現代魔法術はアプリで効率化!私は私の魔法術を極めたい 作:サモア リナン
教室の窓から差し込む午後の光が、歴史の年表を淡く照らしている。
生徒たちがノートにペンを走らせる中、黒板には大きくこう書かれていた――
「人間国の歴史──200年間の平和と、20年前の大災禍」
「──さて皆さん。
200年ものあいだ、我が人間国は魔族との接触を一切なくし、平和を享受してきました。
しかし二〇年前、いまだに原因が解明出来ていませんが、境界が“砕かれた”ことにより──」
歴史教師・若林悠子先生は、ゆったりとした口調で語り始める。
その声には、興奮や畏怖ではなく、淡々とした重みがあった。
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境界侵入の顛末
「その夜、人々がまだまどろんでいた深夜二時頃。
外灯がほの白く街を照らす頃──突如、壁の向こうから魔族やモンスターの群れが現れました。
──最初は“都市伝説だ”と笑い飛ばされました。
しかし、次々と襲来した彼らは、スマホの画面に逃げ惑う人々を映し出し、SNSは瞬く間に恐怖の渦に飲み込まれました。
国境警備隊と多国共同政府の《境界管理軍》が総動員され、法術協会は古式魔術と最新科学技術を結集。
ですが、初動の混乱は想像以上で……」
生徒たちのペンの音が一瞬止まる。ぼかされてはいるが当時の凄惨さを隠しきれない映像がホログラムとして表示され、教室の空気が重くなる。
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復興への道
「最初の一年──瓦礫と炎の中で、私たちは学びました。法術協会と多国共同政府はいがみ合っている場合ではないと。
魔術師は透視呪文で内部構造を明らかにし、
科学者は自動再建クレーンを遠隔操作し、
ヒーリングケアアプリと古代治癒術で命をつなぎ、
《アトラス種子》は食料危機を救いました。
五年後には、魔法配合アスファルトが道路を蘇らせ、
自動運転バスは《風切りの符》と同期し、
《結界発信塔》は科学センサーと連動して魔族の侵入を阻止。
十年後、瓦礫は消え去り、
復興は“完了”と宣言されました──」
悠子先生はホログラムを消し、昔ながらの黒板をひと撫でし、白いチョークの粉を払い落とす。
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魔法×科学の日常
「――今ではどうでしょう?
学校の帰り道、暗ければ、あなたたちはスマホで“光”を放ち、
街灯の不調はすぐに自動修復され、
制服に縫い込まれた魔導ファイバーが体調をモニタリングし、
薬局の鎮痛剤は《テンプル錠》と呼ばれています。
魔法も科学も、もう“特別”ではない。
インフラとなり、日常となっています。
しかし忘れてはなりません。
あの夜、境界の向こうから飛び込んできた異形の影を。
そしてそれを食い止めた、ランカーと呼ばれる討伐者たちの奮闘を──」
先生はゆっくりと振り返り、教室を見渡す。
「次の授業では、あなたたち自身の手で、“古代魔法術”を体験してもらいます。
法術アプリとの違い、メリット・デメリットを君たち自身で感じ取ってほしい、そしてスマホが無くなっても最低限、身を守る術を学ぶべきだからです」
教室の隅で、小さく息をついた陰キャでオタクでやや厨二女子──草薙春佳奈(はるかな)は目を輝かせた。
「……やっと来たか、私の時間」
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──次回:古代魔法術研究部
やること肩代わりしてくれた事に感謝