ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
扉が開き、静かな足音とともに、白い制服の青年が姿を現す。その光景に、ハヤト、カイ、リュウの三人は思わず立ち上がった。
「うん。すごい模擬戦だったよ」
アムロ・レイは、柔らかく笑いながらそう言った。「ハヤト、カイさん、リュウさん。あれなら敵にニュータイプのエースが来ても、大抵は勝てると思う。もし勝てない相手でも、被害を抑えて撤退できる。そんな力がある連携だった」
その言葉にハヤトが一歩踏み出し、思わず叫ぶ。
「アムロ!お前ってやつは!」
「ほんっとにさ!」カイも指を差す。「真打みたいにさっそうと現れて、何その優等生コメント!」
「全くだ!」リュウは腕を組み、顔をしかめた。「あの時、サラミスで一緒にジャブローに来た仲間だろ? なのに今じゃ連邦のトップエースだなんてなぁ。せっかくだからちょっと相手してくれよ。3対1で」
「あっ……いや、でも皆、今日はもうかなり疲れてるでしょ?」
アムロは慌てて言い訳をしながら、少し後ずさった。
「いーや、今日やる!」
ハヤトが勢いよく言い、アムロの肩をグッと押す。「ただし、少し休憩はさせてくれ。一時間後、ここのシミュレーターでやるんだ。アムロ、お前は外で適当に時間潰してきてくれ」
「そうそう」カイもニヤリと笑い、背中を押す。「真打ちのアムロ君は、真打ちらしくこっちの準備が整ってから登場しな〜」
「えぇ〜……」
渋い顔をしながら、アムロは押し出されるように部屋を出て行った。
ドアが閉まると同時に、3人は弾かれたようにヤザンとリタの前に立ち、同時に頭を下げた。
「教官!お願いです!」
「アムロの癖でも弱点でも何でもいい!教えてください!」
「せめて、一撃だけでも入れたいんです!」
ヤザン・ゲーブルは腕を組み、無言で3人を見下ろす。やがて、ふっと鼻で笑いながら言った。
「……あいつの弱点ねぇ」
少しだけ考え込むような間の後、言葉を続けた。
「百機ぐらいで囲め」
「えええぇぇぇ!?!?」
一斉に突っ込む3人を無視し、ヤザンはニヤつきを深めながら続ける。
「正面からつけるような弱点なんざ、あいつは全部克服してんだ。特訓で潰して、実戦で磨いて、それでも足りないと鍛え続けてる。並のやつが真似できるようなことじゃない」
「そんな……」とハヤトが呟いた。
「だけどな」ヤザンは少しだけ声を落とした。「弱点を探すより、自分たちの連携で挑め。お前らにしかできない戦い方がある。あいつに傷一つつけられたら、それは大金星だ。それで十分だ。――無駄にはならん」
沈黙が、格納庫に落ちた。
そして次の瞬間、3人は大きく息を吸い込み、互いに顔を見合わせて頷いた。
「……よし、やるか!」
「やるしかねぇな!」
「目標、アムロ・レイ――!」
シミュレーターの中で、最強に挑む彼らの挑戦が始まろうとしていた。
模擬戦の開始と同時に、空気が張り詰める。
アレックスを駆るアムロ・レイが、目の前の3機のネモを静かに見据えていた。対するは、カイ・シデン、ハヤト・コバヤシ、リュウ・ホセイ――連携を磨き上げ、ニュータイプ相手でも食らいつく意志を持つ3人だ。
開幕から3人は距離を取り、決して正面から突っ込むような無謀はしなかった。分断と包囲、射角と視界を意識した立ち回り。無線で交わされる簡潔な連携の中に、ここまでの訓練の全てが詰まっていた。
だが――アムロもまた、静かに応じていた。的確な動きでキルゾーンを作らせず、絶妙な機体制御で攻撃を躱し続けている。シールドに擦過した1発を除けば、被弾はゼロのまま、時間だけが淡々と経過していった。
そして七分が経過した時。突如として、アムロが低く呟いた。
「なるほど、こうすればいいのか――」
その直後だった。
ハヤトのネモが前進し、アムロの死角から回り込もうとした瞬間――
爆発。
虚空から閃光が走り、ネモの胴体が揺らいだ。警告灯が赤く染まり、「撃破判定」の文字がモニターに浮かび上がる。
「ハヤト!!」
「うそ……後ろだと!?」
カイとリュウの叫びが響いた。
その視界の端にあったのは、アムロがすでに“投棄”したはずのバズーカ。その銃口が、いまなお煙を上げている。
制御が切られたはずの兵装から、あらかじめ設定された時間差で発射された一撃――後に《置きバズーカ》と名づけられる、アムロ・レイの新たなる“必殺戦法”だった。
仲間を失い、動揺したカイとリュウもまた、すぐさまアムロの反撃を受け、撃破判定を突きつけられた。
結局3人がアムロに与えたダメージは、シールドへの一撃のみ。
だが――模擬戦が終わったその瞬間、3人は無言で顔を見合わせ、同時に肩を落としながらも、どこか満足げに笑った。
•
その光景を、上階の観覧室から見つめる4人がいた。
「……普通、こういうのって3人の進化を喜ぶ展開じゃないですか?」
リタ・ベルナルが、唇を尖らせながら不満げに言う。「なんで最強のアムロさんがさらに強くなってるんですか?」
「そりゃ、“最強”は伊達じゃなかったってことだろ」
ゼロが呆れ顔で答えた。
「なるほど……ああすればいいのか」
カミーユは感嘆の息を漏らしながら、静かにアムロの置きバズーカの軌道を頭の中でなぞっていた。「武器を捨てると見せかけて、囮に使う。バズーカの残弾にすら意味を持たせる戦術……すごい……!」
「へっ、あいつらもよくやった」
ヤザン・ゲーブルは、ふっと笑いながらつぶやいた。視線の先には、敗れた3人が、それでもどこか誇らしげにアムロへ敬意を向ける姿がある。
「だがな――」
その目はもう次の戦いを見据えていた。
(俺なら、どうやってあの“置きバズーカ”を避ける? 回避? 撹乱? それとも――先に撃つか)
最強がさらに強くなる。
だが、追う者たちもまた、足を止めてはいない。
模擬戦の終わりが、新たな始まりを告げていた。
模擬戦の終わった夜、熱くなった体を夜風で冷やしながら歩く男達。
ネモのコックピットから降りたハヤト、カイ、リュウの三人は、互いに顔を見合わせて微笑み合った。敗北はしたが、悔いはなかった。彼らの中に残ったのは確かな達成感だった。
「いやあ……やり切ったな」
ハヤトがぽつりと漏らし、ヘルメットを脱ぎながら空を見上げる。
「だな。リタとの模擬戦も、アムロとの模擬戦も……ガチだった」
リュウも満足そうに頷き、装備を片付けながら笑った。
「これで当分、トイレ掃除の心配もなさそうだぜ」
カイは肩をすくめて冗談を飛ばし、三人の間に緩い笑いがこぼれる。
それぞれにとって意味のある二週間だった。
リタとの連戦で技を磨き、最終日のアムロとの模擬戦では、到底届かない相手の“背中”を、わずかに感じることができた。
そんな想いを胸に、三人は帰途につこうとした。
その時――
「待ってよ。三人とも!」
背後から聞き慣れた声が響いた。振り返ると、息を切らしながらアムロ・レイが駆け寄ってきた。
「おいおいアムロ」
カイがにやりと口元を歪めた。「こういう時、勝者が敗者にかける言葉なんてないって、知らないのか?」
「そうだよ。アムロ」
ハヤトも笑いながら応じた。
「それとも、お前も俺たちの反省会に参加してくれるのか?」
リュウは冗談めかして言うも、どこか優しい声音だった。
「反省会は、出してくれるなら出ますけど……」
アムロは息を整えながら笑い、それから真顔に戻った。
「でも、今日来たのは別の用件で」
「用件?」
カイが眉をひそめた。「お前の用件はリタに勝った俺たちをボコボコにしに来た真打ちってことじゃねえの?」
「違いますって! 僕、どんだけ性格悪いと思われてるんですか!」
ハヤトが首を傾げる。「じゃあ、どうしたんだ?」
そこでアムロは、急に言葉に詰まった。顔がほんのり赤くなり、懐から何か紙の束――手紙のようなものをもぞもぞと取り出す。
「おい、それ何だ?」
リュウが目を細める。
アムロは一瞬躊躇いを見せたが、意を決したように口を開いた。
「……僕、結婚するんです」
一瞬、時間が止まったような空気が流れた。
「は?」
カイが素っ頓狂な声を上げた。
「……誰と!?」
ハヤトの顔も目を見開き、固まった。
「ちょ、おま……それマジか!?」
リュウの目も限界まで見開かれた。
アムロは頷く。そして言った。
「だから……前もって、招待したい人たちに、出られない日を聞いておきたくて。もし外せない軍務があれば、ゴップ提督が日程を調整してくれるって言ってたので……」
その瞬間、これまでの模擬戦以上の驚愕の声が、ジャブローの空に響き渡った。
「「「結婚!!??」」」
その夜、反省会は模擬戦の話題ではなく、アムロの結婚話で持ち切りになったという――。
ようやくアムロの結婚式の招待までかけた。何でアムロに結婚の話をさせるためだけにこんなに書いてるんだ俺は?と思いながらここまで来ました。だって結婚させるなら絶対サイド7組は招待したい。でもサイド7組の絡み全然書いてない。ならいっそ連邦がどうやってテムレイを確保してジャブローに連れてきたのか、から書くかと思い書いてたら相当な量になりました。
この先はまた今度書きます。