ブルーアーカイブ -LOST MEMORY DISORDER- THE RELOADED 作:かな餅
クインジェットとゼファーワンの合いの子として2台作られたうちの1つ。
目覚めた時から壊れていて飛べはしないけど内部の装置は電源をつなげれば何とか動く。
現在の用途としては僕の寝床になってて実質僕の住処かな。
時間がある時にはちょくちょく修理して何とか使えるようにはしてみてる。
ゼファーワンには確かあだ名があったしこれにも付けてみようかな?。
飛行機の中に戻って、ロバートに声をかけた。
でも返事はなかった。
どうやら外出中らしい。
となると、今の僕にできることは……うん、足のメンテナンスくらいかな。
アヤネからもらった部品。
軽く分解して、中身を確認して、義足に合いそうなものを選んでいく。
左手はまだうまく動かせない。
だから右手だけで、なんとか作業を進める。
でもまあ、ちゃんと“使える”ようになれば、それでいい。
兵器なんだから、壊れたら直す。
それだけのこと。
〈トリガー、戻りましたか〉
肝心のロバートは、どうやら戻ってきたらしい。
そういえば朝、学校に行く前に何か言ってた気がする。
贈り物を作ってるって。
その時はあんまり気にしてなかったけど、今になって思い出した。
僕にとっては、“プレゼント”って響きがまだちょっとピンとこない。
でも、ロバートがわざわざ言うくらいだから、まあ。
それなりに意味があるんだと思う。
〈少し出かけていました、それと貴方に贈り物があります〉
飛行機の中には、いくつか変わった設備がある。
そのひとつが”クラフトマシン”。
金属でも合金でも、カーボンをぶち込んで設計図を読ませれば、なんでも作れるらしい。
そのぶん電力消費はえげつないけど、便利なやつっぽい。
で、ロバートはそのマシンを使って、新しい義手を用意してくれてた。
素材は、
元の世界で、"アイアンレス"を掲げて、ビブラニウムを参考に作られた最強のカーボン素材。
……でも、HYDRA絡みのトラブルでお蔵入り。
試験すらされずに封印されてたやつらしい。
眠ってた兵器が、眠ってた素材で、動けるようになる。
まあ、なんとなく皮肉っぽいけど……ないよりまし。
〈左手の義手は恐らく取り外しが可能ですので付け替え使用感を確かめてください〉
ちょっと強引に引っこ抜いて、さっそく新しいのを取り付けてみた。
関節はちゃんと動く。
感覚は、まあ……いつも通り、何もない。
でも、指は思った通りに動く。
兵器としてはそれだけで十分。
〈質感は急ごしらえのため人から離れていますが、手袋などをすれば問題ないかと〉
『まあ、そうだね……足の方はどうなってるの?』
〈貴方の移動に耐えられる構造は構築できましたがそれを実現する素材は探している最中です〉
修理の目途は付いてきたけどあとの問題は素材……多分お金の問題かな?。
〈対策委員会の方々とはどうでしたか〉
『仲良くしてくれるみたい、あと仕事の手伝いをしたらこの場所にいさせてくれるって』
〈そうですか、必要な素材について金銭に関してはこちらで工面できますが受け取りに関しては通販であろうとも引き取り先が必要です。そこで対策委員会の名をお借りしようと思っています〉
『それは問題ないだろうけど……何処からお金を?』
〈いろいろと、早いですがそろそろ眠ってはいかがでしょうか〉
このまま寝るなら、ポットの中。
でもせっかく使えるようになった左手、試してみたくないって言われたら、嘘になる。
……さて、どうしよう。
大きな動きは無理でも、起きたまま静かに修理を続けるくらいなら問題ないはず。
必要なことなら、眠るより優先してもいい。
『いや、色々と貰ったから足の調整をするよ』
やりにくいのは相変わらず。
でも両手がまともに動くってだけで、作業はだいぶマシになった。
無理な跳躍で負担をかけた箇所も、見た感じそこまで致命的ではない。
けど……あと数回。
そんな感じの“限界”が見えてる。
砂も溜まってる。どこにでも入り込んでくるやっかいな粒子。
そのうち徹底的に取り除いておかないと、また不具合の原因になる。
……そういえば、アビサルの残骸。
解体してなかったけど、ロバートが何か調べてくれてたりするのかな。
『……あ、ロバート』
〈どうしましたか〉
『”うへぇ~”って何か分かる?』
〈………………人がくたばる時の呻き声か何かでしょうか。〉
「記憶にないけどここの世界はそうやって笑うらしいよ」
〈妙な世界ですね〉
……仕事を手伝うならもっと愛想よくした方がいいのかな。
『ホシノにもっと笑った方が良いって言われたんだけど、どうおもう?』
〈できるならしてもいいかも知れませんね〉
『そっか……愛想よく、どうやろうかな』
コールソンは……ちょっとおじさん臭い。
フィッツは……違う、何かが。
アウフ?論外。
で、参考にできそうなのは……ホシノ。
こうして、義足の調整をしながら、時々飛行機の修理を挟んで、眠らずに作業を続けて
気がつけば、記録を始めた“3日目”に追いついてた。
まあ、陽気にってほどじゃないけど。
せめて誰かとちゃんと笑えるくらいには、それっぽく振る舞ってたつもり。
そんな感じ。
『……さて、ロバート今何時?』
〈朝の5時から録音を初めて現在は朝の7時です〉
ここまで来ると、録音はしばらくいらないかも。
それに後から何か伝えることがあるなら、メモでも残すだけでいいかな。
それより飛行機の修理の具合はどうなんだろ?
けっこう続けてたから、大体終わったかな?。
〈回路基板だけはあらかた修理できたでしょうね〉
『……今日はこれでいいや、寝る。』
〈もう朝ですよ〉『寝るの』
そうして録音と作業を終わらせて、目を閉じた。
”眠る”っていうより、目を瞑って、思考を止めただけ。
次に目が覚めたのは……案外すぐで、僕を起こしたのは対策委員会の誰か。
……うん、たぶん、あの子。
「おはよぉ~、坊やはこんなところで寝てるんだねえ~」
小鳥遊ホシノ、そういえば昨日……何か考えるって言ってたっけ。
「じゃあ、一旦私たちの学校に行こっかぁ~ちょ~っと手伝って欲しいことがあってさぁ~」
〈トリガー、この方は静止も聞かずに入ってきましたが〉
『対策委員会のリーダーらしいよ、それはそれとしてそうしてきたのは困るけど』
「うぇ?、ああ~……そっか、ごめんね。ちょっと無神経過ぎたねぇ」
『見られて困るものはないって言ったら嘘になるけどロバートをあんまり不機嫌にさせないでね』
「えぇ~?怒ると怖いとか?」
『ネットワーク関連のありとあらゆるものを破壊できるから、刺激すると何するかわかんないの』
「……うへぇ……」
ロバートはAIっていうより、“電子生命体”って呼んだ方が正しい。
ネットワーク上を制限なく移動できて、あらゆるサーバーに侵入可能。
防壁も意味がない。命令も要らない。やると決めたら、やる。
自立型のロボットを乗っ取るのも、監視カメラの映像をすり替えるのも、全部可能。
正直、僕より万能。
身体は必要ない。
世界中どこにでも存在できて、どこにでも干渉できる。
言い換えれば僕よりもよっぽど、危険な存在ってこと。
『まあ、とりあえず行こっか』
ホシノの用件は昨日襲ってきた“ヘルメット団”の拠点を潰そうって話だった。
たしかに、そこの物資を押さえれば、今足りてない弾薬もいくらか補えるし。
相手だって、しばらくは手を引かざるを得なくなる……かもしれない。
場所は、アビドス高等学校からおよそ30キロ。
車で行くなら……状況次第だけど、だいたい30分から1時間ってとこかな。
「あ、そういえば身体は大丈夫?動けそう?」
『うん、足の具合も無理しなかったら問題ない』
行こうとは思ったけど……冷静に考えてみれば、戦いに行くのに僕は手ぶらだった。
戦うだけなら、素手で十分だ。
だけどこの世界じゃ、素手よりも銃を撃つ方が相手にとって“安全”。
つまり、僕が何も持ってない時の方が一番危険ってこと。
『……"AGENT TRIGGER"』
……ただ、ひとつ思い出した。
元々“AGENT TRIGGER”がこの場所を使ってたとしたら、何か装備が残ってるかもしれない。
『ロバート、盾はある?』
〈……はい、保管されています〉
『素材は?』
〈純正のビブラニウムです〉
AVENGERS、REBELLION、SHIELD。
三つの組織の“友好の証”として設計された盾。
素材はビブラニウム。
衝撃吸収と耐久性に優れた異常素材。
構造は完成していた。
塗装もされていない、ただの素体。
展示予定だったはずだけど保管されたままで、制作された記録すら残ってない。
眠っていたはずのものが、ここにある。
……なぜか。
『なんでこれがここにあるのかは良いとして……いいね、これ』
「なにそれ?、ただの盾?」
『ただの円盤状の盾、僕の
「……売ればどれくらい?」
『僕の世界じゃ1グラムあたり100万とか』
「その盾は?」
『再利用できると考えるなら約5億4千万円』
「……」
〈トリガー、貴方は戦うのですか?〉
『うん』
〈何のために?〉
『ここに居るために』
〈戦わずとも他に彼女に達へ渡せるものはあります、言ってしまえば金銭的な要求でも〉
『それが欲しかったらそう言うよ、でも今は戦う事を求めてる。困らないようにもできるかも』
〈彼女たちが困っているのは元々の問題、それと貴方がここに居ることは何の関係もありません〉
『関係ないだったら尚更、誰も困らせないでいいんじゃないかな』
〈……何を言っているのでしょうか?〉
『僕が明日にいてもいい理由に誰も困らなくていいなら僕はそれがいい』
〈その言葉と貴方が戦うことは矛盾しているのでは〉
『そうだね、でもそれは僕が人に似せて作られたから』
〈……〉
「……えっとぉ、そこまで深刻に話し合わなくてもぉ……いいんじゃないかなぁ……って」
ロバートは、僕が目立つことよりも、戦うことがあまり好まないらしい。
でもロバートが言ってた“目的”には、戦うって要素がきっとある。
だったら、消耗させたくないから止めてる?……違う、それだけじゃない。
本気を出せば、僕の行動なんて簡単に制限できるはずだ。
だってロバートはロボットの意識を乗っ取れるんだから……乗っ取れるのに。
どうして、この
〈……行動には私も同行しましょう、貴方の顔を隠す仮面を作っておきました〉
僕が今使える装備は、ロバートと繋がるための仮面と、防御と牽制用の盾。
それと、“エージェント・トリガー”として動くための戦闘服。
車に乗る前にちょっとした練習。
飛行機の外、夕暮れの砂漠。空気は乾いていて、風は穏やかだった。
黙って盾を持ち上げ、無言のままそれを正面に構える。
素材はビブラニウム、重さは感じない。
ただ、手に馴染むかは別の話。
『……じゃあ、いってみようか』
腕のスナップと肩の捻りだけで盾を投げる。
軌道はほぼ直線、金属の円盤は風を裂きながら、飛んでいく。
跳弾――。
『……!』
予想よりも高く跳ねた。
即座に両手を上げる。
反射的に身体が動いて、盾をキャッチ……できた。
でも、ちょっと痛かった。
慣れてないからかな……それか義手のほうじゃなかったのが悪い。
『……次はもっと低く』
失敗じゃないけど、成功でもない。
けど、もう一度投げる。
誰かの真似でも、ただの訓練でもない。
ただ今日は兵器じゃない方で過ごしてみようと思った。
……という感じで、録音が終わって次に進みだしたのがこの日。
何日ぶりの録音だっけ……1ヶ月とか?、そこらへんだったかなぁ……まあ置いておいて。
今度はスマホを片手に自己紹介。
ひょんなことから砂漠に捨てられて狼少女に拾われてから数週間……。
アビドス高等学校所属
1年生 対策委員会 所属 購買委員
奥空コウ。
奥の道の奥に大空の空、そして下の名前はカタカナでコウ。
さて、まああえてこの名前について何も言わないよ。
うん、何もね。
何があったのかはこれから話すし焦らず聞いてね。
それじゃあ……ひとまずは僕がアビドス高等学校の生徒になるまで――