ブルーアーカイブ -LOST MEMORY DISORDER- THE RELOADED 作:かな餅
たった5人で学校を運営し、長期にわたってヘルメット団等の侵略者とも戦ってきた猛者。
ただ人数が人数だけに、他の主要学園と違って企業や組織といった政治的問題とか。
数の暴力には満足に対処出来ないみたい。
だけど
「全くしつこい奴らだな……戦車まだなのか全く、そろそろ来ても――」
まず銃を奪って、確認。ARタイプ。
スナイパーライフルを持っている子はいないらしい。
分解。簡単な構造。安全装置、バレル、トリガー。
どれも大した作りじゃない。
ふと顔を上げると、相手がようやく僕に気づく。
「……?……?!っ、お、お前……誰だ!?なんで……てか戦車は……」
返事はしない。
代わりに、腰に付けていたグレネードを1個貰う。
ピンを抜く。
「ちょっ――」
逃げようとしたから、片足を踏んで止めた。
動けないように、ただ、静かに。
グレネードを手の中に収める。
掌を閉じて、そのままカウント開始。
『3・2・1』
目の前の生徒が固まる。
ドン、と低く、短く、内側から響く音。
手のひらの中で破裂した衝撃。
指が少し焼ける。
けれど、関節はちゃんと動くからまあいいとしよう。
煙が薄れていく中、目の前の相手は声も出せないまま固まっていた。
『……で、どうする? 次は君の選択。』
「……う……撃てぇッ?!」
『ああ……ダメだった。』
赤い服の子が前に出て盾になってくれたから、そのまま一斉射撃をやり過す。
近くの生徒に向かって前進。
ついでに、その赤い子の腰についてたグレネードを一本、拝借。
固まってる連中の方向に投げてみたら悲鳴が聞こえた。
うん、多分うまくいった。
「う、打ち方やめ!あいつ、リーダーを盾に!」
銃で死なないって分かってても、どうやら撃つのは気が引けるらしい。
さっき盾にした子は、そのままロッカーに沈めておいた。
次は近くの子を掴んで、別の子にぶつける。
単純だけど、効果はある。
その次はどうする?、素手でも交戦を続けるかもしれない。
だったらその時は……。
「トリガー」
『なに?』
「もうお終い、みんなもう戦意が喪失してる」
『みんなまだ武器を持ってるけど』
「……私達にとって銃は当たり前だから」
『……そっか、銃社会だしね』
確かに――銃を持ってはいるけど、誰も構えてないし、撃つ気配もなかった。
言われなきゃ気づかなかった。
シロコに止められて、やっと分かった。
戦車は砲塔だけ潰して放置。
後方の10人は一時戦闘不能。
そのうち半数は武器も使えないように破壊した。
まあ、何も考えずにやったわりには、やりすぎたかも。
「いつからそんなに動けるようになったの?」
『まあアビサルと最低限戦えるように』
「……うへぇ〜おじさんびっくりしたよぉ、シロコちゃんのボーイフレンド結構強いんだねぇ!……本当に君を作った人は凄いなぁ、だれ?有名人?」
『正義に取り憑かれた大人』
不良も、対策委員会の子たちも武器は使えてる。
でも、アビサル相手に“通じる”手段は、まだ持ってない。
知識を教えるだけじゃ、意味がない。
やり方だけじゃ。
「とりあえずぅ……?、学校を守ってくれてありがとうございます!トリガーくん!……さん?」
『別に個人を表す名前じゃないんだからトリガーで良いよ』
「……え?そう言えばあんたってキヴォトスの出身じゃないの?どこから来たのよ」
「……この足……もしかしてさっきの跳躍はこれで……」
……銃撃戦があったとは思えないほど緩い雰囲気、1人は確実に表情が少し変わったけど他は……怖がるどころか年相応に興味を持ってるみたい。
『アヤネは科学好き?』
「えっ?……ええと、まぁ……ぼちぼち」
アビドス廃校対策委員会。
“学校を維持している”という事実だけで、彼女たちの力量はある程度推測できる。
さっきの不良たち、20人規模の武装集団を追い返せるだけの力がある。
それも、日常の延長で。
単に数や装備だけじゃない。
暴力に慣れているかどうか。
緊張の場で躊躇せず行動できるか。
それだけで、一般人との間には明確な差が生まれる。
見ず知らずの傭兵を雇って使うよりも、
実力があって、立場と場所を持っていて、少なくとも信用できる顔がある。
そういう組織と動く方が、生存率は高い。
僕のような“道具”にとっても、それは無視できない条件。
衝突が一段落して、彼女たちは何事もなかったかのように後片付けに入っていた。
その空気に合わせて、僕もロバートから受け取った情報を共有することにした。
代わりに、こっちの世界のことと僕がまだ知らない情報を、彼女たちからも受け取る。
そういう形で、初めての“取引”が始まった。
その時、代表として話をしていたのは――。
アビドス対策委員会の委員長、小鳥遊ホシノ。
外見と口調に反して、目だけは笑っていなかったのが印象的だった。
『問い合わせにあったアビサルだけど、今の僕は2体までなら問題なく破壊できる。3体は僕も無傷は済まなくて4体からは逃げるしかない、弱点は身体の中央にあるコアで内部でEMPを爆破、もしくは液体窒素を中に流し込めばコアの活動が鈍くなって一時的に停止する』
「それを作ったのは君を作った人と同じ?」
『ううん、まあ用途が違うだけで僕も似たようなものだけどね』
「うんうん……まだいろいろ聞きたいこともあるけど、喋らせてばかりじゃあれだしね。じゃあ何が聞きたい?シロコちゃんの好きな食べ物?、それともアヤネちゃんの好み?それかノノミちゃん?いや意外とセリカちゃん……」
『この世界じゃ人を殺すことは許されているの?』
「……」
『僕の知っている銃は人が人を殺すために使われて、僕はその延長線上で作られた』
「……うん、人殺しは良くないかなぁ。この場所じゃ銃もそのためにあるわけじゃないから」
『そっか』
じゃあ、僕もここじゃアビサルと何ら変わりないか。
「だから君もここじゃまた違うんじゃないのかな?」
『違うって?』
「おじさんはさ、これでも対策委員会の委員長で卒業までみんなを最後まで見守ってあげないといけない、そんなおじさんも昔はとげとげしてて君みたいな目をしてた」
『……なんであの時本気で戦わなかったの?、君が一番強いのに』
「君だってどうしてもっと本気を出さなかったの?、もっと簡単に蹴散らせたのに」
『……』「……」
お互い自分に向けたような問を口に出してから沈黙が起きて……先にホシノが口を開いた。
「まあ、おじさんが言いたいのは。同じ物でも場所によっては違う意味を持ったりもするよって」
聞き方によっては価値は固定ではない、僕はそう聞こえた。
「君が取り敢えず戦うために作られたのはわかったよ、それで何と戦うかと決められてた。でも今は……誰に言われたわけでもないのに、不良の子達と戦った。なんでそうしたのかはおじさんわかんないけど少なくとも君が思ってる本来の君とはその時は違ったんじゃないかなぁって」
あの時にはもう、ホシノから向けられてた警戒心は消えてて……なんだろうな、あれ。
どこか懐かしいものを見てるみたいな目だった。
「それに元々がどうって気にしてもしょうがない、案外生きてれば人は変わるものだしね」
『僕を生きてるって言う定義に――』
「あーあー、そんな難しいこと言わないでさぁ。生きてるって事にしようよぉ〜女の子にそう言うの受けないと思うなぁ〜……特にシロコちゃんとか、いや……アヤネちゃんには……」
『ホシノのそれは男受けが良いの?』
「……いやいや、こんな貧相な体が好きとか言っちゃう輩なんて人としてダメっしょ、死刑」
その後は、ちゃんと話をした。
で、ホシノの勧めで他の部員とも挨拶することにした。
少しだけ、喋ってみるってやつ。
最初は赤い眼鏡に、長い耳の奥空アヤネ。見た目は完全にエルフだけど。
長寿ではらしい。
「あっ……トリガー……くん!」
『……』
「……これでも精一杯妥協してます」
意地悪はまた今度にして彼女が見ているものは何かのエンジン……確か。
『あ~DOHC』
【DOHC】
ダブル(又はデュアル)オーバーヘッドカムの略で、吸排気を別のカムシャフトで行う。
元はレーシングカーのために設計されたが、軽自動車にも搭載されいて。
高回転・高出力にし易いが、吸排気を1本のカムで行うSOHCに比べ重量が増し、燃費も劣る――
だったかな?。
「……詳しいんですか?」
『ん~……まあ、ちょっとは?』
「なるほど……実はこういうのに詳しい人っていうのは周りには居なくて……勿論調べればわかるですけど、その……よかったらお話を聞かせてもらえませんか?」
『ああ……まあ、分かることならいいよ』
この子は“科学が好き”っていうより古い機械とか、仕組みそのものに惹かれてるタイプかな。
骨董品って言えばいいのかな?。
まあ、そんな印象だった。
僕はっていうと、記憶の引き出しからそれっぽい用語と仕組みを拾い上げて。
ちょっと難しい言い回しで答えてみた。
多分、嬉しそうに聞いてくれてたと思う。
そういえば、身体のことについても聞かれたっけ。
どうなってるのか、どこまでが元の設計で、どこからが補修か……って。
……まあ、そのへんの答えは、正直僕にもまだ分かってない。
「あの……さっきの跳躍はこの足で」
『軽く触る?、それか見てみる?』
「良いんですか?」
『減るもんじゃないしね』
脚部の装甲を少し開いて、内部構造を軽く見せる。
正直なところ、何がどうなっているのかは解体しないと分からない。
今の僕が跳躍したり走ったりするために必要な要素が、すべて詰まっている義足。
「……思ったよりもシンプルな構造で、やっぱり義足?。これを作った人は……?」
『なんか頭のいいAI、義足なのは間違ってないんだけど取り外しできないから実質足だよ足』
「そうなんですね……あっ……ネジが……ごめんなさい、ちょっとあっ?!」
多分、即席で改造したときの名残――いらないネジが外れただけ。
……正直なところ無理な跳躍をしたせいで、どこか本当に壊れちゃったのかもしれない。
だけどそれより気になったのは、外れた部品のほう。
ネジ、ボルト、バネ。
どう見ても、義足の運用に耐えられるようなスペックじゃないパーツが混ざってた。
『どうみえる?』
「えっ?!」
『この義足を作ったのって機械か人間かどっちに見える?』
「人の手、でしょうか?。よく見てみれば間に合わせで溶接したようなところがちらほらで……あっ、そういえば身体と無理矢理繋取り付けられて……これだと取り外せないから修理も難しい」
これをやった人間がいるとしたら多分、科学の基礎か、少なくとも機械に対する理解はある。
でも、時間がなかったのか、それとも技術的にここまでが限界だったのか……とにかく、"最善"じゃなくて"これしかできなかった"って感じだね。
『もう良いの?』
「いえ、確かもっと良いネジとかがあったので……それを持ってこようと」
『いや、いいよ。無茶しなきゃ持つだろうし』
「いえいえ、学校を守ってくださいましたし……それとシロコ先輩とは仲良くしてくださっているようですから、せめてものお礼です」
温厚そうな性格。たぶん、あのメンバーの中では一番“常識的”な部類。
でも銃撃戦の後の空気とは思えない。
いや、たぶん僕がまだこの空気にまだ馴染めてないだけなんだろうね。
それは分かってる。頭では。
でも、銃口がこっちを向く感覚には……まだ慣れない。
どれだけ“平気な顔”をされてても、それだけは当分。
「あ、そう言えば銃もいただいて……これは拳銃ですか?」
『強力な麻酔銃、外の人間基準で』
それにも興味を持ったのかまじまじと見て……なんか誰かに似てた気がする、ああそうだ。
ジェマだ。
「……どうかしましたか?」
「いや、何でもない。撃ち方は……慣れてるよね。そうだなぁ、そうだ確か……うん、居た」
僕が“懐かしい”って感じるSHIELD製の道具がいくつかあって。
その中でも印象に残ってるのが
武器じゃない。でも、たぶん……いや、確実に。
そういう“撃たない道具”の方が、本当は役に立つ時が多いんだよね。
『じゃあ……よし、今日から君がこの子達のママだ』
「え?」
アヤネには、寝坊助たちの使い方をひと通り教えておいた。
説明ってほどでもないけど、起動したら基本は勝手に動くし。
でも、メンテの仕方とか、万が一落ちたときの再起動方法とか。
そういうのは、ちゃんと伝えた。
なんとなく、僕以外の誰かが使ってるところを見てみたくなった。
で、次。
せっかくだし、今度は他の対策委員メンバーとも話してみようと思う。
記憶が正しいなら確か、こういうのを“関係を築く”って言うらしい。
……って感じで、2日目は不良と喧嘩したり砂漠を管理する学校に行ったりして色々あった。
因みにこの日の出来事はまだまだ続くから飛ばさず聞いてね。
確かアヤネの次は――。
【トリガーのメモ:
SHIELDのある2人の科学者によって造られた四翼の小型クアッドコプター型ドローン。
SHIELDの任務には現場の調査・分析・証拠のスキャンなどを行うために使われていて。
視覚・聴覚・嗅覚・放射線検出など多様なセンサーを搭載してそれぞれに特技がある。
ロバートの手によって何も考えずに起動すると僕の周囲を飛び回る。