ジークアクス世界の闇堕ちアムロ   作:gジェネサイコー

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幕間: 結婚式準備5 シイコとの話

アムロは静かに深呼吸をひとつ置いてから、シイコに向き直る。

 

「……さっきの話の続きになるんだけど、改めて大事なことを話したい。」

アムロの声は落ち着いていたが、その奥にはいつになく強い意思がこもっていた。

 

「俺は――母さんのことがあるから、余計に思うんだ。」

 

シイコの目がわずかに見開かれた。アムロが母の話を切り出すとは、少し意外だったのだ。

 

「今はもう亡くなってるから話せる。母さんは……父さんのおかげで地球に住めて、金に困らずに暮らせていた。

でもその上で、愛人を作ってた。俺と父さんがサイド7に上がった時も、自分は地球に残った。理由は……その愛人と一緒にいたかったからだ。」

 

言葉は淡々としていたが、アムロの拳は膝の上でわずかに震えていた。

それを隠そうともせず、ただ真っすぐにシイコを見つめて続けた。

 

「俺は……母さんが亡くなっても涙が出なかった。正せなかった。向き合うこともできなかった。

だから――シイコ、君にはそうなってほしくないんだ。」

 

シイコは黙って耳を傾けていた。アムロの言葉の重さを、しっかりと受け止めているようだった。

 

「ムラサメ博士は、やり方に問題はあったかもしれない。強化人間を作るという道を選んだ。でもそれは連邦の上層部の命令だった。

博士がやらなければ、もっと多くの犠牲が出ていたかもしれない。

それに、あの人が君のことを愛してるのは間違いない。ずっと背負ってきた罪を感じながら、それでも君の父親でいようとしている。」

 

アムロは一拍置き、さらに踏み込む。

 

「君が博士を完全に許せなくても構わない。憎んでもいい。でも……俺は知ってる。君は博士のことを憎からず思っている。

その思いを、大事にしてほしい。母の所業を正せずに終わって、涙も流せなかった俺と違って……君にはきっと、その先の幸せの形を作れるはずだ。」

 

そこまで言ってアムロは息を吐き、真摯な目でシイコを見つめた。

 

「俺は君と博士の幸せな形を、見たいんだ。君がウェディングドレスを着て、バージンロードを歩いていく姿を。

その隣に、博士がいて……お互いにきちんと向き合っている姿を、俺は見たい。」

 

静かな部屋の中に、アムロの言葉が深く響いた。

シイコは目を伏せ、膝の上で手をぎゅっと握ったまま、しばらく動かなかった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アムロの言葉が静かに終わったあと、しばし室内に沈黙が落ちた。

 

シイコは視線を落としたまま、じっと考えていた。

膝の上の指先がそっと絡められたり、解かれたりする。

 

やがてふっと小さく息を吐いて顔を上げた。

その目は潤んでいたが、迷いは少しずつ晴れてきたようだった。

 

「……アムロ、ありがとう。正直、父のことは……ずっと整理がついてなかったんだ。

カマリアさんのことも聞いて、いろんな気持ちがごちゃごちゃになって……でもね。」

 

シイコはそこで言葉を区切り、ゆっくり言った。

 

「ゼロやドゥー、フォウ……彼らを見ていると、わかるの。

昔はともかく、今の父は、本当に変わっているって。彼らの表情が教えてくれるんだよ。」

 

その瞳は、今や柔らかい光をたたえていた。

 

「博士としての責任もある。でも……父親としての気持ちも、ちゃんと持っている。

私が思っていたより、ずっと……変わってたんだなって。

……だったら、私ももう一歩、歩み寄ってみるべきなのかもしれない。」

 

軽く笑みを浮かべて続けた。

 

「バージンロード……歩いてもらおうかな。

ゼロたちの顔を見ていると、きっと父もそれを望んでくれているんだろうって、そんなふうに思えるから。」

 

ふっと目を細めたシイコの横顔は、どこか晴れやかだった。

 

「でも、式の最中に泣き出したりしたら……その時はちょっとだけ怒るかも。」

 

それを聞いたアムロは穏やかに微笑んだ。

 

「わかった。きっと博士にもちゃんと伝えておくよ。」

 

2人の間に流れていた影は、ほんの少し、光に溶けていったようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……わたしはいいけどさ。」

シイコはふと顔を上げ、アムロに問いかけた。

 

「……あの父親は、本当に来るの?」

 

アムロは穏やかにうなずいた。

 

「ああ。来てくれる。……それに、ヴァージンロードも歩いてくれるって言ってくれたよ。」

 

その言葉に、シイコの目が丸くなる。

 

「……式に出るだけならまだしも、そこまで了承させたの!?」

 

少し信じられないという顔でアムロを見つめた。

しかしアムロは静かに微笑んでいるだけだった。

 

シイコはしばらく考え込むように視線を伏せた後、ふっと視線を戻す。

 

「ねぇ、アムロ。正直に言って。……ブレーンは誰?」

 

一瞬アムロが目を瞬かせた。

聡いな、と内心で感嘆しつつも、諦めたように口を開く。

 

「ゼロ達に相談したよ。さすがに俺ひとりの考えじゃ……あの博士をその気にさせるのは難しいと思ったからな。」

 

「ふふん……やっぱりね。」

シイコはどこか満足げに微笑むと、少しだけからかうように続けた。

 

「じゃあ、私の説得にも作戦立てた?」

 

アムロは即座に首を横に振る。

 

「そこはノータッチだ。君はそういうの嫌だろ?だから……俺の本心だけを伝えたよ。」

 

その言葉にシイコは再び微笑んだ。

 

「正解。」

柔らかな声でそう言い、すっとアムロの手を取った。

 

「それなら……ちゃんと届いたよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【翌日  テムレイ博士の研究室  雑談スペース】

 

アムロがゼロ達のいるテム・レイ研究室の一室に入ってくる。

……そのすぐ後ろに、シイコの姿も見えた。

 

「……ん?アムロさんだけじゃなく、シイコさんも!?」

ゼロが思わず身を乗り出す。フォウやリタも顔を見合わせ、全員にわずかな緊張が走る。

 

(これは……説得、失敗して怒鳴り込みに来たんじゃ……)

ゼロ達の間に不穏な空気が流れかけたその時。

 

「応援、ありがとう。」

シイコが微笑んだ。

 

「おかげで私は、ヴァージンロードをあの人と歩くことになったよ。」

 

「おおっ……」

ゼロ達は一斉に安堵の息をつく。

 

「それは何より……」とゼロ。

「よかったぁ〜」とドゥーがほっとしてハロをぎゅっと抱きしめた。

フォウも「上手くいったんだね」と素直に喜んでいる。

 

だがシイコは続けた。

 

「――それはそれとして、リタとフォウは、結婚式が終わってしばらくしたらシミュレーターで特訓だからね。機体はアレックス同士。公平でしょ?」

 

「えぇぇ!?」

リタとフォウが同時に声を上げた。

 

「そんな……お二人の幸せを邪魔しちゃ悪いですし……」とリタが言い訳気味に笑う。

 

「そうそう、それにメインはゼロだから。相手ならゼロがするよ」とフォウがあっさり裏切り宣言。

 

「おい!仲間を売るな!」

ゼロが思わず叫んだ。

 

シイコはにっこり。

 

「ゼロには私、勝てないし。だからゼロにはぴったりな相手が、シミュレーターで相手してくれるよ。」

 

ゼロ達は瞬時に悟った。

ゼロを倒せる相手――そんな存在は、連邦全体でも片手で足りるほどしかいない。

そしてシイコは今や、その頂点の相手に永久フリーパスで何でも頼める立場になっている。

 

ゼロは苦笑しつつ、アムロに向き直った。

 

「そんな……嘘でしょアムロさん。俺、頑張ったんですよ?おふたりのために……」

 

アムロは申し訳なさそうに肩をすくめた。

 

「すまん、ゼロ。俺達にとって君達は恩人になった。だからこそ君達に、これから先、死んでほしくない。

それゆえの――愛の鞭と思ってくれ。カミーユに教えたりしてるうちに、君がさらに強くなるための方法も色々浮かんできたんだ。」

 

その決意のこもった目を見て、ゼロも観念したように苦笑した。

 

「分かりましたよ!俺だってまだまだ死ぬわけにはいきませんからね!胸を借りますよ、アムロさん!」

 

部屋に和やかな笑いが広がった――次なる鍛錬を覚悟しつつも、皆の心はひとつになっていた。




タルルさん誤字報告ありがとうございます。
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