もう一度始まる魔人内戦   作:アルテミス

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文章書くのが想像より難しく、意外と時間がかかりました....すいません....。


状況確認

「――なるほど。俄かには信じ難いですが....そのような事が....」

 

ストロガノフが顔を上に向け、困惑を押し隠すように淡々と要約を口にする。

 

「つまり、ケイブリス様は一度ホーネット派を討ち倒し、“カクカクシカジカ”を経て魔王になったと」

 

「あぁ。“カクカクシカジカ”だ」

 

 ストロガノフは一度目を閉じ、静かに呼吸を整えた。

 大元帥という肩書きの元全軍を束ねる身分として、普段から理不尽ごとの対処には慣れている。

 だが、そんな彼でも、今回ばかりは頭の処理が追いつかない。

 

「……その後、どういう訳か“カクカクシカジカ”を経て、再びこの時点に……と」

 

「“カクカクシカジカ”だ。ぶっちゃけ俺も良く分からん。良いから細かいことは省け」

 

 ケイブリスが、話を打ち切るように言い放つ。その語気には、“考えるな、感じろと”いう無理難題な意図が見て取れた。

 

 ....まぁ、そんな主の姿だが、嘘を吐いている様子はない。というか、仮にこれが嘘だというのなら、それはそれで出来過ぎていて恐ろしいというものだ。

 

『今がLP6年だとぉぉぉぉぉぉ!? テメェもういっぺん言ってみろやぁぁぁストロガノフゥゥゥゥゥ!!』

 

 と、主が自らの胸ぐらを掴みかかってきてそのまま癇癪を起こした時には、ストロガノフも何が何だから分からずであったが、もし今語られたような事情が本当であるならば、その行動にも一応の納得はできる。

 

「僭越ながらもう一度お聞きしますが...夢、では無いのですね?」

 

「あぁ。有り得ねぇ。たしかに数千年、まともに眠った記憶なんざ無ぇが――あれが夢な訳がねぇ。有り得ねぇんだ」

 

「....ふむ」

 

 ストロガノフは目を細め、わずかに頷く。

 

 主が嘘をついている様には見えない。そもそもそんな嘘をつく必要も無い。だが、かといってその語った内容を、本当にそのまま鵜呑みにするのは――あまりにも現実離れしていた。

 

 ゆえに、ストロガノフは未だ半信半疑の立場にある。

 

 最も蓋然性があると見なせるのは、“ケイブリスが夢を見て、それを真実だと信じ込んでいる”という可能性。

 本人は強く「有り得ねぇ」と言い切っているが、それでもなお、「本当に時間が巻き戻った」などという荒唐無稽な話よりは、夢の中の出来事を現実と思い込んでいる――その方がまだ理屈に合う。

 

 客観的な推測からすれば、考え得る最も現実的な答えは後者――つまり、ケイブリスが“そういう夢”を見た、という方であることは明らかだった。

 

 

  ――そして、かくいうケイブリスも、

 

 

(……なんか調子乗って“有り得ねぇ”とか言っちまったけどよ。いや、まぁ……有り得ねぇ話じゃねぇ...んだよよなぁ? なあ?)

 

 内心では、さすがにどこかで引っかかっていた。

 

 確かに体感は本物。だが、それ以上にその仮定の有り得なさに、ケイブリス自身も徐々に自信を失っていた。

 

(……今まで観たのは実は夢で、俺が単に、寝ていただけ……? いや、夢にしちゃ凝りすぎだろ……でも、“夢を叶えたと思った死んじゃって、そこで実はほんとに全部夢でした”なんてオチ、よくあるしなぁ……)

 

 思考が徐々にぐらついてくる。

 “夢だったのかもしれない”という可能性が、じわじわと現実感を持ってケイブリスの脳内に侵食してくる。

 

(……いや、でも、俺様があそこまでやって、全員黙らせて、魔王の座まで行って、で……目が覚めたらチャラでした、って――そんなバカな話、あるかよ....いやでも、最後には殺されてるし、そう考えたらあっちが夢であった方がラッキーなのか? ……いや、そうじゃなくて! 夢なら夢で、そこは勇者が来るとこからにしとけよ!! なんでこっからなんだよ、クソが!!)

 

 夢なら夢で、せめて魔王になった後の場面から目覚めてくれと、ケイブリスは内心毒づいていた。

 

 よりにもよってホーネット派を潰す前まで巻き戻るとなると、また魔王になる為に色々リスクを踏まなければいけないし、何よりまた内戦を終わらせてから人類界へ侵攻となると――考えただけで、単純にだるい。

 

(やってられっか、ボケが)

 

 苛立ちで奥歯がきしむ。今までのことをもう一度、一からやり直すなど――考えるだけで頭が痛くなる。

 

(……まぁ、それならそれでも、やるけどよぉ)

 

 

 ケイブリスは心の中でそう呟き、大きく溜め息を吐いた。

 今はLP6年、そして人類界に侵攻し、魔王となるまでが前回はLP8年。

 

 つまり、2年である。再び同じ様な動きを経て、2年を経れば、自分は再び魔王になれる。

 2年というのは、数千の年月を生きて来た魔物からすれば、決して無駄にして良いという訳ではないが、それでも言ってしまえばはしたような年月である。

 

 勿論、今まで過ごしてきた中にもあった、平和で平凡な年月と比べればリスクも密度も違う。

 魔人ワーグとの駆け引きや魔王城での決戦、人類との正面衝突、カオスマスターとの対峙。

 リスクもあれば波乱もあった。特にカオスマスターが世界総統になって人類を束ねたなんて報告を聞いた時は――今思い返しても、肝を冷やしたものである。

 だが、それでも振り返れば、自身の命が本当に危うくなった瞬間など一度もなかったはずだ。戦局は常に、自分にとって勝てる物であった。

 

 そして何より、現在進行中の派閥戦争においてはこの時点で既に、勝利は確定的だったはず。

 

(....へっ、意外と悪くねぇんじゃねぇの?)

 

 そこまで思い至り、ケイブリスの口元が自然と吊り上がる。

 

 ――そうだ、あれが夢だったにしろ、どちらも現実で今巻き戻ったにしろ関係ねぇ。状況は圧倒的に自分に有利。ならば、むしろ好機だ。やり直しとしてありがたく使ってしまえばいい。

 

 カ、カ、カカミーラさんとの関係も、やり直せる。今度こそカカカカミーラを...取り込んで...。あぁそうだ、ホーネットの野郎とももう一度ヤれるじゃねぇか。前回は正直、ヤり足りなかったんだ。もう一回、あのクソアマで遊べるってだけでも、これは中々にいかしてんな。

 そして何より勇者だ。前回はあのクソガキがJAPANの奴らを殺して無理矢理能力を覚醒させやがった、なら今回はそのクソガキを見つけて直々に引き裂いてやればいい。

 

(へっへっへっへ...)

 

 大きな大人程のサイズのある人指し指を顎に当て、ケイブリスは妄想を膨らませる。

 

 そうだ、状況は圧倒的に有利なのだから、好きにやればいいののだと、彼は考える。

 

(....ん?)

 

 だがその時、唐突に、ストロガノフが言った最初の言葉が脳内でポツンと浮かび出した。その時点では、時が戻ったという有り得ない事象の方に気を取られすぎて、その言葉の本来の重要性に気付かなかったのだが。

 

「おい、ストロガノフ。お前、最初、カスケードバウが陥落したとか言って無かったか?」 

 

「....えぇ。なので、急いでご報告をと」 

 

「....」 

 

 ケイブリスは再び思考に耽る。今回は妄想とは違い、今度は純然たる分析。 

 

 まず、カスケードバウとは、魔物界中心に位置する荒野であり、派閥戦争においては両陣営が血で血を洗うような激戦を繰り返した要衝である。

 最終的にケイブリス派がホーネット派から奪取することに成功し、そこから一気に戦況は自軍有利へと繋がった。この拠点は、ホーネット派の重要拠点であるシルキィ城、そして自派の要であるケッセルリンク城にも繋がる、まさにケイブリス派にとっては攻勢の起点となっている場所だった。

 

 それが今、奪還されたという事は、つまり、今より攻守が逆転すると言っても過言では無い訳で――

 

 

 

「――あぁ、やっと起きました? ケイブリス様」

 

 その思考に、唐突に冷や水をかけられるように、一つの声が割り込んだ。

 唐突に割り込んできた声は、澄んでいて少年っぽい、そしてどこか馴れ馴れしい――妙な響きを持っている。

 

「...あァ? 誰だテメェ....?」

 

 唐突に思考を遮られ、不機嫌さを隠そうともせずにケイブリスはその声の主を睨みつける。

 魔物の頂点であるケイブリスが放つその眼光は、普通の生物であれば目が合っただけで意識を手放すだろう。

 だが、目の前の少年は、それを何事もないかのように受け流す。

 全身をぼろぼろの布服で包んだ、白髪の少年。

 

「おはようございます~....じゃなくて、今の貴方にはまず“初めまして”ですかね」

 

 そう言って彼は、ポケットからひょいと何かを取り出す。

 緑の塊。――ブロッコリーだ。

 そして何のためらいもなく、それをガリガリと噛みはじめた。

 なんだこいつ。舐め腐ってやがるとケイブリスがそう思った時――

 

 

 

「――ケイブピョン様」

 

「……はぁ?」

 

 唐突にストロガノフの口から出た、その呼称にケイブリスは数秒、固まった。

 怒鳴るでもなく、すぐに殴るでもなく、ただ眉をひくつかせたまま、その呼称の対象を睨む。

 

(……今、"ケイブ"、つったか?)

 

 聞き間違いかと思った。だが、どうやらそうではない。

 

 ストロガノフの顔は至って真剣で、冗談や軽口の気配など一切なかった。というかそれ以前に、ストロガノフがこんなくだらない冗談を言うような人物ではない事を、ケイブリスは誰よりも知っていた。

 

(……"ケイブ"っていやぁ....お前....)

 

 ケイブリスはすぐさま、自分の創った二人の使徒を思い出す。

 ケイブワンに、ケイブニャン。どちらも過去に自分が作った使徒であり、最強俺様使徒として自分の名前を与え分けた存在。となれば"ケイブピョン"と呼ばれたこの眼の前に居る存在もまた――

 

「そんなに睨まなくても。僕は貴方の三体目の使徒、ケイブピョンですよ。ほら、この耳、ピョンピョンしてて可愛くありません?」

 

 ケイブリスが言葉を発するより早く、白髪の少年――ケイブピョンが、ひょいと割り込む。

 無表情で言葉を綴りながら、頭の上にちょこんと乗っている、とってつけたようなうさ耳を指差した。

 そして次の瞬間、彼はまたしても前触れもなく、またブロッコリーをガリガリと齧り始める。

 

(....いや、こいつ、うさぎの癖になんで――)

 

「まぁ、本題に入りましょうか。今、ケイブリス様はいかにも“不思議”って顔をされてますね。えぇ、分かります分かりますよ。なので、今居る世界について、僕が一から解説してあげますよ」

 

 ブロッコリーを咀嚼しながら、あくまで平坦な口調で、”いや、そっちもそうだが”と考えているケイブリスを置いとけぼりに、少年は言葉を続ける。

 

「端的に言うとですね、貴方、一回死んでるんですよ。勇者にやられて。で、本来ならそれでおしまいなはずだったんですが……上が、結構貴方のこと気に入ったみたいでして。『もう一回、こいつの物語を見たい』って。それで、箱庭をそのままに、別の世界を作って、そこに貴方を“ぶち込む”ことになりました....あ、上ってのは神の事です。何となく知ってるでしょ? 貴方も」

 

 そう言われて、ケイブリスは心の中で納得する。

 

 エンジェルナイトによるドラゴンの絶滅や、魔人への無敵結界という新しい概念の付与。その他新たな魔王の誕生など、それら超常現象を見て来た彼にとって、この世界を操る神の存在と言われれば、むしろ心当たりしかなかった。

 

 それがまさか自分に干渉する日が来る等、夢にも思わなかった訳だが。

 

「良かったですねぇ。前回の記憶を引き継いでの、強くてニューゲーム、ですよ」

 

 ケイブピョンは、にこりと少し微笑む。

 

 そしてすぐに表情をポーカーフェイスに戻し、仕様書でも読み上げるかのように、抑揚のない声で再び言葉を綴り始める。

 

「いや~大変だったんですよ? システムにプログラムまで、全て移植して。過去データの洗い出し、整合性チェック、並列展開、同期処理……みーんな残業続きで顔が死んでました。僕もね、もう目の下のクマひどくて」

 

 そして再び、ブロッコリーを齧る音だけがガリガリと響く。

 

「……なんですか、その顔。貴方、本来ならあのまま死ぬはずだったのを――僕たちがわざわざ“復活”させてあげたんですよ? それでその態度は、心外にも程があるんですが」

 

 ケイブリスがケイブピョンのその言葉を聞き、「いやだって――」と言い返そうとした瞬間、またしてもケイブピョンが先に言葉を塞いだ。

 

「『なんでよりにもよってここから』って疑問ですか? 決まってるじゃないですか。創造神様は、“面白い物語”を見たいんです。魔王になって、好き放題して、そのまま千年停滞する物語なんて、そんな分かりきった駄作、誰が見るんですか? ....僕はね、別に貴方を特別気に入ってる訳じゃありません。ですが、それでも、どちらか選べと言われたら――まぁ断然、“今からの貴方”の方が、見応えあると思いますよ?」

 

「......チッ」

 

 ケイブリスは一度舌打ちを鳴らすが、ケイブピョンの言葉にそれ以上は追求しなかった。

 

 理由として一つは相手の言葉に一定の納得性があった事。

 

 実際、何の変哲も無い魔王の一千年等、客観的に見た場合、確かに劇場映えするかと言われれば否と言わざるを得ない物ではある。

 

 そして二つ目に、その事柄が半ば、先程自分の中で決着がついていた事。つい先ほどこの”巻き戻り”を、”やり直し”として扱う決心をしたケイブリスにとって、これは言わば既に終わった話。勿論魔王の状態まで戻してくれるというのであればそれには乗るが、そうじゃなければそれはそれで今の世界のまま進むだけである。

 

「....で、あらすじはここまでで、今から本題の本題ですね。今の貴方の疑問は、何でカスケード・バウが落ちたか、そこですよね?」

 

 ケイブピョンのその言葉を聞き、ケイブリスは思い出したように眼を見いて、そしてケイブピョンに向かって人差し指を突きさす。

 

「あぁそうだ。あそこにゃ大量の兵士に、魔人も配備させてる。そして何より、カスケードバウならケッセルリンクの野郎が夜にゃ動けんだ、落ちる訳なんてあるはずがねぇ」

 

 カスケードバウは重要な拠点。故に、ケイブリスもそこには大量の戦力を投入しており、更に夜にはケッセルリンクに視察を行わせている。

 故に、ホーネット派の戦力ではいくら総力を上げたとしてもそこを陥落する事は出来ず、同時にそれが派閥戦争において中盤からホーネット派を泣き寝入りさせていた要因の一つでもあった。

 

「――まぁ、本来はそうでしょうね。”本来”、は」

 

 ケイブピョンが意味ありげにそう語ると、ついに齧り終わったブロッコリーを、幹だけ後ろにぴょいと投げ捨て、目線をストロガノフに移す。

 

「ストロガノフさん、地図を」

 

「....ハッ!!」

 

 ケイブピョンとケイブリスのやり取りに、ただ唖然としていたストロガノフ。

 だがそこは流石の大元帥。思考が固まる事無く指示を冷静に聞き、そして魔物界の地図を取り出し、円卓の上へと広げた。

 

「あん? 何してんだ? カスケードバウの場所くらい流石に分かってんぞ」

 

「ま、聞くより見ろって話です」

 

 ケイブピョンがポケットをごそごそと漁り始める。すると、そこから何やら不思議な長方形の塊のような、そんな何かを持ちだした。

 

「スワートホンです。これを地図に当てれば....あっ、ほら」

 

 ケイブピョンの持ちだした“スワートホン”とやらから、大きな映像がモニターのように地図の上から映し出される。

 

「うおっ!? なんじゃこら!?」

 

「今のカスケードバウの中継映像です。映像の出来事が、実際に今、現地で起こっていることになります」

 

 その光景に、ケイブリスはぐっと身を乗り出し、浮かび上がる映像を覗き込む。

 目を細め、眉を吊り上げ、そして――

 やがて、眼を上へと泳がせながら、喉の奥からじわりと色のついた息を吐き出した。

 

「....へっへ、これを使えりゃ、今頃カミーラさんのあんな姿も....」

「馬鹿な事は考えないでください。ちゃんと見ますよ、ほら」

 

 ケイブピョンが無表情に制止しつつ、指を映像に向ける。ケイブリスはそれにぶつくさ言いながらも、目を映像に戻した。

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 モニターに写し出された戦場。それは正しくカスケードバウを象徴する、荒れた荒野であった。

 

「追え追えー!!」

 

「一人でも多く討ち取るのだ!! 首を多く獲った者は魔物隊長への昇格も夢ではないぞ!!」

 

 そこで行われていたのは、両軍が激突する熾烈な戦闘。

 ――ではなく、一方がもう一方を追撃し、蹂躙する、一方的な掃討戦であった。

 

「俺……故郷に戻ったら、あの子と結婚するって約束して……」

 

「馬鹿!! そんなフラグ立ててんじゃ――」

 

 ――ドォン

 

 と、その言葉が終わるよりも早く。赤い炎が突如として地を爆ぜ、煙と轟音を撒き散らす。

 爆風のあとに残されたのは、ただ焼け焦げた、累々たる魔物の屍。

 

「魔法使第13連隊!! 第一掃射完了!! 第二掃射までの時間、約2分!!」

 

 トンガリ帽子を被った魔法兵たちが、整然と隊列を組んで詠唱を再開する。

 彼らの放つ一撃一撃が、確実に敵を屠り、戦場に火花と絶叫を撒き散らしていた。

 

 退却するケイブリス派。それを背後から追い詰め、容赦なく葬ってゆくホーネット派の軍勢。

 地面に突き刺さった旗印がなぎ倒され、戦線はすでに崩壊している。

 

 ケイブリス派が行えるのは、少しでも損害を抑えるべく、敵を足止めする事と、それが終われば逃げる事。

 既に、勝機は失っている。であれば、それが最善策である事は誰の眼から見ても明らかだ。

 

「おい....あれ....」

「あん? どうした? さっさとあいつらを追いかけ――」

 

 ――その瞬間だった。遠くの方で、白き光が、ふわりと芽吹くように輝く。

 その光に気づいた一人の魔物兵が、目を細めた、その、わずか一拍後。

 

 ――白色破壊光線

 

 白き閃光が、横一線に戦場を薙ぎ払う。

 音も、叫びも、形も、全てを飲み込んで――直線状の地形ごと、完全に削ぎ落としたのだ。

 

「んっん~♪ この戦場とソルジャーの数……これぞ正に、沢山キルする、ベストチャンス!」

 

 甲高い声と共に、それは現れる。

 そして奇妙に楽しげな笑みを浮かべながら戦場に飛び込み、すぐさま魔法を連射し始める。

 幾度となく打たれる閃光が、追撃するホーネット派の隊列を次々に吹き飛ばしていく。

 

 この戦場で、ケイブリス派が取れる最善策は明白だ。敵を足止めし、時間を稼ぎ、そして逃げること。

 

 ――だが、この魔人に、そんな常識は通用しない。

 

「ユーらの魔力、ベリーナンセンス。だからミーの魔力、ルックするOK? それでミーはルンルン気分、ユーらはカスケードバウの塵になる。これぞ一つの、メークドラマー!! クケケケケケケ!!」

 

 

 ――魔人・レッドアイ。

 魔法LV3という圧倒的な魔法の才能の持ち主であり、更に強力な寄生先を得る事で、無類の戦闘力を産み出す最凶の魔人。

 特に今の彼が寄生している闘神ガンマは、無敵結界を覗けば魔人と同等の戦闘能力を誇る個体で、それを媒体にして操っている現在の彼は、魔人の中でも正に四天王と同等とも言える存在として危険視されている。

 

 彼の放つ魔法を真正面から受け止めることのできる魔人は、本来ホーネット派において極めて限られている。

 同じく圧倒的な魔法の才で相殺可能なホーネット、そしてリトルを身に纏い、分厚い装甲で耐え抜くシルキィ・リトルレーズンの、わずか二者のみ。

 しかもシルキィに至っては、その魔法を受け止めるのが関の山で、装甲は灼かれ、魔法の熱は時に彼女の本体まで深く食い込む事もある。

 ゆえに、ホーネット派にとって魔人・レッドアイという存在は、派閥戦争において殆ど手の付けようのない、恐るべき脅威的な存在。

 

 

 ――そう、”本来の世界”では

 

 

「――はぁ、ほんと、最悪です」

 

 その声が聞こえた瞬間、レッドアイの放った白色破壊光線とはまったく逆方向から、黒い閃光が一直線に走る。

 

 黒き破壊光線。それは白き閃光と衝突し、空中でぶつかり合う。

 破壊と破壊のエネルギーが衝突し、周囲の空気を圧し潰しながら膠着する。

 

 だが、徐々に、徐々にではあるが、黒は白を押し始め、そしてふとした瞬間、ダムが決壊するように均衡は破られた。

 黒の閃光が白を吞み込み、一直線に対象めがけ突き進む。

 

「な...オォッ...!?」

 

 その光景を見て、レッドアイはボディのエンジンを動かし、即座に右方へ跳躍。

 レッドアイの元居た場所に巨大な爆発が生じるが、幸い、爆熱の中心から離脱することで、愛しの闘神ボディに傷がつくのを防ぐ事には成功した。

 

 そして次の瞬間、魔法における知識ならば右に出る者の居ない、レッドアイは既に理解していた。

 今飛んできたのは白色破壊光線の亜種、さらなる破壊力を備えた闇属性魔法《黒色破壊光線》。

 

 そして、それを放てる魔人は自分とホーネットを除けばただ一人。

 

「....オォーウ、リクトボーイ....」

 

 レッドアイの睨む先に、ゆっくりと影が姿を現す。

 ほぼ黒一色の服装に、膝下までしかない半ズボン。そして、白と黒に分けられた特徴的なツートンの髪色。

 その少年の容姿を見間違える者など、この魔物界においては存在しない。

 

 

 ――魔人・リクト=アスベール。

 

 ホーネット派が誇る、魔法において最も高い才を持つ魔人の一人。

 魔物界において、攻撃魔法を極めた三大魔人としてレッドアイ及びホーネットと共にその名を刻み込む、上位魔人の代名詞的存在。

 

「....また、貴方なんですか? レッドアイ....また貴方の相手を、僕がさせられるんですか....?」

 

 

 

 戦場に、一人目のイレギュラーが現れた。

 

 




オリキャラのレベル等の細かい設定、文章に落とし込むの難しいのでここで書きます。多分以降もそうするかと思います。


魔人 リクト=アスベール

【挿絵表示】

Lv155/155

闇魔法Lv2
光魔法LV2

闇魔法と光魔法を扱う、少年の魔人です。強さ的にはレッドアイとほぼ同じくらいに設定。幼い少年という事もあってフィジカルはほぼからっきしですが、そんなもん関係ないレベルの魔法でゴリ押すタイプです。あんまり言うとあれですのでこれくらいで。
ちなみにモデルが居るのですが....良ければ次の話等で当ててみてください。特に話し方の内容等かなり参考にしてます。

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