ブルーアーカイブ -LOST MEMORY DISORDER- THE RELOADED   作:かな餅

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【トリガーの記録:ロバート】

 目覚めた時に足元にいた喋るガラスの破片、僕が纏ってたスーツの一部でやけに高性能なAI。

 僕を導くのが仕事らしいけど肝心なことは何も教えてくれなくて外に出て何かしようとすると、なんとなく嫌そうな様子を見せてくる。


 因みにガラスの破片を壊しても喋る口減るだけで完全には静かにならないみたい。




銃と兵器と居場所の話

 身体の不具合が少し落ち着いてから、ようやく冷静になって、自分が置かれている状況を考え始めた。

 

 

 

 まず記憶がめちゃくちゃだ。

 

 

 

 まるで複数の映像が何重にも重なって同時に再生されているみたいで、どれが本物で、どれが自分のものなのかもよくわからない。

 

 

 

 ちゃんと“見る”ことすらできない。脳のどこかで“ある”と分かっていても、それを掴もうとすると指の間から零れていくような感覚。

 

 

 

 恐らく、取り込まれた記憶が多すぎて、まだ頭の中で整理がついていないんだと思う。

 

 

 

 情報の渦の中で、自分という存在がどこにいるのかも見失いそうになる。

 

 

 

 次に自分自身について。  

 

 

 

 これは、わりとすぐに気づいた。自分は“人間”じゃない。

 

 

 

 それは感覚の違いで、説明できないけれど確信があった。

 

 

 

 ただ、“ロボット”だと理解するには、少し時間がかかった。

 

 

 

 身体の重さや、軋む関節、皮膚の下の硬質な感触。

 

 

 

 そういうもの確認していくうちに、ようやく自分の姿を受け入れざるを得なくなった。

 

 

 

 でも、それよりもずっと気になっていたのは――。

 

 

 

 

 ”自分はなぜ、ここにいるのか?”

 

 

 

 

 ”そもそも、自分は何者なのか?”

 

 

 

 それだけがずっと気になってる。

 

 

 

〈……識別名変更、トリガー〉

 

 

 

『……下?』

 

 

 

 

〈トリガー、私を拾いある場所へ向かってください。そこで貴方の損傷具合を確かめます〉

 

 

 

「……だれ?、てか何?」

 

 

 

 

〈貴方の道を示すナビのような物です〉

 

 

 

 

「じゃあ僕の一部?」

 

 

 

 

〈部分的にそうでもあります、貴方のスーツは完全に破損しましたが〉

 

 

 

 

 

「ああ……息苦しいこれのこと」

 

 

 

 

 

 

 ロバートについて分かっていることは少ない。

 

 

 

 

 

 けれど確かなのは、こいつがネットワーク上を制限なく行き来しできたり。

 

 

 

 

 

 高度な分析能力と、人間のように柔軟な思考を持つAIだということ。

 

 

 

 

 

 どうやら、最近までは僕が纏っていた装甲、その頭部部分に搭載されていたらしい。

 

 

 

 

 

〈完全には難しいですが手遅れではなくなります〉

 

 

 

 

 

 自分の手元と、交互に光を帯びたガラス片(ロバートを)見比べる。

 

 

 

 

 

 まあ、嘘は言っていないだろうなって、そんな気がした。

 

 

 

 

 

 けれど、この身体の状態を見るに、単なる経年劣化ではないのかな。

 

 

 

 

 

 装甲は封じ込めるためのものではなく、あくまで身を守るための防御手段。

 

 

 

 

 

 重く感じるのは単にその質量のせいじゃない、稼働部が異常なほど錆びついてる。

 

 

 

 

 

 そして、装甲と身体のそれぞれの状態を照らし合わせると、ある違和感が浮かんできた。

 

 

 

 

 

 損傷しているのは間違いない。でも、それだけじゃない。明らかに何かが欠けている。

 

 

 

 

 

 たとえば左手。

 

 

 

 

 

 表面は妙に綺麗だったけど、実際には人間の手に似せて皮膚のようなゴム素材を被せた義手。

 

 

 

 

 

 結構不出来な出来栄え。

 

 

 

 

 

 感覚はまったくない。握ることはできても、その動きには明らかな遅延がある。

 

 

 

 

 脚部の装甲が残っている理由もすぐに察せられた。

 

 

 

 

 

 本来の脚が存在しない、スーツの脚部を代替パーツとして再調整し、固定してあるだけかな。

 

 

 

 

 目に関しても同様。

 

 

 

 

 左目は問題なく見える。だけど右目は……見えるはずの瞳があるのに、視界には何も映らない。

 

 

 

 

 動かすこともできず、感覚もない。おそらく義眼だろうね。

 

 

 

『……バランスが取りずらい、これは何とかなるの?』

 

 

 

 

「ん、肩貸す?」

 

 

 

 

『うん……ありがと』

 

 

 

 

「ん、お礼は後で――」

 

 

 

 

『お礼のため?……じゃあ、何か探しておかないと』

 

 

 

 

「……ん……後でいい」

 

 

 

 

 ロバートの指示に従って施設の外へ出て、シロコがロバートを見つけたという倉庫へ向かう。

 

 

 

 中は、彼女の言った通り何もない。広々としていて、がらんと静まり返っている。

 

 

 

 けれど、奥の方。

 

 

 

 ほんの少し何かが引っ掛かった。

 

 

 

 景色が、妙に歪んで見える。

 

 

 

 目の焦点が合っているはずなのに、そこだけ違和感がある。

 

 

 

 まるで空間に、うっすらと膜が張られているような……そんな感じだった。

 

 

 

 

〈もっと近くへ〉

 

 

 

 

「どこの?」

 

 

 

 

『多分あの奥かな』

 

 

 

 

ゆっくり奥に近づきながら、まだ肩に残っていた装甲を外して、試しにその違和感のある場所に。

 

 

 

 向かって投げてみる。

 

 

 

 コツンって。

 

 

 

 装甲は何かにぶつかるような音を立て、目には見えない“何か”に跳ね返された。

 

 

 

 

 となると……これは。

 

 

 

 

〈接続を確認、迷彩を解除〉

 

 

 

 

 少しずつ歪んでいた景色が色を帯びていき、その中から姿を現したのは輸送機だった。

 

 

 

 SHIELDの試作機。

 

 

 

 ゼファーワンの広さと、クインジェットの機動性を両立させた……そんな理想の完成形が、この機体らしい。

 

 

 

 ただ、その外装はひどくくたびれていた。

 

 

 

 ”使い古した”っていうよりも、どちらかと言えば――無茶をし続けてきたような。

 

 

 

 そんな傷跡だった。

 

 

 

 

 

 〈ハッチを開閉、そのまま中のポットへトリガーを〉

 

 

 

 

 言う通りに進んでポットの中に、そこから……多分数分?。

 

 

 

 たしか……それくらい意識を失って――。

 

 

 

 

『……終わった?』

 

 

 

 

 

〈検査は終了しましたが、今の設備では修復が不可の部位が多数あります〉

 

 

 

 

 

『まあそれは分かってるけど……』

 

 

 

 

〈なので欠けた部位を補うシステムを貴方の中に組み込み正常に動けるようにはしてみます〉

 

 

 

 

今も、自分の身体に何が組み込まれているのか、詳しいことは分からない。

 

 

 

でも少なくとも、うんおそらく、体幹の制御機能と、体温を感じるための神経は遮断されていて、その代わりに、視覚的に体温の数値が見える機能が組み込まれているみたい。

 

 

 

簡易的な赤外線カメラみたいなものだと思う。

 

 

 

『ねえ、ロバートは僕に何をやらせようとしてるの?』

 

 

 

 

〈時期に分ります〉

 

 

 

 

『……これ、僕についての資料?』

 

 

 

 

 断片的ではあるけど、恐らく研究資料らしきものが床に散らばっていた。

 

 

 

 人間に近づけることの利点とか、この“計画”の目的らしきことが書かれていたけど。

 

 

 

 勝手に参考にされたアウフが、これを読んだらどう思うだろうな、なんてことも書かれてる。

 

 

 

 

【"Another Baby"】

 

 

 

 

 仮想空間で電子生命体の“幼体”を育成するプロジェクト。

 

 

 

 

 その育成方法は、対象とする人物の記憶をまるで自分の記憶のように追体験させる。

 

 

 

 

 その人物が人生で得た技術や知識を“体験的に”学ばせる、というものらしい。

 

 

 

 

 でも懸念点もあって。

 

 

 

 

 複数の人生記憶を統合すると、記憶が混雑して、人格が破綻する恐れがある。

 

 

 

 そう、書かれてた。

 

 

『この資料だと僕って、失敗作みたいだね?』

 

 

 

 

〈そうではありません〉

 

 

 

 

『じゃあ何?、スクラップ?』

 

 

 

 

〈何も考えずとも時期に分ります〉

 

 

 

 

『その答え飽きた』

 

 

 

 

〈他に人がいますよ〉

 

 

 

 

「ん」

 

 

 

 こんな感じで喋ろとしないし、この素体について何か言うとちょっとした反応は示す。

 

 

 

 

 まあこの時は産まれたてだったし、僕の事について他に知っているのはシロコ、だから話してみてさっき話した一連の流れを知ったんだ。

 

 

 

「ん、他に何が知りたい?」

 

 

 

  聞ける情報は聞いた、歩けるようにもなった。

 

 

 

 

 さて、何も喋ってくれない堅物といても楽しいか?。

 

 

 

 

  答えは明白。

 

 

 

『じゃあ、この辺りを案内してくれる?』

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 

『ほら、リハビリもかねて。普通に歩くの初めてだけど』

 

 

 

 

〈トリガーそれは言わば応急処置です、不用意に動くことは――〉

 

 

 

 

『ロバートがお礼を用意してる間にね』

 

 

 

 

「ん……!、分かった行こう。」

 

 

 

 

 

〈……〉

 

 

 

 

 

 そう思って外に出たのはいいけど、結局何も考えてなかったからどうしようかと思ってた。

 

 

 可愛い子とデートできるのは嬉しいけど、場所が場所(砂漠)だしね。

 

 

 

『何もないね』

 

 

 

「ん」

 

 

 

『シロコはどのくらいこの砂漠を知ってるの?』

 

 

 

 

「わかんない、アビドスは広いから」

 

 

 

 

『じゃあ、退屈するには早いか』

 

 

 

  

 本当に何もないし、聞く限りただ広いだけの砂漠

 

 

 

 

 それでもその時はちょっと楽しかった、傍に誰かいたからかな。

 

 

 

 

「建物がどうしてアビドスに捨てられるか知ってる?」

 

 

 

 

『さあ、生まれたばっかりだし。困ってるの?』

 

 

 

 

 

「ううん、ただ……大事な場所だから知りたい」

 

 

 

 どうして建物が捨てられる?、それは今も分からない。

 

 

 

 

 

 人為的?それとも自然現象?、悪意がある?それとも仕方なくて?。

 

 

 

 

 そこに言い訳があるのかすら分からない、でも僕はなんとなくそれを後に知ることになる。

 

 

 

 

 本当になんとなくだけど、納得する理由。

 

 

 

「ん。そろそろ戻るべき」

 

 

 

 

『どうして?』

 

 

 

 

「良く調べ回ったからあれが大体どこにいるのかよくわかる」

 

 

 

 

『あれって?、何かいるんだとしたら……特に何もいないと思うけど……』

 

 

 

 

「ん、見えなくてもいる時はいる。帰ろ」

 

 

 

 

『……?、その捨てられるって言う現象のついでに何か来たとか?例えば僕みたいなロボット?』

 

 

 

 

「近いとは思う、でも……あれは害獣」

 

 

 

 

 

『ロボットの動物?』

 

 

 

 

 

「ん、たまにだけど。そういうのがいる。近づかなければ安全だけど時々歩き回ってる」

 

 

 

 

 

『それ……えっと、なんだっけ?』

 

 

 

 

「銃?」

 

 

 

 

『そう、なんでシロコは銃を持ってるの?害獣を殺すため?』

 

 

 

 

「……ううん、学校を守るため……他にもあるけど

 

 

 

 

『砂漠の中にある学校っていうのがそんなに大事なの?』

 

 

 

 

 

「うん、”居場所”だから」

 

 

 

 

 

『そうなんだ、シロコってあれしないね。なんだっけあの……楽しいとか嬉しいを教えるやつ』

 

 

 

 

 

「笑顔?」

 

 

 

 

 

『ああ、そうそう……疲れてるから笑顔にならない?』

 

 

 

 

 

「元々こんな感じ、でも心はちょっとだけ笑ってるかも」

 

 

 

 

 

『楽しいってこと?』

 

 

 

 シロコはあんまり笑わないけど、それはクールってことらしい。

 

 

 

 

 僕も笑わないからクールなのかな?。

 

 

 

「そう、こういう場合は……わくわく?」

 

 

 

 

『何を楽しんでるの?』

 

 

 

 

 ちょっと歩いて会話して、堅物(ロバート)のお堅い口をどう崩せばいいのか?。

 

 

 

 戻る頃には思いつくいいなと考えるふりをしながら、次に何を聞こうかと考えるのが楽しい。

 

 

 

 

「新しい出会いとか?」

 

 

 

『しゃべるガラスの破片は確かに珍しい』

 

 

 

「ん、それは”見つけた”。私が言ってるのは……”出会った”」

 

 

 

『そっか。』

 

 

 

 

 目覚めてから、いろんなところが壊れてるって言われてた。

 

 

 

 感覚もぼやけていたけど内部のシステムは、少しずつだけど回復してきているみたいだった。

 

 

 

 視界はクリアになってきていて、今ではかなり遠くまで見通せる。

 

 

 

 本来の性能に近づいてきたのかもしれない。

 

 

 

 体温は感じない。

 

 

 

 それでも風が肌をかすめていく感覚や、瓦礫に触れたときのざらつき。

 

 

 

 まるで本当に生きてるみたいだった。

 

 

 

 

『そうだ、これ聴きたかったんだ』

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

『どうして僕にマフラーを巻いたの?』

 

 

 

 

 その時はあんまり気にしてなかった、後ろからちょっとずつ聞こえる……足音?忍び足に踏まれる砂の音?。

 

 

 

 

 ちょっと重たい金属の、関節部分が稼働して、生物の上顎と下顎の牙がかすかすに触れあう音。

 

 

 

 

「ちょっと待って、あと頭も下げて」

 

 

 

 

 

『どうしたの?』

 

 

 

 

 

 後に知る事になるその音の正体は、アビドス砂漠に捨てられた害獣。

 

 

 

 

 

 ある世界でかつて、すべてを支配しようと暗躍した”ヒドラ”が残した負の遺産。

 

 

 

 

 

 元の名前からわかり易く言い換えて”自立式侵略兵器アビサル:パンサー型”。

 

 

 

 

「私が言っていた害獣はあれの事、あれはまだボロボロで動きも遅いからまだ大丈夫」

 

 

 

 

 

 

『……待って、多分……その銃で破壊できる物じゃない。なんだっけな、そう。アダマンチウム……正確にはセカンダリー……アダマンチウム?、とにかくすごく固くて表面からの――』

 

 

 

 

 

「……知ってるの?、あれの事」

 

 

 

 

 

 視覚、触覚、聴覚ときて次は絡まった記憶が解けてきた。

 

 

 

 

 SHIELDの科学者”レオポルド・フィッツ”、驚くことに僕の中には生みの親の記憶があったんだ。実際には記憶よりもその知性が目的で組み込まれたらしいけどね。

 

 

 

『……分からないけど知ってる、今はそう言っておく』

 

 

 

 ”ABYSSAL TYPE:PANTHER”、弱点を執拗に調べた記憶から割り出せる物理的な弱点は殆どないと言える。

 

 

 

 

 弱点に基づいて倒すなら超低温で冷やすか、内部からEMPで爆発させてコアショートさせるか。

 

 

 

 

 現状に思い出せた弱点はそれだけ、シロコは見たところEMP系統の武装はもってなさそうだし砂漠は夜になると夜間はマイナス18度ほどになってアビサルの活動が鈍くなるには十分。

 

 

 

 

 

 けどこれなら逃げた方が身の安全を保障するには際も早い。

 

 

 

 

『あれを倒したい理由は?』

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

『身の保証よりもどうしてそれを優先するの?』

 

 

 

 

「私たちの自治区で、危ない物がある。それで私はこの自治区に住んでる生徒」

 

 

 自治区には学園があって、その学園には生徒がいて、その生徒は自治区を守る。

 

 

 

 少なくともアビドスはそう。

 

 

 

「それを何とかするのは私の仕事だから、やらないといけないだけ」

 

 

 

 

『……』

 

 

 

 正体が分からない自分・見知らぬ世界・ガラクタの身体・生き物じゃない・普通とは程遠い。

 

 

 

 

 混雑とした記憶・私利私欲で生み出された兵器・命ではなく道具・守護者ではなく殺戮者。

 

 

 

 

 狂ってしまった科学者・人間の偽物・作られた記憶と心・孤独・誰でもない。

 

 

 

 

 手に負えない超人(ヒーロー)を殺すために作られた兵器。

 

 

 

 

”世界危機対抗兵器”としてエージェント・トリガーを再現したLMD(LIFE MODEL DECOY:):SSM( SUPER SOLDIER MODEL)

 

 

 

 

『ねえ、なんで僕にマフラーを巻いたの?。自分のことすら知らないロボットなのに』

 

 

 

 

 

 

「どこから来たのか自分でも分からない暴れん坊にマフラーを巻く人が居たから参考にした」

 

 

 

 

 

『その暴れん坊はどうなったの?』

 

 

 

 

 

「ちょっと大人しくなって……でもちょっとやんちゃもして、ん。時々その人を真似してる」

 

 

 

 

『そっか』

 

 

 

 

「ん、あれもそろそろ近づいてきたから――……トリガー?」

 

 

 

 このアビサル、見たところかなり壊れてるのに、まだ動いてる。

 

 

 

 それだけでもちょっと異常だ。

 

 

 

 たぶん、もともとは何かの実験に使われてた試作機。

 

 

 

 こっちの世界に飛ばされたあとに、偶然起動しちゃったんだろうね。

 

 

 

 でも、もし他にもアビサルが目撃されてるなら?。

 

 

 

 これよりも“新しくて、ちゃんと動くやつ”も、この世界のどこかにいるってことになる。

 

 

『大丈夫』

 

 

 

 特に脚のあたりがひどい。

 

 

 

 

 もしかして、耐久テストか何かで無理やり負荷をかけられてたのかもしれない。

 

 

 

 

 でも、兵器ってそういうものだ。

 

 

 

 

 どう扱われようと、ただの道具。壊れても、もし痛がっても、誰も気にしない。

 

 

 

 そりゃそうだ、これはペットでも動物でもない。

 

 

 

『シロコはこれ(アビサル)を倒せる兵器があるなら欲しい?』

 

 

 

 

「トリガー?……」

 

 

 

 

『色々考えたけどさ、お礼で挙げられるものを僕もってないんだよね』

 

 

 右手でアビサルの首元をつかむ。

 

 

 

 関節のかすれた音が耳元で鳴る。骨ではなく、ねじれた金属の軋み。

 

 

 

 重力を無視して、そのまま上へと持ち上げる。

 

 

 

 バランスを崩した脚がばたつき、乾いた砂の上で爪を立てて、でも抵抗には程遠い。

 

 

 

 指に力を込める。

 

 

 

 ぎ装甲が悲鳴を上げて、鈍い破裂音とともに何かが外れた。

 

 

 

 赤く点滅していた目がゆっくりと光を失って、金属の亡骸になった。

 

 

 

 それで終わりだった。

 

 

 

 ひとまず頭部と胴体の接続を断てば活動は止まる。

 

 

 

 握力はまだ正常……十分。

 

 

 

『だからさ。僕が君の武器になるって言うのはどうかな?』

 

 

 

 

「……」

 

 

『君みたいに行き場所もないし、やりたいこともない。他人の記憶を植え付けられてどう生きればいいのかもわからない。でも僕は”兵器”だから危ない物』

 

 

 

 

 

 とりあえずここに居るには役に立たないと、そうすればきっと……そう考えてお願いしてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『でも、誰かが正しく扱ってくれるなら、兵器でも……それ()と一緒だよね』

 

 

 

 

 

 この時思っていたことは確か、自分がただに手に持ってる金属の亡骸と一緒になりたくないって……そう思ってたかな。

 

 




【トリガーの記録:アビサルの試作機】
 
 ある世界の組織によって作られた侵略兵器の試作機。

 出会った個体はとてもボロボロで恐らく命令通りを実行するために行動をしていたみたい。

 僕もこうならないように気をつけないと
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