現代魔法術はアプリで効率化!私は私の魔法術を極めたい 作:サモア リナン
訓練場には、まだ微かに乾いた砂塵が舞っていた。
黒峰エイジが腕を組んだまま、対峙する春佳奈を見据える。その眼差しは、さきほどの後輩・後藤との訓練よりも明らかに鋭く、警戒心を帯びていた。
春佳奈は深く息を吸い、瞳に熱を宿す。
穏やかな微笑みは消え、ただ静かに――けれど確かに、戦う者の顔へと変わっていた。
「さあ、黒峰ランカー。存分に、私の魔弾の力、見せてあげましょう!」
言葉と同時に、彼女の手元に蒼い魔力が収束し、ハンドガン型の魔法陣へと変化する。
ベレッタPX4 ストーム サブコンパクト。小型で扱いやすく、春佳奈が中距離戦で主に使用する構成魔器だ。
「ふん……随分と物騒な玩具を扱うようになったな」
黒峰は余裕を装いながらも、魔力を全身に巡らせ、戦闘態勢を整える。
Aランカーとしての経験から、春佳奈が見せる“ただの派手な魔法”の裏に、緻密な戦術が潜んでいることを知っていた。
「玩具、ですって?これは私の魂の具現!星屑の息吹、《アストラル・ブレス》!」
放たれたのは蒼い光弾。軌道には星の粒子のような光が瞬き、冷気を帯びた弾丸が空を裂く。
黒峰は紙一重でそれを回避し、懐に飛び込もうと距離を詰める。
「っ早い!術式構成…領域確保―《サンダー・ジャッジメント》!」
彼女の背後に広がった魔法陣は長方形の銃の形へと変化し、アサルトライフル――LM4A1 R.I.Sモデルを構成。
引き金を引くようなモーションの直後、雷光の奔流が黒峰の突進を阻むように薙ぎ払った。
「くっ……!」
黒峰は咄嗟に腕で受け止め、電撃の痺れに身体を震わせながらも態勢を維持する。
が、その隙を春佳奈が見逃すはずもない。
「今、《土隆起弾》十連装――構築モード、展開!」
彼女はアサルトライフルを保持したまま魔法陣を再構成し、連続で土属性魔弾を発射する。
砂塵が舞い、連続着弾によって地面が隆起。遮蔽物が生まれ、敵の視線を遮りつつ、さらに地形を変える。
高低差を活かした戦場が、十数発の精密な射撃によって一瞬で形成された。
「これで……視点確保」
次の瞬間には春佳奈の姿は消えていた。
彼女は構築された遮蔽の奥、即席のスナイピングポイントに身を潜めていた。
(今の……構図、超かっこいい……!)
ネオノアが脳内で小さく囁く。《同感、震えるね。戦場制圧力、非常に高いものと判定します》
高台の陰で、春佳奈は長距離用の魔法陣を展開する。
現れたのは、漆黒の銃身――スナイパーライフル、LM24 SWS。
「そして、終焉を告げる一撃。《星影の沈黙》、《サイレント・ステラ》……」
意識を集中し、黒い光が銃口に凝縮されていく。ほんの少しのズレが命取りのスナイパーライフルの構成には全力で神経を注ぐ。
そして、音もなく放たれた漆黒の弾丸は、空を裂いて一直線に黒峰を狙う。
「……!」
黒峰は即座に最高クラスの防御魔法を展開。全力の警戒で迎え撃つ。
たとえ訓練でも、受け損ねれば無事では済まないことを、本能が理解していた。
遠巻きで見ていた香坂は、やれやれと肩をすくめる。
「また始まったよ……あの中二スタイル……」
訓練生たちの視線も集中する。派手で中二全開の戦闘スタイル――だが、それを成立させているのは、ネオノアによる補助と、徹底的に計算された属性構成、発射順、地形利用に基づく緻密な戦術。
「……ふぅ。どうでしたか、黒峰ランカー。私の戦闘における基本かつ奥義《多重属性魔弾乱舞(マルチプル・エレメンタル・バレット・ダンス)》の片鱗は、味わっていただけましたでしょうか?」
彼女はスナイパーポジションから身を現し、息を整えながら誇らしげにそう告げた。
だが、言葉の端々には隠しきれない“それっぽさ”が滲む。
黒峰は額を押さえ、口元を引きつらせながらも素直に感心する。
「……いや、まいった。正直、ここまでとは……。中二っぽい言い回しはともかく、動きと構成、全部が実戦想定済み。マジでやばいって、あんた」
そして、ふとしくん――かつて春佳奈に助けられた男子生徒は、少し顔を赤らめながらぽつりと呟いた。
「……いや、かっこいいとは思うんだけどさ……でも、やっぱりちょっと……恥ずかしいよ、先輩」
春佳奈は一瞬だけむっとするが、すぐに笑って肩をすくめる。
「じゃあ、恥ずかしさを吹き飛ばすくらい強くなってみて? 私が教えるから」
ふとしの顔が引き締まった。
「……はい、お願いします!」
その声に、どこか希望の光が混じっていた。
あ!言い忘れてた、、、春佳奈ちゃん高校3年生になってるよ。