現代魔法術はアプリで効率化!私は私の魔法術を極めたい   作:サモア リナン

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第11話 戦闘は目的への到達手段の一つである

「……うまく頭が追いついてないね。直感も予測も悪くない。でも、その先。動きの終わりに気を抜かない“残心”ができてない。あとね、一瞬でも意識的に息を整えるタイミングを入れないと、体力の消耗が一気にくる。戦いは、短距離走じゃないから」

 

穏やかな口調で言いながらも、心の奥にはかつての自分への悔しさが滲む。

 

私も昔は、気持ちだけで戦っていた。

無我夢中で、ただ目の前の敵を倒すことだけを考えていた。

《多重思考》の力を得て、ようやく“戦い方”の意味が分かった。

 

もし、あの時この視点があれば――

星璃愛を、守れていたのかもしれない。

 

……だからこそ、彼には同じ後悔をしてほしくなかった。

 

「今は訓練だから何度でもやり直せる。でもね――

 本番でその一手が遅れたら、死ぬよ?」

 

 鋭くもどこか優しさのある声が、訓練場の静寂を切り裂いた。

 

 ここは多国共同政府の《境界管理軍》東京支部にある。特設フィールドの中央、息を荒げながら立ち上がるのは――神宮寺 太(ふとし) 以前、スライムから私が救った、まだ訓練生レベルの男子後輩だ。

 

本人には内緒だがカッコいい苗字な割に名前がコミカルだ。ご両親に何で、この名前にしたのか割と本気で問いただしたいレベルである。

 

ちなみに本人はちょうど良い感じの筋肉質だ、解せぬ。

 

 「っ……は、い……!」

 

 全身に擦り傷をつけながらも、彼はなおも立ち向かう姿勢を崩さなかった。目の前に立ちはだかるのは、Aランクランカーの一人、黒峰エイジ。攻防の緩急が読みにくく、一撃一撃が重く実戦そのもの。訓練とは思えない迫力だ。

 

 ――ふとし君の動きは、まだ荒い。フォームの崩れ、無駄な力み、感情の暴走。けれどその中に、彼自身の”可能性”は確かに見えていた。

 

 私はフィールドの外からその動きを見守りながら、《多重思考》を稼働させる。

 

 ――《多重思考》。

 私に覚醒した新たな能力。それは単なる思考の並列処理に留まらない。

 戦術分析、術式構築、感覚の予測制御、自動回避――それらを脳内で同時に“複数の自分”が処理していく思考システム。

 

 その補助をするのが、私の中に存在するもう一人の人格――ネオノア。

 

 ≪戦況分析完了。ふとし君の次の動作は回避重視のローアングルだが、黒峰のカウンターに捕まる確率88%。強制的に体重移動を促す言葉かけを推奨≫

 

 (…了解。さすがネオノア、いつも的確)

 

 「ふとし君、直感に頼りすぎだよ、腰が浮いてる!前に倒れるように受けて!」

 

 私の指示に、ふとしが瞬時に反応する。直後、黒峰のカウンターを受けることは出来たが、吹っ飛んだ。

 

 

私たちは、調査も続けていた。星璃愛――あの子の残した魔力の痕跡、そして手帳に記された“非認可の教育施設”に関する情報を頼りに、日本各地を巡っている。

 

 発見された施設は、最初に見つけた施設の場所と酷似した構造だった。だが――

 

 「……また、空っぽか」

 

 香坂が資料ファイルを手にしてため息をついた。私も、無言でうなずく。

 

 施設の内部には、使い込まれた機材の痕跡や、生体魔術の研究を行っていた証拠らしき魔力残渣が残っていた。けれど、肝心の“被験体”や運営者たちの姿はどこにもない。

 

 「でも、痕跡があるだけマシ……次が本命かもしれない」

 

 ≪魔力信号パターン照合中……候補地:三重県南部。高確率で施設跡が存在≫

 

 (ありがとう、ネオノア)

 

 「次の調査、三重県に決めよう。ふとしくん、準備よろしくね」

 

 「はい!絶対、力になります!」

 

 真っ直ぐな目で答えるふとしくん。スライム事件のときから、彼の中には確かな“芯”があると感じていた。

 ただ戦いが強くなりたいわけじゃない。誰かのために動ける人間だ。だから私は、彼を鍛えたいと思った。

 

 彼は、まだまだ伸びしろがある。今は直接・間接的な戦闘の“読み”が追いついていない。だからこそ、今後は「索敵」や「逃走経路の確保」、「一方的な殲滅」など、直接戦わないで勝つ、更にはもっと踏み込んで、勝利の使い方、被害の少ない負け方、生き残り方、などなど教えていきたい。

 

 (それにしても……教える側って、めっちゃ考えること多いなあ。24時間じゃ足りないよ、教えといて自分は出来ませんじゃ笑えないから訓練も続けたいし)

 

 そんなことをぼんやり考えながら、私は隣にいた黒峰エイジに頭を下げた。

 

 「黒峰ランカー、私にも……戦闘訓練をお願いします。全力で」

 

 「ん?……今の、全部口に出てたよ? いつもそんな風に思考ぐるぐるしてんの?ヤバすぎない?」

 

 彼は苦笑いしつつも、目の奥は真剣だった。

 

 「それと、その戦術理論……マジで教えてほしい。面白すぎるって、それ」

 

 「ありがとうございます。では、この後30分、フィードバック時間として一緒に整理させてください」

 

 「いいね、よろしく頼むよ」

 

 二人で静かに構え合う。

 

 次の瞬間――

 

 轟ッッ!!!

 

 訓練場全体が、雷鳴のような衝撃に包まれた。

 

 《多重思考》による高速予測。

 ネオノアによる思考補助。

 そして、効率よく鍛えている身体。

 

 この力は、すべて――

 

 「星璃愛を助けるために使う」

 

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