現代魔法術はアプリで効率化!私は私の魔法術を極めたい 作:サモア リナン
目覚めてから数日が経った。
相変わらず、頭の中では“もうひとりの自分”が囁いている。
最初は戸惑った。怖さもあった。でも、今では――むしろ頼もしい。
私はその存在に「ネオノア」と名付けた。
もう一つの脳。補助する意識。思考の補佐。
……まるで、私専用のAIみたいなものだ。だったら、それに相応しい名前を与えたかった。
そして今、私は“ネオノア”と実験を始めている。
「ネオノア。私の身体、任せるよ」
意識のバトンを渡す感覚。自分の体が“他人のもの”になる、不思議な感覚だった。けれど、それが怖いとは思わなかった。なぜなら、ネオノアは――間違いなく“私”だからだ。
意識の中で操作権を渡すと、私の身体は別人格に操られているように動き出す。でも、それは不気味なものじゃなかった。スムーズで、正確で、無駄がなかった。
その間、私は思考に集中する。
そう、古式魔法術――
詠唱と構築による、スマホアプリ全盛の今では時代遅れな魔術。
繊細で、複雑で、非効率で、それでも私の心を奪ってやまない“本物”の魔法。
ネオノアが身体を操作し、私は構築に専念する。
逆に、私が身体を使い、ネオノアに構築を任せる。
その両パターンを試していくうちに、私たちは“共に存在する”ことを受け入れていった。
……これが、あの戦いの代償。
星璃愛を守れなかった私に、神様が与えた罰であり、償いであり――
そして、再び立ち上がるための“力”。
私は決めた。
この力を使って、星璃愛を探し出す。
そのために、まずは日常に戻ることから始めた。
学校では、みんなが驚いた顔をしていた。そりゃそうだ。意識不明の重体から戻ってきた生徒が、平然と授業を受けていれば誰だって動揺する。
でも、私はもう“普通”には戻れない。
ネオノアが私の身体の調整を補ってくれているから、動きは前よりキレがある。おかげで体育の授業では運動音痴キャラが崩壊しかけたし、手先の器用さも段違いになった。
放課後は、法術協会へ向かう。
香坂さんの紹介で、特別に魔力波形の解析や星璃愛の行方に関する情報共有を受けている。けれど、あれから彼女の痕跡はまだ見つかっていない。
何もかもが、あの日で止まっている気がして――悔しかった。
でも、諦めない。絶対に。
その日も、協会で数時間の作業を終え、校門をくぐったときのことだった。
「――あのっ!」
呼び止められて振り向くと、そこにいたのは――見覚えのある男子生徒だった。
小柄で、真面目そうな雰囲気。たしか、前に学校で暴走したスライムから助けた――あの時の。
「……怪我、もう平気?」
「はいっ! ありがとうございました、あのとき……」
彼は深々と頭を下げた後、少しだけ躊躇って、それでも強い声で言った。
「……俺、強くなりたいんです。誰かを守れるくらいに。だから……俺にも協力させてください!」
一瞬、言葉に詰まる。
まっすぐで、不器用で、真っ白な眼差し。
私はその瞳に、どこか昔の自分を見た気がした。
「……本気で言ってる?」
「はい。足手まといになるかもしれないけど……でも、やれることがあるなら、やりたいんです!」
私は微笑んだ。
「――じゃあ、ついてきて」
そうして、新たな仲間ができた。
ネオノアと私。
そして、スライムから救った少年。
まだ見ぬ答えへと続く、道の途中。
この世界のどこかで、星璃愛はきっと生きている。
――待ってて、必ず迎えに行くから。
特急で10話まで書いた!
後悔は、ある。もっと推敲すれば良かったと!
だが、一定の満足感はある。鉄は熱いうちに打てとはこう言う事やな。