ブルーアーカイブ -LOST MEMORY DISORDER- THE RELOADED 作:かな餅
セリカのバイト先で僕のお気に入りのお店。
店の名物は”柴関ラーメン”:580円。
僕はロボットなので食べれはしないけど、みんな幸せそうな顔をするから紫関ラーメンは好き。
食べられないけどお店に寄った時はお店の切り盛りを手伝ってる。
たまにお友達もくるから奢ってあげてる。
当然だけど、人の通りがそれなりにある場所に建ってるラーメン屋さん。
商売的には正解っぽい。
看板には……柴犬が腕組んでる絵?。
マスコットキャラクターなのかはわからないけど、妙に主張が強い。
可愛い。
客の入りはそこまででもなさそう。
中には2人、店員と……たぶんセリカ。
『お邪魔します……?、あっ』
「うわほんとにきた……?、お客さんいたら追い出せたのに丁度いない時間に……」
可愛い。
頭に巻いてるバンダナもちゃんと似合ってるし、あの布の下ってどうなってるんだろう……。
いや、見ちゃダメだとは思うけど、どうしても気になる。
それに、腰のハンドガン……視線が吸い寄せられるのは仕方ない。
これも日常だから。
看板娘……うん、これは看板娘って言っていいやつだ。
こういう子がいる店なら、そりゃあ人気出てもおかしくないのに。
「おう!もしかしてセリカちゃんの言ってたお友達が君かい?」
『あ~はい、友達です……ん?……看板の乗ってた柴犬か……ん???』
……脈拍呼吸あり、生物なのは間違いない。
異質なのはその外見が日本によくいる柴犬に酷似してること、可愛い。
出会って初めに強い既視感を覚えたのは柴犬の記憶ではなく恐らく別の要因がある。
店を象徴する看板に堂々と張り付いていたのがこの目の前にいる二足歩行型の柴犬。
「お、おう……どうしたんだ?」
『いや、その。綺麗な毛並みですね?』
「会っていきなり何言ってんのよ。この人は柴大将、店の店主だから迷惑かけないでよ?」
「まあせっかく来てくれたんだ、座って何か注文していきな!」
『ごめん、僕はちょっと……固形食とかがあんまり食べれない
「……そういえばそうね。えっ?じゃあ本当に私のバイト姿見るためだけに来たの?」
『うん、おかげで見ただけでお腹いっぱいになった』
呆れを通り越したような顔をされたけど、まあいいや。
この後どうしようかな、冷やかしにはしたくないし……お持ち帰りで何か持って帰るか、
それとも――。
『それか僕も働こうか?、どうせ暇だし』
「ちょっと何言ってんのよ」
『ほらアビドスのために働いたらいさせてくれるって約束だし』
「?、アビドス高校で働いてる……もしかしてアビドス高校の生徒さんかい?」
『……見たいなものかも?、何も覚えてないところを拾われて取り敢えず働いてる』
「へぇ……何も覚えてないか、自分の身元が証明出来ないんじゃろくに働くこともできないだろうしなぁ……よし、セリカちゃん友達なら信頼はできるし暫くはここで働いたらどうだ?」
「え!?、た、大将……?」
働く……下手に隠れるよりもこうやって堂々と働いてる方が目立たないかな?。
人の出入りは少ないみたいだし客も長いはしないだろうし……。
『じゃ今日はお試しってことで?』
ということで……僕は今日からアルバイトとして働くことになりました。
ラーメン食べれない分お客さんにおいしく食べてもらおうってね。
「あぁ〜腹減ったわねぇ……げっ」
『あれぇ?、ラブちゃんじゃん』
「知り合い?、てか敬語」
どうやら朝お友達になったばかりのラヴちゃんが来店してくれたみたい。
「……何でアンタがここで働いてんのよ?、ちょうどよかったけど」
『まあ……こうやって可愛い子と出逢いもあるし?、と言うことでご注文は?……あっ大将このお代は僕の時給から天引きして』
「良いのかい?、別に構やしないが」
『お金が欲しくてやってる訳じゃないから』
「……」
ちょっと機嫌が良くなったらしいラブちゃんは大盛りに焼豚と煮卵の追加トッピング。
こっちも見ていて気持ちいいくらいの勢いでラーメンを食べ始めた。
後からラブちゃんの部下も来て、僕を見て驚愕しては奢りと聞くと否や颯爽と席に着いた。
恐らく食べている表情を見るに美味しいんだろうな。
スープすら飲めない僕からすればこの子達が少し羨ましくも感じる。
『それでラブちゃん、朝のお願いはどう?』
「?……ああ、もう報告できるわよ。ちょっと面倒だったけど」
仕事はやってくれた、連絡先を交換して……いや。
指定の場所で落ち合うことにしようかな……目立たず人が居ない場所。
それこそアビドスにある空き家でも良いのかな。
「おお?今日はなんか繁盛しそうだな、ほら……えっとセリカちゃんの友達……」
「あ、この子はトリガーって言います……たぶん?。」
「じゃあトリガー君、お客さんを席に案内してくれるかい?」
『はーい』
さてこれが終わったら……と言うか、客足が落ち着いてきたら外に出ようかな。
『はーい大盛りひとつー……あ、焼豚も美味しいよ?うん、焼豚追加ー』
『あれ、ヘルメット団多いな……はーいいらっしゃい席こっちだよー』
……あれ、なんか忙しくない?。
席は満席……流石にこの数は払い切れないだろうから給料からの天引きはなし、だけど。
「おっ……あれかぁ、アビドスにいるって言うお兄さん」
これ僕目当てで来てんじゃん、何で?。
『はいはいどうもー、席はこっちね、後の人はちょっと待っててねぇー』
「大将、大盛り2つ入りました!」
『こっちは看板娘のセリカちゃんねー』
「あ、あいよ!」
『こっちがマスケット兼店主の柴大将だよー』
「ふざけてないで真面目にやりなさいよッ!」
まずいなぁ、目覚めて1週間も経たない内に超目立ってるかもしれない。
と言うか現時点で目立ちすぎてる。
「写真良いですか?」
『ごめんね、写真は嫌いで……』
「えー……じゃあ、連絡先……」
『なんかすごい飛躍してない?、それも駄目だよ?』
やばい写真撮れられるかも、てか誰かしらもう撮ってるかもしれない。
「かっこいいね?……」「ロボットなんだって」「いくつ何だろ……」
落ち着いてきたところでセリカにSNSを確認してもらったところ、なんか……。
トレンド?っていうものに入ってるみたいだった。
よくわかんない。
[柴関ラーメンに突如出現、爽やか青年の看板息子!]
『学生で暇な子って多いんだねぇ』「ほんと、私達と違って」
とりあえず、ラブちゃんとは後で落ち合うってことで話をつけて。
なんとか今日のお客さんは全部捌き切った。
気づいたら、外はすっかり日が沈んでて……空、真っ暗だった。
忙しかったけど、残ったバイト代はセリカにつけてもらってそのまま――。
「ちょっと待って」
『なに?セリカも帰りでしょ?』
「水なら飲めるんでしょ、ほら」
……身体の冷却機能に必要なだけなんだけど。
「……まあ、今日はありがと。でも約束のお金はきっちり払ってもらうから勘違いしないでね」
『うん、可愛かったしね』
「……あんたって、大人なの?子供?……どっち?」
今の自分が子供かどうか、生物に当てはめられない時点で成体に関する言葉はまずない。
かと言ってただ難しい言葉で返すのは違う。
『僕の目に映る景色がみんな一緒なら、子供って言えるんじゃない?』
「……そ、まああんたがどんな奴かって言うのはこれからわかってくるでしょうしね」
『それでどれだけ欲しいの?』
「……?」
『お金、約束したでしょ?あげるって』
「……3億」
……想定よりぶっ込んできたな、まあ多分ロバートなら。
「3億、"私達"と"一緒"に稼いだら仲間って認めてあげる」
『……一緒?』
「……そ、3億稼ぐまでアビドスを裏切ったりとか姿を消したりしちゃ駄目」
『……』
「勝手な行動は禁止……あと住む場所ないなら学校の空いてる教室とかで寝泊まりしてみんなに呼ばれてたらすぐ仕事ができるようにして」
『それセリカだけで決めて良いこと?』
「"私達"と、私はただみんなと話をする前にまとめようと思ってるだけ」
『……そう?』
「そうよ」
……じゃあ、今日からそれでいっか。
セリカが帰ったのを確認してから、アビドス高校から少し離れたとこにある空き家へ向かった。
前に一度、砂を払っておいた場所。
まあ、目立たないし、使うにはちょうどいい。
入り口の前でモールス信号を軽く打ってみると、すぐに返答。
……中にはもう誰かいるみたい。
扉を静かに開けて中に入る。
中には……うん、ラブちゃん。
ちゃんと来てた。
じゃあ、仕事の結果を聞くとしようか。
「……来たわね」
ラブちゃんに集めて欲しかった情報は3つ。
①ヘルメット団の構成と動きの傾向
②アビドスを狙うヘルメット団の主犯もしくは雇い主の正体
③アビドスが狙われる理由
「まあヘルメット団はあんたもわかってる通り不良の集まりよ、組織も大きいけど所詮はただの不良で大体は下っ端の集まりだから基本的に個人の実力は大した物じゃないけど」
銃が効かない身体だから難なく鎮圧は出来たけど、普通に考えれば躊躇せず発砲してくる生徒を10人以上相手にするのは厄介だし、実力はなくとも頭が回る指揮官が1人いるだけで大きく化ける時もある。
だからこそ、現状の組織に不満を持った幹部格のラブちゃんと手を組めたのは大きい。
「最近になって妙なのが組織の中でも下っ端の子達が何人か急に消えた事。ヴァルキューレに問い合わせても捕まった訳じゃないしかと言って噂になるほどのやばいことをやってたわけでもない」
『上の子達はそれをどう思ってるの?』
「……さあ、知ってるとしたら上の連中だけど聞いても適当にはぐらかすだけ、消えた中には私の部下もいるからあんたも何か知ってんなら教えてもらうから」
悪い組織なら、下の子たちを切り捨てに使った――。
って可能性も考えられるけど。
この世界で人が“いなくなる”って、結構目立つ、数人どころじゃないなら、なおさら。
まだ断定はできないけど、主犯がわかれば……まあ、大体の構図は見えてくるかもね。
「……それで、私達は主に業者、犯罪者、時には不良生徒から雇われて報酬さえもらえれば学校を占領するなんて事もやったりするわ」
知りたいのはその3つのうちどれがアビドスを狙いたがっているのか。
「あの数を動かすならそう、悪徳業者ってとこ?。だから……カイザーコーポレーションとか」
カイザーコーポレーション、風の噂によれば経営方針は"儲かればそれでいい"という悪徳企業。
合法と非合法のグレーゾーンで上手く立ち回って利益のためなら平気で噓をついたりとか。
時には武力による実力行使も辞さないらしい。
当然お金も沢山持ってると……。
「そんで
……
――
――
――
『タコのマークを持つ組織は何でこうも……まあ良いや』
……大体、今のアビドスがどういう状況か、見えてきた。
さて、どうしたもんかなぁ……。
借金を返したところで、それじゃ根本的なことは変わらないし。
それに、返済した金はたぶん――ヘルメット団の財布に流れてる。
そういう仕組みなんだろうね。
いっそロバートにお願いして、会社ごと潰しちゃうのが一番手っ取り早いかも。
……まあ、そこまで動いてくれるかは、ロバートの気分次第だけど。
「……あんたは下っ端の子が行方不明になるのとカイザーが関係してると思う?」
その答え出すにはまだ情報が足りない。
ヘルメット団が妙になった=カイザーが原因?
とは出来ない。
ヘルメット団がおかしくなり始めた理由。
それを知ってるやつが幹部にいるなら、カイザーとの線もつながるかもしれない。
でも、もしそこで"関係ありません"ってなったら……うん。
僕とラブちゃんが一緒にいる理由がちょっと薄くなっちゃうし……まだ戦力として残したいな。
『その話した幹部の顔か……まあ、特徴とかわかる?。ラブちゃんが怪しられるのもアレだし……僕が直接お話を聞いてみようかなって』
「……これで、あんたと私の話はお終い。次は私の話よ」
さて……距離はあるけど、包囲するみたいにゆっくりと近づいてきてる。
……足音、呼吸、重心の揺れ……たぶん、不良生徒たち。
『嵌めた?にしては妙に落ち着いてるね、それとも悪い事には慣れてるからかな』
「ええ、これからやるのはアンタを巻き込んだ個人的な喧嘩よ」
……なるほど、あって間もない僕を利用して反旗を翻す気なんだ。
「今ここに100人くらいの不良生徒達が向かってきてるわ、狙いはあんたよ」
今の僕が不良包囲で倒されるとは考えてないけど、僕一人に本気なのは確かなのかも。
こっちの武器は盾と……拳、うん。
非殺傷的でいいね。
『……あれ?』
個人的な喧嘩?。
僕は巻き込まれた?。
『逃げないの?』
「はぁ?、なんでよ」
『いや、だって……逃げれば良くない?』
「私は喧嘩するって言ってんのよ……それなのに本人がいなかったら喧嘩じゃなくなるでしょ」
『その喧嘩に関係ない僕は?』
「……」
……まあ、いいや。
ヘルメット団は、僕を倒すために動いてる。
カイザーコーポレーションは、その背後で学校を奪おうとしてる本命。
細かいところは後で整理すればいい。
今は、とりあえず簡単な図に当てはめておこう。
……なんか、違うな。
自然にこう考えたはずなのになんか、足りない。
何かを見つけれてない、必要なものじゃないけど……見落としたくないもの。
なんだろう?。
なんだっけ?。
なんだったかな。
ああ、そうだ。
関係あるかどうかじゃなかったな。
『いや……関係ないかどうかよりも、まず君には困ってることがある』
自分の部下が訳も分からず突然消えた。
何か知ろうとしても上の幹部は何も喋らない。
探そうにも部下と自分のためにお金を稼ぐので精一杯。
それでも諦めたくないから僕を口実に不良を集めてそれで皆を倒して――。
『上の幹部に口を割らせようって言う算段ってわけかな?』
「……まあ、そんなところよ。今更何言ったってもう遅いから」
『ねえ、ラブちゃん』
「なによ」
『ほんとに良いの?、組織を裏切って……なんなら、君の部下も危ないかも知れないのに』
「うちの部下を知らないところで使い捨てにする組織に居続ける方が危ないでしょ」
『確かに、それじゃあ完全に包囲される前に約束をしよう』
――ひとつ、離れないこと――
――ふたつ、何かあったらちゃんと言う事――
――みっつ――
『今できないことは置いて、出来ることを精一杯やること』
「……なにそれ」
さて夜でも、銃撃戦になれば当然騒ぎにはなる。
まあ、念のための”保険”くらいは効いてくれると思うかな。
朝のうちに戦車を壊しておいたのは正解だったかもしれない。
結果として、来てるのは一台だけで済んでる。
その分、人の数は多いけど。
「あんたこそ本当にいいの?、巻き込んでおいて……その。」
『僕は君を買収して、ヘルメット団は君の信頼を捨てた。』
「……」
『そうじゃなかったっけ?』
「……そうね、確かにそうだったわ」
一度目は学校の襲撃から撤退させただけ。
二度目は叩きのめしたというよりは追い出しただけ。
三度目は?。
『三度目はもう“撤退”じゃ済まさない』
【復元されたSHIELDの資料:№.610 AGENT TRIGGER】
SHIELDによって作られた人造人間(LMD: Life-Model Decoy)
本個体はS.H.I.E.L.D.によって開発された新型L.M.D.の一種。
“AGENT TRIGGER”として特化された役割を担い、諜報および対超常戦闘任務に投入される予定。
本体構造には特殊カーボンとビブラニウムを用いており、極めて高い耐久性・衝撃耐性を有する。
植え付けた記憶から状況適応力・戦闘判断能力持ち合わせまるで本物の――
※O.D.M.発動時、肉体出力・反応速度・装甲耐性が飛躍的に上昇。代償としてエネルギー消費が増大するため、長時間の運用は非推奨。
【追記】
現行トリガーは従来比で出力が約25%まで低下。
O.D.M.の発動は不可能。
四肢に損傷、右眼は欠損状態。防弾性能は良好だが、戦車級の砲撃に対しては回避を推奨。
統合された新人格は高い知性を有し、記憶および人格の混濁は確認されていない。
ただし精神的成熟度は推定11歳程度であり、行動予測は困難。