のあるテム・レイに不利をもたらすことになるのなら、それは本意ではない。
アルレットにとって、テム・レイはただの上司ではなく、初めて“先生”と呼べた存在だった。
彼女がテム・レイを「先生」と呼ぶ理由──それは単なる研究指導以上の、人としての信頼と感謝に根ざしている。
アルレット・アルマージュは、かつてジオンの研究機関にいた。明確な指導者もおらず、彼女は「使える部品」として扱われていた。知識はあっても、それは与えられた枠内だけの話であり、社会の中で人としてどう生きるか、そんな基本すら誰も教えてくれなかった。
戦後、連邦に回収された彼女は、ヘンケン艦長らの判断で形式上「存在しない捕虜」として扱われた。表向きの身元は伏せられ、娯楽や書籍といった情報こそ与えられたが、それをどう受け取り、どう解釈すべきかを教えてくれる人はいなかった。
そんな彼女に真正面から向き合い、「可能性」として見てくれたのが、テム・レイだった。
彼は、基礎科学から応用理論、そして連邦式の研究倫理や報告の書式に至るまで、根気強く教えてくれた。どんな質問にも真正面から応じ、時には正答よりも「どう考えたか」をまず問う。その姿勢が、アルレットには新鮮だった。
技術者としてだけでなく、人間として、どう在るべきかを。彼女は自然と学び取っていった。
(そんなある日。
「先生……私、ちょっと、どうすればいいか分からなくて」)
アルレットの身体に、不調が出始めた。
それは、ジオンの実験施設にいた頃の非人道的な処置による後遺症だった。
彼女の内臓機能には特異な薬剤耐性があり、神経系は過剰な刺激に反応しやすく、年齢以上に身体が疲弊していた。周期的に動悸や呼吸困難に近い症状が現れることもあった。
だが、それは精神力や知性で隠されていたに過ぎない。テム・レイはすぐに気づいた。
「……まだ完全じゃないな。身体が、能力に追いついていない」
医療部の診断レポートには「強化処置由来の神経伝達不全」「内分泌系バランス異常」「骨密度異常分布」といった、戦時下なら“処分対象”と見なされかねない文言が並んでいた。
しかし、戦後の連邦は少しずつ変わりつつあった。
ムラサメ博士──かつて「強化人間」技術の推進者であった彼は、ゼロ・ムラサメの成長を見て、自らの過ちと向き合い始めていた。
「生かすための技術に変える。それが、せめてもの償いだ」
今、彼はゼロとともに、かつての被験者たちの身体を修復する研究を主導していた。そして、アルレットもまたその対象となった。
神経伝達の再調整、内分泌系の再統合、過敏反応の緩和……それらはすぐに効果が出るものではなかったが、確実に進んでいた。
「無理するな。今日の分はここまでだ」
治療の現場に現れるゼロの声は、命令ではなく、同じ痛みを知る者の温もりを帯びていた。
やがて、アルレットの身体は少しずつ回復の兆しを見せ始める。痛みは和らぎ、過敏な感覚も徐々に収まっていく。まだ高負荷な作業をすると倒れる危険もあるが、それすらも「いつか終わる」と思えるようになっていた。
その夜、アルレットはそっとノートを開き、こう書いた。
「私は今日、生まれて初めて、恥ずかしくなかった。先生が私を“私”として扱ってくれた。もう“何かのための存在”じゃなくていい。先生は、ただの上司じゃない。私の“先生”なんだ」
彼女が「先生」と呼ぶその言葉には、単なる敬意や役職の意味を超えた、救われた者の深い想いが込められているのだった。
一方で、テム・レイ自身はそういったアルレットの思いを嬉しく思いつつも、派閥の動きはどこか遠い風景のように捉えていた。
「私は別に、頂点に立たねばならんとは思っていないよ。必要なのは、いい機体を作れる環境だ」
彼は、派閥の焦りや政治の綱引きに巻き込まれるつもりなどなかった。ガンダリウムγがフランクリンのムーバブルフレーム構想を実現させる要だと分かっていても、「それならばまた、彼を超える機体を作ればいい」と平然としていた。
そして、アレックスの次の機体の完成を睨みながらも、テムはこう断言していた。
「たとえネモをムーバブルフレームに再構成したところで、ヤザン・ゲーブル、ゼロ・ムラサメ、そしてアムロ・レイ。あの3人に勝てると思うのは、少々……甘いな」
ネモの性能向上は事実だ。運動性も整備性も大幅に改善される。だが、それは機体の話であり、搭乗する者が同じ土俵に立てるかはまた別の話だった。アレックスの性能に振り回されず、真価を引き出せる者など、ごく一握りしかいない。
そしてそのことを、アルレットもまた、痛感していた。
(ガンダリウムγは、誰が使っても結果が出る素材じゃない……。それを見極められる“目”があって初めて、意味を持つんだ)
彼女は、すでに開発中の「アレックスの次」の機体に思いを馳せながら、そのことを静かに噛みしめていた。
【フランクリン・ビダンの視点:頂点を望む理由】
「またテム・レイか……」
研究棟の奥、静まり返った会議室でフランクリン・ビダンは独り呟いた。部下がまとめた開発進捗報告のファイルを机に叩きつけるように置く。そこには“ガンダリウムγの応用展開について──基礎開発アルレット・アルマージュ、技術顧問監修テム・レイ”と、黒々とした文字が躍っていた。
(あの男は、何度俺の前に立ちふさがるんだ……)
フランクリン・ビダンは、心の底でテム・レイを妬んでいた。
V作戦。モビルスーツという概念すら試行錯誤だった時代、あの重要な技術プロジェクトの主任に選ばれたのは自分ではなくテムだった。自分は技術2番手として名を連ねるにとどまった。
(あのとき俺が主任だったら、連邦軍の技術体系はもっと効率化されていたはずだ)
そう信じて疑っていない。だが歴史はテム・レイを選んだ。そして一度は破滅したはずのその男は、今また技術部の中枢に戻ってきた。あろうことか、かつて彼を“檻”に追いやった上層部自身が、頭を下げて彼を呼び戻したのだ。
(必要ならば、犯罪者でさえ呼び戻す……技術屋とは、そういう存在だというのか)
フランクリンは認めたくなかった。だからこそ、自分は誰よりも成果にこだわってきた。
成果があるから、軍も予算もくれる。成果があるから、部下もついてくる。成果があるから、愛人だって──
思考がそこで止まる。
彼の机の上には、家族の写真が裏返されたまま置かれていた。妻との間には、すでに冷え切った距離がある。原因は分かっていた。自分が女を作ったからだ。
(だが、そうせざるを得なかったんだ)
フランクリンは自分に言い聞かせる。誰にも頼れず、成果を出し続けなければ“無価値”になる。もし今の地位から滑り落ちたら、誰も振り返らない。見捨てられる。それが、自分の人生の実感だった。
だからこそ彼は焦っていた。
(あいつは、すべてを失ってもまた戻ってこれた。そんなの……おかしいだろう?)
テム・レイが技術部の頂点にいること。それはフランクリンにとって、自分の存在価値そのものを否定されることだった。
だから、ムーバブルフレームに賭ける。
ガンダリウムγがなければ不可能な構成であることは承知している。だが、その素材さえ“俺の企画に組み込めば”成果になる。アレックスを超える機体を、あのネモで──
そして勝てば、二頭体制にしてでも“対等”の立場を得られる。
(あいつが作ったアレックスに、俺のネモが勝てば──)
テム・レイを頂点に据えた現体制に楔を打ち込める。そう思っていた。
(もし俺が失敗したら? そうなったら……)
その問いには、彼自身が誰よりも怯えていた。失敗は即ち、忘却と孤独を意味する。テム・レイのように誰かが手を差し伸べてくれるとは思っていない。
(俺は……誰にも泣きつけない)
だからこそ、フランクリン・ビダンは成果にしがみつく。
テム・レイを超えるという幻想に、すがりつくしかなかった。
【状況整理:目的と構図】
技術部の会議室に差し込む光は、まるで裁きを下すかのように冷たく、鋭かった。
フランクリン・ビダンは窓辺に立ち、遠くの格納庫を見下ろしていた。そこには、彼が手がけた“ネモM型”が静かに佇んでいる。
かつては主流だったはずの自分の設計思想が、今や傍流に追いやられようとしている。
テム・レイ──狂人と呼ばれたあの男が、一年戦争の英雄・アムロを背負い、軍技術部の王座に返り咲こうとしている。
「いつから“正気であること”が、負け犬の証明になったんだろうな」
自嘲気味に笑いながら、フランクリンは静かに拳を握った。テムの成功は、技術屋としての矜持を傷つける以前に、自身の存在そのものを脅かす。
“アレックス”が正義なら、自分のような合理主義者は何なのか。性能と量産性の両立、現実的な未来。それが見えなくなるほどのカリスマ性に、軍上層部も揺れていた。
そんな中での、“模擬戦”だった。彼にとってそれは単なる性能試験ではない。
これは、反撃である。
ネモM型は、フランクリンが長年温めていた構想の結晶だ。
ムーバブルフレームを全身に実装し、拡張性と量産性を両立させた構造。既存のネモとは別物の存在であり、アレックスのような一機限定の英雄機とは違い、戦場に“数”を送れる兵器である。
しかも、この機体にはアルレット・アルマージュが開発したガンダリウムγの技術が不可欠だった。
本来ならテム一派の功績として独占されるはずの成果を、テム一派は独占せず全体に公開してきた。フランクリンはそれをテムの慢心と思い自らの理論に利用した。
模擬戦のパイロットとして彼が選んだのは、不死身の第4小隊。
誰もが名を知る歴戦の部隊。実績も階級も十分。若手のようにテムやアムロに熱狂することもない、地に足の着いた老兵たち。
この選定にもフランクリンの意図はある。
特に、ベルナルド・モンシア。彼のような口の軽い男は、こうした空気を変えるには格好の材料だ。
最近、彼は周囲にこんなことを漏らしている。
「なあ、何で俺がアレックスのパイロットに選ばれなかったんだ? 一年戦争の戦績なら、あの若造より上だろうがよ」
もちろん、その背後にはアムロという英雄の影がある。そして彼を支えるテム・レイという天才──ある種の“神聖化された血筋”への反発心が、老兵たちの中にくすぶっている。
モンシアの不満を燃料に、「アレックスは特別扱いされすぎている」という空気を醸成できれば、模擬戦の結果に関係なく“アムロ神話”に一石を投じることができる。
不死身の第4小隊、モンシアとバニング
出撃前、格納庫の陰で、モンシアが一人、ヘルメットの内側を睨みつけるように磨いていた。
その動作には、イライラとも不安ともつかぬ焦燥がにじんでいた。
「……俺がアレックスに乗れねえ理由が、本当にあんのかよ」
ぽつりと漏れた言葉に、背後から声が返った。
「あるさ。あるから乗れなかったんだ、モンシア」
振り返ると、そこにはバニング隊長が立っていた。ヘルメットを小脇に抱え、苦み走った顔でゆっくり近づいてくる。
「テム・レイって技術屋は、七光りや気まぐれで人を選ぶタイプじゃない。俺はそう見てる」
バニングの声は淡々としていたが、その奥にある“信頼”は本物だった。
「……それでも納得いかねぇっスよ、隊長。俺だってエース機の1つくらい……」
「分かる。だが今は、それを口に出すな。勝ち目があるかないかは、これからだ」
バニングはあえて、厳しくは言わなかった。
モンシアの気持ちは分かる。
だからこそ今は、その怒りも含めて──戦場にぶつけさせるべきだと判断した。
「この“ネモM型”が、どれだけアレックスに食い下がれるか。それを示せるのは、俺たちしかいないんだ」
「……チクショウ。負けてたまるかよ、あんなガキどもに」
モンシアは吐き捨てるように言い、ヘルメットを被った。
テム・レイとアルレット:視線と静寂
アレックス3機と、ネモM型4機。
数の上ではどう見ても不利だった。
だが、アルレットは不安げな顔をしなかった。いや──ほんの一瞬、そんな演技をしただけだった。
「……3機では、やはり不利ではありませんか?」
ぽつりと漏らした声は、心からの疑問というより、確認だった。
テム・レイは視線を前に向けたまま、無言でいた。
アルレットもそれ以上は言わなかった。口には出さなくとも、互いの考えは通じていたからだ。
──ヤザン・ゲーブル。
その男がただのオールドタイプで終わる存在でないことは、アルレット自身が一番よく知っている。
直感の鋭さ、判断の速さ、戦場での野生的な読み。
それは時に、強化人間ですら捉えきれない戦況を切り開く。
──そして、そのヤザンと拮抗しうるとされるゼロ・ムラサメ。
数値的には上回っていても、まだ精神的には不安定な面もある。だが、それでも彼の“爆発力”は確かな武器になる。
そして、彼はかつてアルレットの意識が戻らぬとき、何度も医療データに目を通し、少しでも彼女の助けになるならと身体データの提供すら申し出た。
あの孤高に見える青年が、そこまで他者に踏み込んだのは、彼女にとっても忘れがたい記憶だった
──だが何より、アムロ・レイ。
アルレットは、その名前に込められた“因縁”を、そして彼の放つ静かな圧力を知っている。
アムロとヤザン。この二人が組むだけで、常識的な機体性能の比較は無意味になる。
そこにゼロ・ムラサメが加わるのだ。もはや、機体数での有利など“皮算用”に過ぎない。
テム・レイは、そんな彼らの力を誰より理解し、そのうえでアレックスを3機だけ造ったのだ。
アルレットは、軽く息をついた。
視線の先、彼ら3人が出撃準備を終えて並び立つ。
「……3機で充分です」
アルレットは、誰にともなくそう呟いた。
声に出すことで、あえてその確信を胸の奥で強く再確認したかったのかもしれない。
ふと、隣のテムが視線を寄越した。
口元に残る小さな笑みと、目の奥の冷静な光。
「数では測れない力がある……それだけの話だよ」
その言葉に、アルレットは小さく頷いた。
やがて彼ら3人のアレックスが格納ブロックから出撃し、陽光の下にその蒼を晒す。
──いまに証明されるだろう。
設計図でも、戦力比でも語れない“圧倒”の意味が。
アレックス側のパイロットたち:開幕直前
アレックス1号機には、かつての英雄──アムロ・レイが乗っていた。
歴戦のニュータイプ、かつての“白い悪魔”は、機体に一切の迷いもなく同調している。
沈黙は、彼の決意の表れだった。
2号機のパイロットは、ヤザン・ゲーブル。
荒々しく、戦場では“獣”とすら称された男だ。強化処置など一切受けず、純粋な戦闘経験と勘で数々の修羅場を潜ってきた。
ニュータイプでも強化人間でもない、“人間”の限界をねじ曲げて生き延びた戦士。
3号機には、ゼロ・ムラサメ。
ムラサメ研究所出身、人類初の強化人間にして、いまだ現役で戦場に立ち続ける逸材。
その瞳には、ジオンへの深い憎悪と、それを超える“存在証明”への飢えが宿っていた。
この3人──
ニュータイプ、オールドタイプ、強化人間。
まるで、人類の未来を代表するかのように並び立つ最強のトライアングルが、今、模擬戦という舞台に降り立つ。
アレックスが選んだのではない。
テム・レイが、「人類の限界に賭けた」3人を選んだのだ。
フランクリン・ビダンの過信
フランクリン・ビダンは、この模擬戦を「勝つか、せいぜい拮抗する」程度の試合だと想定していた。
そして、アムロ・レイを含む“専用機3機”に対して、「あくまで試験機だ」「機体数が少ないから有利ではない」と自分に言い聞かせていた。
彼にとって、アレックスは“コンセプトモデル”であり、ネモM型こそが“実用機の到達点”だった。
だが、彼は考えなかった。「完敗する可能性」を。
テム・レイが“あえて3機しか作らなかった理由”に、一切の想像力を働かせなかった。
技術者としての誇りと業績、そしてテムに対するライバル意識が、彼の視野を狭くしていた。
アレックスの意味を、“ただの高性能機”としか捉えていなかった。
模擬戦はまもなく始まる。
“数の有利”も、“現場の実績”も、“設計者の思惑”も──
火花を散らす粒子の中で、容赦なく焼かれていく。
模擬戦開始:空を裂く蒼
電子音とともに、カタパルト射出のカウントが各機のコックピットに響く。
瞬間、風を切る音と共に、三機の蒼きアレックスが模擬戦区域へと飛び立った。
《アレックス1、出る》
《2、了解。続く》
《3、問題ない》
アムロ、ヤザン、ゼロ。それぞれが番号で呼ばれることに、誰も異論はなかった。必要なのは名前ではなく、結果だけだ。
観測台からその様子を見つめるフランクリンは、腕を組んで微笑んでいた。
「さて……見せてもらおうか。父親に用意された“選ばれし者”たちの力を」
その口調には、優位に立った者の余裕と嘲りが混ざっていた。彼の中で、これは“技術の比較”であり、ネモM型が拮抗できればそれで勝利だった。
いや、それ以上の展開など、一切考えていなかった。
だが──彼の想定は、数分後に音を立てて崩れはじめる。
⸻
開戦直後:三者三様の出撃
ネモM型四機が戦線を張るように散開する。モンシアが前衛、バニングが指揮位置、チャップとベイトが両翼に回る配置だ。
それは連携を前提とした緻密な布陣であり、バニングの「軍人としての読み」が色濃く出ていた。
対するアレックス側──
● アムロ・レイ:中域からの静かな観察者
アムロは開幕から正面衝突を避け、少し距離を取るように機体を旋回させていた。
彼の目は、戦場全体を鳥瞰するかのように動いていた。相手の思考、行動パターン、僅かな機体の癖──すべてを見切っているわけではない。ただ“流れ”を感じ取っていた。
「……ネモM型。たしかに良い機体だ。でも“性能”と“力”は、似て非なるものだ」
通信を開くこともせず、ただ静かにアクセルを踏み込む。
その瞬間、機体の姿勢制御がほんの僅かに揺らぎ、次の瞬間には敵の死角に消えていた。
● ヤザン・ゲーブル:制圧の猛禽
「行くぞ、チンタラすんなよ!」
ヤザンは開幕から加速し、真っ向から敵陣に突っ込んでいた。彼にとって“模擬戦”の言葉は飾りに過ぎず、そこにあるのは純粋な“勝利”のみ。
モンシアと交錯するタイミングを見計らい、視線一つで機体の重心をずらしながらビームを散らす。
「おらァ! そんなもんかモンシアァッ!」
叫びと共に、ネモM型の装甲にかすり傷を刻みながら斬り込む。その動きには、まるで猛禽が獲物に爪を突き立てるような鋭さがあった。
● ゼロ・ムラサメ:沈黙の“精密”
ゼロは、誰よりも静かに、正確に動いていた。
かつての彼にはなかった“自律”と“安定”が、機体全体の動きに現れていた。
機体の挙動にムダがなく、敵機の視界の死角を継続的に突く動きは、まるで先読みしているかのよう。
「……ベイト機、側面が甘い」
独り言のように呟くと同時に、ビームライフルが二発。
防御行動に移る前に、ベイト機のセンサー装甲が撃ち抜かれ、機能を一時停止させられた。
観測台にいたフランクリンの顔が、初めて曇る。
「……おい、まさかベイトが……? もう?」
彼は思った。“模擬戦”は時間をかけて進行するものだと。
だが、アムロたちにとっては違った。彼らは**“制圧”を目的に動いている**のだ。
まるで本物の戦場のように。
⸻
戦闘心理と想定外の崩壊
バニングは冷静だった。アムロの動きが“ただの様子見”でないことを即座に察知し、チャップに回避行動を指示しようとした。
だが次の瞬間、チャップの機体は、ゼロの斜線上に入っていた。
「……速いッ、読み切ってるのか!?」
彼の視界がホワイトアウトする。擬似アウトレンジ射撃──だがゼロはそれすら“当てて”きた。
一方、モンシアはヤザンとの格闘戦に押されながらも、必死に反撃の機会を探していた。
(なんでだ……! 俺がアレックスに乗ってたら──いや、まだだ! 俺だってッ!)
モンシアは吠えるが、ヤザンは冷ややかだった。
「──乗りこなすことと、勝ちきることは違うんだよ。坊主」
剣戟が交錯し、ネモM型の関節部がひしゃげる音が響く。
そして、アムロが遂に本命の動きを見せた。
宙を舞いながら、バニングの後方に瞬間的に回り込む。そこに、ゼロの狙撃が時を合わせた。
「……信じていいな、ゼロ」
「“僕を選んだ理由”を、見せるときです」
アレックス3機による同時照準と、同時撃破。
たった数分──いや、わずか180秒で、ネモM型部隊のシステムは撃墜判定によってダウンを迎えた。
フランクリンの視線の先で
「ば、ばかな……! こんな短時間で……! 完封……だと……?」
フランクリンは震えていた。
それは敗北の震えではなく、“想定できなかった圧倒”に対する恐怖だった。
アムロたちが戻る中、観測台での沈黙が支配する。
その中で、テム・レイだけが呟いた。
「……だから言ったろう。数では測れない力があると」
そして、アルレットはわずかに目を細め、誇らしげに呟いた。
「──アレックスが選ばれたのは、理由があるのです」
模擬戦後:静まり返る観測室
模擬戦の終了を告げるアラートが鳴り終えた瞬間、観測室に満ちていたのは、言葉を失った沈黙だった。
端末に映るネモM型の全機ダウン──しかも開始からわずか三分以内の出来事だった。
「……ば、ばかな……四機だぞ……数では勝っていたのに……」
「いや、性能の差も……戦術も……あの動きは反則だろう……!」
フランクリン派の技術者たちは、誰もが目を見開いていた。
彼らが信じていた“合理性”や“技術の延長上の勝利”が、あまりにも鮮やかに打ち砕かれたのだ。
アレックス三機による圧倒的な連携、個々の機体性能を超えた戦術的優位。
そして、それらを最大限に引き出す三人の異能のパイロットたち──。
フランクリンは、無言のままログの一時停止ボタンを押す。
その手がわずかに震えたのを、自分でも感じていた。だが、その震えは敗北のショックではない。事実を飲み込んだことによる、覚悟の始まりだった。
「……見事だよ、テム・レイ」
ぽつりと漏らす。
自分のネモM型は完成度も高く、旧式ネモからは別物といえる革新を成し遂げた。
だが、それでも勝てなかった。いや、勝てるという前提で戦いを組んだことこそが浅はかだった。
彼の脳裏に、かつての設計会議でテム・レイに放った言葉が蘇る。
「あなたのように、ただ一人の天才を支えるだけで勝てると?」──
(……そうさ。私は勝ちたかった。連邦の技術体系の中で、“正しさ”を示したかった。
だが、あの模擬戦で証明されたのは、テム・レイの“天才性”と“現場感覚”の両立が、今の連邦にとって最も強い武器だという現実だった)
背後から近づいてくる足音に、フランクリンは振り返る。
テム・レイが再び声をかけてきたのは、その静かな空気を破るようでいて、どこか温かみがあった。
「フランクリン。君は私に勝ちたがっていたようだが……我々は敵ではない。共に連邦の技術士官だ」
「競うことはあっても、互いに足を引っ張るべきではない。
第一、連邦がジオンに敗れたあの日、我々は皆──“一度負けている”のだからな」
その言葉に、今のフランクリンは素直に頷けた。
少なくとも、「今」は。
「……認めます。テム。今は、あなたが“頂点”にいる。
アレックスは優秀だ。そしてそのパイロットたちも、桁違いに強い。私の技術では届かなかった」
フランクリンは視線を落とし、拳を軽く握りしめる。
だが、その目にあったのは、敗者の陰ではなく、職人としての誇りだった。
「だからこそ、今はあなたに従います。ジオンに勝つまでは──あなたを頂点に据えるべきだ。
それが、連邦技術部が再び信頼を得る唯一の道だと、理解しました」
テムはその言葉に特別な反応を示さなかった。
ただ、静かに頷き、短く言った。
「それでいい。私は全ての勝利を独占する気はない。共に道を作ろう」
だが、フランクリンの中には一つだけ──譲れぬ火種が残っていた。
(……だが、もし連邦がジオンに勝ったその後で、“技術の自由競争”が許される時代が来るのなら──
そのときこそ、私の真価を示してみせる。あなたとは違うやり方で、私自身の思想を貫いて)
表情には出さなかったが、フランクリンはその野心を静かに温め始めていた。
ガンダム エコール・デュ・シエル 天空の学校を知ってる人います?
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gジェネEでアスナだけ知ってる。
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漫画もgジェネEでも知ってる。
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読んだことない。
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読むのをやめた。