ジークアクス世界の闇堕ちアムロ 作:gジェネサイコー
第零話: マチュ・運命の分かれ道
ジャンク屋カネバン
昼下がり、薄暗いジャンク屋の裏手。
マチュが足を踏み入れると、見知らぬ女性がソファに腰掛けていた。
――シイコ・レイ。
その名は一部の者には知られている異名を持つ者だった。
「……あなた、誰ですか?」
マチュの問いに、カウンターの奥から女社長・アンキーが現れる。
タバコの煙をくゆらせながら答えた。
「彼女はシイコ。今は“シイコ・レイ”だっけ?旦那は……あの連邦の希望さんだ。」
マチュが驚き目を見張る。
アンキーは構わず続けた。
「子供は放っといて大丈夫なの?」
柔らかな笑みを浮かべ、シイコは静かに答えた。
「……もう手を離しても大丈夫。旦那の父も、可愛がってくれてるわ。一応……実父もね。」
その声音には僅かに過去の影が滲んでいた。
だが微笑みは確かだった。
アンキーは少し目を細める。
「――で、何しに来た?」
シイコの瞳が僅かに鋭さを帯びた。
迷いのない声が場の空気を引き締める。
「赤いガンダムの話を聞いたの。」
「赤い彗星が乗ってるわけないだろ?別人だろうさ。」
アンキーは肩をすくめたが、シイコは表情を変えない。
「……それでもいいの。乗っているのが誰だろうと――私は、止まれない。」
その奥には確かな決意があった。
かつて、戦争の中で――赤いガンダムに乗るシャア・アズナブルに、マブを殺された。
その影は心に一度は葬ったはずだった。
だが、また現れた。
人は違えど、その象徴は目の前にいる。
「私が倒すわ。赤いガンダムは。」
だがそれは――単なる復讐心だけではなかった。
(……赤いガンダムは、あの人の父の技術が使われている。)
夫・アムロの父、テム・レイがかつて手がけた機体が、盗まれ、改修され、再び戦場に現れたのだ。
そして――アムロは気づいていない。
だが彼の奥底には確かに、赤い彗星への憎しみがある。
それが再燃し、もし夫が――ニュータイプの象徴たる夫が憎しみに堕ちるようなことがあれば。
(……そんなのは、絶対に、見たくない。)
だからこそ――自分が倒すのだ。
夫にその手を汚させないために。
そして、自身の中にくすぶる想い――マブのために。
かつての仲間との誓いのために。
「私が行く。私が終わらせる。」
公開されていたクランバトル映像はすでに確認している。
隣のジオンの新型らしきガンダムは大したことはない、赤いガンダムは強敵だが、今の自分ならアレックスでなくとも倒せる。
それに嫌だったのだ。義父と夫が連邦の希望、象徴として作ったガンダムを憎しみを晴らす道具にすることに耐えられなかった。
夕暮れの街角。
ジャンク屋のドアを閉めると、薄橙色の光が路地を染めていた。
シイコ・レイは小さく息を吐き、ふと周囲を見回した。
(……ここはやっぱり、迷いそうね。)
そんな様子を見たマチュが、苦笑いを浮かべた。
「サイド6の地理、詳しくないんですね。……もし良ければ、駅の近くまで送りますよ。」
「……助かるわ。」
シイコは控えめに微笑む。
二人は肩を並べ、ゆっくりと歩き始めた。
しばらく無言が続いた後、マチュがぽつりと問いかけた。
「……旦那さんと、お子さんがいるんですよね?」
少しだけ戸惑ったように視線を横に向ける。
「なのに……戦うなんて。」
シイコの歩みは止まらなかったが、瞳の奥に僅かな影が浮かんだ。
「――逆よ。」
静かに、だがはっきりとした声だった。
「旦那と子供がいるからこそ、私は戦うの。」
マチュは言葉を失い、一瞬だけ歩調が乱れる。
「……どういう……?」
シイコは歩きながら、目線を正面に向けたまま続けた。
「……赤いガンダムの“始まり”は知ってる?」
「確か……」
マチュは記憶を辿るように眉をひそめた。
「赤い彗星が、連邦から奪って、ジオンが強化したって……。」
「そう。」
シイコは頷く。
「その“元のガンダム”――それを作っていたのは、私の夫の父、義父なの。」
マチュは目を見開いた。
「……!」
「だから――赤いガンダムは、夫にとって“仇”に等しいの。」
声に僅かに苦味が混じる。
「……夫には、そんなものを――もう、見せたくないの。」
マチュはしばし言葉に詰まった。
やがて慎重に問いかける。
「……でも……旦那さんは、戦ってほしくないんじゃ?」
シイコは柔らかく微笑んだ。
「そうね。」
短く肯定した後、ふと空を仰いだ。
「でも、“ニュータイプ”って言われてる人たちは――選ばれた力を持っている人たちは、たぶん……両方、得られるんじゃないかって思うの。」
マチュはきょとんとした顔で見つめる。
「両方……?」
「家族を守ることと、戦うこと。その両方よ。」
一拍置いて、シイコは小さく肩をすくめた。
「……私は自分が“ニュータイプ”だとは思っていない。
でも、それでも――諦めたくはないの。」
歩き続ける横顔は、穏やかさの奥に、芯の強さがあった。
マチュはそれを見つめ、胸の奥が少し熱くなるのを感じた。
(……魔女、か。やっぱり、ただの“戦う母親”じゃないな……。)
二人はそのまま、駅への道を歩き続けていた。
学校の授業を終え、マチュはコロニー内の駅へと向かっていた。
いつもの最短ルート、駅の方へ続く通りを歩き出してすぐに――。
(ん……?)
目の前に立ち入り禁止の看板とバリケードが現れた。
舗装工事中、とある。普段は何の工事もなかったはずなのに。
(……こっちの道、今日は使えないのか。)
小さく舌打ちして、別ルートへ。
これだけなら偶然だと思った。
*
駅に着いた時には、すでに少し時間が押していた。
しかしホームに滑り込んできた電車に飛び乗ると、車内アナウンスが響いた。
《前駅で非常停止ボタンが押された影響で、ただいま運行に遅れが出ております。》
(……マジかよ……!)
思わずスマホで残り時間を確認する。
ギリギリ間に合うか、危ういラインだ。
《次の駅まで、しばらく停車します。》
歯噛みしつつ、マチュはシートの端で身体を揺らしていた。
*
電車を降り、ダッシュで乗り換え口を抜けて難民区画へ向かっていく。
その途中、路地の角で声がかかった。
「ちょっと、お嬢ちゃん……この辺、どこかに郵便局ないかしら?」
老婆が道端に立ち、困った顔をしている。
マチュは一瞬迷ったが、ふと顔を見れば疲れた様子がありありとわかる。
(……仕方ない、教えるだけならすぐだ。)
簡単に道を説明して走り出す。
「ありがとうねえ……ごめんね、急いでたのに……」
(……いや、悪いのはおばあちゃんじゃない。……でも、なんでこう次々と……)
*
ジャンク屋のある裏通りに滑り込んだ時には、息が上がっていた。
通信端末が震える。
《世間知らず!?時間ギリギリだぞ!何してる!!》
ジェジーの声が怒鳴りつけてくる。
「す、すぐ行く!!」
(……何かがおかしい……でも今は考えてる暇はない……!)
遅れに遅れ、ようやくジャンク屋の裏格納庫に飛び込んだ時、マチュは肩で息をしていた。
「おせぇっ!!あと数分だぞ!何してやがった!」
待ち構えていたジェジーの怒鳴り声が格納庫に響き渡る。
「す、すみません……でも途中で……」
「言い訳はいい!さっさと乗れ!こっちはフィールド申請通しちまったんだ、今更キャンセル効かねぇんだからな!」
「はいっ!」
マチュは慌ててパイロットスーツに着替え、機体の元へ走る。
ジークアクスのハッチが開かれ、パイロットスーツのまま滑り込む。
ケーンがコクピット前で「推進剤の補給も終わってる。すぐ行けるよ!」
慌ただしいまま、機体はコロニーの外壁ロックの前に。
(はぁ……なんとか間に合った……)
だが気は抜けない。出撃直後からフィールドへの移動開始。
コロニーの外壁を沿って進むルートだ。
視界いっぱいに広がる星の海。その合間に、コロニーの影がくっきりと横たわる。
ジークアクスは滑るように進む。
その時だった。
(……ん?)
影の中――一瞬、何かが光った。
輪郭がわずかに浮かんだ。デブリにしては大きい。
(……なに? あれ……)
マチュの手が無意識に操作パネルへ伸びる。ズームをかけようとした。
『世間知らず!何やってんだ!?フィールド行きが遅れるぞ!』
ジェジーの怒鳴り声が通信越しに飛び込んでくる。
「マチュ!ドウシタ!?」
ハロの声も重なる。
マチュは迷った。見逃せない光景だった。
"物影を確かめる"
"時間がない。無視する。"
☆9評価ありがとうございます! 笠置さん 甘海老少佐さん
☆8評価ありがとうございます MASASIさん
↓
アニメ最終話綺麗に終わりましたね。マチュとニャアンはマブ組んでEDみたいな雰囲気取り戻してくれたし、シャアvsシャリア・ブルはあの世界のニュータイプの頂上決戦っぽくて見応えありましたし。何よりシャリア・ブルがただシャアを盲信するのではなく、やらかしそうなら倒してでも止めるところにイケオジっぷりに磨きがかかってましたね。正史シャアにもこんな忠臣がいれば・・
いや正史シャアなら忠臣倒してアムロとの戦いに夢中になるか。
ジークアクスは完全にエヴァ化してましたが、中の人がアムロだったから良しとしましょう。てっきり期待の大型新人
【蒼月昇】名義で来るのかと思ってましたが、がっつり古谷徹で出ましたね。まあアムロファンとしては嬉しいですが。いっそ引退までアムロをやりませんか?