ブルーアーカイブ -LOST MEMORY DISORDER- THE RELOADED 作:かな餅
Carbanium-Xは、SHIELDがかつて極秘裏に開発した高耐性カーボン複合素材。
ビブラニウムに類する衝撃吸収性と優れた熱耐性を両立するものです。
最大10,000℃を超える高熱環境下でも構造保持が可能という特異性を確認済み。
重装兵器・対極限環境装甲・高熱流体遮断材として多岐にわたる応用が想定されていましたが。
情報流出のリスクと、同素材を巡る諸問題を受け、本来であれば存在ごと一時凍結。
現在も製造プロセスはSHIELDによって封鎖・秘匿されています。
なお現在、Carbanium-Xは【AGENT TRIGGER】の装備および身体補強に限定的に使用中。
これ以上の拡散・複製は、あらゆる安全保障上の理由からも許容されるべきではありません。
――以上。
記録者:ROBERT(元運転サポートAI)
右腕を焼かれたところ、接続部として使えるように改造して……。
目が覚めたときに付けられてた左用の義手、少し手を加えて右用に作り替えてみた。
今のところ、これで代用はできそう。
余った右手は……まあ、あとで予備にでも使えるように直しておこうかな。
ロバートが見つけた情報によると、不良たちが使ってた無線機。
あれ、どうやら”受信元”とは違う”受信先”があるらしい。
で、受信先を調べていくと、アビドス砂漠の中で使われてない古びた工場に辿り着いた。
ロバート曰く、そこからかすかに電子機器の反応があるらしい。
何か残ってるっぽい。
生徒が埋められりとかしてなかったらそこに捕らわれてるかもしれないし。
今いるみんなでとりあえず、行ってみることにした。
それと捕虜にした子は縛ったまま
水とちょっとのご飯を食べさせておいていくことに。
〈ドローンを先行させましたが敵シグナルは確認できず、アビサルの反応もありません〉
『……なんでアビサルも?』〈念のためです〉
どこ見ても……砂漠、砂漠、砂漠時々廃墟。
何でこんなとこほんとに守ってんだろう。
「……この車アヤネちゃんがいつも使うやつだから大事にしてね、怒ると怖いから」
『うん、多分大丈夫』
今はもう深夜で本来なら良い子の生徒は寝ないといけない時間。
でも学校としての機能がないとこの生徒ととそもそ学歴中退の2人には関係ないことか。
「こいつなんか今失礼な事考えてそうね」
「ね~」
被害妄想の方が失礼だと思うの、考えてたのは事実だし。
見えてきたのはまあ変わらない他と変わらない廃墟、いや工場。
音的には……いや、何人かいるのか?。
中に入ってみないと断定は出来ないけどここで当たりっぽそう。
〈無線機の発信先はここのようです、微弱ではありますが何かしらの反応も感じます〉
『具体的にその反応がなんなのか分かる?』
〈必要最低限の何かとしかいえません〉
廃れた砂漠の廃工場、中には恐らく従業員じゃない人間が数十人か。
ここで間違いないとして……生徒を洗脳して尚且つ閉じ込めておく場所なら……。
監視カメラか見張りはあってもおかしくない。
カメラがあるならロバートが反応できるけど何もないって言ってる。
見張りが隠れているなら僕の耳で聞き取れるけどそれらしい音はない。
となると妙に大人しくじっとしてる脈拍数人がそれ?、でも生徒っぽいけど。
〈トリガー、私の推測にはなりますが貴方を襲撃した存在について思ったことがあります〉
"AGENT TRIGGER"が外に出ることはなかった。
ロバートが外の巡回を全部遠ざけてたから。ロボットなら誘導して、
生徒なら飛行機をステルス状態にして、見えなくして。
徹底的に存在を世界から隠していた。
だから本格的に
つまり、今の僕を見て“人に近いロボット”だと感じても、すぐには“兵器”だとは思われない。
仮にそう思われたとしても、使われるのはせいぜい銃。
盾を使ったり、人を盾にしたりで、まだこの世界の火器は効かないって断定はされてないはず。
〈私はその技術を持つ組織に幾つか心当たりがあります、ですがこの世界には存在しない〉
『その手の話は量子物理学に理論物理学を読み直さないと付いてけないかも』
〈率直言えばHYDRAがいるかもしれません〉
『さっきいないって言ってなかった?』
想像はしたくないし、考えたくもない。
そもそもHYDRAは確か壊滅――。
『ロバート、”TRIGGER”は戦ってたの?』
〈はい〉
『何と?』〈敵と〉
「トリガー、こっちに扉があったんだけど……施錠されて開けられないから開けてくれる?」
『……うん、任せて』
「ロバートってのにまたなんか言われたの?」『いや大丈夫』
……硬いだけじゃないな、ちょっと新しい。
壁をぶち抜いても良いけど、壁沿いに装置があるかもしれないし素直に扉から行こうか。
〈トリガー、私はこの先に何があるのか想像できます〉「ねえ開けれそう?」
溶接されてるわけじゃない、ただ人力で開くには苦労するって感じの扉。
〈私達はSHIELDではありません、そこに憎悪する悪意があったとしてを覆せるほどの力はない〉
「……無事じゃかったら私、どうしたらいい?」
〈それでもまた選びますか?、因果と因縁に紡がれた物語を〉
『扉を開けて何があってもそれは、その時に考える。未来なんて不安定あるべきだし』
腕に力を込める。
金属同士がこすれる、低い唸り声のような音が辺りに響くから音が耳に障る。
ガコン……と、少しだけ、開いた。
『……点滴?』
ぽたって何かが滴り落ちる音……呼吸も聞こえる、そこに人が……。
監禁された場所で点滴みたいな音?、医療室でもあるのかな?。
HYDRAがいるかもしれないってことは……いや、まさか。
空いた隙間に無理にでも身体を押し込んで音がする方向に向かう。
「え?トリガー?!」「あんた勝手に……」
扉の向こうには下へ続く階段、さらに先にはまっすぐに長い廊下。
左右には等間隔で部屋があっておく部屋からそれぞれの部屋に赤いチューブが伸びてる?。
まず右手の扉から……。
『一部屋に3人、監禁部屋にしては扉が軽いし鍵も……』
目に入ったのはまず病室あまり変わらない内装とベットの上で寝かされてる生徒。
血を抜き取られてる?、いやそれだけじゃない。
眠らされて点滴と……赤い液体を中に入れられてる?。
つまり血液パック?、その血液パックには常に補充されるように奥の部屋から血が運ばれ――。
『……はっ?』
いや、これは何の意味があるの?。
血を取って血を入れてる?。
実験?、医療行為?。
余った血は……隣のタンクに溜まって行ってる。
生徒は軽くゆすっても起きない、脈は正常。
「……なにこれ?、どうなってんの?」
手前から三番目の左手の部屋、動いてる子が居る。
「ねえ、これ……何?」
『……わかんない』
三番目の扉も同様で中に……チューブから何か吸ってる?。
『君、こっちが分かる?、何してるの?』
返事はなくてとにかく無心、吸っているものは切断されたチューブからあふれ出る血液。
なんでそんなもの……起きた瞬間飢餓感にでも襲われたから?。
「……っ?!、何してんの?……ねえ……アマネ。」
『探してた子、なんだ。この子が』
「うん……とりあえず、私が探してた子は見つけたから……先に戻っててもいい?」
正直ここに居たいかといわれたらいたくないし長居もしたくない。
「ほら、いくわよ……ほらこっち」
「っ……やだ」
「やだじゃなくて……ちょっと。」
「やだ、やだやだやだ……っ」
細い声が喉の奥から漏れ続ける。
会話にならない。
だけどはっきりと“拒絶”だけは伝わってくる。
手ば伸ばすと背を壁にこすりつけるようにして逃げる。
白く濁った目はどこも見ていないのに、全身だけがひくひくと脈打ってる。
ただ逃げてるだけじゃない、何か持ち出してる?。
「ちょっと、アマネ……あんた、わたしのことわかるでしょ?」
声をかけながら肩に触れると、アマネは悲鳴にもならない叫び声を上げた。
叫び声が耳に障る、脈はずっと静かなのに。
「やだっ……や、だ、やめてぇ……やだぁ……」
壊れた人形みたいに、拒絶の言葉だけが壊れたオルゴールみたいに繰り返される。
「うるさい……ちょっと、アマネっ……この……こっち見ろッ!!!」
ラブは怒鳴って、揺さぶって、それでもアマネは何も感じてない。
のっぺらとした顔で喉を震わせながら、薄く泣き始めた。
血管が浮かぶ細い腕を掴むと、アマネは引きちぎるようにそれを振り払う。
爪の先がラブの頬をかすめて、引っかいたような傷が滲む。
「お前、ふざけ……っ!、アマネ、アマネ!!お願いだから……」
涙声に変わった。
必死に押さえつけながら、その体を抱きしめるけど、アマネは痙攣するように暴れ続ける。
チューブから血液があふれて床が赤くにじんでる。
持っていたアマネの注射器の中には……黄色い、液体。
薬剤と血の匂いだけが、鼻に突く。
「……見てよ、こっちを……見てよ、いつもみたいに」
抱きしめている腕の中にあるのはもう“生きてる肉”と何ら変わらない。
『ねえ、ロバート。どうして彼女はこんな事になったの?』
〈そういう人間がいたからです〉
『この世界じゃ殺しはダメなんだっけ?』
〈銃で人を撃つと撃った人は裁かれません銃は裁かれません〉
「……ねえ、トリガー。これなに?」
『ああ、ホシノ何してたの?』
「色々見てたんだけどさ、これは。なに?」
『人間の愚かな一面、全員は運べないけどどうするのホシノ?』
「……」
『あっ、これ他の自治区の制服かな。だったら他の対策委員会みたいなのに通報してくれる?』
「……トリガー、大丈夫?」
『この子達よりは』
とりあえず、奥の部屋に行こう。
全てのチューブが繋がってる先。
奥は薄暗い感じで扉も何もないけど、代わりにカーテンで仕切られてる。
〈他の自治区に動くように通報はしておきました、時期に離れた方が良さそうです〉
『ありがとう、でも奥は一度見ておきたい』
奥の方に進んでみると、微かに……聞こえる。
小さな脈の音と微かな呼吸音、弱ってる?。
『……男?』
いたのは想像より大柄でガタイのいい人間、近づいても起きる気配はない。
ボロボロのコートでフードを被ってるから顔は分からないけど……片腕が義手?。
この施設の番人か何かか?。
……チューブはこいつから血を抜き取ってる。
純粋に血液型が合わないと危ないとかあるからまずこいつの血液型はABと仮定しよう。
ふざけずに真面目にみるとしたら義手が気になるかな。
義手に何か特徴はあるかな、金属の質感はそのままにこれは……ウィンターソルジャーみたい。
てかまんまウィンターソルジャー?。
ボロボロになったコートの右袖は破けてるからわかり易く義手が露出して――。
この肩についたマーク。
口が開いた髑髏マークの後ろにマグナムのシリンダー。
どこか既視感がある。
顔は?フードの下には黒い仮面……なんか知ってる気がするけど仮面を取ってみ――。
『……ウルフ?』
『……』
……”AGENT WOLF”なんでこんなとこに?。
てか何で血を抜き取られて……いや、この格好は?。
SHIELDを引退してから”ナイトリベンジャー”になったんだっけ?。
〈……トリガー、今すぐ離れるべきです〉
『いや、こいつは元SHIELDだし……助けられるなら』
〈裏社会で暗躍している殺し屋の特徴である肩のマークが合致しています〉
『……それは確かにまず――』
かすかに聞こえた呼吸音が、唐突に変わった。
それは、ほんの一瞬の出来事だった。
血のにおいと機械油の混じった空気の中でウルフの顔をもう一度見ようとした。
その瞬間――バチン、と乾いた破裂音のような何かが耳の奥に響いた。
直後、視界がぐにゃりと歪んで理解が追い付かなかった。
考える暇なんてなかった。
視線を下げる前に、義手の金属が目の前に閃光のように走った。
次に気づいたときには、僕の体は空中。
背中が床に叩きつけられる。
いや、壁?。
わからない。
視界が、真っ白になった。
目を開いてるのに、光がない。
何も見えない。
これは、不味い。
『ロバート、視覚機能を失ったそっちの目がまだ見えてるなら指示を――』
立ち上がる前に蹴飛ばされて壁に押し付けられてるのは分かる。
ロバートの声はしないからこっちの仮面が落ちたか壊れた。
痛覚が無いおかげで痛みはないけど本当に不味い。
手の感覚がない分こいつを押し返せず一方的に殴られ――。
「トリガーッ!!!」『ホシ――こ、な――で』
声すらうまく出せない、目は潰された。
頼りになるのは耳……。
「ちょっと……あんたその目――っ?!」
『……め、に――な、って』
「……」
「ッ……こいつ何!?……」
今戦ってるのはホシノかな、でもそろそろ変わってあげないと危なさそう。
「今あいつが盾ごと押しつぶされそうになってる!まずは……えっと、とりあえずいって!」
タックルは成功、次は?。
「”トリガー”、来るわよッ!」
“来る”、右。
反射的に身を沈める。
風が耳元を引っ掻いて、風圧が頬を撫でる。
拳が空を裂いて、僕のいた場所の壁が爆ぜた。
コンクリ片が飛ぶ痛くはない。
感覚が死んでるから。
細かく、軽い音、奴のブーツが左へ回る。
「真左!」
腰を軸に、肘を引き絞って殴る。
拳が金属にぶつかった感触が肘の骨に響いて、同時に体が吹き飛ばされる。
防がれた、カウンター。
床に転がる。
でも、地面に手をついてすぐに跳ね起きる。
そろそろこの状態にもなれてきた。
次の一撃が来る前に、“先”に動く。
「正面!距離5歩!、上からッ!」
すぐさま右前方へスライド、空気の揺れと空気の圧が背中をなぞる。
「七時の方向ッ!そのまま突っ込め!」
声と同時に、義手ごと突き出す。
なにかに当たった。
重い、肉じゃない、金属の塊。
ウルフの胸板か、反動で義手が軋む。
そのまま腕ごと押し出す、相手の息が詰まる音。
小さく、少し後ろへ後退。
「くる!低い体勢で!」
前に向かって盾を投げる。
風を裂いて、金属が弾かれる音、防がれた証拠。
でも、狙いはそれじゃない。
姿勢は奴よりも低い。
ちょうど膝の高さ、真っ直ぐ突き進む。
盾を目くらましにして、その影を追うように肘を構えて――。
「カチ上げろッ!!!」
……どうなった?、手ごたえはあった。
次は?、何処から来る?。
倒した?それともまだ立ってる?。
『……ぁっ……て、てき。は?』
「トリガーに吹き飛ばされた瞬間その勢いで逃げちゃったよ……ありがとう、助けてくれて」
『……い、き、てる?』
「ラブちゃんもここに居る子もみんな無事あと……」
〈仮面の原型は亡くなりましたが通信はできます〉
どうやら……一難は凌げたらしい。
〈速球に此処から立ち去ることをお勧めします〉
『……ラブちゃん、アマネちゃんは?』
「先に車に乗せてあるわ、それで他は……」
『いや、一旦戻ろう……流石に今日は暴れすぎた』
喉の調子は戻って身体の調子はそうはいかない、とりあえず……。
残った子達は後から来る子に任せて帰ろう。
調べたいことも沢山ある。
【トリガーのメモ:AGENT WOLF】
かつてSHIELDの最高戦力と言われたエージェント。
とある事件からSHIELDを脱退し裏社会で活動していたらしい。
多彩な戦闘センスと幅広い知識から弱点はないと思われていたそうだけど。
唯一”騎兵隊”とエージェントには逆らえないみたい。
特定の人以外の命令もなかなか聞かないため”野生の狼”と呼ばれることも多々あったみたい。
でも結果として沢山の人と世界を沢山救ってる。
もし仲間ができるならウルフみたいな仲間が欲しいな。