ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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幕間: カミーユ・ビダン フォウとの出会い

夫妻は一瞬、何を言われたのか理解できずに固まっていた。

 

「……カミーユが?」

フランクリンが最初に反応した。目を見開き、驚きに目尻が震えている。

 

「プチモビの競技で賞を取ったとは聞いていたが……まさか、そこまで上手いとは……」

 

「ええ、本当に……」

ヒルダもまた、ぽつりと呟く。息子の知られざる側面に、母としての驚きが滲む。

 

テム・レイが腕を組み直しながら、軽く口元を緩めた。

「さて、彼の年齢からしてすぐにテストパイロットになれとは言わないさ。ただ――それほどのスコアだ。まずは君たち両親に話を聞いて、どうするか決めたくてね」

 

「それほど、ですか……?」

 

「正直言って、身体能力がある程度追いついていれば――アレックスを作ってもいいレベルだよ」

 

「アレックスを!?」

フランクリンが素っ頓狂な声を上げた。

 

──フランクリンの内心は、騒然としていた。

 

(今ならよく分かる。テムの下について、あの機体の調整に関わり、パイロットたちからも話を聞いた今なら──)

 

(あれは、ただの高性能機じゃない。乗り手を選ぶ、“覚悟を試される兵器”だ。高すぎるレスポンスと感応性、それを抑えきる技量、心、そして体。数多いるエースパイロットの中でも、あれを扱えるのは──上澄み中の上澄みだ)

 

(その機体に、“カミーユが乗れる”かもしれないだと……?)

 

静かに押し寄せてくる感情は、恐れとも誇りともつかない。父親として、技師として、軍人として――すべてが入り混じった、複雑な思いだった。

 

ヒルダは目を伏せ、何かを噛み締めるように呟いた。

「まさか……そんなに……ニュータイプ適性が高いなんて……」

 

(でも……軍が、ゴップ提督たちのような穏健派でよかった。もし、バスクのような者たちが実権を握っていたら――カミーユは、どう扱われていたか……)

 

その瞬間だった。

 

「失礼いたします!」

室内の通信機がけたたましく鳴り、軍服姿の通信士が端末越しに姿を見せた。慌てた表情を隠せない。

 

「何事だ?」

ゴップが重々しく声を発する。

 

「はい、緊急連絡です。ゲート付近で乱闘が発生しました。未確認ではありますが――フランクリン・ビダン技師のご子息、カミーユ・ビダン氏が……連邦所属の軍人2名を殴り飛ばしたとのことです!」

 

「…………」

室内が凍りつく。

 

「…………カミーユが?」

フランクリンの声が、ほとんど呼吸のように漏れた。

 

「殴った……? 軍人を……?」

 

ヒルダが困惑気味に眉をひそめる。

 

「な、何が……?」

 

テム・レイが小さく唸りながら、額に手を当てる。

「……なるほど、やっぱり“ニュータイプ”の片鱗はあったか」

 

ゴップとブレックスが目を合わせ、重苦しい沈黙のなか、次の対応をどうするかを探っていた――。

 

 

 

 

軍施設の正面ゲート。

 

今日は特別な用事があるわけじゃない。ただ――あのシミュレーターが、やけに気になった。

 

「……カミーユ・ビダン君ですね。ゲスト登録は確認済みです。どうぞ」

 

受付の兵士に声をかけられ、カミーユは身分証を提示してゲートをくぐる。フランクリンの息子という立場があれば、少なくとも出入りは許される。ありがたい話だ。

 

(昨日の、あの妙にリアルで感覚が乗るシミュレーター……もう一回だけ、試してみたくなった)

 

足早に構内を歩いていたカミーユは、脇の通路から出てきた人影に気づかず、曲がり角で――

 

「うわっ!」

 

「あっ」

 

がつん、と軽く肩がぶつかった。細身の体にぶつかった感触に、慌ててカミーユは振り返る。

 

「ご、ごめん! よそ見してて……!」

 

とっさに謝ったが、その目がすぐにフォウ・ムラサメに吸い寄せられた。翠玉色の髪と目、気の強そうで、それでいてどこか憂いを帯びた瞳。少女とは思えぬ、凛とした雰囲気。

 

思わず、見惚れてしまっていた。

 

「いいの。大丈夫。……あなたは?」

 

「あっ……俺の名前は、カミーユ。カミーユ・ビダン」

 

「カミーユ……」

 

フォウはその名を繰り返し、小さく微笑んだ。

 

「いい名前だね」

 

「……そうだね」

 

そう返したものの、カミーユの表情はどこか微妙だった。自嘲ともとれる、ほんのわずかなゆがみ。

 

フォウはすぐに察したように、首をかしげた。

 

「……自分の名前、嫌い?」

 

「みんなに言われるんだ。『女の名前だ』って」

 

「ふぅん……でも私は、好きだな」

 

そのまっすぐな言葉に、カミーユの胸の奥が、不意にあたたかくなった。

 

(……この人、誰だろう)

 

だが次の瞬間――

 

「なぁ、ドゥー。飲み物でも買ってこようか」

 

横にいたゼロ・ムラサメが、どこか気の利いた様子で声をかけた。

 

「え? 私、別に……」

 

「ちょっと喉乾いたしな。ついでに何か買ってくるよ。付き合え」

 

ゼロはさりげなくドゥーの肩を押して、その場を離れようとする。

 

歩きながらドゥーはゼロの横目をちらりと見上げる。

 

「……もしかして、私たち、おじゃま虫?」

 

ゼロは軽く笑って、

 

「ああ。だな」

 

と、悪びれずに答えた。

 

そんなふたりを背に、フォウとカミーユは、まだ名も知らぬ関係のまま、互いにじっと見つめ合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

施設中庭のベンチ。午後の柔らかな陽射しが、フォウ・ムラサメとカミーユ・ビダンの間に落ちていた。

 

「……なんで親父が俺にこんな名前つけたのか、今でも分からないくらいさ」

 

カミーユは、少し照れたように視線を逸らしながら言った。

 

フォウはふっと笑いながら応じる。

 

「そっか。でも、私は好きだよ。……で、わたしはフォウ。フォウ・ムラサメ」

 

「いい名前だね」

 

今度は、カミーユのほうが素直に言葉を返した。

 

フォウは少しだけ肩をすくめて笑った。

 

「そう? でもあっちの二人、ゼロ・ムラサメとドゥー・ムラサメって言うんだよ?」

 

「名前が……番号?」

 

一瞬、カミーユの表情がこわばる。後ろ暗い事情を感じ取ったからだ。

 

「まあ、分かりやすいっていえば分かりやすいよね。……私も昔は、嫌いだったよ。ただの番号と、施設の所長の苗字なんだもの。でもね、今は好き」

 

フォウの目がやさしく細められる。

 

「孤児だった私にとって、それは“新しくできた繋がり”って思えるから」

 

「……そっか」

 

カミーユは頷いた。フォウの過去に何があったかまでは分からない。でも、その言葉には今を生きようとする強さがあった。

 

「だからさ。あなたも……そのうち、“カミーユ”って名前、好きになれるといいね」

 

彼女の言葉は、カミーユの心に、穏やかな風のように吹き込んだ。

 

その様子を、少し離れた場所から眺めていたゼロとドゥー。

 

自販機で買った缶飲料を片手に、ゼロは目を細めてつぶやく。

 

「……ああやって関係者以外の人と話してるフォウ、久しぶりに見たな」

 

「カミーユって子、初対面なのにちゃんと話してるね。フォウ、相性いいのかな?」

 

「かもな。……あいつ、人見知りするくせに、合うやつにはぐいっといくからな」

 

ゼロはドゥーに缶を渡しながら微笑む。

 

「こういう時間が……続くといいんだけどな」

 

「うん」

 

ドゥーも、それを受け取りながら、静かにうなずいた。

 

少しの沈黙。だが、その静けさは、心地よいものだった。

 

――と、その時。

 

ゼロがふっと視線をカミーユとフォウの方へ向け、それから何かを思い出したように立ち上がった。

 

「……デバガメしすぎるのも良くないか。二人のお茶菓子でも買ってくるか」

 

ドゥーも素直に立ち上がり、並んで歩き出す。

 

「うん。甘いのがいいな」

 

「お前も混じって食べる気かよ」

 

「ダメなら、ゼロが一緒に食べてよ」

 

ドゥーが軽く笑うと、ゼロも肩をすくめて苦笑いを返した。

 

「まあ、それなら――仕方ないな」

 

二人は自然と距離を取り、カミーユとフォウのためにさりげなく“場”を残してやった。

 

その背中には、どこか温かな気遣いと、少しの期待が滲んでいた。

 

だが、その和やかな空気を、ひとつの言葉が壊す。

 

「おんなの名前なのに、なんだ男か」

 

不快な声とともに、冷たい空気が場を裂くように広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうイライラするなよ、ジェリド」

 

カクリコン・カクーラーが苦笑交じりに声をかけた。だが、その隣を歩くジェリド・メサの足取りは明らかに苛立ちを帯びていた。無駄にきつい足音が、舗装された廊下に響いていた。

 

「イライラするなって? お前は状況が分かってない」

 

ジェリドが吐き捨てるように言った。

 

「バスク准将が失脚した。近々立ち上げる精鋭部隊に俺を入れてくれるって話も、全部パーだ。……あれが俺のキャリアの跳ね台になるはずだったのに」

 

「まあ、あれはちょっとタイミングが悪かったな」

 

「“ちょっと”じゃねぇ!」

 

ジェリドは足を止め、振り返ってカクリコンを睨む。

 

「それだけじゃない。アレックスの適正試験だ。あれにも落ちた。なんでだ? 俺はエリートなんだぞ? 当然アレックスみたいな高性能機に乗れるはずだった。……なのに、配属されたのはネモだ」

 

「ネモだってそこそこ性能はあるだろ」

 

「“そこそこ”じゃダメなんだよ!」

 

ジェリドの声が少し大きくなり、通路の先の整備兵たちがちらりと視線を送る。

 

「俺はトップになるはずの人間なんだ。強化人間? ニュータイプ? そんなものに頼らず、実力で連邦の柱になる。それが俺の――」

 

ジェリドの言葉は、ぐっと噛み殺される。

 

「……昨日の夜、シミュレーターのスコアを見たか?」

 

「見たよ。“ゲスト”ってやつが、トップに躍り出てたな。誰かと思えば、子供だって噂じゃねぇか」

 

カクリコンは肩をすくめた。

 

「そりゃ確かにショックかもな。ジェリド、お前だって何回か挑戦してただろ?」

 

「ああ、挑戦してたとも。俺なりにいいスコアも出した。名前の通ったエースの何人かは超えてた。……それなのに、“子供”が一位? ありえないだろ」

 

ジェリドの拳がぎゅっと握られる。

 

「なにが“ニュータイプ”だ。なにが“適性”だ。ふざけんなよ……!」

 

その視線が向いた先には、まだ笑顔を交わしていたカミーユとフォウの姿があった。

 

 

 

ジェリドの目が鋭くなったまま、視線の先にいる少年――カミーユと、その隣に座る少女――フォウを捉える。

 

その瞬間、カクリコンが肩をすくめた。

 

「ったく、しょうがねぇな。イライラしてんならさ、ちょっとナンパでもして気分転換すりゃいいんじゃねぇの?」

 

「……は?」

 

ジェリドが眉をひそめるも、カクリコンは遠目にフォウを見つけて口笛を吹いた。

 

「おいおい、見ろよ。あの女、なかなかイケてんじゃねーか? すらっとしてるし、顔も悪くない。ちょっと冷たそうなとこがまた良いじゃん?」

 

ジェリドもフォウをちらりと見やり、イラついた気持ちを持て余したように舌打ちしながらも、その場を歩き出す。

 

「……まあ、ちょっと挨拶くらいしてやるか」

 

2人はふらっと寄っていく。すると、フォウがふいにカミーユを見て微笑みながら言った。

 

「ねえ、カミーユ」

 

その一言で、ジェリドの足が止まる。

 

(カミーユ? どこに……って、あのガキか?)

 

ジェリドの顔が歪む。

 

鼻で笑いながら、ジェリドが嘲るように言い放った。

 

「おんなの名前なのに、なんだ男かよ」

 

その瞬間、ぴたりと場の空気が凍りついた――

 

 

 

 




やはりジェリドにはこのセリフを言わせないとジェリドじゃ無いと思うんですよ。次はもちろんカミーユお得意のあれです。

カミーユを個人的に好きになれる主人公度を上げてデザインしてます。読者様方的にはどうですか?

  • カミーユなら名前馬鹿にされた時点で↓
  • 殴る。我慢なんてしない。
  • フォウの言葉で一度止まったがフォウを↓
  • 馬鹿にされて怒るのかっこいい!
  • そもそもお前はファといちゃついてろ↓
  • カミxファ 過激派
  • どれもカミーユじゃない。ざまあないぜ!
  • そんなことよりジークアクスのアニメ見たい
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