高校を卒業して僕は上京した。
ちょっとした夢を見て上京して、何も成さずに諦めた。好きなこともやり続けていれば嫌が勝つこともある。良い学びだ。
その後は上京してからの友達とシェアハウスをしながらフリーター。やりたいことも特になく新しい夢なんて当然無いし金もない。充実しているとはとても言えないけど、何故か以前よりも楽な気分だ。
でも、最近よく思い出す。
中学3年生の春、人殺しになったことを。
彼は中学2年生の夏頃、急に転校してきた。季節外れだなと思って本人に聞いてみたら、どうやらイジメを受けていたらしい。少し気まずかった。
まあ、だからなんだという話ではあるけど、昔のこととかどうでもよかったし。
話してみると結構楽しいやつだった。
当時、2軍の下もしくは3軍の上あたりに属してた僕はそこそこ友達もいて彼にもその仲間になってほしいと思った。
今思えば、そこから間違っていたのかもしれない。
彼は、普通を生きている僕たちからすると少し奇妙だった。
テストを真面目に受けずに明白に0点を取りにいく。
放課後や昼休みといった自由時間には必ず単独行動をする。
何があっても何を言われても静かに笑っている。
今思えばあまりにもくだらない奇妙とも未知とも言えないような、ただの個性。
でも、狭い学校社会じゃその小さな違和感が大きな問題になる。
わからないからだ。皆と違う。自分と違う。だから接し方がわからない。みんな子どもだったから仕方ない。
ただ、自分で言うのもなんだけど、僕の所属してるグループは結構クセモノが多かった。
だから、彼も馴染めるかと思ったがどうにも微妙にうまくいかなかった。
悩んだ僕は彼に思い切って昔のことを聞いてみたり結構踏み込んだ話をしてみた。
当時は僕も思春期特有の悩みが沢山あったから話題には事欠かない。もちろん、彼の話のほうがハードだったけど、気圧されてたら会話にならないからね。
結果は良好。僕を通して僕の周りにいる友達にも心を開いてくれた。
そして、最悪な結末を迎えた。
中学2年生の冬、彼はパタリと学校に来るのを辞めた。理由は不明。
一時期はその事を話したりもしたけど、彼は元々虐められていたということや普段の奇行もあり、皆「まあ、仕方がない」で済ませてしまった。
ここまで読んでくれた人はきっとコレを見逃した僕が自責の念で自分のことを人殺しだなんて言っているとでも思っているだろう。
本当の問題はここからだ。
学年が上がる間際、また彼が登校するようになった。
僕は嬉しかった。
また、これでいつもみたいに皆で楽しくやれるって。
いつもみたいに悪ふざけや冗談を言い合えるって。
そして、言ってしまった。
「お前誰だっけ」
軽い冗談だった。
僕らは友達で冗談を言い合える仲だった。
彼がいない間でも、僕の中でそれは揺るぎない真実だったのに。
当時はこんな独りよがりな友情で他人を傷つけていた。
次の日から彼はまた学校に顔を出さなくなった。
またか。しばらくしたら来るでしょ。と何か致命的なことをしてしまったかもしれないと怯える自分を騙すように僕は言い続けていた。
そして、春。
彼は僕の家から徒歩十分程度の場所で首を吊っていた、らしい。
以上が、あの春の出来事の顛末。
僕だけが知っていて、皆が見ないようにした真実。
今、思うに僕は後悔する資格も謝罪する資格も無いのだ。
だって僕は、何もしなかったし、何も言わなかった。
後悔も謝罪もあの時にするべきだったのに。
ただ、僕はこれからも生きていく。
どうしようもない愚か者として。
本当にある話だったらどうするよ