ブルーアーカイブ -LOST MEMORY DISORDER- THE RELOADED 作:かな餅
綺麗でしなやかな長い黒髪と吸い込まれそうな赤い瞳、可愛いらしい猫耳。
短いスカートをはいている中でもしっかりとスパッツを履いてる珍しいタイプ。
僕の事が嫌いではないけどどう受け止めたらいいのか分からなくてちょっとつんつんしてる。
たまに酷い事も言われるけどちゃんとごめんなさいもしてくれるから僕もきらいじゃない。
綺麗だから目をじっと見ているとたまに怒られる。
誰もが持ってる悩み事、黙れば増えてく隠し事
今歩いてるこの廊下の右側の部屋に、不良が一人逃げ遅れて隠れてるみたいだ。
心拍が上がってて、緊張で体が震えてるのがわかる。
対策委員会のメンバーは、今ごろ弾薬庫と戦車の確保に動いてる頃だろうし。
なら、こっちも早めに片づけちゃおうか。
「……も、もういない?……それとももう行った?……なんなのあいつは……」
廊下の壁反射角を計算しながら、僕は腕をひねるようにして盾を投げ放つ。
金属の円が風を裂き、壁に当たって鋭く跳ね返った。
「ッ?!ちょ……壁をッ……」
壁を素手でぶち抜いて視線を部屋の入口がそれた時には盾の入室。
後の声が上がる頃には盾はさらにもう一度角を跳ね、敵の後頭部に勢いよく当たった。
鈍い衝撃音。
体がよろめいてふらつく足音。
ぱたっと倒れる音がした。
……計算通り。
バウンドして戻ってきた盾を片手で受け止めて不良生徒の状態を確認。
こぶはできてるけど、頭蓋骨は割れてない。たぶん。
衝撃の加減も悪くなかったし、今はちょうどいい感じに気を失ってる。
ホシノは戦車のある車庫に送ったアビドスで一番強いのは彼女だから。
制圧は完了してるみたい。想定通り。
アヤネはドローン担当でセリカにはスナイパーライフル。
屋上からの監視と増援の牽制。
シロコとノノミには弾薬庫を任せてみた……多分、問題ない。
〈無事ヘルメット団の前線基地は占領を完了しました、弾薬庫と車庫は抑えられたようです〉
『いいね、初仕事にしては結構良い仕事出来たかも』
捕らえたのは3人。
推定で10人くらいはいたはずだけど、残りは回収されたか、自力で撤退したのかな。
対策委員会の情報で、少し気になる情報があったからこの3人から確認を取ってみる。
拘束済み。逃走の可能性は低い。
並べて寝かせておいた状態で、盾を鳴らして起床させる。
「……ぁあ……うるさ……えっ?」
『まずは君から起きたんだ、最後に倒した子だけど君は結構丈夫なんだね』
「……えっ?」
じゃあ……お話を始めようか。
『名前は?』
「……」『言ってくれないと君の隣の子の足を折るよ』
「こ、河駒風ラブ……」
『ラブちゃんね、覚えたじゃあ……次は――』
河駒風ラブ、ジャブジャブヘルメット団のリーダー。
常に金がなくて、どうにかならないかって頭を抱えてた頃の話。
ヘルメット団の上の連中に珍しく仕事の依頼が来た。
熱い砂の下で前線基地をぐるぐる見回るだけの仕事をしてたんだけど――
……そこに、対策委員会と、正体不明の“
それで、今ここにいる。
それで、今こうなっていると。
困ったな、普通にただの下っ端だったじゃん。
派閥のリーダーと聞いたから期待したんだけどな。
ただヘルメット団の上層部から声はかけられると……。
どうしようか、この子達にヘルメット団内部から情報を探らせるか。
それとも人質にして交渉材料にするか。
スパイをさせるには最初のアプローチは間違えてる。
だけどお金に困ってるなら金銭は有効そう。
後者は……微妙だな。
不良だから仲間意識は有るだろうけど別の派閥までその思いやりがあるかはわからない。
『君はお金が欲しいから此処を守っているのか、何か理由があってここを守ってるのかどっち?』
「……何でんなこと聞くのよ」
『仕事を頼もうかなって、君にね』
話を終わらせた後僕は遅れてみんなと合流した、みんな殆どは怪我がないみたいで良かった。
あとは必要なものを持って帰って――。
「何してたのよ?」
『残ってる子達がいたからそれの対処をね、セリカは何ともなかった?』
「……ええ、なかったわよ」
……疑われてるなぁ、屋上に居たままだったしやり取りは見られてない。
見られても内容的には問題ない。
となれば急に指揮を取り出したからちょっと何か思うところがあるのかな。
『今日の指揮に何か不満なこととかあった?、それとも余所者が目立ち過ぎたかな』
「……そんなんじゃないわ」
……うーん、わからない。
嫌われてるわけじゃない、でも明らかに友好的じゃない。
何かを疑われてる?、何だろう?。
いや、僕だけは特攻で何をしてるか細かくわからなかったから?。
と言っても中は入って薙ぎ倒してただけだからなぁ。
「トリガーの方はどうだったの?」
『まあ顔見知りがいくつか居たみたいで追撃しながら拠点から追い出してたよ、シロコは?』
「ん、余裕だった……武器は?」
『……ん』
数百メートル離れた車庫の戦車に投擲して、すぐに戻ってくる盾を取ってみせる。
「……盾を投げてるの?」
『銃撃つより優しいでしょ』
弾薬も要らないしね。
「……おじさんも盾持ってるけど、そんな使い方してる人初めて見たかも?」
『まずこれができる人が少ないからね、投げてみる?』
「ん」
「ちょっと遊んでる場合じゃないでしょ、早くみんなも運んでよ」
怒られちゃったからやろうと、思ったけどアヤネの姿が見えない。
『ロバート、アヤネは?』
〈何やら発見をしたようです、車庫へ行ってみは如何でしょうか〉
「……あっ!ちょっとどこ行くのよ!」
黒猫を連れてメガネのエルフを探してみると、装輪戦車をまじまじと見てるアヤネを見つけた。
『何か見つけたの?、見たところ全然使えそうな戦車だけど』
修理に出してるのか僕が砲塔を曲げた戦車だけがない、それか別の拠点か。
〈調べてみたところこれは現在取引されていない物、つまり違法な車両です〉
違法な車両をこう何台も……だとすればこれはお金にするよりバラして売ったほうが得策。
いや、それよりもこれの出所かな。
「……ブラットマーケットから仕入れたとしてもこの台数を確保するのは難しいはず」
『じゃあロバート、もう一仕事でこの戦車の流通ルートを調べて後できるなら……お金の流れとかも、そっちはまあ関係ありそうなのがあれば』
「……それについては良ければ対策委員会で話しませんか?、もしかしたら私達の学校が執拗に狙われる理由がわかるかもしれません」
今回の成果は拠点の制圧、お友達の確保、弾薬庫に車庫を押収。
「……」
あと気になるのは戦車の出所とセリカが何を考えてるのか。
弾薬や武器を持てるだけ持って学校に帰宅した。
銃をバラすなり弾薬整理するなりしてると……セリカから話しかけられた。
「……ちょっと良い?」
『どうしたの?』
「……此処じゃあれだから屋上」
屋上に連れられた、敵意はないけど軽く緊張してるみたい。
銃は持ってないから戦闘にはならないと思う。
「……ねえ、あんたって頭いい……というかAIなんでしょ」
『うん』
何となく言いたいことが予想できた、これは緊張じゃなくて期待だ。
「た、宝くじとかの当たりとか計算して出せるんじゃないの……?」
『セリカって意外と面白い子だね』
「……なに?馬鹿にしてんの?」
『褒めてる褒めてる、宝くじとかよりも、動体視力で何とかなるスロットとか球の軌道を計算できるルーレットとか……あとはサイトのカジノだったら乱数をいじって――』
「……」
何で聞かれたことに答えただけなのに引かれてるんだろう。
「……ま、まあ……アンタがいればお金を稼げるってことね。取引よ、私達と――」
『……それって、セリカだけで決めていいこと?』
「”私達”と、私はただみんなと話をする前にまとめようと思ってるだけ」
確かに、今ある手段を全部使えば、それなりに稼げるとは思う。
でも……それって同時に、目立つってことでもあるんだよね。
……まあ、今は別に急ぐ理由もないし。
だったらセリカとちょっと、遊んでみようかな。暇つぶしに。
『じゃあ、僕にとってお金を必要以上に稼ぐにあたってそれから得られるメリットはなに?』
「……アビドスに居られるとか?」
『それはもう委員長から保証されてるよ?その分の仕事もしたし」
「じゃあ追加の仕事!」
『じゃあ追加の報酬も必要だね』
どうやら素直に聞いてくれると思ってたみたいで今はすっごい悩んでる。
「シロコ先輩が喜ぶ」
『じゃあシロコはそのために僕にマフラーを巻いたのかな』
「それシロコ先輩と喧嘩した時に言わないでよ?」
さて、万策尽きたのかな?。
「……じゃあ、何ならいいのよ?」
『んー……みんな知らないような、セリカの秘密とかは点がだいぶ高いけど』
「ひ、ひみつぅ?……それアンタの趣味にも寄ってくるでしょ……うーん。」
ホシノは盾の値段を言った時、一瞬目の色を変えたけどその後は何も言ってこない。
シロコはそこまで頭が回らないはずがないし、多分敢えて言ってない。
アヤネとノノミはそう言うタイプでは無さそう。
「……バイトしてるとか?……いや、誰だって――」
『何のバイト?』
「……えっ、いや、まあ。ほらまだみんなに言ってないだけの事だから秘密って訳でもぉ……」
『聞きたい』
「た、高いし価値のない情報かもよ?……」
『じゃあ今日は残念な出費をしてしまうのか……』
「何でもう払う気でいんのよっ?!」
だってそこまで言うのを嫌がるバイトの秘密なんて気になるもん。
「……いや、言わないわよ。どんなに大金積まれたって……」
『でも言ったら大金だよ?、銃も身体も動かす事なく口を動かすだけで良いんだよ?』
「え?本気で出す気なの……?」
『んー……じゃあ残念だけどこの話は此処で――』
「はあ?!ちょっと急に……もう、分かったわよ。その代わりみんなには内緒にしてよ」
……猫カフェ、いや、メイド?、ガールズバー?、想像を超えて男装?。
うんかなり需要はありそう、目がキリッてしてるしスタイルいいし……。
それかどこかの看板娘……居酒屋とかの服似合いそう。
「……柴関ラーメンって言うところで働いてるの、結構前から」
『……なーんだ。』
メイドも男装もスク水も着てないんじゃないか、つまんないな。
「何よ。だから言ったじゃない」
『だって明らかに動揺したから……じゃあしょうがない、バイトの服見せて支払いね』
「はぁ……もう、お金しっかり払ってよね……ん?」
『なに?』
「……いや、私ちゃんと話したんだからバイトの服とか関係ないじゃない」
『でも信憑性に欠けるじゃん』
「いや、"話"を……」
『セリカの"秘密"をって話だよ?、百聞は一見にしかずってね』
「ッッ……良いわよ……その代わりその分しっかり搾り取ってやるから!」
『うんうん、じゃあ今日は楽しみだなぁ』
「はぁ?今日?……いや、今日は……うわ、ちょうどシフトの日……」
『黒見セリカが看板娘なラーメン屋さんどんなのだろ、意外と質素?、それとも家系ラーメン?』
「普通のラーメン屋、期待しても何もないってば」
『でも普段ツンツンしてるセリカがニッコニコで――』
「出禁にするわよッ!!!」
まだ店を一目見てもない内に出禁にされようになったのでこの場は一時解散。
それでロバートとアヤネは裏で話を進めてくれたみたいで詳しい内容は明日話すみたい。
まあざっくり言えばブラックマーケットで何か見つかるかもって言う話が出たくらいかな。
そんなことは今は良いんだ。
今日はセリカのスク水……違う、看板娘の姿を見に行くって言う大事な仕事がある。
「ん、トリガー」「やほぉ〜」
『ん、どうしたの?』
「サイクリング。どう?」「ちょっと買い物に付き合って来んないかなぁーって」
なんか今日の予定増えるな?。
「ん、私が先客」「えぇ〜?シロコちゃんは別に買い物が終わった後とかでもよくない?」
『何で急に誘ってくれるの?別に良いんだけど』
「親睦を深める為」「まあ、そゆこと⭐︎」
……えっ?、どっちから行けば良いんだろう?。
「ん、私とサイクリング。」「か弱いおじさんのお買い物……手伝ってくれる?」
んー、何企んでるだろう。
シロコと純粋にサイクリングに行きたくて、ホシノは何かありそう。さて今からだと……うん、セリカは秘密にしてるみたいだからセリカと会うとは言えない。
かと言って安牌のホシノを選択したらそのまま流れでサイクリングコースに行きそう。
いっそ3人でセリカの元に行く?。
絶対にブチギレられる。
『……サイクリング、なんか制服じゃない服着るの?』
「サイクルジャージとレーサーパンツとか……」
見たい
(見たい)
――"見たい"――
『見たい』
「ん……?!……」
いや、でもサイクリングだったら帰りでも別にいい……だったら後回しにもできる。
「……おじさんは、最近服欲しいなぁって?」
『選んでいいの?』
「やっぱり今日すごいがっついてくるよね?、服は今日の買い物とは別だから別に買わないし」
ホシノの買い物に付き合って、うまく言いくるめれば……好きなの服を着てもらえる可能性。
それとも、シロコとサイクリングして、あのサイクルジャージ姿をこの目で――。
でも。
セリカのバイト姿を一番に見に行けるチャンスがあるのに、それを後回しにできるわけがない。
「ん、トリガーが苦虫を噛み潰してるような顔してる」「そんなに何か悩むことある?」
『また……明日以降に、しない……?』
苦渋の決断で全ての可能性を後回しにした後、僕は紫関ラーメンに向かうことにした。
【トリガーのメモ:河駒風ラブ】
上着の下に学生服、頭にはK他よりちょっと良さそうなヘルメット。
僕からお仕事を頼まれて、いろんなところから話を聞いた結果。
部下もろとも使い捨てというだったという事実に怒ったからなのか結構協力してくれる。
案外面倒見もよくて、割と人望があるから仲良くすると一部の不良が友好的になる。
それのおかげで不良生徒が良く聞く噂が集めやすくなった。
お話をするときは一緒にご飯を行って奢ってる。
おいしいものがあったらたまに分けてくれて友達みたい。