現代魔法術はアプリで効率化!私は私の魔法術を極めたい 作:サモア リナン
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小出し情報
人間、魔族など種族によって「国」としてまとまっている
「人間」の種族の違いとして日本人やアメリカ人がいる。それぞれ統治する土地を「圏」と呼ぶ。(例:日本圏.アメリカ圏
翌日。学校を休み、私はふとし君に自分の考えを伝えた。
「昨日のことを、香坂さんにすべて報告する。そして、その反応を見て、私たちがどう動くかを決める。それが今、私にできることだと思う」
ふとし君は、少し間を置いてから言った。
「……俺のこと、なにも聞かないんですか?」
恐る恐るといった口調だった。私は、うなずくだけで答える。
「うん、聞かない。待つよ」
彼の過去は壮絶だ。もし私ひとりだったら、きっと感情のままに責め立てていた。威圧的に「なんで?」と問い詰め、言葉で追い込んでしまっていたかもしれない。
でも、私はひとりじゃなかった。
ネオノアと黒峰さんが、そばにいてくれた。
ネオノアは、言うなればもう1人の私だ。だから思考回路は似ている、けど、逆に冷静な補正役になったり、自分を客観視できる。
「感情に基づく判断は、短期的にはスッキリしても長期的に後悔を生みます」と、彼女は考察している。私に一通りの選択肢と、それぞれの利点・欠点を提示してくれた。
「情報を共有し、事実に基づく対話の場を設けるのが最適です。春佳奈さんがふとしさんを信じたいと思っているなら、まずは“信じる姿勢”を示してください」
その内容は、私が考えていたことと大きくは変わらなかった。でも、迷いは減った。
ネオノアは、いつだって私の“鏡”だ。私が感情で揺らいでいるとき、その歪みを映し出してくれる存在。
彼女がいてくれて、本当に良かったと思う。
一方、黒峰さんはというと、彼らしく、もっと直球だった。
「俺は頭良くないから、なんでそんなに難しく考えてんのか分からん。学校の後輩くんなんだろ。信じてやれよ。苦しんでたの見たじゃねぇか、助けてやれよ、仲間だろ。今まで間違ってたなら、これから導いてやれば良いじゃねぇか、師匠だろ」
そのあと、頭をぽりぽり掻きながら笑う。
「あー、お前の言い方を真似てみた。頭使って色々言ってみたんだが、伝わるか? 慣れないことはするもんじゃないな。ま、要は信じて待ってみろってことだ」
――シンプルだった。でも、その分、まっすぐだった。
ネオノアの冷静さと、黒峰さんの情の深さ。
私はそのどちらにも支えられて、ようやく“選べた”のだと思う。
― 法術協会・南部支部。
音もなく陽が落ちていく一室。
外界から遮断された作戦室には、必要最小限の家具しか置かれていなかった。
机の上には何もない。
まるで、これから語られるものの“重さ”を、他の一切を排して迎えるための舞台のようだった。
そこにいたのは――
直属の上司・香坂詩織。
そして、草薙春佳奈、神宮寺太、黒峰誠が相対していた。
香坂は立ったまま、壁際のスクリーンに背を向け、静かに言った。
「……では、聞こうか。昨日の任務報告を」
その声音には怒りも焦りもなかった。ただ、静かな圧があった。
春佳奈は、自然と背筋を正していた。
隣にいる太は、目を伏せ、落ち着かない様子だった。
黒峰は無言で立ち、いつも以上に険しい顔つきだった。
数秒の沈黙のあと――
春佳奈が、一歩前に出た。
「……昨日、目的地で星璃愛と奏に接触しました。彼女たちはこちらに敵意を示さず、対話を望んでいました」
「対話、ね」香坂の眉がわずかに動く。「それで?」
春佳奈はうなずく。言葉を選びながら、しかし迷わず話す。
「彼女たちは……“真実”を語りました。魔法術アプリは多くの魔族と人間の子どもの命で開発され発展してきたこと。施設「家」は言わば材料…の保管庫であること。21年前の境界進行は家族や大切な者を取り戻すため、もしくは復讐のために起こったこと。神宮寺太くんが“魔族の命”や“子どもの魂”と引き換えに延命されていたこと。
そしてその研究の中心に、“ネクスト”と神宮寺家があったこと――」
香坂の目が細くなる。だが、言葉を挟まない。
ただ、続きを促す静かな圧が増した。
その沈黙に耐えきれず、太が口を開く。
「……俺は……知らなかった。でも、本当は……薄々、気づいてたんです。
何かがおかしい。普通じゃないって……でも、怖くて目を背けてた」
香坂の視線が、太へと向く。
その目に浮かぶのは失望か、憐憫か、それとも――。
「続けて」
静かにそう言った声に、黒峰が代わる。
「奏は、“ネクスト”の研究資料を直接見たと話していた。
非人道的な実験、子どもを“部品”として扱う記録……信じ難いが、奴らの目は――嘘をついている目じゃなかった」
「私もネオノアと記憶分析を行いました。星璃愛の口調、視線、反応のタイミング――
少なくとも、彼女が語った内容に重大な虚偽は検出されませんでした。
ただし、第三者の意図による誘導・洗脳等の可能性はゼロとは言えません」
香坂は無言のまま私たちを見る。そして、
「そして彼女たちは……私たちに協力を求めました。
“共に戦ってほしい”と」
「その“戦う相手”とは?」
香坂の声は静かだったが、その言葉の裏にある意味は重かった。
「――“世界の闇”です」春佳奈は、はっきりと答える。「命を犠牲にして力を得る。そんな研究を正義と信じる人たちと――戦う、と」
香坂は深く、長いため息をついた。
「……理解はした。だが、それが“真実”である証拠はない。
君たちに聞かされたことが、敵の策略である可能性も、捨てきれない」
それはまさに、正論だった。
春佳奈も、黒峰も反論しない。ただ、次の言葉を待っていた。
――そして、春佳奈が前を見据えて言った。
「それでも、私は……もう、ただ言われたことを信じるだけじゃいられない。
この目で見て、この耳で聞いて、この心で判断したい。
……“自分の意志”で動きたいんです」
香坂は、目を見開いた。その視線は、春佳奈の奥を見透かすようだった。
「……正直、動揺しています。でも、事実なら、目を背けてはいけない。
だから私たちは、これからも自分の判断で動く必要があると考えています」
――静寂。
重たい、圧のような空気が部屋に満ちる。
やがて香坂は、ふう、とため息を吐いた。
「……春佳奈。神宮寺太。黒峰誠。お前たちが語ったことを、私は“報告”として正式に受理する。追って連絡するので、それまで待機していなさい」
香坂は、机に手を置いた。
その手は微かに震えていたが、その目には確かな覚悟があった。
「私は信頼を前提に組織を動かしている。
だが、お前たちが“疑う”というのなら――その覚悟も、私は受け止める。
それが、この立場の責務だからだ」
一拍ののち、彼女は告げた。
「調査班を動かす。君たちは、しばらく独自に動いて構わない。
だが、情報を独占するな。こちらにも知る権利がある」
春佳奈は、思わず目を見開いた。
香坂の言葉には、明確な“信頼”があった。人間として、組織の上に立つ者としての苦悩と覚悟が、そこにあった。
「……ありがとうございます」
太と黒峰が
そして春佳奈も、深く、深く頭を下げた。
(信じたい。けれど、信じるだけじゃ足りない。
だから私は――考える。選ぶ。そして、戦う)
部屋の外では、日が完全に落ちていた。
世界はまだ、深い霧の中だ。
でも彼女たちは、その中で確かに一歩を踏み出した。